バアン!河合「でだ!お前、説明しろよっ!?」放課後になり、私の机の上に勢いよく両手をついて、霊感少女こと、河合千晴が私をにらみつけました。私「ぱーどん?」私は分厚いレンズをかませた銀縁眼鏡に、長い髪の毛をみつあみにして、両肩に垂らした状態で首をかしげます。河合「ぱーどんじゃねぇ。昨日の6時限目の始まりのヤツ!」私「あぁ…。」村森「なんだなんだ?またオカルト話か?(笑)まぜろっ!?」小柄で扇形のつやや...
それから2週間ほどは、平和な日常が続いていました。私が上田四季子ちゃんのお母さんにお話をした以降、岡田家の郵便物が荒らされることもなくなったし、ひろみちゃんも、ニコニコしている様子でした。学校が終わると、家の手伝いで、店じまいまで店番をします。その間にレジカウンターに宿題のノートをひろげて、勉強をしたり、図書館で借りた本を読む、そんな毎日でした。近藤さんのおじいさんの不買運動は、解禁されたかに思わ...
ほどなくして、弟が父親を連れて戻ってきました。今日は幸い、離れにあるオーディオルームで休んでいただけで外出していなかったのです。弟があわてて、「お姉ちゃんは寝不足と貧血らしくて、身動きとれないみたいだから、お父さんにお布団まで運んでほしいって!」と、説明をしている。我が弟ながら、のみ込みのいい男で、話が早い。父親はあきれた様子で、私を抱きかかえて、そのまま階段を登って、私の部屋まで運んでくれた。最...
帰宅すると、とっくにお店は店じまいをしており、私は車庫のシャッターを半分押し上げて、自転車をしまいこみ、お店を抜けて自宅へともどりました。台所の明かりがついていて、弟が私の帰宅に気づいて、少々不満げでした。弟「ごはん時までに戻ると言う約束だったのに、お姉ちゃん、ずるい…。」と不平をこぼしていましたが、私は疲労困憊で、台所の椅子に座るだけでした。弟が、私の様子がおかしいのを察して、とにかく、白いご飯...
再び、勝手口が開いて、奥からおじさんの声が聞こえました。「まだ、夕飯の支度をしとらんのか、腹がペコペコだ」という声です。私たちは居間にいて、その向こう側にある台所の勝手口から、四季子ちゃんのお父さんは叫んでいたのでした。背後から、ガシャンガシャンと、大きな機械の音が混じって聞こえてきます。四季子ちゃんのお母さんは、とにかく、もう少しだけ待つようにと、背後を振り返って叫び返していました。私「それでは...
四季子ちゃんのお母さんは、目を見開いたかと思ったら、ぽろぽろと涙を流し、私の手をとって、握ってきました。四母「しんじゅちゃん、しんじゅちゃん、おおきに…。そこまで四季子の事を考えておいてくれてたんやね…。アタシはうろたえてばかりで、みっともない姿をさらして、本当に恥ずかしいわ…。アタシ、しんじゅちゃんの事、最初からファンやったわ…。なんで、誰にも打ち明けたことのない、アタシの気持ちを、会ったこともない...
私はため息をついて、四季子ちゃんのお母さんに、おもてをあげるように言いました。私「すいません、言いすぎました。誰だって、ご自分の家族が大変なことをしていると、聞かされたらそれは動転しますよね…。お母様には悪気はないっていうことは分かっています。ただ、お気づきではないようですが、だいぶ世間とずれていらっしゃる…。美輝子さんのお世話であまり外に出られないから、気づかなくなってしまったんでしょうけれど…。...
四季子ちゃんのお母さんは、うつむいていたのを辞めて、下から見上げるようにして私の顔を見て、固まった。私はじっと、彼女の顔を見つめていた。四母「……しんじゅちゃん、怒ってるんやね…。」私「…えぇ…。」四母「ウチの人が、悪気なく言った言葉が気に障ったんやね…。」私「えぇ…不愉快です。非常に…。」四母「あれは、あの人にしてみれば、軽い冗談みたいなもので、単なる軽口やわ…。」私「本当に?家族を失った人間に対して、...
またかすかな物音をたてて、四季子ちゃんは階段を降りてきて、この部屋の様子をうかがおうとしているのを感じました。私「…すみません、また四季子さんが…。」四母「あぁ、はい、何度もすいません。」四季子ちゃんのお母さんは、目の涙をぬぐうと、立ち上がり再び引き戸を開けました。四「いい子だから、二階で待っていなさい。後で、大事な話があるから…。」四季子ちゃんは不思議そうにお母さんの顔を見上げていましたが、母親に...
四季子ちゃんのお母さんは、観念した様子でした…。私は彼女の言い逃れをどこまでも防いでしまったようでしたが、とうとう自分の娘のしたことだと認めた様子でした。その頃当の四季子ちゃんは、階段を足音を消して降りて、そのまま玄関をそろりと抜け出していました。そして私たちがお話している居間の外側、縁側側に聞き耳を立てて中の会話を盗み聞きしようとしていました。しかし母屋のすぐ隣に工場があって、ガチャガチャと機械...
四季子ちゃんのお母さんは、体をぶるぶると震わせていました。『思い当たる節がありすぎる』、その表情には、そんな思いがありありと浮かんでいるように見えました。四母「そ、そないな事…。そないな事、言うとったか…?」私「えぇ、速攻で仁姫お姉さんが、お父様の頭を叩いていました。傷口を広げるな、と。そして、四季子さんの頭を押さえて、私に謝るようにきつく言いましたが、彼女は自分は悪くないと言い続けていました。なぜ...
四季子ちゃんのお母さんは、雷に打たれたかのように茫然とした表情をしていました。私との対話中、自分でも感じていた違和感の正体を突きつけられたような印象でした。なんとか自分の娘、四季子ちゃんをかばいたい一心で私の事を責めていたのですが、そもそも彼女の事を悪く思いたくがないための言動です。彼女の中でも、愛娘の発言や行動が理解できないですし、理解したくもない気持ちでいっぱいだったのです。そんな不可解な言動...
四母「はっ!?たいそうな自信やな!それじゃ、何か?自分の方が四季子よりキレイやと、そう言いたいんか?目ぇ悪いんとちゃうか?鏡曇っとるん?これだから、自意識過剰の子供はいかん…。親が亡くなって、さみしくなってまったんやな、かわいそうに…。」私「私の事を、どう思うおうと、それはあなたのご自由です。しかし四季子さんがしでかしたことは、事実は事実として残ります。問題はこの後、彼女がどう育っていくのか、ですよ...
四母「額面どおり…って…。」四季子ちゃんのお母さんは、酸素が薄い水の中にいる金魚のように口をパクパクさせていました。次の言葉が継げないようでした。私「えぇ。」四母「いや、でも、そんな…。姿勢を正しくと、姿勢よく生きるとは、それは、勘違いしやすいで、仕方ないんじゃ…。それぐらいなら、ちょっとそそっかしい子供なら、ありがちなまちがいやないか?」私「お母さまも、どこかでうすうす気づいていらっしゃると思います...
それから私は、この夏、私の実家のお店で起きた、不可解な事件の数々を説明しました。無人の際に働く赤外線センサーの音に反応して、お店にでると、ドアにスキマができていて、四季子ちゃんが大急ぎで立ち去る場面を目撃したこと。匂いが無かったため、切り傷に気づかなかったが、何度も塩の袋が切り裂かれていたこと。となりにあった砂糖や、同じ配列の一番奥の金属棚の一番下に、刃物でつけられた地図記号があったこと。そして塩...
私の真剣なまなざしを受けて、四季子ちゃんのお母さんは、考え込んでいる様子でした。彼女の中でいろんなことが消化不良となっていましたが、一つだけ分かったことがある。自分のかわいい末娘、四季子の未来を、この娘は案じているのだ、という事でした。そこで私を怒鳴りつけたい衝動をこらえている気持ちから、私の話に耳を傾けよう、という気持ちへと変化していくのが分かりました。この子は、この子なりに、四季子の事を考えて...
四季子ちゃんのお母さんは、茫然として私を見つめてきました。何を言っているのだ、この子は…と、頭が混乱している様子でした。私「………。」四母「…なにを…何を言い出しとんの、しんじゅちゃん…。しんじゅちゃんと同じクラスにおるのなら、それは障がい者やないってことにならんか?」私「えぇ、知能には問題ないんです。おそらく、彼女と同じような障害を抱えている子供さんは、世の中にたくさんいると思います。しかるべき専門機...
私はそっと、瞳を閉じた。子育てのいい参考になると私に期待を寄せている、四季子ちゃんのお母さんのまなざしがつらかった。小さくため息をついてから口を開きました。私「いろいろありますけれど…。先ほどの家族団らんのお話で、確信しました…。」四母「はい?あれが?」私「はい、先ほどのお話は私がこの上田家で、そんなお話し合いをされていたんじゃないかなって想像して、おたずねしたんです。いえ、おそらく、この家だけでな...
四母「喜怒哀楽の哀、悲しみの感情が無い…。」四季子ちゃんのお母さんは、目を見開いて、驚いた様子でした。自分の発言を耳で聞いて、さらに驚いた様子でした。彼女の中で言語化できなかった、モヤモヤしたものが、明確な形をとった、その瞬間でした。そうか…そうかそうだったんだ…。それだ、それが違和感の正体だったんだ…。四季子ちゃんのお母さんは、頭をぶんなぐられたような衝撃を受けて、よろよろと震え出した。私「…少し、...
四季子ちゃんのお母さんは、心底ほっとしたようだった。とにかくお金の問題から離れられるのならば、どんな話でも構わない、という気分にすら陥っていた様子だった。そうだ、ウチの四季子はなんも悪くない。勘違いして正義漢面したその近藤という子供とその祖父が悪かったのだ。そうだ、それで押し通せばいいんだ。まだまだ、子供だな、この子は…と、考えているのが見て取れた。私もただの子供ではない。最初から霊能力は全開にし...
私「………。」四母「…………。」二人して、座布団の上に座り、沈黙を続ける。私の中でこの問題はどう取り扱うか、考えあぐねいていた。実際には四季子ちゃんからの打撃の金額を算出する方法など、ありはしない。ただ町内会からの買い控え問題は、確実に四季子ちゃんが原因である。賠償してもらおうなどとは思っていなかったが、もししてもらえるならば助かる、という気持ちでいた。ただ目の前の四季子ちゃんのお母さんは、ドツボにハマ...
ばぁ~ん!!沈黙を打ち破ったのは、廊下にいる美輝お姉さんが、ガラスのはまった障子戸にぶつかって転んだ音でした。四季子ちゃんのお母さんは、はっとした表情をして、引き戸を開けて、お姉さんに注意をして、追い払ってくれました。四母「すいません、ウチの娘たちが…。」私「いえ、美輝お姉さんは、何も悪くありません。あきらめの悪い四季子さんに頼まれて、動いているだけです。彼女をあまりしからないでやってください。」...
四季子ちゃんのお母さんは、ショックにうちひしがれている様子でした。彼女にとってはかわいい末っ子、それも期待の星。愛らしい容姿にちょっと幼いところがあるけれど、気の利く、2番目の娘の世話を焼く、しっかり者というイメージだったに違いないと思われた。私「取り込み中のところ、申し訳ありません。再び四季子さんが階段からのぞいていますので、どうぞ、立ち退くようにお伝えください。」四母「あっ!はい。」四季子ちゃ...
四季子ちゃんのお母さんは、頭をぽりぽりとかきながら部屋に戻ってきました。畳の上に正座している私を見て、座布団を勧めてくれましたので私はその上に正座をしました。四母「えぇよ?自由に足をくずしてくれても…。」私「いえ、そういうわけには参りません。若輩の私が楽にしていては、申し訳ありませんから…。」四母「そ、そやった?そんな気にせんでもえぇのに…。」私「いえ、こちらの本気をお伝えしたいのです。どうぞこちら...
四季子ちゃんのお母さんは、ぽかんと口をあけて私をながめてきました。私は小学6年生にしてはかなり小柄で、パッと見には小学4年生ぐらいにしか見えません。背も低く肉付きも薄い体形をしているので、同じ年の四季子ちゃんと並ぶと、姉妹のように見えます。身長はどっこいどっこいでしたが、彼女の方が肉付きがよく、外国人のように高い鼻を持っているため、見た目には大人っぽい雰囲気があります。四季子ちゃんのお母さんは私の...
再び、重たい体をのしのしと響かせながら台所から戻った、四季子ちゃんのお母さんは驚いた様子でこちらを見てきました。四母「ホンマに、またおったで…。よぉ、分かるな、しんじゅちゃん…。」私「えぇ、かすかに気配を感じたので。」四母「こんなやかましい家にいて、階段の物音が聞こえとったんかいな…。」四季子ちゃんの自宅には工場があって、そこからガシャガシャと機械の動く物音が間断なく鳴り響いている。一応別棟になって...
四季子ちゃんのお母さんは私の口上に圧倒された様子で、口をぽかんと開けていました。四母「身分て…。え?いったい、なんの話や?」私「はい。順を追って、説明させていただきたいと思います。ですがその前に、このお話は私と四季子さんのお母様との間でのお話とさせていただきたいと思いますので、今階段に張り付いて盗み聞きをしている四季子さんを、二階の自室に戻るようにとお伝えいただけませんか?」四母「え、あ、ハイ。そ...
上田家に到着した私は、その家の駐車場に自転車をとめました。車を停める簡単なしつらえの車庫で、周りはトタン張りで床は土のままだった。玄関への階段を上り、ドアのそばのインターフォンを押してみます。スカッという反応がしただけで、音が鳴らず、まだ修理をしていない様子だったので、そのまま玄関のドアをスライドさせて声をかけました。この当時の私の住んでいた町では、玄関に鍵をかけない家が多かったのです。だれでも勝...
なんとか、朝起きれました。いつも寝起きが悪い私にしては、驚異的なことでした。朝ご飯を食べて、近所の子供たちと一緒に学校に行きます。校門をくぐって校舎へと向かう途中で、ひろみちゃんが私を見つけて駆け寄ってきました。ひ「おはよ、しんじゅ…。」私「あ、おはよう、ひろみちゃん…。」いつも屈託なく笑うひろみちゃんの表情がさえないのを見て、私は自分の失敗を悟りました。ひ「あんな、昨日もまた、ウチ、やられたん…。...
その日は現実感がなくて、ふわふわしていました。授業が終わり、どうにもぼんやりした頭で帰宅して、それから冷凍庫のドアを開けて、中に置いてあったアイスバーを食べました。それはひょろりと長くて真ん中がくびれている、色付きの砂糖水みたいなものでした。一本10円か20円ぐらいのフルーツの香りがする、果汁0%の色付きのジュースを凍らせて、いつも兄弟で半分こして食べるのに、その日は無我夢中でガシガシとかじり続け...
耳の後ろから何かの音が聞こえました。じゅんじゅんじゅんじゅん…夕陽。輝くような金色の夕陽に、目を奪われる。用務員のおじさんに両脇を抱きかかえられて、暗い床下から引っ張り出された瞬間の映像だった。用務員『ははっ!?まるで名探偵だなっ!』私は地面に着地して、用務員のおじさんをにらみつけた。なぜ暗闇にいる私を見つけ出すことができたのかをいぶかしんでいたのだ。用務員『こりゃ、驚いた。本物のお姫様を救出した...
女子「おまじないかしら?それ。」女子「占いかしら、それ?」小谷「俺、そういうの、マジよくわかんねーから知んねーけど。アイツ、顔マジだったぜ?『自分をバカにした人間を絶対に許さない。頭の悪い人間に思い知らせてやる。これは正義だ』ってぶつぶつ言っててさ。なんか、気味悪くなって、それから俺、なんも言ってね~。」私は小谷君の胸ぐらをつかんで、押し出しました。小谷「うぉ!なんだ、六道!いきなり!」私「事は緊...
女子「は?なんで塩を学校に持ってきてるの?」小谷「知んね。アイツ、学校に来てランドセルから出した時に、ビニール袋が破けて、床に落としたんだよ。俺アイツに片付けとけよ、って言ったんだけど、『どうせ掃除当番が掃除するからいいでしょ』って。アイツ、何度も学校に塩持ってきてんぜ?そんで何度も破いてこぼしてやんの。」女子「じゃぁ、これ、上田さんのゴミなわけね。」女子「なんで片付けないのかしら、勝手よね。」私...
そして数日すると今度は『勉学に励めよ』というような空気感に学校は包まれていきました。運動の秋の次は、読書の秋、芸術の秋、という訳です。そうしてしばらくは平穏な日常が続いていました。ある昼休みに給食を食べ終わって、机を教室の後ろの方へと持ち運びをしていたら、なにか、女子が『キャ!』と、小さな歓声のようなものをあげていました。何か盛り上がっているなぁと思ってその方向を見たら、掃除当番の女の子たちが、ほ...
岡田家であれこれ考えても、なんの法則性も見いだせませんでした。私たちはモンモンとした気持ちのまま、毎日を過ごしていましたが、やはり時々岡田家のポストは荒らされていたのです。警察に連絡して近所のパトロールを強化してもらっても、特に芳しい報告はありませんでした。小学校では運動会の準備で、体育の授業が重点的に行われてきました。校内がピリピリした雰囲気になるなか、子供たちは熱心に競技の練習をしていました。...
私「え…何、これ…。」私が一通の封筒を手に取り、しげしげとながめますと、ひろみちゃんは、消え入りそうなか細い声で告げてきました。岡田「これ、なぁ…しんじゅ、これ、どう見る?」私「いや、これって、どう見たって、刃物で切り傷がつけられているよね…。カッターか、何かで、こすったか、なんか…。あぁ、切手のところなんか、完全に切られている…。どうしたの、これ…。」岡田「これな、ウチのな、郵便物なんやわ…。」私「あ、...
秋めいてきました。頬をなでる風の涼しくなり、私は一年の中で秋が一番好きです。湿度の低い環境は読書にうってつけ。私は図書室で本を借りて読むのが好きなので、その日もお昼ご飯を食べ終わると、そそくさと廊下へと出て、図書室に向かおうと思っていました。この頃夢中で読んでいた本が、名探偵シャーロックホームズ、エラリー・クイーン、ポワロなどの探偵ものでした。するとひろみちゃんが声をかけてきて、一緒に図書室に行き...
9月のかなり終わりぐらいの出来事です…。麻町(仮名)は東西にひょろ長い地形の町でした。私の家は麻町の一番東側に位置しており、その先は隣の市になります。そして町内会長会長をしている近藤さんのお宅は、私の家とは真逆のかなり西側に位置しておりまして、普段ならあまり交わることがないのです。学校から帰ったらお店にお客さんがいたので、あわてて黄色い帽子を頭から外して店内に飛び込むと、見知らぬ女性が黄色の買い物...
そうして、ひろみちゃんと話していたら、小島ちーちゃん、伊藤みゆきちゃん、虫鹿君、加藤君がバラバラと寄ってきました。『今の、すごかったね』、と、口々に言っています。小島「まぁ、なんですわねぇ。近藤さんのお気持ちも分からなくはないですけど、しかし、上田さんのあの痛烈な皮肉。自分の事は完全に棚上げ、しかも、一理あるだけに憎らしさ倍増でしたわね。ちょっと近藤さんが気の毒に見えましたわ…。」私「あぁ…。」伊藤...
近藤さんのクラス内での扱いは、基本、無視と同等になりました。ある意味、四季子ちゃんと同じでしたが、彼女はメンタルが強い。自分が無視されているとは気づかず、気さくに誰にでもあいさつをし、分からないことは人にたずね、それをみな、親切に回答をしている。彼女に嫌われでもしたら、私の二の舞になるのを案じているから、誰もが基本、丁寧な対応を心がけていたのでした。しかし逆に好かれてもいけないので、あたりさわりな...
二学期が始まって、最初は穏やかだった。そういえば、四季子ちゃんに、『あの日、ウチから帰る時、仮病を使ったんでしょ?』と言ったら、腰を抜かして椅子から転げ落ちてしまった。私「見たいテレビがあるなら、正直に言えばいいのに。」四「あぁ、そう、そうだったの、見たいテレビがあったのよね…。」つぶやいて、教室から出て行ったことがあった。ひろみ「珍しいな。しんじゅになんか言われて、椅子から転げ落ちたように見えた...
いつも元気はつらつな四季子ちゃんが、めずらしく表情を曇らせていました。そして、私に言ってきました。それまで私はクラスの中でひろみちゃんとおしゃべりをしていたので、四季子ちゃんが近づくと、ひろみちゃんは、表情一つ変えずに、すっと移動していきました。四「ねぇ、しんじゅちゃん、そろそろ遊びに来てよぉ。」私「家の仕事があるから、急には無理だよ。」四「じゃ、いつ?」私「新学期が始まって昼間手伝いができなくな...
二学期が始まりました。近藤さんは夏風邪だという事で、お休みが続いていましたが、夏休みの宿題はすべて仕上げており、それを同じ通学団の子供に託していたので、『なかなか治らないようだね…』という風に、同じクラスの子供たちは思っていたようです。しかし一週間たっても2週間たっても、近藤さんはお休みを続けたので、次第に子供たちの噂になるようになりました。『そういえば、夏休みの出校日も一日も出てきていないんじゃ...
四季子ちゃんとのやりとりは8月29日のことでした。私は計画性があまりなく、夏休みの宿題がたまりがちで、残りの二日間は必死になって宿題をやっつけていたのでした。時に岡田ひろみちゃんと電話で励ましあいながら、(私が家を出られなかったので、答えを聞いてきていた)なんとか宿題を片付け?て、始業式を迎えました。寝不足の頭で久しぶりに小学校に行きます。保健委員の近藤さんは、体調不良という事で、お休みで。近所に...
私は頭が混乱していました。家を襲撃されてから神経質になって、夜も何度も目が覚めてしまっていて、目の下にクマができているのは弟の薫だけでなく、私もだったのです。私「私のため…。」四「そうか、優しいしんじゅちゃんが、そうやっておじさまのいう事をきかないで、民生委員のなんちゃらさんって人に言いに行ってごらんなさい、きっと、もっと痛い目を見ることになるわ?それで犯人は、もうこの家にこなくて、悪い評判だけ流...
私は青ざめた表情で、じっと、商品棚を見つめていたと思います。隣にいる、四季子ちゃんの様子には細かく注意が向きませんでした。私は傷つけられた商品棚の場所を少し移動して、お店のガラス張りの壁際まで行き、そして折り返して、お茶っぱの商品が並んでいる棚の前まで移動して、麦茶のパックをながめていたのでした。四「それでぇ、犯人の目星はついていないんでしょ?これからどうするつもり?」私「…分からない…。」四「ぷ。...
私は四季子ちゃんの言わんとしていることが、よく分かりませんでした。好意的な発言のハズが、妙に見下したような印象に、ちょっと意味がつかみかねていましたが、小ばかにした物言いは普段から彼女の特徴だったので、この時もそうなのだろうと、思っただけなのでした。私がため息をついて、じっと、切り傷が刻まれた金属棚を見下ろしていると、四季子ちゃんは重ねて聞いてきました。四「それでぇ。しんじゅちゃんは、犯人はどうい...
私「それで私と薫は、お父さんに警察に言おうっていったんだけど…。」静かな店内には、小学生の女の子が二人だけ。後はBGMの有線から演歌が流れている。私は真剣な面持ちで、お茶のパックの前に立って、商品棚をながめながら、そうつぶくように言った。すぐ隣にいる同じ身長の四季子ちゃんが、あさっての方向を向いて、自分の口元やお腹を必死になって、押さえているのに、あまり気づいていなかった。四「えぇ!?それはおおげさじ...
夏休みの終盤に、たまたま上田四季子ちゃんを見かけました。それは店舗の横にある、倉庫兼車庫の場所に、彼女が自分の補助輪つき自転車を駐輪しているところを、たまたま出くわした格好でした。お店の斜め向かい側に駐車場があり、その奥に父のガレージ兼オーディオルームがあり、その裏に畑があります。そこにプチトマトを植えて育てていたので、じょうろに水を入れて持っていこうとしたら、彼女が勝手にそこに駐輪していたのでし...
私「どうしよう…。」私はまた地面にばらまかれた塩を見て、茫然としました。母屋に行くと、弟の薫がいます。二人してまたお店に戻ると、床を見て、茫然としていました。弟「また、やられたね…。なんで、こんな事をするんだろう…。お砂糖だけ、残っている…。」私「あぁ…前回無事だった、お塩も全部やられている…。いったい、全体、何が楽しいんだ…。」弟「分からないよね…。全然、分からないよね。なんで食べ物を粗末にするんだろう...
二人しておびえてしまったので、離れにある父親のオーディオルームに一緒に向かいましたが、やはり留守でした。二人して、またお店に戻って、思案にくれています。薫「お姉ちゃん、どうしよう、これ…。」私「このままにしておくわけにいかないし…。でも、お父さんに見てもらわないといけないし…。でも、お客さんがきて、驚かれてもいけないしな…。」弟「お客さん、来る?」私「わかんない…。とりあえす、ほうきとちりとりをそばに...
私と弟は顔を見合わせて、お互い自分の体を抱きしめて、ぶるぶると震え出しました。なにが、どうなっているのか、さっぱり分からない。ただ一つ言えるのは、刃物を持って、このお店に侵入してくる、悪意のある人間がいる、という事でした。私「薫、ちょっと戻ろう。」弟「うん。」私たちは肩を寄せ合って、母屋の方に戻っていきました。台所に行って、冷蔵庫から冷たい麦茶を出します。冷房も何もない生暖かい台所で、二人して冷た...
弟と二人して、食品棚の前にしゃがみこんで、塩の袋を一つ一つ手に持って、調べていきました。そこには、塩、砂糖、味噌、醤油、みりんなどの調味料が陳列されていて、ここは普段から商品の回転が悪く、私の掃除もいきとどいていなかった場所なのでした。小学生二人がちんまりと床の上にしゃがんで、金属製の棚の上にならべてあった、塩の袋を手に取っていきました。弟「ねぇ、お姉ちゃん、これ。」弟は白砂糖の袋を手に取った。弟...
夏休みも後半になると、お父さんの気分も乱高下していたようでした。いったん客足が回復しかけたかのように思えましたが、また次第にしりすぼみになっていきました。町内会の人たちに声をかけてもらって、有頂天になったのもつかの間。結局何一つ買い上げてはもらえていないという事実に気づいたようでした。そうして落ち込んだ父親は、再び昼間は離れにあるオーディオルームに引きこもるようになっていって。再び午後からというよ...
夏休みも後半になっていきました。私はお父さんに優しくされて、ものすごくうれしかったですし。時にお父さんのいとこのカナおばさんが、自宅に招いて、夕ご飯をごちそうしてくれたり、面白い漫画を読ませてもらって、大興奮だったりしました。少しの時間なら、ひろみちゃんの家に行って、遊ぶこともできましたし。お父さんのうつ状態も改善されてきたようで、時々電話が鳴って、お父さんに電話を変わると。相手はお菓子をキャンセ...
これもお盆過ぎの出来事だったと思います。お父さんはお昼寝をするので、私は午後になるとお店番をする、というのがルーティンになっていました。私はあまりにヒマすぎて、ちりとりとほうきをもって、店内をくまなく掃除をしていました。そしてあまりに掃除しすぎて、チリ一つ落ちない感じになってしまって。それではと陳列棚のスキマにまでしつこくほうきを差し込み、せっせと見えないところまで掃除をしていた。そうしてお盆を過...
その日も私はちんまりとレジカウンターの中の椅子に腰かけて、一人ぽつねんと店番をしていました。私の父は、早朝に青果市場に仕入れにいく関係で、夜は早めに寝て、朝は早起き、しかし日中はだるくて、一寝入りしないと体がもたないとの事で、私が午後にお店番をする、というのがルーティーンになっていたのでした。去年まではまだ母が生きていたので、私はひろみちゃんの家に遊びにいったり、近所の中学校のプールに泳ぎに行った...
翌朝にはすっかり悪臭はなりを潜めて、いったいアレはなんだったんだろう?という事でそのうち忘れていきます。なんとなしに、きっと狸か狐でもまぎれ込んで、イタズラをしていったのだろう、というのが父親の意見でした。ちなみに私が暮らしていた町は、田舎町ではありましたが、狸やキツネが出てくるほど森林や山があるわけでもなく、不思議で首をひねるばかりだったのです。それはそれとして、私は一人店番を続け、丁寧に丁寧に...
父「しんじゅ!薫っ!どっかに、動物がまぎれ込んでいないかっ!」私「うわっ!なにこれっ!なんの臭いっ!」薫「うそでしょ!?これ、なんの臭いっ!気持ち悪いっ!」それは私が生まれてこの方嗅いだことのない、ただならぬ異臭なのでした。たとえるなら、うんことおしっこと、獣と、何かが腐ったようなにおいで、それはとても野菜や果物が腐ったとか、そういうレベルのものでなく、目に突き刺さるかのような、強烈な悪臭なのでし...
毎日毎日、一人ぽっちでお店番をしていました。涼しい店内には、有線が流れていて、『津軽海峡冬景色』ほかに『三年目の浮気』『ルビーの指環』がヘビーローテーション。私は読書をしたり、外をながめたりして、昨日も来なかった、今日もこないのだろうかと、毎日はらはらした気持ちでお客を待ちわびていたのでした。どうすればお客が来るんだろう、なにか出し物などできないだろうか…。一応、父親も広告を出したりしましたが、そ...
それは世間を一変させる騒動となっていた。そんな事とはつゆ知らず、私はひろみちゃんとお別れをして、自宅へと戻った。この頃の私の生活パターンは午後9時に就寝。4歳年上の姉とは、常に入れ違いの生活を送っていて、私は他の兄弟に頼る、という発想が無かった。そして、事態はゆるゆると変化しだす。母の新盆ということで、しきたりを大事にする父は、いろいろ準備にとりかかり、少し精気をとりもどしたようだった。そして、む...
自分でも意外でした。ひろみちゃんに、真っ先に足のケガに気づいてもらえて、すごくうれしかったのだと悟りました。私に無関心な人ばかりの中にいて、孤独だったと気づかされたのでした。それから少し落ち着いたので、二階にある子供部屋に机を出して、宿題をひろげて一緒にやろうという段になって。『それはそうと、いったいどないしとったんや?しんじゅは?』と、ひろみちゃんに聞かれて、この夏休みのできごとを報告すると、宿...
次の日、お昼ご飯にひやむぎを食べて、宿題一式を持って、ひろみちゃんの家に向かった。天気のよい真夏の日の事で、どうやらひろみちゃんは、二階の自分の部屋の窓から、私が来るのをながめて待っていたらしくて、私が自転車を家のそばにとめていると、いそいそと出迎えに来てくれていました。ひろみちゃんの家は住宅街の端っこ。周りはほとんど田んぼで、ちょうとどんづまりみたいな位置に建っていたので、自転車を外にとめても交...
台所の水道の蛇口に、直に口をつけて、むさぼるように水を飲みました。そのまま奥にある和室になだれ込むようにして、畳の上に体を投げ出します。無理しすぎていたらしい。火照った体をかかえたまま、そのまま眠りの世界に滑り込んでいった。目が覚めると、涼しい室内にいた。いつのまにか空調をきかせてくれていて、体にタオルケットまでかけてある。ほのかに明るい窓の外を見て、まだ夕方だと悟りました。そこは普段父が寝ている...
翌日、なけなしのお小遣い100円をポケットにしのばせて、麦茶入りの水筒と、小学校指定の黄色い帽子をかぶって、自転車にまたがり、近藤さんの家を目指した。100円は、熱射病対策だ。糖分補給が必要な際、自動販売機でジュースを買うためのものだ。首尾よく自転車を小学校の校門脇に置いて、歩き始めた。ほどなくして、近藤さんの自宅にたどりつき、ピンポンとチャイムを押して、あいさつをすると、近藤さんのお母さんに邪険...
次の日目が覚めると、足の傷はすっかりふさがっていました。ラジオ体操に行って、簡単なご飯を食べて、宿題をしながら、お父さんの帰りを待つ。トラックに乗って帰ってきたお父さんと一緒に、荷物の積み下ろしをして、商品棚に陳列をする。適当なお昼ご飯を食べると、お父さんは横になるから…と、言って消えていく。私は有線がかかった涼しい店内に、ちんまりと座って日中を過ごしていた。いい天気だった。かすかな違和感を覚えて...
自宅そばに来ると、近所の人が自転車で通り過ぎていったが、涙を流している私を見ても、誰も何も声をかけてこなかった。近藤さんのおじいさんの箝口令がきいているのか、なんなのかもはや判然としなかった。死んでしまいたいと思いながら、泣きながら一時間以上かけて、自宅へと戻った。気持ち悪くて死にそうでしたが、家には誰もいませんでした。苦しみながら、とにかく、水分をとって、少し落ち着いたところで、父親が『戻ったか...
近藤さんの自宅は、小学校をはさんで、私の家とは真逆の方向にあった。私の家から小学校まで徒歩で40分ほど。体が小さい私には、少々きつい距離だったが、毎日のことである程度は慣れていた。問題は私が極端な方向音痴だという事だ。近藤さんの自宅には二回出向いたが、きちんと道順を覚えていられなかった。しかし私には一つ特技があって、一度見聞きしたことはほぼそのまま記憶する、というものだった。道順は覚えられないが、...
ちんまりと私はいつも涼しい店内にいて、読書をしたり、レジカウンターを机代わりにして宿題をしていた。毎日、毎日、ほとんど来客は無い。来ると言ったら、あの迷惑極まりない四季子ちゃんぐらいだった。どうにもこうにも落ち込んでいると、パッとカナおばさんが現れて、私を遊びに連れ出してくれた。それがまるで夢見心地のようで、私はこんなに大事にされていいものだろうか…と、遠慮がちにその親切を受け取っていた感じだった...
とにかく商品を片付けて、父に経緯を話しに行ったが。寝ぼけているらしくて、『子供のいたずらかぁ。かわいらしくてえぇやないか?』と、まったく取り合わなかった。私は憤慨したのだが、それもうまく伝わらず、父は『子供のいたずらやから、ほっとけばええやろ。時々買い物にくるんやし、大事にしとけ』と、トンチンカンなことを言うのみであった。私は大量にあった買い物かごの大半を片付けて、倉庫の奥にしまった。もう以前のよ...
ピンポンピンポン♪ドアを押し広げて、小柄な四季子ちゃんが入ってこようとしているところだった。私は黄色の買い物かごを振りかぶって、ドアに向かって投げつけた。ガシャーン…。ちなみにこの出入り口のドアだけ、強化ガラスでできているし、金属製のフレームも丈夫だ。今は電動ではなくなって、ひたすら重いだけのドアだったが、彼女を威嚇するにはちょうどよかった。四季子ちゃんに直接物をぶつけるつもりはない。ケガを負わせて...
涼しい店内はいろんな匂いが充満していた。人によっては不愉快だろうが、子供のころからその環境で育った私は平気だった。基本は果物や野菜を販売していたが、卵や豆腐、鮮魚や、お惣菜も並んでいる。お菓子やジュース、雑誌や贈答用の箱詰めのお菓子から、冷凍食品やインスタント食品、缶詰や文房具や洗剤まで取り揃えている。広さ50㎡ほどの店内の床は少し柔らかい素材でしきつめられていた。それはえんじ色の地にこげ茶色のエ...
ピンポンピンポン♪チャイムが鳴り、私はドアの前に塩のタッパーを持って仁王立ちになる。しかし四季子ちゃんは、小さながま口をかかげて、免罪符よろしく得意げにお店に入ってきた。今度はアイスクリームのケースをのぞき込んで、しばらく悩んだ結果30円の「ホームラン」というバーアイスを選んで食べ始めた。またごみを投げ捨てられてはかなわないと思った私は、レジ奥にあったごみ箱を差し出して、そこに包み紙を捨てさせるよ...
静かな店内には有線が流れていた。リスナーのリクエストによって選曲されているから、似たような曲がよくかかっているものでした。そして真夏だというのに、相変わらず『津軽海峡冬景色』が店内のBGMだったりする。石川さゆりの美声が店内に響き渡っていた。♪上野発の夜行列車おりた時から~青森駅…ピンポンピンポン♪四「こんにちは~♪ちょっと待って、今日はお客としてきたから!(笑)」私が塩のタッパーを片手に、入り口ドアの...
早朝から岐阜県へ青果市場へと、仕入れに行っている父にとっては、昼休憩は絶対に必要なものでした。それでどうしても午後からお店番をせざるを得なかったのです。そこに四季子ちゃんが毎日押しかけてくることになります。翌日も重たい扉を開けようと、四苦八苦しているスキに、私は正面に回り込んで、塩を振りかけますピンポンピンポン♪私「悪霊退散!いねっ!」ばしゃー!四「ぶえ、もぉ、やだぁ、目に入ったぁ。帰る。」私「二...
私「は?」父「勉強さっぱりやろ。あの子、顔をほめてやったら、鼻の穴ふくらませて、本気にしとったぞ?」私「あぁ…。お父さんも適当なこと言うなよ、真に受けるだろうが…。」父「いや、子供らしくて、かわいいはかわいいんやけどな?なんやら、つるんとして、まるまるしていて、にこにこっとして、子豚や子狸みたいやないか?お腹がぽーんとせり出して、田舎の子供って感じで、めんこいけどな?」私「はぁ…。」父「それに、まっ...
それから、ほぼ毎日四季子ちゃんは、ひと気のないお店に顔を出してきました。ある日も、ピンポンピンポン鳴らして、入ってきたので、追い払おうとしたら、折よく私の父親がお店の中にいて、四季子ちゃんと出くわす感じになった。私「お父さん!この子、毎日買い物もせずに、家に来るからもう来ないように言って!」父「おぅおぅ、まっつぁんところの、娘か(笑)なんか、しんじゅが機嫌悪いけど、気にせんといてな(笑)」四「おじ...
私としても、体から血の気が引く思いがしました。自分の家族が自分のために謝ったことなども、理解していなかったのも腹が立ちましたが。やはり、一番腹立たしかったのは、祖母が、体の弱い私の母が生まれた時点で始末しない、つまり殺処分しないことを、バカにしてきたのに、非常に怒れてしまったのでした。いくら怒鳴っても、四季子ちゃんには、さっぱり響かなかったらしくて、翌日以降も平気でお店に現れたのだった。ピンポンピ...
私は近藤さんとお話ができなくて、しかも彼女の母親に邪険にされてしまって、かなり打ちのめされてしまいました。いくら私が違うと言ったところで、近藤さんのお母さんは迷惑そうに扉を閉めてしまうだけ。知り合いでない女の子は家に上げられないと、無下に扱われてしまい、またまたショックを受けてしまいました。トボトボと帰宅して、家に帰るなり、水を飲んで、畳の上になだれ込みました。ランドセルをしょって、真夏の日差しを...
『ご飯の代わりにお菓子を食べればいいじゃない』発言は、どっかの貴族が言ったセリフと同じだなぁと微かに思ったが。確かに、ポテトチップスを家族で食べれば、在庫として抱えることは無かったのだったが、それがお金に換えれる代物だと思うと、どうしてもそれはできなかった。さてさて、待ちに待った出校日だったが、やはり近藤さんは体調不良で欠席していた。今度ばかりは彼女の課題を届けに行く児童についていって、彼女の家を...
夏休みに入ると、お店へのお客がとだえ、来てくれるのは私をいじめていた上田四季子ちゃんだけだった。それでも私は家の経済状態を心配して、お父さんに言って、私から彼女の家に遊びに行ったことがあった。四季子ちゃんの家に行くと、おばさんは破顔して、私に麦茶を飲むように言って、四季子ちゃんがお茶を出してくれた。それから、私は彼女に二人で話があると言って、犬のコロの散歩がてら、道路を歩いていた。四「で、話って?...
小島ちーちゃんから聞いた、霊感少女「河合千晴」の守護霊からの伝言に、少々モヤモヤしつつも、穏やかに日々が過ぎていっていた。しかし、日を追うごとに、焦りも出てきた。今度の出校日には必ず、近藤さんの自宅を知っている子についていって、彼女と話をしなければ…と、考えていた。次の出校日は7月末にある。小学生だった、私には、お店の損失がいかほどのことなのか、漠然としていてよく分かっていなかった。父にとっては相...
ピンポンピンポン…♪お店の一つしかない出入口に、赤外線センサーが設置されていた。いつも、店番をしていると、体力的に厳しいということで、数年前からそれが設置されていて。客足が途絶える時間帯には、お店には常駐せず、赤外線センサーの物音を聞いて、母屋からくり出してくるスタイルだった。私がちんまりと、レジの中に座っていたら、自動ドアがゆっくりとひらいで、ぼやき声が聞こえてきた。カナ「よっと!!なんじゃこりゃ...
最初の一週間、それはとても平和だった。小島ちーちゃんの心からの励ましをもらって、一人帰路についた私は、帰宅すると父親が冷や麦をゆでておいてくれたので、それで簡単な昼食をとったのだった。そして夏休みの宿題をほっぽり出して、お店に行く。空調のきいた涼しい店内には有線がかけられており、季節外れの『津軽海峡冬景色』が物憂げな雰囲気で流れていたのだった。私の午後の日課はこうして、お店のレジの中に座って、店番...
自分の内面に意識が向かいかけていたところを、ちーちゃんの咳払いで、現実にひきもどされた感じでした。私「え、あ、はい。なに?」小島「それで、今までのお話は、前段階なのです…。本題は、これから、のお話になります。」私「えぇ、あぁ、はい。」小島「動揺おさまらぬところ、申し訳ないのですが、千晴からの伝言をお伝えしますね。」私「うん。」小島「ワタクシ、しんじゅちゃんと、千晴を引き合わせると、お約束いたしまし...
みんなで黄色の帽子をかぶって、校門の外に出た。夏の日差しがまっすぐに子供たちの皮膚を焼いてくる。西麻町に住む、男子たちとはここでお別れ。私たち女子チームは、途中まで同じ通学路を使っていたので、てくてく歩きながらおしゃべりを続けていた。私たちの住む、麻町は東西にひょろ長い地形をしている。小学校、中学校が一つだけの、人口2万人ほどの、小さな田舎町だった。小学校は町の西寄りに位置し、中学校はだいたい東西...
小島「聞きましたわよ~、しんじゅちゃん♪上田さんに、いろいろ言われたようですわね。そして、なぜかその翌々日から、おしゃべりする仲になっている。しんじゅさん、何をされまたの?興味津々ですわ~?」小島ちーちゃんが、小学生らしからぬ、丁寧な言葉づかいで声をかけてきた。ちなみに、彼女はたいへんな美声の持ち主で、その声を聞いていると、アナウンサーにでもインタビューをされている気分になってくる。私「あぁ…。あの...
翌日、そわそわして学校に行くと、今日も近藤さんは休みだという話だった。私は彼女の自宅を知らなくて、このまま夏休みに突入してしまったら、どうしようかと不安だった。クラス内では、四季子ちゃんは、完全に浮いた存在だったが、今までもそうだったと言える。外交的な四季子ちゃんは、だれかれとなく、大声で朝の挨拶を交わす。誰もが視線を合わせずに、おはよう…と、小さな声で無表情でこたえていた。彼らは注意深く四季子ち...
教室内に戻った私も、きっと顔面蒼白になっていたと思います。突然、大声をあげて、教室を飛び出していった近藤さんを、クラスメイト達が不審げに見守っていて。そんな中、どうどうとした姿勢で、四季子ちゃんがのしのしと教室内に入ると、みな、パッと視線をそらせました。四「なんかぁ、あの近藤って奴、たいしたことないわね。(笑)あんなに、しんじゅちゃんの事を悪く言ってたくせに、ちょっと旗色が悪くなると、飛び出していく...
私「~と、言うわけで、誤解なの、近藤さん。私は四季子ちゃんをいじめていないの。だから、おじいさんに言って!ウチの店で町内会の人が買い物しないのを、やめさせてください!お願い!」小学校6年生のクラス内、子供たちのざわざわした話声の中、私たち三人の女子は固まっていた。正確には、私たち二人。四季子ちゃんと私は隣同士に並んでいて、机を挟む格好でその正面に、保健委員の近藤さんが目を見開き、真っ青な顔をして、...
玄関を出て、階段を降りると、四季子ちゃんが、車庫の奥の方に動くのが見えました。自分の自転車を前にして、私に背を向けて、手のひらでまぶたをこすっていました。涙がぽとりと落ちていくのが見えて、私に泣き顔を見られたくないんだろうなぁと思って、私は自分の自転車の方へと歩いて行って、見ないふりをしました。ガチャンと音を立てて、自転車を引き出すと、四季子ちゃんは顔を背けて、自分の自転車を引っ張り出そうとしてい...
四季子ちゃんは、顔を真っ赤にしてうつむいていましたから、本心では納得いかないようでしたが、私にはそれでも、彼女がなんだか、かわいらしく感じていました。そして、逃げ出したおじさんを見て、仁姫お姉さんはチッと、軽く舌打ちをしたのですが、それもまたいいか…、と思い直したようです。おじさんの言い残した一言に、おばさんは、ハッとさせられたようで、慌てて私に言いました。四母「しんじゅちゃん、もしよかったら、や...
私は仁姫お姉さんの大声に驚いてしまいました。家族全員で謝罪する予定だったのが、おじさんは、すっぽかしてしまっていましたし。遅刻して現れたことを悪びれる様子もなく。四季子ちゃん、同様、私を見下しながら、口元をくちゃくちゃさせながら、私に自分は悪くないと言わせようとしている様子に、私はまた血の気が引く思いをしていたのですが。仁姫お姉さんの、怒りの声に、我に返りました。すると、四季子ちゃんのお母さんは、...
戸が開いたことで、工場の機械の音がもれ聞こえてきて、とてもうるさく感じました。四季子ちゃんのお父さんは、ちょっと驚いた様子で、こちらをながめてきます。口元からはみ出した、サキイカをくっちゃ、くっちゃとかみながら、屈託なく声をかけてきました。四父「うぉ!なんや、みんなガンクビそろえて…。」四母「アンタ、今日は家にいるように、言っておったやろ…。今までどこに行ってたんや…。」泣きそうな声でおばさんは言い...
私「あの、仁姫お姉さん、乱暴は…。」上田家の三姉妹の長女、高校生の仁姫お姉さんは、四季子ちゃんの前に立ちはだかって、振り返りざまに私をにらみつけました。仁「ちょっと黙ってて!」私「あ…。」四母「四季子ぉ~、四季子はぁ~、なんでそうなんやぁ~。」美「ぃこはぁ~、ぁんでぇ、ぉおおうなんあぁ~。」四季子ちゃんのお母さんと、すぐ上のお姉さんは畳に突っ伏したままです。四「このブス!お前のせいでアタシが殴られた...
四母「すみませんっ!ウチの娘がしでかしたこと、ホンマにすみませんでしたっ!」私があわてて、おばさんに顔をあげるように言うと、おばさんの瞳は、涙であふれんばかりになっていました。私「あの、あの、おばさん、顔をあげてくだい…。」四季子ちゃんのお母さんは、私の言葉を聞くか、聞かないかの状態で、再び畳に額をこすりつけました。四母「そんなことはできません。ホンマに、ホンマに失礼をっ!なんて、おわびしたらいい...
私が自宅に帰ると、廊下にランドセルを放り込みます。それから父親をさがして、これから上田四季子ちゃんの家に行ってくる、と伝えました。だからお店番ができないよ、という意味での連絡です。母親の死後、お店を一人で切り盛りしようと張り切っていた父親は、いきなり町内会の人たちから無視をされるようになり。そしてあてにしていた子供会の夏祭り用のお菓子が理由もわからず、キャンセルが相次ぎ、何百人分もの在庫を抱えて、...
顔を上げた少年は顔を真っ赤にしていました。自分のしたことが恥ずかしかったのと、上田四季子ちゃんのふるまいに腹を立てていたからでしょう。男子「なぁ、親に言ったら?普通親が黙っていないって。アイツやりすぎだって!」私「あぁ…。」男子「いや、お前に母ちゃんいないのは、分かったけどさ。父ちゃん、いるだろ?親父に相談してみなよ!」私「あぁ…。お父さんに、病院に連れて行って欲しいって頼んだんだけれど…。今までお...
私は驚いてしまいました。目の前の少年は腰を直角に曲げて、私に頭を下げています。私はオロオロしながら、彼に頭をあげるように言いました。私「え、ちょっと、どうしたの?頭をあげてよ。」男子「いいえ、すいません。謝って済む問題じゃないけど、謝らせてくださいっ!俺は一方的にお前の事を悪者だと信じて、いじめていました!それもクラスみんなで無視を決めつけていました。最低です!ごめんなさい!」私は彼の肩を叩いて、...
男子「なぁ、しんじゅ、ちょっといいか…?」私がため息をついていたら、クラスメイトの一人の男子が遠慮がちに声をかけてきました。四季子ちゃんのごたごたが続いている中、私に声をかけてくる児童はほとんどいなかったので、ちょっと驚きました。私「え?あ、うん。なに?」男子「なぁ、今、上田と深刻そうに話していたけれど…。アイツ、謝ったのか?しんじゅに…。」男子は四季子ちゃんが出て行った教室の扉をながめながら、心配...
私がランドセルをしまうと、また自分の席に戻ってくるのを待っていた四季子ちゃんは、少し考えたようだった。また私の席に張り付いて、私をにらみつけてくる。四「アタシがお願いをしているのに、どうしていう事を聞いてくれないの?」私「無礼にもほどがあるわよ。根本的に間違っている。お願いというのなら、人に頼むってことでしょう?それなら、私に向かって来てください、と、言うべきじゃないの?」四「はぁ?しんじゅちゃん...
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バアン!河合「でだ!お前、説明しろよっ!?」放課後になり、私の机の上に勢いよく両手をついて、霊感少女こと、河合千晴が私をにらみつけました。私「ぱーどん?」私は分厚いレンズをかませた銀縁眼鏡に、長い髪の毛をみつあみにして、両肩に垂らした状態で首をかしげます。河合「ぱーどんじゃねぇ。昨日の6時限目の始まりのヤツ!」私「あぁ…。」村森「なんだなんだ?またオカルト話か?(笑)まぜろっ!?」小柄で扇形のつやや...
河合「うわっ!なんだ、これ!?金色っ!?」雪のように真っ白な肌に真っ赤なくちびるの眼鏡の少女が叫び声をあげ、廊下に後ずさりをしました。教室内の視線が彼女に注がれます。私「おや?当番で遅れてきた様子ですわね。」村森「えぇ。無事授業前に到着したようで、なによりです。」みずほ「あらあら、ずいぶんと焦っている様子ですわね?」河合「ちょ!何!コレ、いったい…!なんでこんなに神霊や精霊がごちゃ混ぜにいるんだっ...
私たちはいつもの教室で、冬服のセーラー服姿で日向ぼっこをしながら窓の外を見下ろしていました。そこは愛知県立の商業高校の一角にある電算棟の2階。学校の敷地内の校舎の中で一番南側に位置しており、敷地の外には公営のテニス場があったのでした。そこでは太陽の日差しを浴びながら、大人たちがラケットを振り回し、明るい黄色のボールが飛び交っていたのでした。村森「まぁ…本日はとてもうららかな陽気で、よろしいですわね...
私は私の口から飛び出した言葉に、少し驚きつつも、これが私の本当の望みなんだろうと感じていました。目がチカチカするような、感動を味わっていたのでした。四季子ちゃんは私の言葉を受けて、深くうなづいていました。四季子「なるほど、立派だわ。」私「四季子ちゃん…分かってくれるの?」四季子「えぇ、名演説だったわ。これが世間で言う、負け犬の遠吠え、という奴ね?」私「え?」四季子「だって、あまりにも辛気臭いんです...
四季子ちゃんはきょとんとした顔をしていました。四季子「何よ。」私「…私ね、ここ数年、ものすごく変化が多かった。いろいろあって…本当にいろいろあって…。正気が保てないんじゃないかって事もたくさんあったんだ。」四季子「へぇ。」私「私ね、うんと考えた。それで思ったんだ。私個人がうんと頭をひねって考えたところで、世の中は動き続けていく。仮に私が死んだとしても、毎日、毎朝朝日が昇って、日常が続いていく。私がこ...
私「…今日、四季子ちゃんとお話できてよかったよ…。あまりにとりとめのない話だったから、誰にも話したことなかったんだ。」四季子「ふぅん?別に夢の話ぐらいしてもいいんじゃない?」私「ん?あぁ、そうか、四季子ちゃんは私が、夢物語を語っていると思っているんだね…。なんとなくだけど、あれは実際にあった出来事。私は生まれ変わって、今、日本に住んでいるって感じているんだ。」四季子「ふぅん?まぁ、前世が王子様だかな...
四季子「テキトーねぇ。そういえば、さっき言ってた『ぐどうしゃ』って何?」私「え?あぁ、求道者っていうのは、道を求める者っていう言葉でね。」四季子「意味が分かんないんだけど?」私「あぁ、つまりお坊さんになって、悟りを開きたいって、そういう人の事を言うんだよ。」四季子「あぁ、なるほど。煩悩をとるとか、そーゆーの?」私「あぁ、そう、そーゆーの。」四季子ちゃんはちょっと腕をあげて、自分の頭の後ろで組みまし...
四季子「何?今の。」私「え?今、なんて言った?」四季子「それはこっちのセリフよ。」私「あぁ、そうだね。アタシが言ったんだった。なんでディーバダッタなんて言ったんだろう?」四季子「それをアタシに言われても?」私「あ、そうだね。意味不明だね。まるでいつもと逆転したみたいな会話だね。」四季子「そうね。意味不明ね。で、なんなの、そのだいだらぼっちって。」私「え?アタシ、だいだらぼっちなんて言ったっけ?」四...
四季子ちゃんは少し首をかしげて、私を見つめました。四季子「うっかり信じそうになっちゃったわ。」私「え?どういう事?」四季子「だから、今までのお話も、作り話なんでしょ?」私「作り話だなんて、私、一言も言ってないわよ?」四季子「だって、さっき、聞き流してくれてもいいって言ったじゃない。」私「それは四季子ちゃんの未来の話でしょ?もう話題がちがっているから、今のも聞き流せなんて言ってないんだけど。」四季子...
四季子「なに、その親戚の坊主に、人生相談でもしてもらったの?」私「いや、そういうんじゃなくて…。正直に言うと、突っかかって行ったんだ。自分が望んでも手に入れられない身分を、あっさり捨ててしまった男性に対する嫉妬かな…。まだ未熟だった私はそういう葛藤を彼にぶつけてしまった。」四季子「なによ、しょせん次男坊なんだから、さっさとあきらめればいいのに。八つ当たりされた坊主もいい迷惑よね?」私「いや、長男がど...
私は過去の記憶を思い出しながらお話を続けていました。私「そこは王族しか立ち入ることができない部屋だった。瑠璃の間と呼ばれていてね。そこに親戚の元王子が立ち寄ったんだ。」四季子「ん?元王子?」私「そう、その男性はだいぶ年上のいとこだったんだけど、その国の王位継承権一位の王子だったんだ。」四季子「第一王子がなにしてんのよ?あ、元か。」私「自分はその男性に複雑な気持ちを抱いていたんだ。自分はどれだけ勉学...
四季子「ふぅ~ん、身近にコーチがいるのか…。まぁ、塾に通わせるお金がかからないなら、いいわね。」私「そうだね…。」四季子「でも、やっぱり芸能人がいい!アタシはスポットライトを浴びて、活躍したいの!」私「そう…なれるといいね。」四季子ちゃんは立ち上がって、片足で立って、両手を広げてくるりと回転しました。彼女はすごく背筋が伸びていて、姿勢のよい子でした。四季子「アタシ、麻中に入ったら、新体操部に入るの。...
四季子「えぇ~?子供は二人なの?男、女、どっち?(笑)」私「最初は男の子、次に女の子だね。」四季子「あら?いいわね(笑)」私「そうだね。」四季子「それじゃ、将来アタシたちに子供が生まれたら、一緒に遊ばせましょうよ?子供たちも友達同士になるの。」私「…いいね。(四季子ちゃんが子供を産む分、私は子供を持てなくなるけれど…)素敵だね。(笑)」四季子「そうね、しんじゅちゃんも子供、二人ぐらいいるといいわね?女の子...
私も甘いコーヒー牛乳を飲んで、落ち着いた気分になったのでした。私「ねぇ、四季子ちゃん。アタシね、夏休みにひろみちゃんの家に行ったんだ。」四季子「へぇ。」私「そこでひろみちゃんに色々話を聞いてもらって…。それで、その時ショックで途中で意識を失ってしまったんだけれど。そこで四季子ちゃんの未来を視たんだ。」四季子「え?どんな風なの?」私「姫虎の先生と一緒だよ。爆破テロを起こす四季子ちゃんと、そうでない場...
四季子ちゃんは屈託なく笑っていました。今の私の説明ではこれが精いっぱいだと感じて、私は地面に座り込んでいた彼女を立たせました。私「大丈夫?ケガはしていない?」四季子「え?大丈夫だよ?なんで?」私「いや、砂利の中にガラスの破片とか入ってたから、念のためね。」四季子「あぁ、そうだっけ?気づかなかった。」私は四季子ちゃんのズボンをパンパンと手で払って、砂利をはたき落としました。四季子「ふぅ。ちょっとだい...
私「四季子ちゃんは容姿を悪く言われて、相手に嫌がらせをしている未来が視える。」四季子「そんなの、当たり前じゃない。アタシを悪く言うんだから。」私「そういうところだよ。そういう歯止めがきかないところが、一番恐ろしいんだよ。」四季子「だって…。」私「いいか?今後、どんなに容姿を悪く言われても、絶対にやり返さない。それを誓って欲しい。」四季子「う~ん、でも…。できるかなぁ?」私「できるかなぁじゃなくて、や...
私は四季子ちゃんを見続けていました。(やはり犯罪に関してはあまり罪悪感は無いようだな…。もうすぐ13歳になるというのに、精神年齢はまだ6才ぐらいか…。アンバランスだな…。知識や経験は13年あって、口も達者だから、一見何も問題が無いように見えるけれど。これからも行く先々でトラブルを起こし続けていくのだろうな…。)私はもう一つの四季子ちゃんの人生を視ていました。スーパーの面接を受けに行って、断られたことに...
(しかし、油断してはダメだ…。この子には良心というものが無い…。今の言葉が真意かどうか確かめなければ…。)私「四季子ちゃん、今の言葉は本当?正直に話して。」四季子「うん。」私「自分の為ではなくて、美輝お姉さんの為に、お母さんが必要だと言うのね?」四季子「うん…。」私「もうこれからは美輝お姉さんをいじめない?」四季子「それは…できる限りそうする…。」四季子ちゃんは言葉をつまらせながら、そう言いました。私「...
私「………。」地面に座り込んで、深々と頭を下げる四季子ちゃんを、そばで見下ろしていました。奇しくも、私が夏休みに町内会の会長さんへの誤解を解くために、手伝ってほしいと私がお願いした時に、四季子ちゃんが私に土下座をしろと言っていた場所でした。そこは砂と小さなガラスの破片が散らばった場所で、そこに素肌をさらして座れと、指示するという事は、私の足の皮膚にガラス片がつきささって、ケガをさせるというのと同義な...
私は四季子ちゃんを見つめていました。彼女の体をとりまくオーラは漆黒。それがまだらに揺らいで見えました。そして、彼女の未来の姿に意識をフォーカスします。(…まだだ。まだ殺人鬼の未来へのルートが消えていない。ここまで言っても、自分のやったことの重みが分かっていない。やはり警察に突き出さなければならないのか…。しかし、そうすると四季子ちゃんは将来、大量殺人鬼になってしまう…。どうすれば、彼女は反省するんだ…...
私「おはよう!」岡田「おはようさん(笑)」小島さん「おはようございます(笑)」クラスメイトたちとあいさつを交わしながら教室に入りました。自分の席について、ランドセルから教科書を取り出し、机にしまいます。それから背面に向かって進み、ランドセルの棚に自分の物を置きます。みんなざわざわした雰囲気の中、始業時間を待っていたのでした。この日は久しぶりに現れた、担任の先生がいて。少し挨拶をした後、いつも通りに出席...
弟は喜んで家を出ていきました。私は親友のひろみちゃんと遊びたくなって、彼女の家に電話をかけましたが、つながりません。家族ででかけているのかもしれません。私はなんとなく時間を持て余して、彼女の家に自転車で行ってみましたが、誰もいませんでした。しょんぼりして自宅に戻り、お父さんの部屋でテレビを見てみました。日曜日のお昼過ぎに放映されている番組は、子供心をくすぐるものが無くて、退屈でした。洋画の再放送を...
兄はため息をつくと、片手におまんじゅう、もう片手にマグカップを持ちました。兄「悪い、相談は後で聞く。俺も気分を害した。自室でお菓子をいただく。」私「あぁ、うん。いいよ、もう急な用事じゃなくなったんで。」兄「そうか、スマンな…。しかし、姉ちゃんも勝手だな。たった一日で店番のローテーションを破ってしまった。父ちゃんは元々あぁいう性格だから想定内だけど、まったく…。俺は逆にあの身勝手さがうらやましいよ。」...
私はご飯の上に、残った目玉焼きをのっけて、かっこみました。それからポッドの前に行き、お茶の準備をします。私「ふぅん?あ、お茶飲む?」兄「あぁ、いただく。」弟「僕ももらう。」父「ワシはいい。」私が急須にお茶っぱを入れて、お湯を注いでいると、兄が言葉を続けます。兄「それで?何があったんだ、法事で。」父「なんでも、しんじゅや玲治が、一色に電話を何度もかけていると聞かされてな?それでなんで家に父親がおらん...
その日の夜に姉に蹴っ飛ばされて、押し入れから出てきました。布団を敷くのに、邪魔だと怒られたのです。寝ぼけ眼で、私は押し入れから布団を引きずり出して、畳の上に敷いて眠りました。翌朝。良く晴れた日でした。かなり朝寝坊をしていたみたいで、1階に降りると、誰もいません。とりあえず台所に向かって、一人で朝ご飯を食べていると、弟が通りかかりました。弟「あ、お姉ちゃん、おはよう。って、おそようか(笑)」私「あぁ、...
私は今までの人生で、一番のショックを受けた気がしました。フラフラとめまいを抱えたまま、なんとか自宅へともどります。自転車を倉庫にとめて、お店を通り抜けて居住スペースへと向かいました。私がお店に戻ったのを感じて、弟が近づいてきましたが、私には何も余裕がありませんでした。弟「お姉ちゃん、お帰り。」私「…ただいま…。」弟の方を見ることもなく、そのまま廊下へと上がります。そして階段を上りかけて、そこで意識が...
私は驚きのあまり、声をだしてしまいました。四季子母「どうかした?」四季子「なんか、よくわかんないわね?」親子して顔を見合わせています。私「ど、どういう事?」私はガタガタとふるえてきました。頭が追い付いていません。四季子母「あ、そや。四季子、しんじゅちゃんに、お茶でも出してやりぃ?」四季子「あ、そうね。飲み物ぐらい用意しなきゃだわね?」四季子ちゃんは、すっくと立ちあがり、工場のある方の廊下へと出て台...
私は四季子ちゃんを見つめていいました。私「先週、ウチにきて、レジからお金を持ち出して、『御用だ!御用だ!』って言いながら、お金をぶつけてきたわよね?あれはどう説明するつもりなの?」四季子「は?なにソレ?(笑)なんの冗談?時代劇の見過ぎなの?しんじゅちゃん(笑)」四季子母「はは!こんな場面でそんな冗談が言えるとは!しんじゅちゃんもおもろい子やな(笑)」四季子(やぁだぁ~、なんか変な事言ってるぅ~?(笑))四...
私は心の動揺を隠しきれずに、目を見開いてしまっていたようでした。私「!」四季子母(…ひさしぶりに来たのに、ぎょうぎょうしいなぁ、この子は。最近、全然顔出さへんから、元気にしとったのか、気になったのに。まぁ、大丈夫そうやな?)四季子(なんか、妙な事しちゃって。オモシロ!)四季子母「どないした?しんじゅちゃん。鳩が豆鉄砲でも喰らったか?(笑)」四季子「やぁだぁ~、おかぁ、オモシロ!(笑)」四季子母(えらい...
ガチャ。自転車を四季子ちゃんの家の倉庫に駐輪します。ワンワンワンワン!上田家の飼い犬のコロが私を見つけて、大はしゃぎしております。コロは私が自分に優しく構ってくれる人物だと認識しているようです。私はそっとコロの頭をなでて、静かにするようにと口元に人差し指をさしました。最初はそれでもはしゃいでいたコロでしたが、私のジェスチャーを見て、おとなしくした方が私が喜ぶと考えたようで。地べたに寝転がって、こち...
その日は土曜日でした。姉も兄もいない朝食を食べて、弟と一緒に学校へと向かいます。クラスに入ると、子供たちがそれぞれ話をしていて、いつもの朝の風景です。授業開始時間になると、教頭先生が現れて、今日も担任の先生はお休みだと告げられます。赤木先生は自宅で仕事はしているようで、宿題のチェックや、テストの採点はしていたようで、先生の赤ペン入りの用紙が返されてきます。4時限の授業を終えて、少しだけクラスメイト...
四季子ちゃんは、特に文句は言いませんでした。その後、飯時になり、私が準備をして。結局、誰ももどってこなかったので、お店を閉じて弟と二人で夕飯にしたのでした。それから洗濯、掃除、お風呂と家事をこなしていくと、眠気がおそってきて。結局、部屋は別々ですが、弟と同じように夜9時には眠ってしまったのでした。部屋で眠っていたところ、かすかに、兄が部屋の戸を少しあけて、「遅くなってすまない…。」と謝っておりまし...
同級生たちとそんなやり取りをして帰宅すると、予想に反して、弟が店番をしていました。私「あれ?ただいま…。なんで薫が店番をしているの?」弟「あ、お姉ちゃん、おかえり…。お兄ちゃんは、いったん帰って来たけど、また用事があるからって、中学校に戻って行ったよ。どうしてもやらなきゃならない用事なんだって…。」私「そうか…。弱ったな、お兄ちゃんに相談したかったんだけど…。そうだ、お姉ちゃんは?」弟「お兄ちゃんから...
一日自習やら、教頭先生の授業を受けて、この日も一日が終わりました。放課後になると、またいつものメンバーが集まってきます。当然、四季子ちゃんは、さっさとランドセルを背負って、教室を出て行ったあとで、です。岡田「なぁ、おまはん、アイツに家に誘われとったやろ?行くんか?」私「あぁ…。今まで、伸ばし伸ばしにしていたけれど、やっぱりきちんと決着をつけないといけないと思ったんだ。」小島さん「心配ですわ~?どな...
ガラッ。私「おはようございま~す。」教室内に入ると、私の姿を確認して、クラス内がホッと安堵した空気に包まれる。誰が入ってくるのかが重要なのだ。白い扉の向こう側から入ってくる人物がもし危険人物なら…。毎朝、緊張感をもって、同級生を迎え入れる。それがここ半年のこのクラスの通例だった。四「おはようございます!」誰に言うとでもなく、四季子ちゃんは大きな声であいさつをする。そして誰もが彼女と視線を合わせない...
それから台所の片付けと、交代でお風呂に入りました。弟はまだ宿題が終わっていないとかで、自分の部屋で勉強をして。それからすぐにお風呂に入り。私と姉で部屋の片付けやなんやらしつつ、交代でお風呂に入り。一緒に電気を消して布団の中で休みました。真っ暗な室内で、目を閉じていると、そのうちウトウトしてきました。(…よかった…これできっと、よくなる気がする…。)そんな風に思っていると。そっと誰かが頭をなでてくれる...
私は目がチカチカしてきました。姉と兄のやりとりを聞いて、話についていくのがやっとなのでしたが。彼らの断固たる決意を感じて、私はとても驚きを感じたのでした。兄「とりあえず、しんじゅ一人に店番をさせるのは控えた方がよさそうだな…。」姉「そうね。アタシと玲治で交互に店番をしましょうか?」兄「あぁ。後手後手だが、致し方ない。一番は父ちゃんを捕まえて、大人に訴えかけさせるのが一番なんだが…。」弟「お父さん、ボ...
私「お姉ちゃん…。」私は姉の剣幕に驚いてしまいました。姉「しっかし、しんじゅもしんじゅよ!どうして、そんな大事なことを、アタシたちに教えなかったのよ!」兄「ちょっと、姉ちゃん、少し落ち着け…。」姉はお玉を持ったまま、振り返りました。姉「これが落ち着いていられるかっ!?玲治こそ、もっと怒ってもいい話でしょ!?」兄「まぁな。それに異論はない。しかし、それとこれとは事情が異なる。俺も内実、興奮したが、目の...
家族みんなで食卓を囲んだ。母が亡くなってから、あまりない光景でした。姉は料理上手でどれもとてもおいしかった。特に肉じゃがはほくほくで兄も弟も感激しながら食べていました。弟「おいしい~、大きいお姉ちゃんの料理はすごくおいしい…。」私「ほんとだよ、とってもおいしい。」兄「これは脱帽だよ。マジでうまい。」姉「ふ…それほどでも…(笑)」姉弟みんなでガツガツと食事をいただいておりました。姉は調味料の入れ方や、タ...
姉「そう?よくわかんないけど…。」私「うん、ものすっごくヒットしたと思う。」姉「そう?」私「ところで薫は?」姉「ちょっと友達の家に行ってくるって言ってたわ?何か確認したいことがあるとか、なんとか。」私「そう…。アタシもひろみちゃんの家に行きたいけどいいかな?」姉「いいわよ?夕飯までに戻ってきてね。」私「了解です!(笑)」私は自分の部屋にランドセルと制服を戻して、宿題を持ってひろみちゃんの家に遊びに行き...