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大福 りす
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2011/01/21

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  • ハラカルラ 第6回

    ハラカルラ第6回「ど、どうなってるんだよ・・・」呆気にとられるがここでじっとしているわけにはいかない。ドアを開けようとインナーハンドルを引くがドアが開けられない。シートを移動して反対も試してみるがこちらも開けられない。「くそっ!チャイルドロックかよ!」チャイルドロックがかかっていれば、内からは開けられず外からしか開けられない。「前から出るしかないのか」子供ならまだしも、自分の身体の大きさを考えるとかなり無理があるが、今はそれしか方法がない。フロントシートに右半身を滑り込ませた時、カチャリとリアのドアが開けられた。「え?」水無瀬がまるでカエルのような姿勢でドアを見る。「しっ」合わせの襟を着た見たこともない中年男が口の前で人差し指を立てている。「助ける。このまま奴らに見つからないように逃げる。早く」早くと言わ...ハラカルラ第6回

  • ハラカルラ 第5回

    ハラカルラ第5回スピーカーからスマホの着信音が聞こえてきた。「はいはーい」電話のようだ。「え?まだそんなとこかよ」『なに贅沢言ってんだ』「いや、もうそろそろかなと思ってジャケット着たとこだったし」『大体、なんで俺が男を迎えに行かなくちゃなんないんだよ』「うーん・・・主催者だから?」『言ってろ!ジャケット着たんなら駅に向かって来いよ』「いや、それがねー、そうはいかないんだわ」『なんだよー、それって』「だからー・・・ね、お願い。文句言わないから迎えに来てハート」『なんだよそのハートって』「絵文字」スマホの向こうから厭味ったらしい溜息が聞こえてきた。スピーカーから流れてくるのはあくまでも水無瀬の声だけだが、どこかに出かけるにあたり迎えを要請していたようである。「用心はしていたってことか」「学生の一人や二人、十人...ハラカルラ第5回

  • ハラカルラ 第4回

    ハラカルラ第4回上目遣いだった目を半分伏せ、小さく頷いてみせている。間違いなくあのことの話しらしい。「えと・・・分かり合っている者同士で暮らせばいいんじゃないかな。他の人には分かってもらえないし・・・」そりゃそうだ。たとえ雄哉であろうとそう簡単には信じてはくれないだろう。「俺についてくれば分からないことが分かる、そう言ったのはこういうこと。まぁ、まだまだ詳しく話せるけどな。でもそれはついて来てからのことだ」思わず反対隣を見た。おじさんがニヤリと笑っている。「前に言ったように衣食住にも困らん。バイト、きつかっただろ。大学ももう殆ど行かなくていいんだろ?あとは卒論くらいだろ」何を言っている、どうして知っている、どこまで何を知っているというのか。「ここまで来て中退ってのもなんだしな、卒論さえ提出すればいい話なん...ハラカルラ第4回

  • ハラカルラ 第3回

    ハラカルラ第3回部屋の電気は点けっぱなしで、その部屋と玄関との境は硝子戸。薄明りにはなるが、靴を履くには十分な明かりであったため玄関の電気は点けていなかった。慣れた位置に手を持っていき玄関の明かりのスイッチを入れ、半畳ほどの三和土に目をやる。すると見慣れない白色のUSBメモリースティックが落ちているではないか。拾い上げ目の前にかざすが、誰かのUSBスティックを預かった覚えもなく、やはり見慣れないUSBスティック。少なくとも自分のものではない。「雄哉のかなぁ?」この部屋に遊びに来るのは雄哉くらいなものである。「にしても、最近は来てないし」もしUSBスティックを失くしていたのなら、とっくに訊いてきただろう。内容を見て持ち主が分かるのなら見てみようかとも思うが、見られて困るものなら見られたと知っていい気はしない...ハラカルラ第3回

  • ハラカルラ 第2回

    ハラカルラ第2回クシュン。後ろから伸びてきた腕が水無瀬の腕に絡みついてきた。この感触は確かめなくても誰かはすぐに分かる。「よっ、水無ちゃん風邪?」腕を絡めてきた相手が水無瀬の顔の前にひょっこりと顔を突き出してくる。「って、ナニその顔!?」目の下にはクマが出来、目が潤み、鼻の頭が赤くなっているだろうことは想像できる。あれから寝られなかった。あれやこれやと解決できないことが頭の中を駆け巡り、気付けば小学生の声が聞こえてきた。小学生の登校時間となっていた。それからウトウトとしだして、いつしか天板に顔をあずけたまま寝たようだった。ほんの一、二時間だろうか、その間に見事に鼻風邪をひいたようだ。「寝不足の働き過ぎの、寝たから鼻風邪」「いや、それってどっか矛盾してね?」「してないからここに居る」「してるって。寝不足の寝...ハラカルラ第2回

  • ハラカルラ 第1回

    ハラカルラ第1回何かが聞こえた何の音だろう顔を巡らせるキラキラと光るモノが見えるあの音は何処から聞こえてきたのだろうかキラキラからだろうかそれともずっと続く広いどこかからだろうか悲しい声が聞こえるゆらゆらゆら「どうしたの?」遥か彼方を指さす。目の前に水平線が広がっている。もう陽が落ちている。見たこともない満天の星空。「綺麗なお星さまね」~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~「んじゃ、お疲れー」今日のコンビニバイトが終わった。店内はまだ温かい。羽織ったダウンジャケットのジッパーはまだ上げていない。こんな深夜の時間帯なのに数人の客が本の立ち読みをしている。もう二十分近くになるのではないだろうか。だがそんなことも珍しい話ではない。「ほーい、お疲れ。あ、水無瀬(みなせ)っ...ハラカルラ第1回

  • 辰刻の雫 ~蒼い月~ を書き終えて

    今回も全207回と、前章となる虚空の辰刻(こくうのとき)全216回に続く長編となりました。長くお読みいただき有難うございました。”虚空の辰刻を書き終えて”で『書き終えて暫くすると番外として続きを書きたいと思い、書き始めていたのですが、到底番外にはならず完全に続きという形になりました』こう書いていました通りとても書きたかったのですが、あまりにも長くなり過ぎ「もうお願い、早く結婚して」と懇願しながら書いていました。アップをするに読み返していると婚姻の儀から、特に最後の三回は駆け足になってしまっている感がとてもあったのですが、付け足すことも出来ずそのままのアップとなりました。次回からは先に書き出していたものが完全にストップしてしまい、次に書き出したものをアップしていきたいと思います。(今頑張って書いていますが、...辰刻の雫~蒼い月~を書き終えて

  • 辰刻の雫 ~蒼い月~ 第207最終回

    『辰刻の雫(ときのしずく)~蒼い月~』目次『辰刻の雫~蒼い月~』第1回から第200回までの目次は以下の『辰刻の雫~蒼い月~』リンクページからお願いいたします。『辰刻の雫~蒼い月~』リンクページ辰刻の雫(ときのしずく)~蒼い月~第207最終回おムネがどんどん大きくなってきて「うへへへ~」と喜んでいた紫揺に九の月に入った深夜、陣痛がやってきた。すぐに産婆が呼ばれ出産の用意を整えたが、それから丸一日半かかってようやく元気な泣き声を上げる赤子を出産した。お付きたちだろうか、赤子の声が聞こえたのだろう、外では歓声が上がっているようだ、それが遠くに聞こえる。長い時がかかり過ぎた。外では様子を確かめることも出来ず、誰もが不安を消すことが出来なくなっていた時であった。それだけに喜びはひとしおである。紫揺はクタクタになり、...辰刻の雫~蒼い月~第207最終回

  • 辰刻の雫 ~蒼い月~ 第206回

    『辰刻の雫(ときのしずく)~蒼い月~』目次『辰刻の雫~蒼い月~』第1回から第200回までの目次は以下の『辰刻の雫~蒼い月~』リンクページからお願いいたします。『辰刻の雫~蒼い月~』リンクページ辰刻の雫(ときのしずく)~蒼い月~第206回ようやくマツリと紫揺が向かい合って食をとることとなった。“最高か”と“庭の世話か”がホッと胸を撫で下ろす。「杠戻っちゃったね」あれから杠が六都に戻ると聞いた。「ああ、硯の山が気になっておろうからな」杠から聞いた。ずっと岩石の山と言っていたが、紫揺が硯の山と言っていたことから今では硯の山と呼ぶようになったと。「杠から聞いた。杠が婚姻の儀の間、宮に居られるようにマツリが奔走してくれたって。だから宮に戻ってくるのも遅くなったって」「大したことはしておらん」「杠が居てくれて嬉しかっ...辰刻の雫~蒼い月~第206回

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