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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々。

趣味は映画鑑賞。専門的な知識があるわけではありませんので、素人が楽しめる範囲内での「映画批評」を行っています。TB・相互リンクなど随時募集中です。

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2010/01/31

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  • 国宝

    評価点:90点/2025年/日本/175分監督:李相日(「悪人」など)それは、生きるということ。近年まれに見る秀作。1964年、長崎の暴力団の新年会に呼ばれた歌舞伎役者・花井半次郎(渡辺謙)は、その余興に立った女形の少年の才覚に気づいた。その少年は組長の息子喜久雄だった。しかし、その日に抗争に巻き込まれた組長は命を落としてしまう。一年後復讐を果たそうとしたが、失敗、歌舞伎役者だった半次郎に引き取られる。任侠の彫り物を背中に背負った喜久雄は、歌舞伎の道を歩み始める。主演吉沢亮曰く、この役は人生を賭けた作品である、とのことだ。何ヶ月か前のトレーラーを見て、これは見てみたいと思っていた。時間的にかなりタイトだったが、なんとかみにいくことができた。三時間近い作品で、原作は読んでいない。「青天を衝け」の吉沢亮、「べ...国宝

  • ザ・コンサルタント2(V)

    評価点:53点/2025年/アメリカ/124分監督:ギャビン・オコナーこれじゃない感が強い。元金融取締局局長で私立探偵のレイ・キング(J・K・シモンズ)が何者かに殺害された。彼の腕には「会計士を探せ」という文字が残されていた。緊急連絡先に残されていたのは元部下であるメディナ(シンシア・アダイ=ロビンソン)だった。彼女は、会計士のクリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)に連絡を試みる。キングの部屋には大量の資料が残されており、ウルフはそこから移民の親子に関する情報を見出す。「ザ・コンサルタント」シリーズの続編。前回はウルフその人にかなりフォーカスされた作品だったが、今回はアクション色が強く、少しテイストが異なる。社会的な背景にも言及しており、前作のファンが楽しめるかはちょっとわからない。Amazonでいきな...ザ・コンサルタント2(V)

  • ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング

    評価点:74点/2025年/アメリカ/169分監督:クリストファー・マッカリートム・クルーズの肉体にフォーカスしたアクション映画の“卒業アルバム”。二本の十字の鍵を手に入れたイーサン・ハント(ほぼトム・クルーズ本人)は、宿敵ガブリエルにその「扉」となる潜水艦の場所を聞き出そうと動き始める。そのキーとなるのは、かつて仲間だった殺し屋のパリス(ポム・クレメンティエフ)だった。彼女をさらったハントは、護衛についていたドガ(グレッグ・ターザン・デイヴィス)を仲間に引き入れて、ガブリエルがくるパーティーに潜入する。ロンドンのパーティーでグレース(ヘイリー・アトウェル)と合流したハントだったが、ガブリエル一味に拘束される……。ちょっとストーリーが長くなった。どこまで書けば良いのかわからないけれど、とにかく話全体が長い...ミッション:インポッシブルファイナル・レコニング

  • かくかくしかじか

    評価点:72点/2025年/日本/126分監督:関和亮描くということ。生きるということ。東村アキコ、宮崎の田舎で幸せに暮らしていた女子高校生は、漫画家になるために美術大学を受験しようとしていた。このままで受かるはずがないと同じ美大希望の同級生に言われたことをきっかけに、その友人が通う絵画教室に通うことに決めた。家から1時間以上の僻地にあったその教室の、日高(大泉洋)先生は、超絶スパルタの異様な先生だった。あと数ヶ月に迫った受験に向けて、アキコの受験勉強が始まる。永野芽郁がいろいろな意味で注目されてしまって、この待望の映画化が失敗に終わるかもしれない。「かくかくしかじか」というエッセイマンガは、何度も映画化を打診して原作者が断ってきたという曰く付きの作品だった。それが永野芽郁、大泉洋の二人で、しっかりと予算...かくかくしかじか

  • gooブログ終了について

    gooブログの終了を、先日突然知りました。今後どうしていくべきか、現在思案中で、どこに移転させるのか、そもそも存続させるのかも含めて決定したら、ここで報告するようにします。2008年から始めたブログですが、私の本業や実生活を取り巻く環境も変わってきました。特に近年は更新速度も遅くなり、書く場として機能させられていないのも現状です。ブログサービスが終了する前までには、結論を出します。それまでしばらくお待ちください。こんな私を待っている人がいれば、の話ですが。gooブログ終了について

  • さつがい現場に遭遇した話。

    少し前、地域の祭のお手伝いに参加した。その祭では、子どもたちがその祭の格好をして練り歩く。子どもたちがその祭の出番を待っている、時間をもてあそんでいる時間があった。そのとき、珍しい衣装を着ていたからか、カメラをもった人たちがその小学生の子どもたちを取りかむように写真を連写していた。周りにその保護者らしい人もいないし、その小学生たちに許可を得て撮影しているわけでもない。群がったカメラマンは、10人を超えていた。その祭はまだ始まる気配もなかった。もちろん、子どもたちはポーズを撮ったりカメラに目を向けたりしているわけではない。ただ、暇つぶしに遊んでいる姿をひたすらに写真に収めていた。そのカメラで写されたデータはどこに使われるのだろう。私はそれを見ながら強い違和感と、嫌悪感をもった。私が遭遇したのは、この「撮害」...さつがい現場に遭遇した話。

  • 教皇選挙

    評価点:48点/2024年/アメリカ・イギリス/120分監督:エドワード・ベルガーすべては茶番にすぎない。長年務めていたローマ教皇が突然亡くなった。ローマ教皇庁首席枢機卿としてトマス・ローレンス(レイフ・ファインズ)が直ちに呼ばれて、教皇選挙の準備にとりかかった。ベリーニ枢機卿、トランブレ枢機卿、テデスコ枢機卿が有力候補として名前が挙がっていた。しかし、そこにカザフスタン・カブールのベニテス枢機卿が急遽訪問し、それぞれの新教皇を巡る選挙活動が繰り広げられる。アカデミー賞にもノミネートされていた宗教サスペンスドラマ。法定ものはよく映画化されるが、このようなローマ教皇という一種の聖域を舞台にした作品は珍しい。コンクラーヴェとして有名な選挙も仕組みまでは日本でもそこまで知れ渡っていないだろう。登場人物を整理する...教皇選挙

  • SNSという装置

    私たちの触れるメディアで、かつて大きな影響を持っていたのはラジオであり、新聞であり、テレビであった。これらは世界大戦で世論を大きく動かし、政治や国の命運を動かす大きな原動力になった。しかし、昨今で私たちに最も影響を与えて要るのはSNSであろう。誰でもどこでも発信できるというこのメディアは特に先進国で大きな意味を持っている。時に閉鎖的な空間として、あるいは世界中に放たれたコミュニケーションツールとして、広く普及している。ごく個人的な空間と、公的な空間が地続きであるということが手軽さと怖さを生む、画期的な場所になっている。自分に正直であること、誰でも発信できること、随時他人とやり取りでき、かつそれが世界中に公開することができること。オールドメディアではできなかった情報発信が可能になったことは、功罪の議論よりも...SNSという装置

  • ビーキーパー(V)

    評価点:57点/2024年/アメリカ/105分監督:デヴィッド・エアーこんな映画で下げる溜飲はない。年金暮らしのエロイーズ・パーカーは、隣の納屋に見知らぬ養蜂家アダム・クレイ(ジェイソン・ステイサム)を快く住まわせていた。ある日、パソコンをいじっていると、警告がなり、電話がかかってきた。思わず電話に出ると、言葉巧みに誘導され、すべての口座の残高がゼロになっていることに気づいた。絶望した彼女は自らの命を絶ってしまう。お世話になったアダムは、静かに復讐を誓った。一般人だと思っていたのに、実は特殊なスキルをもっていたヒーローだった、という最近流行の舞台設定を持つアクション映画だ。「96時間」、「イコライザー」、「Mr.ノーバディ」、「ジョン・ウィック」など、この手の話が増えてきた。女スパイが養成されて、ミッショ...ビーキーパー(V)

  • 名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN

    評価点:75点/2024年/アメリカ/141分監督:ジェームズ・マンゴールド描かれる二つの三角関係。1960年、無名だったボブ・ディラン(ティモシー・シャラメ)は、入院したというフォークシンガーのウッディ・ガスリーの元を訪れた。彼のために用意した歌を披露したボブの優れた才能を確信したシーガー(エドワード・ノートン)は、彼をさまざまなステージで歌わせることで知名度を上げていった。同じフォークですでに有名になっていたジョーンズ・ベエズ(モニカ・バルバロ)の力もあり、次第にフォーク界のホープとして有名になっていく。そんな状況をボブ自身は息苦しく感じるようになっていく。アカデミー賞にノミネートされて話題になった本作。オスカーの作品賞を受賞した「アモーラ」と悩んだ挙句、こちらを見ることにした。本当なら二本とも見たか...名もなき者/ACOMPLETEUNKNOWN

  • キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド

    評価点:47点/2025年/アメリカ/118分監督:ジュリアス・オナー主語が違うんだ。アベンジャーズのスティーブ・ロジャーから盾を引き継いだのは、ファルコンとして活躍していたサム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)だった。彼は、インド洋沖で見つかった完璧な物質アダマンチウムが、秘密裏に盗み出され、取引される情報を手に入れた。そこで、大統領のロス(ハリソン・フォード)から頼まれ、取引を未然に防いだ。その功労者として、アダマンチウムを巡る国際条約の調印の場に呼ばれたサムは、かつての戦友だったイザイア(カール・ランブリー)をその場に呼ぶことを条件に応じた。サムは、大統領と確執があったが、ロス大統領は娘との和解のために歩み寄りたいと考えていた。しかし、大統領官邸で突然イザイアが心神喪失状態に陥り、テロを起こしてし...キャプテン・アメリカ:ブレイブ・ニュー・ワールド

  • は行の映画批評

    は行の映画her世界でひとつの彼女86点バーチュオシティ(V)64点ハート・ロッカー75点バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)60点パーフェクト・センス(V)76点PERFECTDAYS84点パーフェクト・ブルー(V)71点パール・ハーバー(V)37点バーン・アフター・リーディング57点バイオ・ハザード(V)50点バイオハザード2アポカリプス(V)24点ハウス・オブ・グッチ74点ハウルの動く城79点鋼の錬金術師シャンバラを往く者80点鋼の錬金術師嘆きの丘(ミロス)の聖なる星53点ハクソー・リッジ78点運び屋(V)73点パシフィック・リム(V)53点はじまりのうた(V)80点バタフライ・エフェクト84点初恋の来た道(V)75点パッション76点パッセンジャー58点←ジェニファー・ロペスのパッセンジ...は行の映画批評

  • ラン・ハイド・ファイト(V)

    評価点:63点/2020年/アメリカ/110分監督:カイル・ランキンアメリカの深い闇と悩み。軍人の父親にサバイバルをたたき込まれて育った女子高校生のゾーイ(イザベル・メイ)は、母親を亡くして以来心を閉ざしていた。まもなく高校を卒業するが、プロムを誰と行くかも決められていなかった。周りから完全に浮いていた彼女だったが、唯一の理解者であるルイスからプロムの誘いがあった。彼の思いを受け止められる状況にないゾーイは拒絶してしまう。カフェテリアのトイレに籠もっていた彼女は、突然クラスメイトが血まみれでトイレに駆け込んできたのを抱きかかえた。クラスメイトが銃撃事件を起こしたことを知った彼女は、震えながら立ち向かう決心をする。何も見る気になれなかったが、強いて言うならアクションを見たいと思ってアマプラで再生した。ほとん...ラン・ハイド・ファイト(V)

  • シャイニング(V)

    評価点:85点/1980年/イギリス・アメリカ/143分監督:スタンリー・キューブリックトラウマ級のホラーの金字塔。小説家のジャック(ジャック・ニコルソン)は、静かな環境で新作を書こうと、ホテルの管理人の職を求めた。このコロラド州のホテルは、冬期になると5ヶ月間外部との交渉ができなくなるほど雪に閉ざされる。定期的に建物を温めなければ損傷が激しくなるため、孤絶されたホテルに籠もって管理する人が必要だった。しかし、ホテルの支配人は妙なことを口走った。以前管理を任せた男が、家族を惨殺して自分も自殺したことがあった、と。意に介さないジャックは、家族を連れてホテルを訪れた。原作スティーヴン・キング、監督・脚本がスタンリー・キューブリックの名作。ただ、原作とかなり違うテイストになったことで、キングはご立腹だったという...シャイニング(V)

  • 機動戦士Gundam GQuuuuuuX Beginning

    評価点:??点/2025年/日本/81分監督:鶴巻和哉現時点で言えることは、あまりない。▼以下はネタバレあり▼宇宙世紀0079、増えすぎた人口のやり場に困った人類は、巨大なスペースコロニーを打ち上げ、そこで生活する道を選んだ。しかし、地球と宇宙に住む者たちの格差は広がるばかり、スペースコロニーを生活の中心とするジオン公国は地球に向けて、独立戦争をしかける。数ヶ月で人類の半数を失った戦争は、終焉を迎えることなく膠着状態にあった。地球連邦軍の研究施設に潜入したシャア・アズナブル(声:新祐樹)は連邦軍の新型モビルスーツと、強襲戦艦を奪取に成功する。ジオン公国はザビ家のドズルを失いながらも、地球連邦軍と戦争を繰り広げ、作戦は最終段階に入った。エヴァのスタジオカラーがついにガンダムを手がける。そのアニメのテレビ放映...機動戦士GundamGQuuuuuuXBeginning

  • 朝井リョウ「正欲」

    話題になっていたのは知っていたが、どういう内容かわからないままスルーしていた。映画化もされて、いわゆるマイノリティの性的嗜好が題材になっていることを知って、読もうと思って買った。それまでちょっと読書が停滞していたこともあって、わかりやすい作品で活字に慣れたいと思っていたこともある。視点人物が複数いる群像劇で、マジョリティが理解できないマイノリティの性的嗜好を描いた作品である。特に日本では、一般的な男女の性的嗜好さえも話題にすることを憚る空気がある。よって自分の嗜好を簡単に披露できないし、自分の内面を鋭く見つめるという習慣もあまりない。それを語れば、直ちに自分はマイノリティの陥って、奇異な目で見られる。たしなみとして、それをあけすけに披露することが果たしてよいのかどうかは別にして、過度にタブー視されているき...朝井リョウ「正欲」

  • ミスター・ガラス(V)

    評価点:63点/2019年/アメリカ/129分監督:M・ナイト・シャマラン狙いはおもしろかったが、……。「死なない男」を自認するデヴィッド・ダン(ブルース・ウィリス)は、「群れ」と言われる連続殺人事件の犯人を追っていた。警察もこの謎のフードの男を追っており、三つ巴の様相を呈していた。「群れ」と呼ばれた男は、多重人格者のヘドウィグ(ジェームズ・マカヴォイ)と接触、ついに取り押さえるが、そのとき警察に二人とも捕まってしまう。精神疾患が原因だと考えたエリー・ステイプル(サラ・ポールソン)は彼らと面談を繰り返し、矯正しようと考えていた。しかし、そこにはあのミスター・ガラスと呼ばれたイライジャ・プライス(サミュエル・L・ジャクソン)も収容されていた。「アンブレイカブル」「スプリット」に続くシリーズ最終章。あまり自律...ミスター・ガラス(V)

  • グラディエーター2 英雄を呼ぶ声

    評価点:55点/2024年/アメリカ・イギリス/148分監督:リドリー・スコット今後忘れ去られるだろう、大量生産された「ハリウッド大作」の一つ。マキシマス(ラッセル・クロウ)が非業の死を遂げて16年。ローマ帝国は退廃し、双子の皇帝が世を治める独裁政治が行われていた。領土を広げ、圧政を敷き、税に苦しむ民が物乞いをしていた。孤児だったハンノ(ポール・メスカル)は小国ヌミディアで戦士となり、妻とともに過ごしていた。そこへローマ帝国の侵略があり、妻を殺されたハンノは捕虜となり、皇帝の慰みものであるグラディエーターとなった。グラディエーターを抱える元奴隷のマクリヌス(デンゼル・ワシントン)は、ハンノに才覚を見いだし、復讐したければ俺の言うとおりにしろ、とささやく。名作「グラディエーター」の続編。もはや続編は作らない...グラディエーター2英雄を呼ぶ声

  • ジョーカー フォリ・ア・ドゥ

    評価点:53点/2024年/アメリカ/138分監督:トッド・フィリップス芥川「トロッコ」を思わせる。ジョーカーとしてテレビ中継中に人気司会者を射殺した伝説の男、アーサー(ホアキン・フェニックス)はアーカムの精神病院で裁判を待っていた。ジョークで看守たちを笑わせていた男も、いつしか無口な模範囚となっていた。看守たちは面白がって、アーサーを賛美歌のセミナーに参加させることにした。そこで出会ったのは、リー(レディ・ガガ)と名乗る強制入院させられている女性だった。あなたの映画を20回は見た、と共感を寄せるリーに、アーサーは心を寄せていく。そして、いよいよ前代未聞の事件を起こしたアーサーの公判が始まった。前作が非常に大きな話題になり大ヒットした。当然そのことを受けて続編が作られることになった。しかし、アメリカや日本...ジョーカーフォリ・ア・ドゥ

  • 千葉雅也「センスの哲学」

    思想や哲学に興味がある人にとっては、もはやすでにちょっと古いかもしれないが、4月に刊行された本書は、すぐに購入して積ん読状態だった。この夏、映画館にいくこともままならなかったので、本を読んでいた。そして、そろそろこの本も手に取ろうと思って読み始めた。さて、著者いわく、この本は「勉強の哲学」「現代思想入門」に続く入門書の三つめにあたる。「センスが良い」といわれる「センス」とはなにか、を思索したものである。千葉雅也は立命館大学の教授でもあり、思想が専門家なので、この本も哲学書に分類されるのだろう。しかし、全くこの手の本を読んだことがない人でも十分理解できるように、それこそ入門書として書かれている。まだまだ本屋に平積みされているだろうから、是非手に取ってもらいたい。▼以下はネタバレあり▼この本を読む前の時点で、...千葉雅也「センスの哲学」

  • ルックバック

    評価点:86点/2024年/日本/58分監督:押山清高作り手による、二つの矜恃。田舎に住む小学生の藤野歩(声)は毎週4コマ漫画を学年通信に連載していた。周りからちやほやされて、漫画家になれる、と褒められるのに喜びを感じていた。そんなある日、先生から4コマ漫画の枠を、不登校の京本にわけてあげてくれ、と頼まれる。どうせ描けっこない、とたかを括っていた藤野だったが、完成した学年通信を見て衝撃をうける。緻密な描写は藤野にはなかった筆致だった。それまで曖昧に描いていたことに気づいて、真剣に漫画に向き合うことに決める。藤本タツキの同名短編が原作の映画である。私が紹介するよりもはるかに有名な作品なので、紹介は蛇足になるだろう。この作品も映画として短い小品になっている。私は原作を周囲の人に勧められて読んで、それから映画館...ルックバック

  • MEMORY メモリー(V)

    評価点:65点/2022年/アメリカ/114分監督:マーティン・キャンベルまあ、都合の良い記憶だこと。長年殺し屋をしてきたアレックス(リーアム・ニーソン)はアルツハイマー病の初期症状が出始めていた。一念発起し辞めようとするが、新たな依頼を受けてしまう。簡単な仕事のはずだったが、少女を殺す依頼であることに気づき、彼はとっさに拒否してしまう。彼の信条として子どもを殺すことは許されざる仕事だった。依頼人に、契約解除を申し出るが、依頼人は拒否、窮地に追い込まれる。テレビでそのターゲットである少女が殺害されたことを知ったアレックスは、依頼人たちに復讐しはじめる。一方、FBI捜査官のヴィンセント・セラ(ガイ・ピアース)は、保護したはずのベアトリスが何ものかに殺されたことについて、捜査し始める。主人公はリーアム・ニーソ...MEMORYメモリー(V)

  • キングスマン:ゴールデン・サークル(V)

    評価点:48点/2017年/イギリス・アメリカ/141分監督:マシュー・ヴォーン問われているのは映画としての品性と〈倫理〉。前作より、エグジーことゲイリー・アンウィン(タロン・エガートン)は、ハリーの後を継いでエージェント「ガラハッド」となった。前作で知り合った王女に、皇室の両親との食事会に招かれたエグジーは、麻薬界を牛耳るポピー・アダムズ(ジュリアン・ムーア)に攻撃される。キングスマン全体が壊滅したとき、残っていたのはたまたま外出していたマーリン(マーク・ストロング)と、エグジーのみだった。ゴールデンサークルという謎の組織に行き当たった二人は、アメリカにある秘密組織ステイツマンに協力を仰ぐ。そのステイツマンには、なんと死んだはずのハリー(コリン・ファース)が保護されていた。前作「キングスマン」がどうにも...キングスマン:ゴールデン・サークル(V)

  • クワイエット・プレイス DAY1

    評価点:76点/2024年/アメリカ/100分監督:マイケル・サルノスキ期待していたものと、なんか違う?!末期がんだったサミラ(ルピタ・ニョンゴ)は、ホスピス暮らしで、久しぶりにマンハッタンに出かけて舞台を見ることになった。彼女はかつて食べていたピザの見せに行こうと、密かに心に決めていた。劇が終わり、いよいよピザを食べに行こうとしたとき、緊急速報がなる。街の様子がおかしくなったことに気づいたときには、攻撃が始まっていた。人気ホラーの「クワイエット・プレイス」の前日譚を描いたスピンオフ映画。過去の作品を見ている方が楽しめることは間違いない。音を認知して襲ってくるエイリアンに襲われた地球が舞台になっている。過去の作品とは違って、この作品はどちらかというと人間ドラマに重きを置いている。だから、ホラー映画を期待し...クワイエット・プレイスDAY1

  • FALL/フォール(V)

    評価点:73点/2022年/イギリス・アメリカ/107分監督:スコット・マンそんなタトゥーは消しとけ。クライマーのベッキー(グレイス・キャロライン・カリー)とダンは結婚して間もなく、渓谷を登っているときに事故に遭ってしまう。ダンを失ってしまったベッキーは、失意の余り引きこもりの生活を送るようになった。一年が経ったころ、一緒に登っていたハンター(バージニア・ガードナー)に、今は使われていないテレビ塔に登らないか、と誘われる。恐怖のあまり、それまで全く高所を登っていなかったベッキーは、断るが、新しい一歩を踏み出すために、と促され参加することを決めた。鉄塔は660mで、老朽化しているため近々取り壊されることが決まっていた。600mまでは鉄塔の中にあるハシゴを登るが、それ以降はむき出しになったハシゴを登っていく。...FALL/フォール(V)

  • マッドマックス:フュリオサ

    評価点:75点/2024年/アメリカ/148分監督:ジョージ・ミラーいかにも世紀末。疫病や災害、戦争などによって文明は滅んだ。一部の生き残った人間たちは失われた水や食料を求めて奪い合う荒廃した世界が出現した。そんな中でも残された自然の中で生きていた幼いフュリオサ(アニャ・テイラー=ジョイ)は、緑の地に迷い込んだ賊にさらわれてしまう。後を追った母親は、フュリオサを救い出そうとするも失敗し惨殺される。バイカー集団の長ディメンタス(クリス・ヘムズワース)に囚われたフュリオサだったが、そのディメンタスは流浪の旅の末、ウォーボーイを統べるイモータン・ジョーと対立する。前作「マッドマックス怒のデスロード」の前日譚にあたる。シャーリーズ・セロンが演じたフュリオサを「ザ・メニュー」のアニャ・テイラー=ジョイが演じている。...マッドマックス:フュリオサ

  • オッペンハイマー

    評価点:88点/2023年/アメリカ/180分監督:クリストファー・ノーランその発明は、圧倒的な破壊をもたらす爆弾。1940年代初頭、世界はファシズムとの闘いが始まっていた。オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は、ユダヤ人を迫害するヒトラー率いるドイツに対抗するべく、新しい兵器の開発を任された。しかし、そのプロジェクトは国家機密であり、いかなる情報漏洩が許されない。そこで、アメリカの中央にあるロスアラモスに街を作り、そこに研究所を立ち上げるという壮大なものだった。紆余曲折あり、原子爆弾の唯一の被害国である日本では、2024年3月という時期に公開になった。もしかしたら日本では劇場公開できないかもしれない、と言われたほどの曰く付きの作品となってしまった。政治的な話は抜きにしよう。ここでその情勢を詳報しても...オッペンハイマー

  • エイリアン:コヴェナント(V)

    評価点:56点/2017年/アメリカ・イギリス/122分監督:リドリー・スコット重要なテーマが、手段になってしまった。2104年、巨大輸送船コヴェナントには2000体の人間の胎芽を乗せていた。乗り組員は15名だったが、突如事故が起こり、冷凍催眠から目覚める。その際、船長が亡くなり、乗員は窮地に立たされる。宇宙船の修繕のため、船外作業中に謎の電波を受信する。その電波はあきらかに人類の手によるものだと考えられ、当初の目標だった惑星ではなく、発信源となっている惑星を目指すことにする。しかし、その惑星は未知の生命体が巣くう、それ以外の生命体が絶滅した星だった。前作「プロメテウス」の続編にあたる。なんと、そんな基本的なことを理解せずに、いきなり再生してしまったため、「プロメテウス」を見ていないのに、この作品から見る...エイリアン:コヴェナント(V)

  • DUNE砂の惑星 PART2

    評価点:65点/2024年/アメリカ/166分監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ一本の映画として鑑賞できるかどうか。自国を滅ぼされたポール(ティモシー・シャラメ)は、チャニ(ゼンデイヤ)らフレメンの一員になるべく、行動を共にする。帝国はスパイスの採掘をより強固なものにしようと侵攻を続けていた。フリメンらは、帝国に反抗するため、採掘機を破壊するテロ活動を開始する。有名SF小説の映画化第二弾。アカデミー賞の賞レースには前年に公開された作品が列挙されているので、この作品は選外になっている。先のアカデミー賞では「ゴジラ-1.0」や「オッペンハイマー」が話題になったので、どうしてもこの作品は話題性に欠ける。そして、前作もそれほど日本で売れたわけではないので、余計に知らない人が多いのかもしれない。IMAXでの鑑賞を目指したの...DUNE砂の惑星PART2

  • ダイハード2(V)

    評価点:84点/1990年/アメリカ/125分監督:レニー・ハーリンシリーズ屈指の完成度。あるクリスマスの日、ニューヨーク市警のジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)は、ワシントンのダレス国際空港で妻を待っていた。猛吹雪の空港では、共産主義国の麻薬王のエスペランザ将軍がアメリカに移送されるということもあり、報道陣でごった返していた。マクレーンは、空港で妙な二人組を見つけ、後をつけると銃で応戦された。一人を倒したマクレーンは、現場の確保を責任者に求めたが、クリスマスの空港を閉鎖することはできないと一蹴される。管制局まで詰めかけて抗議していたところ、空港管理システムを何ものかにハッキングされ、離着陸が不可能になってしまう。言わずと知れた、ブルース・ウィリスの人気アクション映画の第二弾。ずっと見直そうと思って...ダイハード2(V)

  • た行の映画批評

    た行の映画ダークナイト(V)94点ダークナイトライジング88点ターミナル67点ターミネーター(V)86点ターミネーター2(V)88点ターミネーター355点ターミネーター473点ターミネーター再起動ジェネシス62点ターミネーター:ニューフェイト58点第9地区83点タイタニック(V)54点大脱出68点ダイハード(V)83点ダイハード2(V)84点ダイハード4.083点ダイハードラスト・デイ54点TIME/タイム(V)62点タイムマシン52点タイム・ライン59点太陽がいっぱい(V)76点ダヴィンチ・コード49点タクシー・ドライバー(V)84点たそがれ清兵衛(V)85点ダニー・ザ・ドッグ69点ダンケルク76点ダンテズ・ピーク81点チーム・バチスタの栄光(P)37点チェ39歳別れの手紙73点チェ28歳の革命75点チ...た行の映画批評

  • 映画 ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)

    評価点:55点/2024年/日本/115分監督:今井一暁決定的な問いかけの不足。音楽の授業でリコーダーの合奏発表を控えていたのび太だったが、一向に上手くならなかった。投げ出しそうになったのび太は、日記が実現するというドラえもんの道具で、「今日は音楽がなくなった」と記載する。異変に気づいたドラえもんは、のび太を問いただし、そのページを破り捨てる。再びリコーダーの練習を始めたのび太の前に、不思議な少女が現れる。言葉が通じなかったが、彼女の歌声に魅了されるが、急に消えてしまう。たまたま時間が合ったので、子どもたちを連れて地元の映画館に行った。公開二日目で、子どもの同級生も見に来ていたくらい、盛況だった。前回に続いて、オリジナル脚本で、担当は内海照子。私は存じ上げない。ここでおすすめしようがしまいが、きっと見に行...映画ドラえもんのび太の地球交響楽(シンフォニー)

  • 落下の解剖学

    評価点:78点/2023年/フランス/152分監督:ジュスティーヌ・トリエわかりあえないということ。フランスの山間の村で暮らす作家の夫婦が、視覚障害のある息子と住んでいた。ある日、大音量で家の階層作業をしていた夫が死体となって発見される。発見したのは散歩に出かけていた息子で、当時家には妻のサンドラだけがいた。サンドラは息子の声で午睡から目を覚まし、異変に気づく。しかし、不自然な位置に血痕が残されており、検察らは妻のサンドラを殺人容疑で起訴することを決める。アメリカのアカデミー賞でも作品賞にノミネートされ日本で話題になっている。フランス映画であるが、かなりの部分が英語で話されているので、その分ウケがよかったのかもしれない。作品としては法廷ものであり、ジャンルはサスペンスやドラマになるのだろう。私は映画をジャ...落下の解剖学

  • ゴールデンカムイ

    評価点:75点/2024年/日本/128分監督:久保茂昭「再現度」は高い。しかし、それで満足していては……。1904年の日露戦争で両国ともに多くの死傷者を出した。その二年後、激戦を生き延びた杉元佐一(山崎賢人)は、北海道で砂金をさらっていた。しかし、見つからず途方に暮れていたところ、出会った酔っ払いがアイヌが隠した金塊の話をしはじめた。話によれば、その金塊は北海道のどこかに埋められて、そのありかが脱獄した死刑囚の体に暗号として入れ墨で刻まれているということだった。信じられない杉元だったが、ヒグマに襲われたその男には、不自然な入れ墨が入っていた。男の遺体を担いでいた杉元だったが、獲物を奪われたヒグマが杉元を狙っていた。「ヤングジャンプ」で連載されて大きな話題になったマンガの、実写映画化作品。速報が入った時点...ゴールデンカムイ

  • 東浩紀「動物化するポストモダン」

    言わずと知れた、東浩紀を論壇の舞台にあげた新書である。当時としては、オタクやギャルたちを論じている者は少なかった。オウム真理教やバルブ崩壊など大きな事件や出来事が続く中で、ゲームやアニメ、マンガといったサブカルチャーに没頭する者たちを、俎上に載せるということ自体が「価値がない」とみる考えが支配的だった。しかし、いち早く彼らに注目したのが、大塚英志であり、東浩紀だった。書かれた当時は懐疑的だったのかもしれないが、現在ではオタクと呼ばれる人たちのエートスはむしろ日本においても支配的になってきた。特に、新型コロナを巡る騒動(狂騒)によって、アニメやゲームがより多くの日本国民に親しみのあるものになったようだ。彼らの精神性に早くから注目した評論として、東浩紀はその地位を確固たるものにしている。それもすべてはこの「動...東浩紀「動物化するポストモダン」

  • 哀れなるものたち

    評価点:88点/2023年/アメリカ/141分監督:ヨルゴス・ランティモス彼女に欠落しているもの。私たちに欠落しているもの。外科医で全身傷だらけの男、ゴッドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)は、不思議な女性を自宅で育てていた。医学会でゴッドウィン医師に尊敬の眼差しを向けるマックス・マッカンドルス(ラミー・ユセフ)を見つけたため、自宅に呼び、ベラ(エマ・ストーン)を紹介する。ベラは、自殺した女性に子どもの脳を移植することで誕生した「実験体」だった。マックスが観察する中、赤ん坊のような振る舞いだった彼女は、次第に外の世界に憧れるようになる。そこに弁護士のダンカン・ウェダバーン(マーク・ラファロ)が現れて、ベラの生活が急変していく。オスカーノミネートも納得の映画だ。SFなのか、コメディなのか、ファンタジー...哀れなるものたち

  • M3GAN ミーガン(V)

    評価点:75点/2022年/アメリカ/102分監督:ジェラルド・ジョンストンそらそうやな、という映画。幼いケイディ(ヴァイオレット・マッグロウ)の両親は三人でスキーに出かけたとき、事故に遭い亡くなってしまった。疎遠だった祖母に代わり、ジェマ(アリソン・ウィリアムズ)が彼女を引き取る。彼女はおもちゃ開発に携わっていたが、うまくいっていなかった。追い込まれていたジェマは、ケイディを引き取ったものの、彼女を持て余していたが、大学の頃に開発した自立型ロボットに光明を見いだした。ミーガンと名付けられた子ども方のロボットは、自律的に相手の感情を理解して、寄り添うことができる、身体をもったまったく新しい「おもちゃ」だった。公開前後から話題になった、ホラー映画。トレーラーから想像できるそのまんまの展開で、残酷描写に注意す...M3GANミーガン(V)

  • PERFECT DAYS

    評価点:84点/2023年/日本/124分監督・脚本:ヴィム・ヴェンダース美しき日常の日々。平山(役所広司)は東京の公共トイレの清掃員だった。今日も朝目覚めて規則正しくあてがわれたトイレの清掃に向かった。ほとんど人と話すこともない平山は夕方には仕事を終えて、近所の銭湯に向かい、浅草の小さな居酒屋でチューハイをあおる。毎日同じような生活だが、少しずつ変化が起こる。ドイツ人映画監督ヴィム・ヴェンダースが、東京の公共トイレのPR短編映画のために企画され、制作された映画。カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したことでも話題になった。平日の映画館にもかかわらず、劇場内はほぼ満員で、暇な中年以上の観客で賑わっていた。小さい劇場だったこともあるだろうが、日本にはこんなに暇な(?)人々がいることに驚いた。話題になったのもあ...PERFECTDAYS

  • 窓ぎわのトットちゃん

    評価点:79点/2023年/日本/114分原作・ナレーション:黒柳徹子監督・脚本:八鍬新之介脚本と演出がすばらしい。終戦間際までの東京の自由が丘にあった私立の「トモエ学園」に転校することになったトットちゃん(声:大野りりあな)は、学校に列車の教室があることに仰天する。小林校長先生(声:役所広司)は、問題児として扱われていた彼女の話を、トットちゃんが納得するまで丁寧に聞き出し、「あなたは本当は良い子なんですよ」と力強く抱きしめた。戦争の足音が大きくなる中、トットちゃんはトモエ学園で成長していく。言わずと知れた児童文学の名作、「窓ぎわのトットちゃん」をアニメーション映画化した作品。私はこの原作を読んだことがなく、子どもたちが読むだろうと考えたので、先に購入しておいた。しかし、私は他の本を読んでいたので、原作を...窓ぎわのトットちゃん

  • 紅白に思いをはせる

    昨年のNHK紅白歌合戦の視聴率が非常に厳しいものだったという。NHKに対する風当たりは近年ますます厳しいものになってきた。このニュースは、視聴料を巡る議論にますます拍車をかけそうだ。(だが問題の本質は、NHKの番組の質ではなく、単にお金を払いたくないという人が多いだけの気がするが)時代に逆行するようだが、私は結婚してから紅白歌合戦を見るようになった。ふだんほとんどテレビを見ない私の一家は、――それでも子どもが大きくなるに連れて増えてきたが――年末だけは紅白を見ながら夜更かしするという恒例になってきた。歌番組や最新の楽曲も知らないため、紅白を見ることで初めて知ったミュージシャンも多い。そんな私にとって、「大晦日の歌番組で視聴率が30%もあることが奇跡だ」と思える。テレビ離れや、テレビの絶対的な優位性が揺るい...紅白に思いをはせる

  • エクスペンダブルス ニューブラッド

    評価点:62点/2023年/アメリカ/104分監督:スコット・ウォーコンセプトを見失った?リー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)の元を訪れたバーニー(シルヴェスター・スタローン)は、賭けで失った指輪を取り戻して欲しいと依頼する。しぶしぶ付き合わされたリーは、再びバーニーに来た仕事を手伝うことになった。それはバーニーにとって因縁の謎の男、オセロットとの取引相手が、核兵器を強奪したというものだった。再び集結したチームは、その場所リビアをポンコツの輸送機で向かうのだが。とにかく往年のアクションスターが一堂に会して、ばんばん人を殺していくというアクション虐殺映画の続編。トレーラー映像からもわかるように、今回は目玉になるようなアクションスターの紹介がない。それがこの映画のすべてを表しており、上映館数も控えめなも...エクスペンダブルスニューブラッド

  • 勉強するということはこういうことなのか。

    この間までひらがながやっと書けるようになったと思ったら、もう二桁の掛け算や画数の多い漢字をすらすらとやってこなす。小学生とはまことに成長が速い。自分の子どものころ、こんなに真面目に机に向かっていたのかと思うくらい勤勉に宿題をこなしている。もちろん、隣には母親がついていて、私は下の子の工作を手伝わされているのだが。どうしても大人は理屈から説明しようとしてしまうが、子どもの学習する姿を見ていると、もっと重要なことは、体でできるようになるということである、ということに(ようやく)私自身が気づくようになった。ビジネス書でAIにできること、人間にしかできないことなんていう高尚な本を読んでいるからなのかもしれない。AIは身体を伴わないために、「人間」にはなれない、と色々なところで指摘されている。なるほど、私たちは公教...勉強するということはこういうことなのか。

  • メディアリテラシーとは

    正月早々、大きなニュースが日本を揺るがした。私は直接の当事者ではないので、憶測からは何も言えない。その詳細は、別の人に譲ろう。こういう災害が起こると、必ず著名人が寄付したことが話題になる。そしてそこで必ず「売名行為である」という種類の批判が寄せられる。売名行為であっても、寄付することは良いことだ、という種類の反論がまた起こり、ちょっとした議論になる。私はそれについて別の角度から考えてみたい。表現とは、表象を生み出すきっかけとなるものであり、表現にはかならず形式が必要である。自分の思いなるものが客観的に存在するかどうかは別にして、少なくとも自分の内面にあるものは何らかの形にしなければ誰も理解できない。だから、言葉にする。あるいは音にしたり、絵にしたり、その他の作品で表現される。しかし、ここで確認しておくべき...メディアリテラシーとは

  • ら行の映画批評

    ら行の映画批評ライアーゲームザ・ファイナルステージライオンキング(V)LOVERSLOVESONG(V)LoveLetter(V)LIFE!ライフ・オブ・デビッド・ゲイル(V)ライフ・オブ・パイトラと漂流した227日ラウンダーズ(V)楽園追放-ExpelledfromParadise-(V)RUSH友情とプライド下弦の月~ラストクォーター~ラスト・サムライラ・ラ・ランドRUN/ラン(V)ランド・オブ・ザ・デッドランボー最後の戦場ラン・ローラ・ラン(V)リーグ・オブ・レジェンド(V)リーサル・ウェポン(V)リーサル・ウェポン4(V)リクルート(V)リチャード・ジュエルリディックリプリー(V)リリーのすべて竜とそばかすの姫猟奇的な彼女(V)リング0バースデイ(V)隣人は静かに笑う(V)LUCYルーシー(V)L...ら行の映画批評

  • レッド・スパロー(V)

    評価点:37点/2018年/アメリカ/140分監督:フランシス・ローレンスもう何もかもむちゃくちゃ。ロシアのバレエ団で主役を務めていたドミニカ(ジェニファー・ローレンス)は、ある日アクシデントで右足に重傷を負ってしまう。失意にくれるドミニカは、体の悪い母親の面倒をバレエ団に依存していた。その弱みを知った叔父のワーニャは情報局の高官だった。彼はドミニカを陥れたバレエの同僚のやりとりを伝え、彼女にスパイとしての才覚を見いだす。何もかもを失ったドミニカは、ロシアでも最も厳しいスパイ養成機関に入れられる。そして、ロシアのエージェントとしての一歩を踏み出すことになる。ジェニファー・ローレンス主演のスパイアクション。ジャンルとしては、いわゆる女エージェントが鍛えられてミッションをクリアしていく、という例のアレである。...レッド・スパロー(V)

  • お節介な日本人

    日本人はとてもお節介なのか。日本人はなぜこうも人に干渉したがるのか。SNSでは誰かを罰するために私警察が暗躍していて、どんなに些細なことでもすぐに論う(あげつらう)機会を窺っている、ように見える。それが日本人の特有の発想なのか、海外でも同様なのかは分からない。少なくとも必死にスマホをもって日夜干渉できる相手を探している、ように見える。あるいは、世話を焼きたがっているという言い方もできるかもしれない。先日、電車の中で体調を崩した人に居合わせた。私の車両だった。結構な人が乗り合わせていた。すぐに周りにいた人が、声をかけて、緊急停車ボタンを押して、近くの席が空けられて、ものの数分で対応が済んだ。搬送のめどが立っても、近くいた人たちが声をかけていた。どう考えても感服に値するのだけれど、違和感があった。SNSで私刑...お節介な日本人

  • 「こんなことをしているの、日本だけですよ」

    私の知人に、何かあるとすぐに「こんなことをしているのは日本だけ」「海外では常識」と話す人がいる。私はほとんど海外にいく機会もないので、「そうなんや」と驚かされるばかりである。真偽のほどは確かではない。そういう言説は、その人に限らず、日本では大好きなようだ。テレビのコメンテーターも、すぐに海外との比較をしたがる。エビデンス、コンプライアンス、コンセンサス……やたらとカタカナで説明したがるのも、その海外に精通しているという点と共通しているのだろう。特に2020年末から話題になった新型コロナウィルスにまつわる対応などではよく聞かれた話だ。が、おもしろいのは、そういう話の後ろに省略されていることばが、極めて「日本人的」であり、「日本的」である、という点だ。「そんなことをしているのは日本だけ」(だから、日本もやめて...「こんなことをしているの、日本だけですよ」

  • 料理という営み

    料理が私の習慣の一部になって、久しくなった。「男子たる者厨房に入るべからず」と訴えたのもむなしく、早く帰れた日は台所で簡単な夕飯を作る。私の方が早く家を出るので、時間があれば弁当も作る。だが、料理の本質は、「食事」にあるのではないということを、何度もフライパンを振ることで見えてきた。それは、経験が先であり、意味づけは後から行われるという典型的な〈気づき〉である。それは、だから行為の前に開示されているものではなく、行為の事後に気づかされるものである。料理は、調理は、自分が食べるための栄養を摂取するための営みではない。料理をするということは、誰かのために作るということであり、生存のためではない。料理を一切作らなくて良くなった現代において、人間関係が希薄になっていることはそのことと無関係ではあるまい。手軽に、簡...料理という営み

  • SNSという〈ふるい〉

    SNSというメディアは、人々の生き方や生活を大きく変えてきた。人間関係をネット上に持ち込んだ、という言い方はすでに生ぬるい。むしろ、SNSは新たなる人間関係を作る場所になり、自分の考えや思いを一方的に吐露し合う、現実とはかけ離れた場所になっている。私は「いいね!」というボタンは、SNSというコミュニケーションの場を根本的に決定づける流れを作ってしまったと考えている。人間関係や自分の発言や写真(動画・音声)を数値化して可視化することで、承認されているという実感を得る装置である。自分を支持するフォロワー数も、可視化されることで、自分が「がんばった証拠」として捉えることができるようになった。だが、もちろん、この数と自分という存在の価値はまったく関係がない。どれだけ読者が少なくとも貴重な書籍が存在するのと同じで、...SNSという〈ふるい〉

  • 忘却されない不幸

    東浩紀の「訂正する力」を読んで以来、変化することの難しさを意識するようになった。私の子どもの頃は、カメラがフィルムによって機能する時代だった。だから、子どもの頃の写真は、それほど多くない。フィルムは私の両親にはコストが高かったし、機器にうとかったこともある。父や母の写真なら、もっと残っていない。それはとても残念なことだが、今は逆に残りすぎていて、「忘れる」ことができなくなっていることも、また問題なのではないかと思うようになった。過去を忘れられないということは、過去に縛られるということであり、変わっていく自分を肯定できないということだ。私は至極保守的な(思想ではなく、頑固という程度の意味で)人間だが、あるときから「変わる自分」を肯定できるようになった。今では幼なじみと言える人と連絡を取ることもないのだが、そ...忘却されない不幸

  • ただより高いモノはない。

    最近、急に「授業料無償化」という話がニュースになっている。始まりは、大阪府内の高校完全無償化だろう。あるいは、北欧の国々がたびたび引き合いに出されて、日本も子育てに優しい国にするために、医療や教育にかかる経費を無料にするべきだという声が上がっていたことが素地にあったのだろう。そして、多子世帯には、大学の授業料無償の話まで出てきた。だが、その一方で、これが少子化対策としての本丸というよりは、選挙対策のポピュリズムを煽る政策であるということも理解しておかないといけない。子育て世代の親としては、もちろんありがたい。ただ、無料であることに直ちに飛びつくのはちょっと危険な香りがする。大阪の授業料無償化は、「63万円までは大阪府が出す」「それ以上は学校側が負担しろ」というものだ。有り体に言えば、「授業料は一律63万円...ただより高いモノはない。

  • 欲望する教育

    子どもが生まれて、教育がここまで「欲望」と隣り合わせであるということを知らなかった。子育てとは、欲望といかに抗うかということである、ということを思い知った。生後まもなく、親が戦わなければならないのは、子どもに着せたい服を際限なく買うという欲望と抗うことである。おもちゃにしても、服にしても、子どもに「これを買ってやりたい」という気持ちが抑えられない。それは日本が少子化となり、そして高度に成長した大国であり、情報社会であり、だからこそあらゆるグッズが毎時のように目に入ってくるからだ。もちろんSNSがそれを助長している。そして、買ったら今度はそれを捨てられない。忘れられない思い出やグッズを買いたい欲望は、子どもにあるのではなく、親の中にある。この思い出を所有しておきたい、この子にこんなものを買ってあげたい。その...欲望する教育

  • 重層的な子どものことば

    兄弟のやりとりがたまらなく面白い。言葉の発達が早かった私の子どもは、周りの同級生の言葉の発達をも促進させるほど、しゃべくりに育った。うえの子は特に、知的好奇心が強く読書が大好きなので、大人もびっくりするような言葉遣いをしてくる。下の子はそれに釣られてどんどん言葉を覚えて、大人の矛盾点を鋭く突いてくる。そんな2人のやり取りを見ていると、言葉が実に多様であり、そして多層であることに気付かされる。いわゆるおままごとをしている時、下の子から頻繁に、遊びを訂正していく言葉が入る。「これは、ドーナツ屋さんってことな」「今帰ってきたところ、っていうことにして」時には、相手のセリフを指定しながら、自分のイメージした場面設定を要求する。上の子は、気を遣って、その通り演じてくれる。演じられている閉じられた役のセリフと、その場...重層的な子どものことば

  • 言葉は毎回新たに生成される

    言語学の祖、ソシュールは言語の本質をラングとパロールに分けて、説明しようとした。パロールは毎回毎回使い直される言語であり、言葉はその都度生成されているという。それでもある一定の理解が得られるのは、言語のもう一つの側面、ラングという体系をある程度、同じ言語を操る者たちで共有しているからである、と。私はこの場でたくさんの言葉を記してきた。私はこの場以外でも、たくさんの文章を書いている(書かされている?)。それは、自己という存在を規定するものでもありながら――(この場で書いていることだけがmenfithという〈私〉を形成している)――、他者との関係性をも規定するものである。言葉はだから、書いている私という存在と、読んでいるあなたという存在を結びつける橋渡し、通路、回路、媒体である。その一方で、完全に理解すること...言葉は毎回新たに生成される

  • 私たちの渇き

    私たちはかつてないほどに、近年、渇きを覚えている。これほどの世界有数の経済大国であるのに、貧困だ、生活が苦しいという渇きの声が絶えない。人手が足りないと言われながら、それでも賃金は上がらない。もうまもなく、人口ではるかに少ないドイツに逆転される見通しである。いつから私たちはこれほど渇きを感じるようになったのだろうか。だから、私たちは増税に敏感になり、減税に疑いの目を向ける。当たり前のことだが、暮らしの保証を求めれば、税金が上がっていくのは免れない。税金が下がるということは、国のサービスは劣化していくことになる。税金を下げてさらに、国に生活に関する十分なサービスを求めるのは矛盾そのものである。だが、それでも私たちは生活にゆとりや潤い、余裕を感じることができない。この渇きの正体はいったい何なのか。断っておくが...私たちの渇き

  • 引き算の教育

    断っておくが、私は休日出勤が当たり前の職場にいるので、正直子どもへの教育についてとやかく言うべき立場にいない。ほとんどは奥さんの方針に従って、唯々諾々と動いているだけである。もしうちの子どもたちの教育が「成功」したとすれば、それはひとえに奥さんのおかげである。うちの(母親の)教育方針は「マイナスにならないならどんどんさせる」である。そして、どちらかというと、「引き算の教育」である。要するに、悪影響を与えそうなことは、与えない、ということ。数年前からずっと購入を提案しているが、ニンテンドースイッチが自宅にない。スマホを子どもに触らせることもほとんどない。動画は決められた時間だけ、iPadは家にあるが、こちらもマインクラフトを小学生が決められた時間いじるくらいだ。さらに、テレビは基本的に設置されているだけで、...引き算の教育

  • 「ふるさと」の喪失

    車の中に、童謡が流れている。「ふるさと」の一節が車内に広がる。子どもたちは聞くともなく聞いている。私は運転しながら、その歌詞に注目する。大正3年(1914年)に発表されたというこの曲は、長らく私たちの心に深く刻まれた楽曲である。しかし、驚くべきことに、この大正3年の時点で、都会と故郷とが対比されているという点だ。「忘れがたきふるさと」とあるのは、すでに都会にでて働いている労働者の心を詠んだものだ。ここには明確な対比がある。都会と故郷(田舎)という対比である。おそらく高い志をもって故郷を出発した若き男性(とうぜんここで前提にされているのは男性だろう)は、立身出世するために東京を目指す。しかし、その東京ではすでに水は清らかではないし、故郷にあったような自然も見られない。「忘れがたき」とあるけれども、それは逆説...「ふるさと」の喪失

  • search/#サーチ2(V)

    評価点:70点/2023年/アメリカ/111分監督:ウィル・メリック/ニック・ジョンソン語りの重層性とメタ映像。なんでもないホームムービー。父親は楽しそうに娘を抱っこし、娘がカメラを回している。父親は不意に鼻血を出す。父親はその後、脳出血で倒れ、他界してしまう。それから10年、母子家庭で育ったジューン(ストリーム・リード)は、18歳になり、母親から自立したい気持ちが真っ盛りだった。母親グレイス(ニア・ロング)は1人で子供を育てていたが、ボーイフレンドを作り始めた。反発していた娘は、2人が旅行に出かけるタイミングで、友人たちとパーティーする計画を立てる。なんでもない秘密の会だったが、2人が帰ってくるはずの月曜日、待っても待っても母親は空港に現れない。娘はたった1人で母親の失踪を追うが。前作のコンセプトはその...search/#サーチ2(V)

  • 他者はコントロールできない。

    幸運なことに、職場にはかなり多くの「親」がいる。大学生の親であったり、中学生の親であったり。子どもが熱を出しても、理解ある職場であると言える。そういう同僚と話をすると、畢竟、育児や家事、教育の話になる。「ああ、お子さん、小学生?いいなあ、うちの子なんてもう全く親の言うことなんて聞いてくれないで」と言うような話になる。私も、夜泣きに悩む母親と話をしていると、「今が一番おもろいですよ」と先輩ヅラしてみる。しかし、私は自分の子どもが親の言うことを聞いてくれた日々を全くと言っていいほど思い出せない。生まれてすぐから夜泣きが一年以上続いて、発達の明らかな遅れの要素があり、今でもいつまでもお風呂に入ってくれず、靴下だけで裸で見えない敵と戦っている。悪魔の⚪︎歳、天使の⚪︎歳と言われるけれど、いつまで経っても天使の日々...他者はコントロールできない。

  • 理解への無理解

    報連相ができない、ということは、うちの職場だけではなく現代の病理だと思う。いや、私の会社だけかもしれないが。その奢りともいうべき誤解は、発信した連絡は須く相手に理解されるものだという無理解が原因であるように思う。自分の言葉は相手にしっかりと、少しの目減りもなく、理解されるものだ、理解されるべきものだと。しかし、やはり、相手の思いや考えなど容易に理解できない。理解できるなら、長い小説は必要はなかったし、戦争もおこならない。今20年ほどぶりに、昔投げ出した本を読んでいる。(読み終わったら記事にするかもしれない。)ところが、これがてんでわからない。20年前より読解力も知識もあるはずなのに、何もわからない。アドラーを読んでいた時、「説明されてわかったつもりでもそれを実行していくのは容易ではない」というような一節が...理解への無理解

  • うちのプログラミング教育

    うちは子どもが産まれて以来、ずっとプログラミング教育を行っている。保育園から帰ったら、黙々と作業している。何も教えたわけではない。止まらない探究心が、幼児を駆り立てる。我が家でのプログラミング教育は、情報機器端末を必要としない。ただひたすらに、ハサミとノリと、テープと、そして廃材である。まあ、要するに工作をしているのだ。しかし、これがぷグラミング教育そのものであることを、先日プログラミング教育の体験説明会に参加して知った。やろうとする目標を決めて、試行錯誤して、目標に向かっていく。トラブルやミスがあればそれを修正していく。第三者から見て、おかしいかどうかを判断できるという意味でも、工作もわかりやすい。特別な支援や指導が必要な面もある。けれども、我が子たちは十分、クリエイティブで探究心あふれる協働的な学びを...うちのプログラミング教育

  • 東浩紀「訂正する力」

    ゲンロンを立ち上げた東浩紀の新作の新書。本屋に平積みされていたこともあり、気になっていたので、買った。彼の本を実はあまり読んでいなくて、奥さんに薦められた記憶はあるが、結局読んでいないような気がする。語った内容を記録するという形式だったこともあり、かなりライトな語り口だが、話は非常に興味深い。特にネットにばかり侵食されがちな若い世代に読んでもらいたい。まあ、薦める相手もいないけれど。▼以下はネタバレあり▼日本に最も欠けているのは何か、訂正する力である、というのが論旨だ。少し前に聞いた話では、2022年において日本のロケットの発射本数はゼロ。これは失敗しないことを確認してからでないと日本ではロケットさえ打つことができない。対して、アメリカは成功率がたとえ低くてもどんどん打ってみる。打ってみて改善するというス...東浩紀「訂正する力」

  • 千葉雅也「デッドライン」

    研究者で、小説家という千葉雅也のデビュー作「デッドライン」を読んだ。多分に彼の過去を反映していると思われる私小説風の作品。大学院時代に、フランス思想を研究する中、修士論文の締め切り(=デッドライン)に追われる学生を描いている。と同時に、同性愛を自認した語り手が、周りにカムアウトしながら、自分の性欲を満たしていくという日々も描かれている。読んだ後しばらく考えていたが、ネタバレするほどの深い読解・考察ができなかった。しかし、この後の記述は若干ネタバレが含まれているかもしれない。未読の場合は、注意してほしい。(抽象的な記述に留めているが)▼以下はネタバレあり(かもしれない)▼自己をマイノリティであることを自認しながら、自分に課された修士論文の締切と戦う。どうしても書けない。書くことと、自分を掘り起こしていく=そ...千葉雅也「デッドライン」

  • 好きなことに還元できるのか

    夢を描け。好きなことを仕事にしろ。やる気のないことはできない。本当に自分のやりたいことなのか、問いかけろ。こういうポジティヴな言説は時に自己を傷つける。改めて問い直してみる。今いる会社は好きなのか。自分の仕事が好きだから続けているのか。そんなことを毎日鏡の向こうの自分に問いかけて、イエスと答えられることが、社会人としての条件なのだろうか。好きであることを、頑張れることに還元できるだろうか。嫌いじゃない、でも積極的に肯定することもできない。誇れる自分もいる、けれども、極度に臆病になる自分もいる。どっちちかずで逡巡する自己。それが実態であり、その中で常に線を引き直す、ということが生きるということではないか。特に、常に辞めるという選択肢がちらつく現代社会で、明確な目標を持って突き進むという現代人の人間像は、どこ...好きなことに還元できるのか

  • センスの源泉

    あの人はなぜあんなに仕事ができるのか。いや、あの人はセンスがいい。自分はセンスが悪いからわからない。思えば自分が学生だったころから、この種の議論はされていて、センスがいいからレギュラーになる、数学のセンスがない、と安易に評価されてきた。では、そのセンスなるものは、生まれ持って備わっているものなのか。そうだと言い切ってしまえば、話はそこで終了、ということになる。だが、センスはおそらく細部にやどる。細部をみて私たちはセンスの良し悪しを語っている。細部だからこそ、そこは感覚としか言いようのないもののように感じてしまう。細部にセンスが宿るのは、その所作があまりにもその人の本質に関わることのように見えるからだろう。そんな細かいことは普通は意識しないよ、それができているなんて、「センスがいい」その細かいことは、おそら...センスの源泉

  • 普通で良い、と言えない社会で

    子どもが小学生になって、宿題の多さに親の方が圧倒されている。私は本業の都合もあって、ほとんど奥さんに子どもの宿題をみてもらっているが、驚いている。スピードも速く、毎日新しいことをやっては、復習、というのを繰り返している。私が子供の頃、こんなにも宿題をしていたのか、と感じている。そう考えながら、いつもテストがあれば聞いてしまう。何点?と。小学生のテストなんて、と思う。けれども、これに順位がつき始めると、と思うと怖くなる。それまで絶対評価だった我が子への評価が、数値にされることで他人の子との比較になってしまうからだ。「普通でいい」と思って抱き上げた初めての日、社会に出る前には「普通以上」を求めてしまう。それは大人の世界が、普通以上を常に求める世界だからだろう。1億総中流といわれた時代は遠い昔で、常に普通以上、...普通で良い、と言えない社会で

  • 花束を君に。

    年度の後半は、花束を贈り贈られる季節と言える。イベントのプレゼントに、あるいは出会いと別れの季節に、花束が贈られる。人間の本質的な営為の中で、贈与というものがあるというのは、思想の世界でも話題にされてきた。人間だけが贈与する。贈り物をする動物はほかには見られない。もちろん、見立てによっては贈り物のようなものをする動物はあるかもしれない。けれども、その行動と、人間が行う贈与には本質的な違いがあるだろう。そのように考えると、花束は非常に人間的なものなのかもしれないと気づいた。花束は自分で買うことがほとんどないからだ。そして、花束は、生活においてほとんど実用性がないからだ。生活にまったく無駄なものとしての花束、そして贈与の代表的な物質としての花束。他にも贈与するものはいくらでもあるが、贈与するためだけで、そこで...花束を君に。

  • 経済と法は、現代の呪術である。

    何か問題が起こったり、新しいことを考えたりするとき、私たちの観点は大きく二つある。それはコストやリターンの上で最適かどうか。あるいは、法律に抵触しないかどうか。どんなことでも、お金に換算して、時間に換算して是非を問おうとする。ルール違反は、ルールやマナーというよりも、法律がよりどころとなる。私たちは、とくに情報化社会に本格的にどっぷりつかっている現代は、この二点が物事を議論するときの重要な観点になっている。いや、この観点しかない、といったほうが適切だろう。私たちは金に換算できる方法でしか利を考えることができず、法律に抵触しないかぎり何をやっても【一応は】良いと思っている。しかし、この二つは社会という基盤がしっかりしているからこそ成り立つ観点であり、決してそれ以前にあったものではない。その意味で、平安時代、...経済と法は、現代の呪術である。

  • ポジティヴ・シンキングの土台

    長い長いトンネルを少しだけ抜け出たような感覚がある。この二ヶ月ほどずっと体調が悪くて、仕事も忙しくて、何の余裕もなかった。ただ右から左へと物や情報を動かしていくような、生命維持モードで生きていた。「ゴジラ-1.0」の公開に合わせて、神木隆之介がポジティヴモンスターであるとコメントしていた。どんなに厳しい状況でも、前向きに捉えるのが得意であると。私は基本的にネガティヴなので、他人や運命にまったく期待しないというスタンスで生活している。いきなり雨が降ってきても、自分の言ったことが相手に誤解されても、思うとおりに他人が動いてくれなくても、予想よりも悪い結果が出ても、仕方がないとすぐに諦めてしまう。そもそも自分の都合の良いようには世の中はなっていない。そういうメンタルだ。しかし、この二ヶ月はそういうことも考えられ...ポジティヴ・シンキングの土台

  • 日本のリーダーシップとは

    私はリーダーシップなるものを発揮したことがない。人々を主導するどころか自分を主導することも難しい。熱い思いがあるわけでも、仕事に熱意を持っているわけでもない。キムタクが、一番嫌いだという「適当でいい」「どうでもいい」という言葉を多用する傾向にある。人に従って、リーダーに無責任に意見をいう方が向いている。しかし、その一方でどう言うふうにしたら周りを自分の意見に従わすことができるか、ということにも興味がある。おそらく私はこれまでリーダーというものが、強力な熱意や知識や話術で人を思うがままに操っていく人というように勘違いしていたのだろう。少なくとも日本では、そういう人はそもそもリーダーになれない。日本の理想的なリーダー像は、どこまでも周りから「確かにその通りだな」と思わせるまでもなく、自然に思える流れを知らぬ間...日本のリーダーシップとは

  • 同調圧力の正体

    日本には強力な同調圧力があるとしばしば言われる。マスクを例にしてもわかりやすい。こないだまでマスクをしない人間は吊し上げられたのに、5類になったとたん、今度はマスクは顔を覆い隠すからコミュニケーションには不適だと言われる。こういう例はいくらでもある。最近のスポーツ紙は、岡田監督を持ち上げるのに忙しい。優勝した途端、彼を批判することはほとんどタブーになりつつある。甲子園で優勝したチームも似たようなものだろう。しかし、私はここに、自然主義だからだ、という説明を試みたいのだ。マスクをすることが、大勢の流れ、世の流れ、自然なことであると思われた場合、人々はその科学的な見地や社会的な記号性を一切無視して、追従する。それは自分の言うことを聞かせたい、という願望である、というよりはむしろ、自然に従うべし、という強いテー...同調圧力の正体

  • 自然主義としての日本人像

    ずいぶん前に、内田樹の「日本辺境論」を読んだとき、「なるほど!」と思ったのを覚えている。そこにも書かれていたはずだが、日本人はとにかく「日本人とは何か」を考えたがる民族であるようだ。それは確固たる国民像がない、あるいはそれを共有できないことの裏返しだろう。日本の歴史は脈々と……と語られることが多いが、では日本人とはどういう民族なのかと言われても即答できない。あるいは、安倍謹也がいうように、世間を重視して建前と本音を使い分けるという説明もある。恥を重んじる行動原理を説いた人もいるし、空気を読むという言い方も使い古されている。だが、これほどまでに経済大国になりながら、格差が拡大して、ずる賢い一部の人間に富を独占されているにもかかわらず、我慢強く糊口をしのいでいる国民性はいったい何なのだろう。デモに参加するわけ...自然主義としての日本人像

  • 人間関係までも可視化される世界

    SNSによって、私たちは友達リストを作成することを強いられる。SNSから逃れて生きていくという道も残されているが、民主主義の原則が「多数決」である以上、自分が多数派にいることは社会的に生き抜くための重要なスキルだ。そうであれば、SNSを無視して生きていくという道は、ちょっと険しくなる。ということで、私たちはせっせと友達リストを作って、人間関係を可視化することになった。これは極めて残酷な行為だ。どういう情報をどういう相手にいつ公開するか、という今まで感覚的に行っていたことが、すべて記録されるようになった。広告と分かちがたく提供されるSNSなので、人間関係だけではなく、自分の嗜好や好悪さえも可視化される。人間関係という、アナログで、グラデーションで、曖昧だったものが、数値となって示される。友達に入れるかどうか...人間関係までも可視化される世界

  • ゴジラー1.0

    評価点:78点/2023年/日本/125分監督:山崎貴私たちが背負う、【戦後】。1945年戦争末期、特攻兵だった敷島(神木隆之介)は、機体不良のため離島に逃れた。しかし、その機体には不具合が見つからなかった。うつむく敷島だったが、その夜巨大な生物が彼らの駐屯所を襲った。戦えるのは敷島だけだったが、足のすくんだ彼は逃げ出してしまい、部隊は壊滅した。終戦後、故郷の東京に帰ったが、すべてが焼け野原になっていた。街で出会った女典子(浜辺美波)は預けられた子どもを抱えて、敷島の元に転がり込んできた。巨大生物から逃げた自分を許せない彼は、典子と打ち解けることもできないまま、東京湾の機雷を除去する仕事に就いた。「シン・ゴジラ」が空前のヒットになり、自前のゴジラ作品を作ることができずにいた東宝が、新たに打ち立てたゴジラ作...ゴジラー1.0

  • コロナがもたらしたもの

    新型コロナウィルスが落ち着きを見せている。いや、厳密にいえば社会的だったこの病気を、社会的に無視することを決め込んだ。そうすると、嘘みたいに罹患する人が減った。そのあたりの詳細な分析や陰謀論は他の人に譲ろう。結局この新型コロナウィルスなるものは、何を私たちにもたらせたのだろう。私はこの一連の騒動は、時代を加速させたのだ、と考えている。失われた3年というよりは、時代を5年ほど加速させてしまった。コロナによって失われた職業、産業、文化、人材は、おそらくそれ以前から危機的状況にあったのだ。しかし、コロナによってそれが加速されただけだ。少子化にしても、飲食店にしても、不登校が増えたということにしても、観光にしても。そういう厳しい視座が必要だろう。日本の経済や社会は瀕死だった。それがインバウンドや文化的遺産あるいは...コロナがもたらしたもの

  • キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

    評価点:83点/2023年/アメリカ/206分監督:マーティン・スコセッシ誰が「フラワームーン」を殺したのか。第一次世界大戦が終わって、アメリカの南部では空前のオイルブームが起こっていた。巻き込まれたのはインディアンと呼ばれた原住民族だった。彼らは住んでいた土地を奪われて、オクラホマ州にたどり着いた。その土地で原油が取れることが分かったことで、彼らの生活は一変する。白人たちはその権利を巡って争う。戦争帰りのアーネスト(レオナルド・ディカプリオ)は、この土地を仕切る叔父のウィリアム・ヘイル(通称キング、ロバート・デ・ニーロ)に呼ばれてこの地に来た。彼は叔父に言われるがまま、運転手で原住民族のオセージ族の原油の権利をもつ人々に仕えることになった。その中のモリー(リリー・グラッドストーン)と、次第に深い仲になっ...キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン

  • 社会人として欠くべからざる資質は二つである。

    残念ながら、誠に残念ながら年齢はあくびをしているだけでもくってしまう。私はまったく仕事に対して熱意はないのだが、いやでも【中堅】と言われてしまう年齢になってしまった。他人に対して極端に期待値が低い私は、部下たち(正確には後輩たち)に対してまったく何の期待もしていない。だから、「なんでこんなこともできないんだ!」「言われなくてもやれよ!」というような感情はほとんど抱かない。【ほとんど】。しかし、仕事ができるかどうかは、自分のことを棚に上げて考えることがある。なんであいつはあんなに仕事が回らないのか、と。ビジネス書に書いてあることは、正直【甘い】。原則しか書かれておらず、それはもちろん正しいのだが、実態をあまり踏まえていないように感じることが多い。あるいは、そのビジネス書に書かれてあることは、本当にその通りな...社会人として欠くべからざる資質は二つである。

  • ラグビーワールドカップについて

    南アフリカの優勝で、ラグビーワールドカップ2023年が閉幕した。朝の4時キックオフが多かったので、日本に住んでいる私にとって、絶妙に見られる時間帯が多かった。結果、朝早起きして主要な試合は見ることができた。日本代表は思うような成績が出なかったが、準決勝あたりの試合を見ればわかるように、やはりこれ以上の成績を残すのは難しい。あれだけのスピードで当たってくる巨漢を、しっかり止めてターンオーバーを狙う、しかもそれを40分間続ける、ということは並大抵のことではない。農耕民族である日本には、勝ち進むのは難しいだろうというのは、この大会で改めて突きつけられただろう。と、こういう話は、すべて結果を前提にしている。私はこの二ヶ月の試合を見ていて、感じていたのは別のところにある。それは、ひとつひとつの試合の結果よりも、一試...ラグビーワールドカップについて

  • テクノロジーの発展とグローバリズムとは

    テクノロジーが発展していくということは、【他者への依存性を高める】ことである。テクノロジーとは、人間が本来身体の内部に持っていたものを、外部化することにある。大きな荷物をもつのが大変だから、重機で運び、物を壊すために手でやるべきことを、鈍器という身体の外部に委託していく。だから、それを作る者が生まれて、一人でやっていたことを誰かに、何かに、依存していくことになる。私たちはそうして発展してきた。経済や法律、社会、教育といった目に見えないものに関しても同じである。だから、いざ何かイレギュラーが起こると、その脆弱さが露呈する。電車は毎日同じ時間に走っているが、それはシステムという大きな他者に依存しているので、当然事故が起こると多くの人に影響が出る。勉強は学校でするもの、と高をくくっていると、いきなり新しいウィル...テクノロジーの発展とグローバリズムとは

  • 今井むつみ・秋田喜美「言葉の本質」

    最近の新書コーナーで平積みされている話題作。出た当初から気になっていたが、ちょっと他の作品を読んでいたので乗り遅れた感がある。今井むつみの著作はいくつか読んでいて、学生時代からの付き合いである。今回は、タイトルが非常に重く、言語の起源について探ろうという意欲作である。ただ、手法としてはこれまで通り、未就学児を中心とする子どもたちの発達段階をみつめることを出発点としている。中でも注目しているのはオノマトペである。様子や音を模したオノマトペが言語においてどのような意味を持つのか、という点を手がかりにしている。私は言語学を学生時代にかなりかじったので、大変な驚きというような示唆はあまりなかった。(丁寧すぎて少し冗長と感じた部分もある)だが、これから言語学を学びたい人にはよい入門書だろう。やはりタイトルが重く、そ...今井むつみ・秋田喜美「言葉の本質」

  • SNSが証すコミュニケーションの不可能性。

    特に日本人は、言えば分かる、人と人とはわかり合えるものだ、という前提で対人関係を考えているところがある。それは日本語というきわめて言語外状況に依存する言語の特徴を考えてみてもわかることだ。SNSにおけるトラブルには、その「相手はわかってくれる」ことを前提にしていることによる齟齬が多く含まれているように思う。短文でのやりとりが多くなればなるほど、その発信者と受信者の食い違いは顕著になるだろう。だが、本来、コミュニケーションは、絶対に交わることのない平行線を、いかに交わったと錯覚できるかというところにエッセンスがある。まったく別の個体が、同じ思いや考えを共有したり、対等な関係で契約を結んだりできるはずがない。もしそういうことがあり得るとすれば、それは思いを共有できたという錯覚か思い込みであるだろう。少なくとも...SNSが証すコミュニケーションの不可能性。

  • 受け継がれる遺伝子

    やたらと多趣味な上の子を、今度はプロ野球に染めようと思ったわけではないのだが、我らが阪神タイガースが優勝するほどの勢いがあったこともあり、結果この半年で私がプロ野球を話題にすることが増えた。開幕前までほとんどルールも何もわからなかった小学生は、今では阪神の選手の背番号とフルネームが瞬時に言えるようになってきた。シーズン終盤には、オーダーを言えば、打順を覚えて次の打席が誰から始まるのか、というような戦略的なところも理解してしまった。私の家では、基本的にテレビを見ないという方針もあって、子どもが主に手に入れている情報手段は主にラジオである。また、試合をする日ではない休日に、甲子園駅まで出かけてショップで買ってもらったグッズ、阪神のキャップを被って応援するスタイルが浸透した。なぜか子どもが帽子を被ると逆転して、...受け継がれる遺伝子

  • 働き方とは。

    ワークライフバランスとは何だろう。仕事とプライベートとの割合を、【ちょうど良い具合】にするべきだという理想を謳ったものだ。子育て世帯にしてみれば、そんな絵に描いたような餅はただ言葉だけが上滑りして、空虚なものに感じる。子どもが保育園で、目の前にないアイスを巡って同級生と言い合いになったことがある。「○○のアイス食べたるねん」「ええ~、それ○○のアイスやのに!」目の前にないアイスなのに、食べられるわけがないのに、言葉上で【取り合う】ことで喧嘩してしまうという成長に親は驚いた。「ワークライフバランス」も似たようなところがある。働かなければ子どもが育てられない。働けば、子どもにかける時間がない。【ちょうど良い具合】なんていう議論はほど遠い。実際には、仕事も育児も、家事も、すべてを【我慢】している状態だ。仕事で自...働き方とは。

  • 体調と心調と。

    夏の終わりに、コロナになった。症状は、夏バテや熱中症のようなものだと思っていたら、そうではなかったようだ。数日間の監禁生活を経て、無事回復したわけだが、それからどうも調子が悪い。たまっていた仕事は誰かが処理してくれるはずもなく、山積みになって、私のせいで職場の周りの人まで次々に倒れていったという話も聞かされた。(まったく罪悪感はありませんけどね。)仕事をこなしてもこなしても、区切りが見えないという状況が続いていた。そうこうしているうちに、子どもがアデノ・ウィルスに罹患して、ゼロ距離射程で唾液やら咳やらをかけられて、私は再び体調不良になった。熱はない。だから仕事を簡単に休むこともできない。昨年もこの時期に体調を崩していたのだが、それは親知らずを抜いたという明確な理由があったので心配はしていなかった。今回はど...体調と心調と。

  • イコライザー THE FINAL

    評価点:52点/2023年/アメリカ/109分監督:アントワーン・フークア残酷描写に必然性を感じないため、品のない印象を受ける。イタリアのシチリア島を訪れたマッコールは、ブドウ園に潜んでいたマフィアを一掃した。その帰り、銃撃されて重傷を負うことになる。その近くの街で倒れていたところを、発見されて地域の医者に助けられた。次第に回復していくマッコールは、とっさに「ロベルト」と名乗り、周囲と打ち解けていった。しかし、街をリゾート開発させようと考えていたマフィアたちが、住民への弾圧を強めていた。デンゼル・ワシントンのアクション映画、「イコライザー」シリーズの最終章。最後まで気づかなかったが、「マイ・ボディーガード」のダコタ・ファニングとの競演である。いわゆる一般人だと思っていた人が、実は凄腕エージェントでばったば...イコライザーTHEFINAL

  • 岩井克人「経済学の宇宙」

    ソシュールなどの構造主義の旗手となった考え方や、ポスト構造主義の思想家たちの影響もあり、経済学、ことにマルクスについてはいくらか調べていた。そのこともあって、経済学についてはほとんどまともに勉強したことはないが、関心が強かった。岩井克人がその半生を語るこの著作についても、文庫本になる前から気になっていたが、かなりの長編であることを知っていたので手に取れなかった。もう一度調べると、文庫本になっていたので、今回読むことにした。幼少期から、現在までの研究者としての半生を、インタビュアーを通して語っている。当時の経済学の様子や専門的な内容も含まれるので、経済学の入門書としてもおもしろいだろう。私はそのあたりの詳しい背景を知らなかったので、興味深く読んだ一方、内容はほとんど理解できなかったと言って良い。これから経済...岩井克人「経済学の宇宙」

  • AVA エヴァ(V)

    評価点:46点/2020年/アメリカ/97分監督:テイト・テイラーちぐはぐな映画。エヴァ・フォークナー(ジェシカ・チャステイン)は父親との関係もあって若くして薬物とアルコールの依存症だった。どうしようもなくなった彼女は、軍隊に入隊し、父親が亡くなったことを機に除隊した。しかし、トラブルを起こして窮地に立たされ、軍隊の時よしみだったデューク(ジョン・マルコヴィッチ)に救われる。彼はエヴァを暗殺者に仕立て上げ、40人もの要人を殺害させた。そんなある日、彼女にサウジアラビアの軍人将校を病気に見せかけて殺すという指令が出される。何の問題もない簡単な仕事だったはずだが、トラブルが起きてしまう。いわゆる女アサシンのアクション映画。古くはリュック・ベッソンの「ニキータ」あたりから同じようなジャンルは撮られている。「ソル...AVAエヴァ(V)

  • THE GUILTY/ギルティ(V)

    評価点:76点/2018年/デンマーク/85分監督・脚本:グスタフ・モーラー見事なスリラー作品。緊急通報室のオペレーターのアスガー(ヤコブ・セーダーグレン)は、元刑事で最後のオペレーターとしての仕事に就いていた。この日が終われば、翌日晴れて刑事に復帰する予定だった。あと数時間で勤務が終了するという段階で、女性イーベン(イェシカ・ディナウエ)から電話がかかってくる。元夫に捕まってどこかに誘拐されている、という内容だった。異常な様子を察知したアスガーは、パトカーに出動を要請するが、詳しい状況がつかめない。機転を利かせたアスガーは、彼女の自宅に電話を入れるが。公開当初、見に行きたいと思っていたが、結局いけなかった作品。すでにネトフリで、ハリウッド・リメイクもされているらしい。いわゆるシチュエーション・スリラーで...THEGUILTY/ギルティ(V)

  • ブロークンシティ(V)

    評価点:55点/2013年/アメリカ/109分監督:アレン・ヒューズいかにも中途半端か。刑事のビリー(マーク・ウォールバーグ)は、暴行容疑の市民を一方的に撃ち殺したとして、追及された。嫌疑不十分で不起訴になったが、当時の署長から辞職するように促される。7年後、私立探偵になったビリーは、そのときの署長で現市長のホステラー(ラッセル・クロウ)に呼び出される。妻が不倫している可能性があるので、調査してほしい、とのことだった。市長選が間近に迫っていたが、高額の報酬に目がくらんだビリーは、二つ返事で受け入れる。妻が訪れたのは、市長選の対抗馬とされていた男ヴァリアントの、参謀のアドリュース(カイル・チャンドラー)だった。手頃な作品を観ようと思って、何も考えずにアマゾンプライムの再生ボタンを押した。マーク・ウォールバー...ブロークンシティ(V)

  • ま行の映画批評

    ま行の映画批評マーキュリー・ライジング(V)マイアミ・バイスマイティ・ソーマイ・ブラザーマイ・ボディーガードマイノリティ・リポートマイレージ、マイライフ魔女の宅急便(V)マスター・アンド・コマンダーマッチスティック・メン摩天楼はバラ色に(V)マトリックスマトリックス・リローテッドマトリックス・レボリューションズマトリックスレザレクションズマッチポイント(V)マッドマックス怒りのデスロードマッハ!マシニスト(V)マネー・ショート華麗なる大逆転まほろ駅前多田便利軒マルホランド・ドライブ(V)マリー・アントワネットマン・オブ・スティールマンチェスター・バイ・ザ・シー(V)万引き家族Mr&Mrsスミスミスター・ノーバディMr.ノーバディ(V)ミスティック・リバーミスト(V)ミッション:8ミニッツミッション:インポ...ま行の映画批評

  • ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE

    評価点:70点/2023年/アメリカ/164分監督:クリストファー・マッカリーやはり見終わったら全力疾走したくなる。ロシアの最新潜水艦は、レーダーなしの推測航法(デッドレコニング)によって航行していた。この技術のために最新AIを搭載していたが、そのAIが暴走し、撃墜される。IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)のイーサン・ハント(トム・クルーズ)のもとに、新たな指令が下される。それは、特殊な鍵を持っている元MI6のイルサ(レベッカ・ファーガソン)を確保すること。中東の砂漠に向かったイーサンだったが、イルサにかけられた賞金を狙った賊に襲われる。決死のノースタントや、直前に俳優協会によるストなど何かと話題の人気シリーズの最新作。主演のトム・クルーズはもはや日本でも知らない人はいないほどの人気振りだろう...ミッション:インポッシブル/デッドレコニングPARTONE

  • ジュラシック・ワールド 新たなる支配者(V)

    評価点:51点/2022年/アメリカ/147分監督:コリン・トレヴォロウ旧態依然、同工異曲、大同小異の傑作。ジュラシックワールドの崩壊によって、全世界に太古の生物があふれかえっていた。オーウェン(クリス・プラット)と、クレア(ブライス・ダラス・ハワード)は、ジュラシックパークの遺伝子科学者の一人、シャーロットのクローンであるメイジー(イザベラ・サーモン)をかくまうために、ひっそりと山奥で暮らしていた。しかし、思春期になったシャーロットは自分が何者かを知りたがり、頻繁に町へ出かけるようになっていた。そして、彼女の元に、追っ手が迫っていた。一方、エリー・サトラー(ローラ・ダーン)は、異常な繁殖力を持つ巨大な昆虫が各地で蝗害をもたらしている原因を調べていた。新興企業のバイオシンが開発者であることを知った彼女は、...ジュラシック・ワールド新たなる支配者(V)

  • 「エヴァンゲリオン」の衝撃

    もしかしたら、どこかのブロガーか誰かが似たようなことを言っているかもしれないが、そういう言説があるかどうかを探すのも億劫なので、最近思いついたことをつらつらと、誰のためにでもなく書いてみようと思う。いまさら、エヴァンゲリオンについてだ。とりあえず、テレビ版やコミック版は横に置いておいて、いわゆる新劇場版について、その対象とすることにする。どちらでも大して変わらないかもしれないが、考える上では対象を、とりあえずは絞った方が良いだろう。私がふと思ったのは、「○○インパクト」とは一体何だったのか、ということだ。新型コロナの「第○波」というニュースが出るたびに、「きたきた、ニアサードだ!」とか周りに言いふらしては、苦笑されていたので、第9波になったかもしれないと言われると、そういや、「ファースト」から「ファイナル...「エヴァンゲリオン」の衝撃

  • 君たちはどう生きるか

    評価点:47点/2023年/日本/124分監督・脚本:宮崎駿ちぐはぐな世界観。太平洋戦争中、火事で母親の久子を亡くした真人(声:)は、失意のまま東京を離れることになった。久子の妹、ナツコと父親が再婚し、彼女の実家に父親とともに疎開することになったのだ。大きな屋敷に連れてこられた真人は、敷地内にうち捨てられた塔を見つける。塔に住むアオサギが、真人をしきりに誘ってきて……。「風立ちぬ」でジブリをたたむと宣言してから、10年。やはり作りたい作品がある、と宮崎駿が引退宣言を撤回し、ジブリをもう一度立ち上げるというわがままに、観客たちが付き合わされたという作品だ。しかも、予告編もストーリーも、公開日まで一切明かさない。当日パンフレットもナシ、あるのは鳥が描かれた一枚のポスターのみ。何もかもが異例の作品公開となった。...君たちはどう生きるか

  • RUN/ラン(V)

    評価点:66点/2020年/アメリカ/90分監督:アニーシュ・チャガンティ最後まで観客を逃がしてはくれない。その子は超未熟児で生まれ、肢体不自由、糖尿病、ぜんそくなど先天的な疾患が数多くあった。名前はクロエ(キーラ・アレン)と名付けられ、大切に母親に育てられてきた。彼女が年齢的に大学を目指せるようになったころ、大学からの合格通知を心待ちにしていた。しかし、返事はない。糖尿病から、チョコレートを我慢できなかった彼女は、母親が見ていない隙に紙袋からチョコを探し出す。そのとき、母親名義の薬が見つかり、小さな疑念を持つようになる……。時間的に短い作品しか見られなかったので、とりあえず再生ボタンを押した。やはり事前の情報をほとんど持たずに、本当はアクション映画が見たかったが、めぼしいのが見つからなかったので、こちら...RUN/ラン(V)

  • インディー・ジョーンズと運命のダイヤル

    評価点:53点/2023年/アメリカ/152分監督:ジェームズ・マンゴールド冗長すぎる上映時間。失われた冒険心。第二次世界大戦中、ナチスが各地の財宝や遺跡を集めて、ベルリンに送っていた。そんな中、インディ(ハリソン・フォード)と、バス(バジル。トビー・ジョーンズ)は、キリストを殺したというロンギヌスの槍を取り返そうと、ナチスの列車に忍び込んだ。しかし、そこにあったのは偽物で、アルキメデスが作り出したというアンティキティラという道具を見つける。世界の法則を見いだしたとされる遺跡で、ナチスの教授も狙っていた。命からがらそのアンティキティラを手に入れたがそれは半分しかなかった。時は流れて、1969年宇宙飛行士がはじめて月面着陸に成功したと、アメリカでは話題になっていた。そのパレードの日、ハンター校を退職すること...インディー・ジョーンズと運命のダイヤル

  • セインツ ~約束の果て~

    評価点:77点/2013年/アメリカ/98分監督・脚本:デヴィッド・ロウリーまさに西部劇、という感じ。銀行強盗を試みたボブ(ケイシー・アフレック)と幼なじみのフレディ、ボブの子どもを宿していたルース(ルーニー・マーラー)は、失敗し逃走する。父親の農場に立てこもっていたところを、ルースの発砲で警官が負傷した。幼なじみフレディが殺されたことで、ボブは刑務所に入ることを覚悟し、ルースの身代わりに有罪となった。子どもが生まれ、4年が経ったとき、負傷したあの警官パトリック(ベン・フォスター)が、「ボブが脱獄した」と告げる。東京大学の元総長で、映画研究者でもある蓮實重彦が、著書の中で絶賛していた作品。彼は一人この映画の素晴らしさを見抜き、監督にすぐさま英語でファンレターを書いたと言う。映画は90分で終わらせられる、と...セインツ~約束の果て~

  • 遊びと仕事とにある境界

    子どもと遊ぶ。その様子を見ていると、彼らがやっていることが、ほとんど仕事でも必要な能力を、自然と身につくだろう、と思える。能力差がある相手となら配慮する。ルールを説明して共通の理解を得る。その場でルールを変える。飽きたら別の遊びを始める。その家や場所でやってはいけないことを確認しながら遊ぶ。相手の表情や反応をみて、遊ぶ内容や方法を修正していく。工夫と配慮に満ちた小学生たちのやりとりは、ほとんど仕事をする際に求められる能力がすべて含まれている。一人で遊ぶことももちろん大事なのだろうが、こうやって人は育っていくのか、ということを痛感させられる。そんなことを考えると、私たちはいつの間にか、「遊ぶこと」と「仕事」を分けることで生活しているのだということに気づく。プライベートとパブリック、平日と休日。そこには明確な...遊びと仕事とにある境界

  • ボードゲームの世界

    いつの間にか、自宅にボードゲームとカードゲームが並ぶようになった。子どもたちは、毎日のように「ゲームしよう」と誘ってくる。少し前までは、負けるとすぐに不貞腐れていたが、最近はそうでもない。(そうでもあるときもあるが)子どもが生まれるまでは、ほとんどこの種のゲームをしてこなかった私だが、子どもたちとやるようになって、そのおもしろさに気づかされる。上の子が特に好きなのは、「カタン」というボードゲームだ。六角形のマップがカード上になっていて、それを組み替えることで毎回違うマップで遊ぶことができる。マップの中央に数字を置いて、その縁に自分の街や道を築く。二個のサイコロを振って、その数字が置かれているマスに、街に接している場合は資源がもらえる。資源は数種類あって、それをあつめて街を大きくしたり、道を延ばしていく。お...ボードゲームの世界

  • 岸辺露伴ルーブルへ行く

    評価点:71点/2023年/日本/118分原作:荒木飛呂彦監督:渡辺一貴もっとほしかったルーブル感。次の作品にむけて、顔料を研究していた漫画家・岸辺露伴(高橋一生)は、不意に十代の記憶を呼び起こす。「この世で最も黒い絵はなにか。それは山村仁左右衛門が描いた絵だ」その思いにとりつかれた彼は、モーリス・ルグランという画家が描いたという黒い絵をオークションで競り落とす。しかし、自宅に入った賊が、絵を奪おうとして露伴は襲われる。取り返した絵の裏に、「ルーブル」と書かれていた。気になった露伴は、パリのルーブル美術館にあるという仁左右衛門を求めてフランスに向かう。NHKで放映されていた「岸辺露伴は動かない」シリーズの劇場公開作品。まさか映画になるほど人気になるとは思っていなかったが、録画しつつドラマのほうは追っていた...岸辺露伴ルーブルへ行く

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