ハートフル映画だと思ってみてみたら、何のことはないサスペンス映画だった。でも、B級映画だとはわかっていても、ぐんぐん引き寄せられる面白い映画であった。ちょっと信じられないストーリーだけど、まあこれが映画というものさ。面白かった。ストールン・ドリームズ誘拐された娘(2015/カナダ)(ジェイソン・ボルク)75点
映画館で新作をランダムに見ています。小演劇も好きですよ。
プロフィール 性別 男性 自己紹介 休みは大体映画館かその近くを闊歩しています。自然と繁華街というところを歩くことになります。心は大自然にあこがれながら、結局便利さに負けているような気もします。
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新キャラ超美人署長現る。という事で面白いけれどその美人ぶりの前で男性陣がすべてとろーんとしてしまうのが、ちょっとやりすぎかなとは思うけれど、でも読んでしまう。大森署の常連たちはまた出没するし、一日だけ見た目をすべて記憶してしまうという新人署員もユニークで、しばらくこのシリーズは目が離せないです。今野敏としては気楽に書き上げた作品なんでしょうな。まだまだ読者にとって何が一番面白いかなというものを求めている作者に拍手。署長シンドローム(2023今野敏)(講談社)75点
The Timeless Letter「MARIONNETTE~悪魔の口づけ」(作・演出 前田アキヒロ) at ABCホール 80点
1年半前に公演した再演である。筋書きはよく覚えているので、今回はパフォーマンスだとか、演出、照明、俳優の演技に注目する。前田氏はミステリーがお好き。途中で犯人が出て来るなあと思ったら、どんでん返しを2回ほどやってのける。これは前回と同じ。でもとても面白い。今回はパフォーマンスの集団ダンスがとても優雅でしかも恐ろしげなる感じがとてもいい。白眉だ。照明も斬新。こんな手があったんだとほくそ笑む。主役の川田氏は今回はロンドン警視庁警部役。前回は悪の権化役でかなり演技に凝ってたが、今回は素直で余裕のある演技で素晴らしい。主役が変わることでこうも演劇が変わる。演劇って怖いなあと思う。あと、ローズ役の女優が限りなく美しい。見とれました。という事でとてもいい一日となりました。TheTimelessLetter「MARIONNETTE~悪魔の口づけ」(作・演出前田アキヒロ)atABCホール80点
オリジナルはとても感動し、館内で号泣したことを覚えています。本作はストーリーを知っていたからなのか、そこまではいかなかったかなあ、、。オリジナルはドラマ風、本作は何かメルヘン調でかなりコミカル風でもある。その基調の違いがしかと感じられる。岡田はかなり意識した演技をしているようだ。ルックスがいいけど中身がないなんて役柄をうまく演じている。清原は見た目どおり、清楚で透けて見えるほど素晴らしい。きれいだ。後半は二人の馴れ初めだの少々説明調が続く。それほどうまく処理している風でもないが、この辺りは宮藤と山下との葛藤があったんだろうか、、。全体的に、やはり最後がものすごい感動編にならなかったことはあるものの、やはり山下映画であった。山下敦弘、まだまだ健在なり。1秒先の彼(2023/日)(山下敦弘)80点
高島太一を殺したい五人(石持 浅海 著)(光文社 2022) 75点
ちょっとひねくれてるしかし斬新で鋭い切り口のミステリー作家といえば石持だろう。本作も随分あり得ないほどの設定を仕組んだミステリーだが、読み始めて中盤まではとても面白くページが進むが、そのうち犯人像が見えて来るが、これは仕方のないところか。中盤以降の展開が、少し冗漫で、これはこの作家の時々感じる悪いところ。まあ、でも許せる範囲。どうしてこんなにいつもあり得ないほどのぎりぎりの設定でミステリーを書くのかなあと思うけれど、これが彼の性格なんでしょうな、また彼の魅力でもあります。彼が普通のミステリーを書いても誰も読まないでしょうし、、。いやあ、また次作を期待しています。高島太一を殺したい五人(石持浅海著)(光文社2022)75点
やはり面白い。本当に警察学校がこうだとは思わないが、鋭く切れ味がいい。ミステリーではこれ以上のものは求めることはできないとも思われる。短編なので、私のようにだらしない人間には、5,60ページぐらいで話が変わるのはありがたい。次作はまだだろうなあと思いながら、本を置く。特にラストの卒業式の話は唖然とする。切れすぎる!新・教場(長岡弘樹著)(小学館2023)80点
熊切監督作品なので見る。でも、菊池凛子の演技を見る映画かなあ。ストーリーは一人ヒッチのロードムービーです。なかなかシリアスで、現実をよく見てる。でも、駐車場で急に車がいなくなったりした後、現代の日本女性が一人でヒッチをするかねえ、というのがまず疑問。お金はなくとも、電話もあるし、なんとかならねえの?(スマホは壊れている模様)とか、この日本、警察でも行き事情を説明すれば何とかなるでしょう。これで冒頭からイライラ気味。でもしかし、この強引でもない設定でないとヒッチに行かないから、まあそこは我慢。で、その後は通常のご鑑賞。あっと驚いたのは、セックスを条件に車行きを選択する女の心情。こんなことあるかな?でもこうでもしないと、それ以降のヒッチのありがたさが身に沁みないからかなあ、それでもちょっと信じられねえ。最後の...658km、陽子の旅(2022/日)(熊切和嘉)70点
ティッシュの会「大過なく」(作・演出 森たか正紀 出井友加里) 75点 at中央公会堂
舞台というより観客と同等の高さの床面に男と女。何やらコンビニで買ったか、食料を手にしている。大道具小道具等一切なし。自然と彼らの身体に我々は注視する。そして何やらつぶやき始める。男が問い女が答える。その逆もあり。いわゆる人生問答でもある。何か時間が経ってくると、彼らはちょっと高尚なボヤキ漫才のようにも思えてくる。でもそれほど面白くはない。一通りの他人についての人間描写を述べる。まあ、そういうこともあるかな、と思えてくる。彼らはまだ若い。といっても、恐らく中年の疲弊感はある。でも、作られたモノでもある。演劇の可能性を探求しているようにも思える。彼らのそれが演劇だとすれば、どこまでが即興なのだろう。何かかなり練習してる感も見えたが、、。でも面白いです。こういうのも気軽でいいなあとも思える。ティッシュの会「大過なく」(作・演出森たか正紀出井友加里)75点at中央公会堂
灯台からの響き (集英社文庫)(2023 宮本 輝 著) 80点
珍しく宮本輝の本を読む。私も老いを感じるようになってから、主人公の気持ちが手に取るようにわかる。日本全国の灯台を旅しながら、生前の妻の秘密を紐解いてゆくというミステリ形式は最後まで集中力を断たない。文章は平易で、出て来る登場人物もすべて市井の人たち。どこにもある幸せを人は幸せとは感じない。なくして初めて、幸せだったことを噛みしめる。等身大の主人公の行動、思いに宮本輝の今日を見る。素晴らしい小説でした。灯台からの響き(集英社文庫)(2023宮本輝著)80点
あの短編名作「透明人間~」を書いた作家の長編もの。読み続けると、いろんな要素が入っていて、これは読みごたえがあるわいとほくそ笑む。どんな最後になるのだろうと期待していたら、しかしちょっとあんなのででいいのかな?と疑問がわく。最後の謎ときが、一つは犯人二重説。こんなのでいいのだったら、いくらでも展開可能だね。また、美々香さんの突発性難聴なんて、別にこの犯罪に直接関係しないのに、オーラスに持ってきたり、また血液型でも少々無理があったり、いつも程私はにこにこ顔ではないが、まあページを繰るのがもったいないほど途中面白く、許しちゃおう。力作ではあります。録音された誘拐阿津川辰海(2022光文社)80点
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ハートフル映画だと思ってみてみたら、何のことはないサスペンス映画だった。でも、B級映画だとはわかっていても、ぐんぐん引き寄せられる面白い映画であった。ちょっと信じられないストーリーだけど、まあこれが映画というものさ。面白かった。ストールン・ドリームズ誘拐された娘(2015/カナダ)(ジェイソン・ボルク)75点
ミステリーの秀作と誉れ高い本作を見るまで時間がかかる。なんでかな。それほど長くもないし、嵐の中の連続殺人だし、興味深い話であります。この小説、文庫本をまず読む。最初の登場人物のページを何度見直したか。登場人物が少ないわりに人物描写が深くないのか、よくだれがどうなのかわからないのだ。ラストでキーとなる女子大生にしても、人物欄では完全に女性だと書かれているし、(というのはボクという表現がどうも変なので、こういう使用方法の人だと勝手に認識。これは文庫出版社に問題あり。)なぜか最後まで一気に読み進めないミステリーではあった。だが設定のスケールが大きく、鍾乳洞まで出てくるとこれは異次元の世界観だなあと思う。その意味でも加点したい。ラストのホントのラストは面白かった。麻耶はこれを書きたかったのかなあ、。。螢(幻冬舎文庫)(麻耶雄嵩著)(2007)80点
やあ、久々の劇団カオス。コロナ禍以降だからもう3,4年ぶりか。この劇団はひょっとしたら学生演劇を見た最初かもしれない。脚本は自前ではないが、とてもよく練られたホンを作る。感動作も多く、いつも席を立つときはなかなか余韻が多い劇団である。さて、今回の出し物、なんと高校生の文化祭と体育祭を合体させよ、という志向で生徒たちが悩み、考える話。なんと、卑近な話かなあと思っていたが、これがなかなか面白い。お話って、シンプルな方が面白いという見本のような劇です。なんせ、年齢が近い。役者たちも無理せず演技しているようでイキイキしています。明るい学園ものみたいだが、主題が奥に隠されていて、生徒たちの自治を犯す権力者構造とそれに自然と立ち向かう無垢な生徒たちの結集力が描かれる。意外と感動作だったので、ちょっとびっくり。これだか...劇団カオス『OH!文化体育祭』(作・加藤のりや演出・米倉ネクラ)at大阪公立大学・田中記念館80点
シリアスで結構難解な演劇で知られる(と勝手に思っている)第2劇場。ところが春眠暁を覚えずで、阪大演劇でまたもや「ちゃうかちゃわん」に引き続き夢のお話。ちょっと肩透かしというか、またもや夢の話で、しかも舞台のど真ん中にドカーンとベッドが配置されている。いい夢を見たいという女の子が出てきて、睡眠不足なのでもっと眠りたいとか聞いていると、こちらに伝染し。まさかの私自身が夢のまた夢、劇中劇とも思われ、舞台と自分自身がとりとめもない状態になり(要するに(少々お眠りに))途中はっきり覚えておりません。気づくと劇は終わりになりそうで、どうも第2劇団といえど、楽しくあらばそれは人生なんだ、とでも言いたそうな夢中夢でありました。はい、それであまり、評価はできませぬ。とはいえ、かなり自由な楽しい劇だったような、、。第2劇場「無ー夢(ムーム)」(作・演出楠瀬百合)at阪大懐徳堂70点
このシリーズも10巻。スピンオフも加えると13巻らしい。今回は、あっという間に読み切ったが、それでもいつものさわやかさは残る。でも、ちょっと当たり前すぎたかなあ、、。深さが不足気味。これだけシリーズ化しているともう書くことにも窮するのかなあ。そんなことを考えてしまう本作だったが、でも骨格の竜崎本人の姿はまごうことなきほんものを持っている。ファンはずっと読み続けることだろう、、。一夜:隠蔽捜査10(今野敏著)(2024新潮社)80点
秀作。人を愛するっていう本質的なことの意味を問う純粋培養映画です。前半は通常の、とは言えないか若い二人の恋愛を。後半は愛する人を失った後にその母親を世話する過程で、我々が無償の愛に気づかせられる話。全体を見渡して浩輔の世界観が透いてくるのが美しく、大きなものであることに気づく。鈴木亨平の演技も大いに驚くが、後半の重要どころ役阿川佐和子がすべてさらっていった感もある。こういう透明感のする世界は現実を考えるととても心地よくさえある。いい映画だと思う。エゴイスト(2022/日)(松永大司(80点)
短編の名手、長岡による今までの短編をまとめた作品だ。設定が警察関係の学校や刑務所でなくてもまさに同じく面白さが堪能できる秀作ぞろい。最近、ミステリーを読むと名前だけで違和感があり、どうも人物に入っていけない小説が多い。そんな苦痛もこの作家には全くない。どうやら私も世の中から遠く置き捨てられた人間であるらしい。この小説を読んでそんなことを考えた。血縁(集英社文庫)(2019長岡弘樹著)80点
春たけなわ。春眠暁を覚えず、という理もあり、春はどうも眠い。そしてこの劇はまさに夢の中のお話。シンプルな話なんだけど、はちゃけて楽しい。さすがヤングの勢いもあり、青春真っただ中といった感じ。うらやましいのう、、というわけで文句なしのハジケタ青春感が愛しいぐらいよかった舞台でした。ダンスもよし。セリフもよし。もちろん役者たちみんな素晴らしい。青春ってこんなに良かったか?劇団ちゃうかちゃわん「夢にまで魅せられて」(作・唯端楽生演出・近未来ミイラ)at阪大学生会館80点
昨年、他劇団ではあるが、上演され名高い賞を受賞した今話題の演劇であります。ストーリーはわかっていたが、劇団と演出が変わるとこれほど変化するものなのか、と驚いた演劇でした。現代の戦争に見立てることは我々観客のなすべき姿勢であろう。最近続いている戦争の気運がどうしても気になり、この劇の時代である第2次世界大戦とは思えぬ背景と彼女たちの心根がずしんと我々の心に引っ掛かり、重くのしかかる。ラストのパレードは彼女たちにとっては戦争の終わりを告げる明るいものでないことが、さらに我々に戦争のむなしさを訴えてくる。素晴らしいラストであった。しずかに感動の涙が頬を伝い、席を立てなくなった次第。私も老い来たかなあと思う。ピッコロ劇団オフシアター「パレードを待ちながら」(作・ジョン・マレル演出・中島深志)atピッコロシアター中ホール80点
ほの暗い女性の物語である。母親、妹はもうこの世にいないが、妹はときどき姉と会話をしに来る。子供時代からの姉のうら寂しい人生の記録である。その姉をごひいきことねさんが演じている。コロナ時代に見ていないので、ずいぶん久しぶりの対面。もうそれだけで実はうれしい。その主人公、ちょっとした会話からずいぶん精神をやられているかな、と思う。普通の人とは感情面の起伏が激しい。見ていていたたまれない。琴音さんを見るのはうれしいが、ファンとしては少々きついものがある。もう一人のご贔屓役者、川田恵三氏は今回は、珍しや、脇役に徹している。これは珍しい。相変わらずうまいが、それほど難役でもない。と思いながら見つめていると、終局に来て、ずいぶんと寂しい終わりに、、。この物語にしては、希望が見えない、ある意味不思議な演劇である。なんだ...HAYASHI「流れゆく雲を、空はただ見つめている」(作・演出林龍吾)於CUBE0380点
何か思いつめたものがある二人のロードムービー。幼馴染、そばにいてくれるだけでいい友、さあ火の鳥を探して当てもない旅に出る、、。最初なんだかなと思ったが、慣れてくると、気にならなくなる。それが映画というものさ。ところどころ人生の真実がまばゆく見えてきて、素晴らしい人生賛歌に静かに感動してしまった、、。ラストは思い切り、ハッピーにしちゃって、でもこの時代、許すよ。いい映画だ。ニワトリ☆フェニックス(かなた狼)80点
WINNY開発者とWINNYによる警察内部資料流出とを対比させ、ソフト開発者の自由、すなわち人間の自己解放の自由さをテーマにした作品だと思われるが、ちょっと長いかな。テーマはもう途中で十分観客に伝わるので、その他の発展があればもっと重圧で深みが増したかなと思う。2時間ずっと裁判劇に終始している。観客はそんなものを見たいのだろうか、と。とはいえ、東出はさておき、この映画、三浦貴大が最初顔を見ただけではわからなかったが、本人確認の後、今までにない演技をしていることに気づく。関西弁もそこそこうまく、何より、この退屈な映画を引っ張っている唯一の人であります。うまくなったなあ、、。それだけでこの映画は加点対象です。Winny(2022/日)(松本優作)80点
原作はずいぶん前だが、読んだことがある。結構ミステリーとして面白かった記憶があった。そして映画を見ていると、、、。あまり知らい俳優たち(けれど一般の人たちからはそこそこ有名らしいが、、)、映像の稚拙さ、展開の妙がないことなどから、ありきたりのB級映画かなと思う。なにより、ミステリーなのに怖さが欠如しているのが痛い。突っ込みどころの多いのも難点。ある閉ざされた雪の山荘で(2023/日)(飯塚健)55点
密室に関するトリック解説指南のような小説です。てんてこもりすぎて読むのがしんどくなってしまったきらいも、、。面白いけれども、実現の可能性はどうなんだろうと思ってしまうて手合いが多いかなあ。でも確かに力作です。通常の密室物の3倍は手がかかっています。密室黄金時代の殺人雪の館と六つのトリック(宝島社文庫)(2022鴨崎暖炉(著)75点
予告編がよかったので行って来ました。なるほど今どき珍しい男女の心のひだを鮮明に映し出した秀作でした。今どき珍しいと言ったのは、この映画、男女のプラトニックラブを描いていて、それを男女の人生の核にしているからです。昔懐かしい名作映画「終着駅」に妻の夫を加えたトリプルの男女トライアングルにしている感じで、そこがとても新鮮でした。3人で会っていて、旦那が横にいるにかかわらず、愛する男と会話を交わすというスリリングなシーンが続き、しかし一方ではそれがジレンマにもなります。あんなところに旦那がいたら、私だったら心筋梗塞を起こします。韓国語で会話をしているのですが、韓国語を勉強しているという旦那は会話の内容が多少はわかっているはずです。この映画の題名になっているように、二人の愛は前世から続いていると彼らは思っている。...パストライブス再会(2023/米=韓国)(セリーヌ・ソン)80点
アキンの映画、期待したんだけどなあ。前半は人種差別の悲哀さ、たくましさを描いて秀逸。けど、後半はなんだか、ただのグレ映画だなあ。何を描きかったのか分からん。ドイツでヒットしたのいうが、主人公を知っているかどうかで、違うのか。よく分からん映画でした。RHEINGOLDラインゴールド(2022ファティ・アキン)60点
うーん、噂に違わぬ映画作り。3時間、画面にくぎづけだ。話は、何かどこかにあったようで、シンプルだが、だからこそ映像のダイナミズムが冴える。美術が圧倒的。俳優陣も豪華絢爛。S・ランプリングなんて表情をヴェールで隠しているのに、目力がすごい。さすがだねえ。映画料金、お得な感じがするほど堪能できました。デューン砂の惑星PART2(2024ドゥニ・ビルヌーブ)80点
評価しづらい映画ですね。感想は書けるけど、今までのようなノーランの流麗な画調があまり見られず、ずっと鳴り響いている音響だけがノーランだと知らしめています。映画構成としてはオッペンハイマーとストローズの善悪の対比が見事ではある。色彩もカラーとモノクロ。ストローズを悪者に強調することでオッペンの罪深さを薄める効果はあるのかなあ。ほんとアメリカ的でもあります。私が一番この映画を見てて、劇場全体が急に水に浮いてしまっているのではないかと錯覚したシーンが、アメリカ国民が狂喜するのが、原爆実験に成功した時ではなくて、ヒロシマ原爆投下の日であることだ。これは日本人にとってはきつい。現在のウクライナ侵攻といいイスラエルのハマス攻撃といい、まったく人間の取る行動は同じ。愚か。人間そのものの真実の姿を真正面から描写するに恐ろ...オッペンハイマー(2023米)(クリストファー・ノーラン)80点
カフカ原作の迷宮作である。演劇、映画でも結構制作されているが、これは珍しく日本映画。さて、どう料理するか、、。かなり予想していたものとは違っているなあというのがまず感想。カフカの片鱗が見えず、あの底深く見えない不条理というか不気味さがない。これでは審判が泣いている。この作品を日本で制作するという事だけでも意欲作ではあるが、、。審判(2018/日)(ジョン・ウィリアムズ)60点
クロサワ作品のリメイクだが、思ったよりクサくなかった。この作品のテーマがストレートに伝わっている。さすが、カズオ・イシグロの脚本がいい。やはりこのテーマはほのぼの「絵に描いた餅」なんだが、それでも我々、人間である限りポジティブに捉えたい。秀作です。感動しました。生きるLIVING(2022/英=日)(オリヴァー・ハーマナス)85点
若き青年たちによる独特の演劇である。60分と上演時間は短い。大人になること、このまま大人の世界に入ってしまうこと、幼児体験、地震・津波などの災害。様々な厚いイメージが青年たちを立ち止ませる。よくしゃれた個展などを展覧するこのフジハラビルでやるだなんて、なかなか皆さん乙なもの。センスがいいね。この独特な会場の雰囲気の元、青春前夜の大人への慄き、怖さ、どよどよしたものがセリフを通して、動きを通してイメージさせる。大人って、別にどうということないさ。さあ、こっち側に来たら?感性で磨き上げられた演劇である。劇団飛煌機大人さ(作・演出舟木祐人)atフジハラビル75点
阪本の新作だ。この人の作品群がそのまま私の映画歴ともなる。さて、今回は珍しくエコをテーマに、江戸末期の文明砲がとどろく時代の市井の人々を描く。題名。「おきくのせかい」ではなく、「せかいのおきく」。このことで人が文明を見つめるすべをもつことで、世界の広がりを経験したことを示している。さてその彼らは一体全体どういう人たちか。糞尿を回収し、それを農家に売りさばく、市井といっても末裔のひとたちだ。最初から最後まで糞尿の世界がお目見えする。モノクロなのでそれほど気にはならないが、人の排泄物や紙切れが循環するエコは江戸時代の方が現代より勝っているという。そんな日本人の知恵。今の現代人にどれほど分かっているか。そんな世界に男と女は愛し合い、人とのつながりは増してゆく。それはすなわち世界の広がりであるのだ。阪本のシンプル...せかいのおきく(2023/日)(阪本順治)80点
何気ない日常が変質するその怖さたらものすごい衝撃。何でもない普通の夫婦がある日、妻が蒸発する。その日からありふれた日常が非日常に変わり、それはホラー感に迫ってくる。それを90分でしっかりまとめた力量感のある演出はさすが高橋恵氏。ずぶずぶと私の日常感さえ自信がなくなって来たぞ、のし。目の前に繰り広げられる非日常はいつか、夫の白昼夢のようにも思えてくるし、これはまさに不条理劇とも言えよう。とても面白いものを見た。演劇は見てみないとわからない、、。いい日である。あゆみ企画「螢の光」(作・角ひろみ演出・高橋恵)at総合芸術館85点
18歳から23歳に至る若者たちの青春群像。とはいえ、彼らは決して甘い人生をついばんではいなかった、、。現在の若者を鋭く見つめた作品です。それぞれの生きざまには苦悩以外の何物でもない人生模様がくっきりと陰影を与えている。なかには夢破れ、途上にして死を選ぶ若者もいる。その若者の死から彼らは苦しみ、もだえ、そして何かをつかんでゆく。そのためにゆうに5年を費やす。人生とは、を、若者のひたむきな視線から問った映画です。いやあ、若者のいたいけな声を確かに聴いたよ。7人の友人たち、この繋がりこそかれらの宝物だ。青の帰り道(2018/日)(藤井道人)80点
ユニークな演劇だ。何気なく不条理だし、何となくおかしい。それでいて何だか悲しいし、変に楽しい。脚本がとても面白くできていて、観客はそれについていけないほど。何だか難しいかなと思い始めたら四阿後になって、超どんでん返し劇になりエンド。これはすごい。颯爽感さえある。ただ、六風館にしては、ちょっとセリフのゆとりがなく、珍しい。学生劇だと言わせない彼らの伝統があるからなあ、、。でもいい一日だった。劇団六風館「ある日、ぼくらは夢の中で出会う」(作・高橋いさお・演出・星美鈴)at阪大学生会館75点
高齢化社会における介護について、一考察を提言した作品であります。当然、老人ホーム殺害事件などを連想してしまうが、、。まず刑務所に入りたがる女性高齢者が執拗に検事に迫るシーンが印象的だ。それは現代社会の過酷さを訴えているのだが、身勝手な人間だと言い切っていいのだろうか、、。そして、42人もの高齢者を殺戮した松山と実の父親を見殺しにした検事(でも、孤独死のどこが悪いのだろうか?母親も体よく施設へ入所させているが)との対比がこの映画の大きな骨格となる。でも、だいたいが42人もの人間をニコチン注射で殺戮を繰り返していた男と、生きるために両親を粗末にする女(これは我々のこと)と同列に捉えていいのだろうか、とふと疑問が残る。映画では、松山は全く精神的にも問題のない人間として描かれる。だから検事と等しく同一に比較される...ロストケア(2023/日)(前田哲)65点
秀作との評判高い本格ミステリー。舞台が外国に移ってから、外国人の名前が出始めてから、スピードが止まる。でも、表紙の裏に登場人物の名が出ているので、何とか読み切る。りり子さんが素敵で、まさに断然主人公なのだが、まさかあんなことに。この辺りの白井の大胆ぶりに酔ってしまう。話は二転三転、面白いです。人民教会は当時、世界的に衝撃を与えた事件なので、僕自身気にはなっていました。まあ、詐欺の蘊蓄も興味があり、そこらのミステリーでないことはわかる。僕的にはあの衝撃的なラストはちょっとやりすぎかなとも思いました。少々鼻白む。でも最近のミステリーに活力をつけるさすがの秀作です。名探偵のいけにえ―人民教会殺人事件(白井智之著)(新潮社2022)80点
秀作との評判高い本格ミステリー。舞台が外国に移ってから、外国人の名前が出始めてから、スピードが止まる。でも、表紙の裏に登場人物の名が出ているので、何とか読み切る。りり子さんが素敵で、まさに断然主人公なのだが、まさかあんなことに。この辺りの白井の大胆ぶりに酔ってしまう。話は二転三転、面白いです。人民教会は当時、世界的に衝撃を与えた事件なので、僕自身気にはなっていました。まあ、詐欺の蘊蓄も興味があり、そこらのミステリーでないことはわかる。僕的にはあの衝撃的なラストはちょっとやりすぎかなとも思いました。少々鼻白む。でも最近のミステリーに活力をつけるさすがの秀作です。名探偵のいけにえ―人民教会殺人事件(白井智之著)(新潮社2022)80点
この竜崎シリーズは今まですべて読破している。とても面白く、いつもスカッとする。そんな本は意外と珍しいのだ。今回は、9編の短編スピンオフ集だ。長編ではないけれど、それでも面白さは変わらない。すぐ読破してしまった。身内の家族はすべて出し、前任の大森警察署のその後も描いている。小高刑事も出て来る。いやあ、ファンとしてはものすごくうれしい限り。もう読み終わり、次作を期待している。そんな書物はやはり僕にはこれぐらいかなあ。審議官(今野敏著)(新潮社2023)80点
良くも悪くも伝統あるアメリカ映画のエンタメの粋です。これは長く続く映画の本流であり、今回はそれがしっかり流れています。古き良き映画を好きな人は見るべし。細かい何事ないところにも映画愛が満ち満ちてます。頭で考えることなく、体が覚えてるそのままを重視するところ、勉強になりました。こういう映画って、何か悩んでいるときに何かを教えてくれます。そう、それこそアメリカ映画の神髄です。トップガンマーヴェリック(2022/米)(ジョセフ・コシンスキー)80点
好きな米澤作品。でも今回のはなあ、、、。あの、青春ミステリーで、一気読み確実の描写力はさすがだが、何か足りないなあ。自分自身どこに不満があるのか分かりづらいけど。敢えて言えば、真犯人が最後の方で急に出没し(前半でちょっとは出てたが)、ハイ犯人でござい、ていわれてもなあ。米澤にしてはフェアではないと判断する。(勝手です)それとあの毒薬で犯罪を犯す、、、他にもっと有効なものだってあるよな、とか、ちょっと今回はダメ出しが多いです。でも、こういう青春ミステリー、好きです。許しちゃいます。加点。栞と噓の季節(米澤穂信著)(集英社2022)75点
虎本さんの人間への愛に満ちた直球舞台です。こども食堂を通して、人と人とのつながりを深く考える。誰にもわかるテーマで感動しました。大阪のおばちゃんがカバンにいつも忍ばせているアメチャンも虎本を通すと素晴らしい愛のつながりに変身する。これこそ成就した愛のカタチです。虎本さんの生き方に拍手!この舞台、何と無料です。有難い。虎本さん、いやステージタイガーと松原市民と年一度の心の交流会です。ステージタイガー「ハンドポケット・カフェ」(作・演出虎本剛)at松原市文化会館80点
アカデミー作品賞受賞ということで劇場へ。平日とはいえ、空いております。アジア映画が章獲得ということで動員が図られると思ったが、そうでもないのか。映画としては、これは全般的にアジアを全面的に出しており、しかしもちろんアメコミ系のアクションは期待できず、マルチバースといっても、それが特に生かされているとは思えない。映像のカット、これこそロングショットは一切なく、切り刻みの編集にモンタージュの面白さを感じる。中でも、あるマルチバースでの岩の親子表現はとても素晴らしく強く印象に残ったが、私にはそれだけの映画でした。結局、最初のシーンに戻り、親子、家族以外が最高な~~んだなんて、当たり前すぎて、それまで自分でもよく我慢して見てたと思うので、白々しい。これは観客を選ぶ映画か。エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022/米)(ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート)70点
ウイルスとか研究所とか未来にあるだろうとの視点で描かれた人類いかに生きるべきかをテーマにした演劇です。と、こう書いてゆくと硬いものに思えますが、そこは1MG、オープニングACTを楽しんでいると、すぅーと魅入られてゆく。いつもの1MGだ。となると、あとはただ眺めていれば彼らの目指す世界に入ってゆける、、。閉鎖的な光景が目立つけれど、基底にあるのは人と人との関係、すなわち愛である。時間軸を多層的に構成し、ハッと気づくと終盤準主役の川田氏が父親でもあり、祖父でもある役柄に驚く。何と!ふむふむ、そうだったんだと思ったら、もうラスト。やはりいつも通りなかなか面白い劇でした。劇団1mg「狼なキミとエンドレスな魔女」(作・演出伊達百式改)atin→dependenttheatre2nd80点
今年は15周年とかで演劇の回数が多い。それはこの劇団を愛するわたくしにはとてもいいことであります。スタイリッシュで面白く、しかもファンサービスがマジすごい。今回も大熊氏はほぼヌード状態で舞台を往来する。客席の6人。ここに焦点を置いたのが大熊の才能の素晴らしいところだ。我々ももちろん観客なので、観客たちの熱演はすなわち向き合っている我々を見ていることにもなるのかな。そんな大笑いコメディ劇です。ストーリーは特にない劇ですが、裸の王様だったり、シェイクスピア吾人が出て来る。僕的にはこのシェイクスピアさん、頑張りすぎて、ちょっとくどいように思えた。でも、相変わらずスタイリッシュであり、見てよかったと思う。関西きってのいい劇団である。劇団壱劇屋「6人の悩める観客」(作・演出大熊隆太郎)atin→dependenttheatre2nd80点
オストルンド、スウェーデンの若き映画作家だとは言っても、かのベルイマンを凌駕する作品をまだ提供しているわけではない。でも、才能は感じる。ブラックユーモア的な視点で見つめた人間模様。それはおかしい。それゆえ、卑近過ぎて自分が十分俗物なのを知ってしまう。まず、ディキンソンのファッションモデルオーディションシーン。くすくす笑いたくなる、今までこういう捉え方ってなかったよなあ。面白い。次に恋人との割り勘戦い。これは、さらに俗的で人間の本心というか、お二人は完全に戦争してると思う。そしてとても長くはあるが、豪華観光船に乗ったブルジョアたちと底辺労働者たち(アジア系が多い)とのヒエラルキー描写。ここに突然、マルクスが出没し、共産党宣言(能力に応じ働き、欲望により受け取る)が言い放たれる。人間、もうここまで腐り切ったら...逆転のトライアングル(2022/スウェーデン)(リューベン・オストルンド)80点
ドストエフスキーの名作を3時間上演。セリフは膨大に多いし、テーマの難解さは予想を超える。こういう名作原作ものを演劇にするお二人、いやあ若い、スゴイの一言。まとめたところは感じられるが、それでもラスコ-リニコフを通して独白されるセリフはまさにドストエフスキーでした。演劇的には彼の苦悩を表現する悪魔的な集団アンサンブルなんかは、ぞっとさせられたし、警察署の前で拳銃自殺するスヴィドリガイロフは魅惑的で、一瞬ラスコーリニコフさえ超えるものがあると思った。いやあ面白かったです。途中、火災報知器がなってその音声と劇が同時進行という珍しい局面をサリngROCKさんがうまく切り抜けた。稀有な経験をした。突劇金魚「罪と罰」(脚本:サリngROCK&山田蟲男演出:サリngROCK)at芸術創造館80点
かなりユニークな展開でストーリー的に魅せる。そして深まる謎もそのうちSF的モードに突入。1000年後の世界に移住する魅惑とは何か、個人的にも自問したりして、そしてラストへ。そこで僕たちが見たものは意外なもので、作者のストーリーテラーたるところを垣間見る。やはり演劇は自分の世界をはぐくみ、爆発させるもの。その王道は行ってます。面白かったです。創造Street「言い訳のカフネ」(作・演出KENSUSAKI)at芸術創造館75点
ハコボレ。好きな劇団で、ずっと鑑賞しているが、前年の公演のみ見逃す。この劇団は演劇はもとよりいつも文庫本カバーのチラシがごっつう素敵。これをもらうだけがために演劇鑑賞続けてるというと、少々よくないかな。今回は前田氏直々の絵柄だが、実に素晴らしい。ところで、劇の方。舞台は超すばらしい美術。感心させられる。これならよく行く小劇場を超えてる。劇は寓話っぽいが、大人に聞かせるための童話集と言う感じ。セリフの一つ一つにエスプリが効いていて、特に20年もくじらの胃に住んでいる女性とのもの悲しさは絶品。引き込まれる。クジラの体内が舞台だが、前田独特のユニークで決して閉塞感を感じない世界観は相変わらず素晴らしい。大人へのポエムと言えよう。SHASEN×ハコボレ「森のクジラに食べられた!」(作・演出前田隆成)at日本写真映像専門学校80点
いまどき珍しい本格ミステリーの本道を行く小説への意気込みはよくわかりました。特に最後の超どんでん返しでほとんどの読者が驚いたのは推察できます。また、登場人物の名前も分かりやすく、(最近のは名前があまりに粋過ぎて、覚えられないのが多い)展開も閉ざされた空間に一人づつ殺されてゆく、もうこたえられない小説です。さて誉め言葉はここまで。もうこの小説もか、と言いたいのは、殺戮してゆく動機がなんと薄く曖昧なことか。ちょっと、あんな自然事故があった際に、殺人事件を起こす理由がどうも甘いのだ。(でもこれも最近のミステリーがどれもこれも動機軽視なので言う方がおかしいと言われるかもしれません)文章も読みやすく、前半はダレルところもあるが、まあ及第点でしょう。次作にみんなの期待がかかります。方舟(夕木春央著)(2022講談社)80点