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ユーモア東方見聞録 http://jikil-hide.seesaa.net/

サラリーマンの目から見た東南アジアの実情を脚色を交えてユーモラスに描いた抱腹絶倒の旅行記

自称サラリーマン四文作家である私、字切俳人が偉大なる偏見と色眼鏡をもって天衣無縫に書き連ねる。

字切俳人
フォロー
住所
四日市市
出身
土岐市
ブログ村参加

2009/11/18

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  • タイ編 その1-28

    「車を止めるんだ!早く」社長の声が聞こえる。なんとか通じたようだ。 車はガソリンスタンドの前で急停止した。私はH氏とキタヤマ氏に抱きかかえられ車を降りた。外の新鮮な空気が心地よい。私は振り絞って声を出した。 「く、苦しい。今にももどしそうだ。ト、トイレに連れていってくれ・・・」二人は私の両肩を抱え引きずった。 トイレの中で激しい嘔吐を繰り返した。しばらく蹲り動けなかった。痙攣が治まり、なんとか動けるまで二十分ほど要した気がする。このトイレは水洗ではなく、溜桶にある水を大きな柄杓で汲んで流す方式だった。 汗だくで息も絶え絶えに出てきた私をH氏が待っていた。 「だいじょーぶか、アン..

  • タイ編 その1-27

    バスは都会の喧噪を外れ、田園風景が広がった。昨日のような田舎道が続く。舗装はされていない。 この時、私の体に異変が起こった。災難は予告もなく訪れた。体が異常に熱い。熱があるようだ。とめどもなく額から汗が出てくる。心臓の鼓動が急激に早くなった。顔が汗でびっしょりと濡れている。 車にでも酔ったんだろうか?激痛が腹部に走る。それと同時に手足がしびれてきた。 おかしい。異常だ。息をするのでさえ苦しい。心臓はどくどくと音を高め、その速度は速くなる。全身に電気が走る。手足がしびれ、全く動かない。刺すような激痛が周期的に腹部を襲う。 「気持ち悪い。今にも吐きそうだ」声を出そうとしたが、舌..

  • タイ編 その1-26

    「おねーむさん、コケッコッコー!」 目の前にでかい顔がニヤリと歯をむき出して笑っている。 まただ、悪夢のような目覚めだ。もうこのパターンでは起きたくない。 「どうでもよいが、その顔を近づける起こし方はやめてくれないか。どうも心臓に悪い。私は特に縁起を担ぐ方ではないが、朝一で君のドアップを見ると、なぜか今日一日良いことが起こる予感がしないのだ。むしろ悪いことが続いている」 「えらいいわれかたやなー、アンさん。時計を見てみいや、集合時間は七時やで、あと五分しかあらへんで。ええんか?寝てても」 「い、いかん」慌てて着替えた私は、寝ぼけ眼でロビーへと降りていった。 私とH氏以外ロ..

  • タイ編 その1-25

    バーの中は広く明るい。我々はビールの酔いに身を任せ、ゆったりとした雰囲気の中にいた。するとどこかで聞き覚えのあるメロディーが流れてきた。 「おお、スキヤキだ。この歌はいいね〜。俺も一度日本へいってみたいよ」マリオがスキヤキソング(上を向いて歩こう)を口ずさんでいる。 外国人は一般にこの歌と昴しか知らない人が多い。日本では滅多に聞かないこの歌も外国で聞くと、妙にそこはかとない郷愁を感じる。我々はしばらくその余韻に浸っていた。 どのくらいの時が経ったのだろう。我がツアー御一行様が一人、二人と帰って来た。先に帰ってきたのは重役連中だ。 「あーよかった、よかった、久々のアンマは気持ち..

  • タイ編 その1-24

    「どうするんやアンさん?」 私はまだ呆然とガラスの前に突っ立っていた。すると二階からその行為を終えたと思われる西洋人の男性が女性と腕を組んで戻ってきた。この女性は男性に挨拶をすると、またひな壇の中へと入っていき、ちょこんと座った。見ていると、このような光景が矢継ぎ早に繰り返された。 「おい、増えとるでーアンさん。何事もなかったように平然と座っとるわー、おもろいもんやなー」 私とH氏は、顔を見合せ大笑いをした。とめどもなく笑いが込み上げてきた。 「ハッ、ハッ、ハッ、ハア」 ガラスの向こうの女性たちは、きょとんとしている」 「ハッ、ハッ、ハッ、やめよう、やめよう、ハッ、ハッ」 ..

  • タイ編 その1-23

    「はめられた!」 私は我に返った。きっと先導車に乗っている誰かがリクエストしたのであろう。とにかくここまで来てしまっては後の祭りである。皆の欲望を私が御することなどできない・・・・。 マリオが説明を始めた。 「ここにいる白いドレスを着た女の子は、一時間半で七千円だ。横にいるオレンジのドレスを着た女性は、マッサージ専門で五千円だ。さあ、気に入った娘を選んで胸につけてある番号札のナンバーをいってくれ。早い者勝ちだ」マリオは祭りの露天商と化していた。 訳の分からぬ内に我が御一行様は、いくつかの番号を指名し、その女性とどこかへ消えていった。私はショックのあまり銅像状態であったので、皆..

  • タイ編 その1-22

    「グアムがダメになった上、重役連中とくそ暑いタイくんだりまで来て、おまけに売春宿なぞいったら、典型的なオッサン女買いツアーではないか。私はまだ若く人生はこれからだ。ここまで地に落ちた覚えはない。とにかく廃案になってこの上もなく愉快だ」 車中でも何度もマリオが話しかけてくる。 「本当にいいのか?綺麗で可愛い娘がいっぱいだ。ぞくぞくするほどだぞ。おまけに安い。また彼女らは、二週間に一度規則で性病の検査を受けているから、病気の面は全く心配ない。どうだこんな機会は二度とないぞ、いってみようとは思わないか?」マリオはこのような悪魔の囁きをくどいほどもちかけてきた。 「とにかくいいといったらいいん..

  • タイ編 その1-21

    料金を払って店を出ると、マリオとルイージがなにやらひそひそと立ち話をしている。彼らは私の方へと近づいて来た。 「タイには面白いところがある。それも若くてきれいな女性がより取り見取りだ。彼女らはひな壇に座っており、君は気に入った娘を指名するだけだ。どうだ一度いってみないか?」 私はすかさず答えた。 「答えはノーだ。我々一行は、今回仕事を兼ねてタイへ来ている。いや、仕事でなくともけっこうだ。このメンバーは、非常に真面目な学究の輩ばかりだ・・・・。約一名を除くが。暇さえあれば図書館へいき、文献を調べるといった勤勉家の集まりだ。ゆえにそのような所は我々に無縁である。早くホテルへ戻ってくれ」 ..

  • タイ編 その1-20

    しばらく走ると、H氏が大声でわめき散らした。 「腹が減ったわい。なんかうまいもんてんこ盛り食わせろ〜」 確かに腹が減った。しかしこの車は後続車である。先導車とは連絡の取りようもない。昼食にありつけるかどうかは、全て先導車まかせとなった。雨は依然として強く降り続いている。 ザー、ザー、ザー、ザザー、ザー 先導車は湿地帯の道路沿いにポツンとひとつだけ建っている中華レストランへと入っていった。 あまり流行っていそうにない。客は我々のみである。とにかく腹が減っているのでメニューを広げた。 「さっぱりわからない・・・」 それらの全てが中国語で書かれていた。おそらくここは華人..

  • タイ編 その1-19

    時計はすでに十二時を回っていたが、日本との二時間の時差のためか、あまり空腹感はなかった。マリオの運転する我々の車は、先方を走るルイージの車を追うだけである。無線なぞもちろん無いため、行き先の変更は容易ではない。、また、先導車には、重役様御一行がご乗車されておられるため、どこへいくかは先導車まかせである。 車外を見回すと、かなりの田舎を走っている。水はけの悪い湿地帯が広がる。籐製の三角帽をかぶった農夫が家畜を御している。壊れかけた荷車を引っ張る婦人。あるいは、時折見える掘立小屋の中でじっとなにもせず佇む男たち。子どもたちは、上半身裸で戯れている。タイの田舎の風景が車窓を流れていった。当..

  • タイ編 その1-18

    その後、H氏は出てくる気配がなかった。たぶん事務所内でこっぴどく叱られ、調書でもとられているのだろう。 「確かにバカにつける薬はないが、今回の件でヤツも相当懲りるだろう。こういう輩は痛い目にあわんとわからん」 私は助けにいこうかと思ったが、本人のためと思い、しばらく様子を見ることにした。 皆は気を取り直し、残っている弾を撃っていた。 バキューン、バキューン、ドーン すると、私の上司である総務課長のシキシマ氏が、しゃがんでなにやらかき分けている。 「なにをしているんですか、課長?」 シキシマ氏は顔をもたげ、ニヤリと笑った。 「これはお土産。銃を撃った記念だよ」とい..

  • タイ編 その1-17

    とぼとぼと歩いていると、運転手のマリオが耳打ちをした。 「拳銃を撃ちたいか?」 「えっ」 「このワニ園の裏側に銃を撃つ場所がある。もし興味があるならいってみるか?」 「それは面白い。私は子供の頃から西部劇の大ファンだ。かねてよりスミス&ウェッソンは、ぜひ手にとってみたいと思っていたが、未だに水鉄砲しか撃ったことがない。是が非でもいってみよう」といった。私の好奇心は、高血圧者のように高ぶった。 バキューン、バキューン、バシッ、バシッ。 拳銃の爆音が聞こえる。二、三人の男がバッティングセンターのような緑色のネットの中で銃を撃っている。 「ものすごい迫力だ。はたして自分に撃て..

  • タイ編 その1-16

    後方では我がツアー御一行がヤンヤの歓声を上げている。 このショーは、二頭の象がダンスを踊りながら、三段跳びで横たわった人間をジャンプするという死と隣り合わせの余興である。私は目隠しをされ、三段跳びの最終ジャンプの場所に寝そべった。 「誰が考えたか知らぬが、恐ろしいショーだ。もし生きて生還することができたならば、必ずやヤツに報復しなければならない。決して這い上がることにできぬほどの底深い落とし穴に・・・。私はH氏への復讐を誓った。 ファンファーレが鳴り、ドコドコと象がダンスをしている地響きが聞こえる。冷や汗が出、心臓が高ぶり、全身に鳥肌が立った。 ドンドン、ドコドコドコ ..

  • タイ編 その1-15

    この日の私は、H氏の嵐のようなイビキに何度も目を覚ました。寝ても覚めても人に迷惑をかけるヤツである。すると突然、下腹に刺すような激痛が走った。トイレへと駆け込んだ。 明らかに下痢である。私は目を覚ます度にトイレへと駆け込み、朝を迎えた。私は夜のトイレの番人となっており、イビキと下痢の二重苦のため、寝不足状態となった。 翌朝、玄関を出ると、運転手のマリオとルイージが待っていた。彼らとは今日までの専属契約をしていた。工場の視察及び打ち合せは明日のため、本日はクロコダイルファーム(ワニ園)へいくことになった。 私は映画狂であったゆえ、子供の頃に見た映画、「戦場にかける橋」の舞台とな..

  • タイ編 その1-14

    灯りはだんだんと薄暗くなっていき、百メートル以上続いた出店は、やがて飲み屋街へとその顔を変えていった。 「非常に薄気味悪い・・・」 西洋人と思しき男二人が、店の入り口でなにやら現地人と交渉している。あちらこちらで奇声が上がり、酔っ払いが眼前を通り過ぎていく。私はさらに奥へと歩を進めることにした。 ここまでは、少々派手な日本の飲み屋街と似ている。しかし私が足を踏み入れたこの奥は、どう見ても怪しげな歓楽街であった。街灯はなく、店のネオンだけが薄暗く道路を照らす。だがそれは、今まで見た日本のどの歓楽街よりも気味が悪く、恐ろしい悪の雰囲気に満ちていた。 ここで私は自分一人で歩いてい..

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