毎日更新の、中世西洋ファンタジー小説です。『狼と香辛料』を題材にした短編もあります。
毎日更新なんて……。「無理ですよっ!」と先輩に宣言したあの日から、誰にも期待されていないのに頑張る日々。そろそろ戦略的撤退でもしようか、と真剣に悩んだりして。
酒場の中ではランタンの光が暗闇を照らしていた。それでも比率としては暗闇の方が多い。隣の席に何人いるか分からないほどだった。三人掛けの卓が八つくらいしかない小さな酒場だ。皿に残った焼き豚の油を舐めるように平らげていたリリィは、今や夢の中だ。すーすーすーと嵐の後の静けさを醸し出していた。長い睫毛と、頬紅を付けたような桃色のほっぺたが、緩徐に動くたびにジルバは見とれてしまう。それをつまみに酒をあおることは格別だった。「ったく。この前の仕事で稼いだ金がちゃらだ」不満を漏らしながら、ジルバの瞳は微笑んでいた。長靴型をした木のジョッキを傾け、エールを飲み干していると、残っていた一脚にいきなり男が座った。ジルバは言葉より先に剣の柄に手をかける。「これは失礼。ちょっとお話を聞かせたくてね。うちの仲間は、ほれ、みんな潰れちまった...世界よりも信じるもの2
世界を信じるより、傍にいる誰かを信じた方が簡単だ。と言う言葉は、とある修道会を訪れたときに耳にしたものだった。ジルバは、もっともだ、とその修道士の説法を聞いていたのだが、リリィの腹の虫が治まらなかったのを見て、早くここから立ち去ろうと重い腰を上げた。それは秋も深まったある日の出来事だった。刈られた稲穂の後が枯れ始めて田んぼにひびが入っていた。そんな村を見下ろしながら、ジルバ達は丘を上がっている。その丘を越えた向こうに町があるのだ。大荷物を積んだ行商人と数人とすれ違ったから、それなりに大きな町なのだろう。「まふぁなの?お腹ふぅいふぁ」「ものを食べながらいう台詞じゃないな」さっき行商人から譲ってもらった芋を口いっぱいに頬張りながら、リリィは口をもごつかせている。いい加減、この少女が死の精霊だという事実に懐疑になって...世界よりも信じるもの1
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