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白い花の唄 https://blog.goo.ne.jp/aquamarine_2007

銀河連邦だのワームホールだののある遠未来の宇宙時代。辺境の惑星イドラで生きる人々の物語。

オリジナルSF小説『神隠しの惑星』第一部です。

karicobo
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2009/08/10

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  • 月夜のピアノ・マン (その10)

    光さんが翌日、神馬の馬運車と一緒に戻ると言うので、サクヤさんの運転で、都ちゃん、鷹史さんと住吉に帰って来た。明日は夏祭り。学校の友達がたくさん神社に来る。提灯飾りの用意は先週から始まっているし、宵宮の露店は今夜から営業する。(都と瑠那、夕方まで時間ある?)「ありますよ」「あるけど何?」「お父さんが、神社に来る人増えるから、庭を一通り、裏まで見て回ってって」花盛りの夏の庭のパトロール。都ちゃんと一緒に。楽しい仕事だ。「でもサクヤさん、今日は馬にも乗ったし、疲れてない?大丈夫?」「大丈夫、大丈夫。ファームに行くと、私、元気になるんよ。お医者さんも、お腹が重くなる前はたくさん運動していい、言うてはったし」妊婦の適切な運動に、乗馬トレッキングや山歩きは入るだろうか。(無理しないこと。具合悪そうならすぐ母屋で休ませ...月夜のピアノ・マン(その10)

  • 月夜のピアノ・マン (その9)

    牧場というところはいつもベビー・ラッシュなのだろうが、それでも人間の赤ん坊となると話は違う。首も座らない乳児が3人揃っているのは壮観だった。谷地田ファームは馬メインの牧場で、住吉神社の神馬を預けている関係で私も3度ほどうかがったことがある。今回は、夏祭りで神馬2頭を神社に運ぶのでその打ち合わせに来た光さんに、私とサクヤさん、鷹史さん、都ちゃんが連れて来てもらった。前回、私がついて来た時は赤ん坊は、農場主の長男さんとこの男の子、輪くんひとりだったが、今回、さらに2人、双子の赤ちゃんのアヤメちゃんとアカネちゃんが増えていた。その2人が例によって、並外れていた。鷹史さんや都ちゃんを見慣れて来た私でも、やっぱり目を奪われてしまう。細いプラチナブロンドの髪に深い青緑色の目をしているのだ。そしてやっぱりホタルの見える...月夜のピアノ・マン(その9)

  • 白い花の唄 (その5)

    管制室でモニターを見ながら話し合ってすぐにわかってしまった。ここは地球じゃない。木星と火星の間。小惑星帯と呼ばれる地域にある小惑星のひとつらしい。彼らは自分の星をダンと呼んでいる。近隣の2つの小惑星、ハラ、ハクナとの間で国交があるらしい。小惑星帯の中の星から空を見上げると、空を埋めるようにいびつな形の小惑星が浮かんで見えるのかと思っていた。まったくそんなことはなく、地球から見る月以上の大きさに見える天体はなかった。意外だ。私が太陽系第三惑星から来たと言っても、管制室の面々はそれほど驚かなかった。ある程度予測していたらしい。でもオリに似た人から、ミギワに会えと言われたことを告げると、ざわついた。私の世界とオリの世界はどのように結びついているのだろう。この星から最も近い居住可能な惑星は地球だ。何度か地球に調査...白い花の唄(その5)

  • 白い花の唄 (その4)

    オリが私の腕を掴んで塔の中を走ってゆく。引っ張られてはいるが、乱暴ではない。鷹ちゃんにそっくりの少年。あなたは誰?鷹ちゃんのご先祖様?それとも未来の鷹ちゃん?他人の空似とは思えない。でも、となると、ここで私の知ってる鷹ちゃんと会うのは不可能ということなのだろうか。ミギワの名前は鷹ちゃんから聞いていた。水際?汀?境界線の名前だ。何の境界だろう。彼岸と此岸?オリと塔の中を走りながら、考えがグルグル巡る。ついて行って大丈夫なのだろうか?でも他に手掛かりは無い。鷹ちゃんを信じる。この出会いに賭ける。螺旋階段をずいぶん上がった。おそらく私が崖から着地したテラスより、上の階層まで上ったと思う。そこはドーム状の透明な窓に囲まれた管制室のような部屋だった。10人ほどの男女が一斉にこちらを振り向いた。オリが私を見つけた経緯...白い花の唄(その4)

  • 白い花の唄 (その3)

    想像通り、崖から降りるにつれて浮力が感じられるようになった。スカイダイビングのフリーフォールのイメージで、落下速度を調節しながら塔に接近した。峡谷の底まで下りてしまったら、塔の中を上るのが大変そうだ。塔の中ほどの高さのテラスを目標に据えて、少しずつ速度をゆるめつつ降りた。そういえばパラシュートもパラグライダーも無いけど、うまく着地出来るだろうか。ま、何とかなるだろう。……何とかなった。思ったよりスピードが出ていて、着地した途端、慣性でテラスを走る羽目になり、最後は3回ほど前転して壁にドスンと衝突した。けっこうショックはあったが、どこも怪我をしていない。成功だ。テラスから崖を見上げるとかなりの高度差がある。どうやってあそこまで上ろう。ま、何とかなるだろう。テラスに付いていたドアを開けて、塔の内部に入った。内...白い花の唄(その3)

  • 白い花の唄 (その2)

    水に入る前は、眩しいほど輝いている青い水面のすぐ下に眠っている澪さんが見えていた。靴と靴下を脱いで水に足を入れた途端、水面が揺れて澪さんの姿が消えた。予感はしていた。澪さんはもっと“深い”ところにいる。裸足で花を踏みながら歩く。色とりどりの花のようなサンゴ虫やイソギンチャク。色とりどりの魚たち。ここが本物のサンゴ礁のラグーンなら、折れたサンゴの枝やカキ殻などでガサガサして裸足で歩けるはずはない。それに枝サンゴのテーブルが出来ていて、こんなに平らなわけがないのだ。つまりここは、見せかけの花畑。見上げると透明な水面を透かして青い空が見える。真上にはレンズ型に水面が割れて、星空が見える。不思議な光景。ここは昼なのか夜なのか。11歳の時、鷹ちゃんと歩いた花畑。礁湖のなだらかな斜面を下ってゆくと、次第にサンゴの群落...白い花の唄(その2)

  • STOP! 桜さん! (その7)

    高校に無事、合格した。合格発表の日まで気付かなかったが、清香も同じ飛鳥高校を受験して合格していた。ニヤリと形容したくなる微笑を浮かべて、『3年間よろしくね』と言われた。やれやれ。賑やかな高校生活になりそうだ。受験勉強の追い込みの時期、あまり弾けなかったので、春休みの間に少しピアノを思い出しておこうと思った。弾かないとピアノが傷むと言うし、調律も必要だろう。土蔵に近づくとピアノの音が聴こえた。碧ちゃんかな。朝、ピアノの話をしていたのだ。地下に続く木の階段を下りてゆくと、ピアノの音と碧ちゃんの声がした。誰かが調律している。父が調律師さんを呼んだのかもしれない。でもいつもお願いする小西さんだったら、碧ちゃんは見えないだろう。階段の上からは調律師さんの顔が見えない。碧ちゃんが熱心に質問していて、調律師さんは何か説...STOP!桜さん!(その7)

  • STOP! 桜さん! (その6)

    輸入雑貨のお店で一目惚れして、お年玉貯金を一部崩して買った木苺模様の白磁のティーセットがあった。トランクのような形のバスケットの内側に、赤と白のギンガムチェックの布が貼られていて、5組のティーカップ、ソーサー、銀のスプーンとティーポット。買ったものの、今まで出番がなかった。ドイツパン屋さんで買って来たバタークッキーを白磁のボウルに盛り付けて。桂清水を電気ケトルで沸かして、ティーポットを温めて。茶葉は輸入食品の店で見つけた可愛い缶入りの、ストロベリーティー。甘酸っぱい香りが丹生神社の社殿に満ちた。拝殿の奥で見つけた使ってない白木の台に、木苺模様のティーカップとソーサーを並べて、紅茶を注いだ。やっと先生と碧ちゃんも一緒にお茶会が出来て、私は満足だった。2人は断れない立場で、強要されてて、緊張していて、ちょっと...STOP!桜さん!(その6)

  • STOP! 桜さん! (その5)

    ヒイラギの花の咲く夜約束してから、黒曜とは月に1、2回の頻度で会えるようになった。中庭の見える渡り廊下の長椅子が、私たちの定位置になった。家族が寝静まった23時頃。ヒーターを点けてお茶を淹れる。黒曜が来ない夜も、寝る前に夜の中庭を眺めるひと時は、いいリラックスの時間になった。お茶を四杯用意して、先生や碧ちゃんを誘ったが、2人は遠慮してお茶会に加わらなかった。まだ黒曜のことが怖いらしい。黒曜の方も、注意深く私やホタルたちと距離を保とうとしている風が感じられた。碧のことがあったから、あまり“異相”に馴染み過ぎるのは良くないと考えてるのだろう、と先生は推測した。見れば見るほど、整った綺麗な顔だった。そしていくらマジマジと見ても、男性か女性かわからない。聞いてみようかとも思ったが、失礼な気もしてまだ聞けないでいる...STOP!桜さん!(その5)

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