ストーカーに苦しみながらも明るく前向きな女の子のお話です。一緒に考え悩み笑っていただければ幸いです。
褒めると気を好くして図に乗るタイプなので お叱りのレスはご遠慮願います。 社交辞令・お世辞・甘言は大好物です。 甘やかして太らせてからお召し上がり下さい。
『僕』と楠木くんは親友になった。楠木くんは、『僕』の告白を黙って聴いてくれた。時折、大きく頷いたり目を見開いて。いくつもの学校を転校してきたこと。どの学校でも苛められてきたこと。だが今回だけはやりかえしたこと。その結果、人を殺してしまったこと。なりゆきでもう1人殺してしまったこと。ふたりを学校裏の山に埋めたこと。そのふたりは、みーと糞であること。いくつかの話は楠木くんを驚かせたが、いくつかの話には反応が無かった。驚くだろうと予想していたことに驚かなかった楠木くんに驚かされたりもしたが、全てを話すと決めたことは守った。全部を話し終えた時、『僕』はこれまでに感じたことのない開放感を味わった。友達って言うのは、こういう関係を言うのだろうか。時間が経つのも忘れ、夢中になって語りきった。話し終わった頃には、空に星が見えて...■鉄の匂い032■
余りにも衝撃的な品々と、悍ましいばかりの趣味に圧倒されて、『僕』はしばらく声が出なかった。「キミなら解ってくれると思ったんだけど」楠木くんは、『僕』の顔色を窺った。箱の中の何かは既に木乃伊(みいら)化していた。苦しくて藻掻いたのか箱の内側は爪疵でいっぱいだ。おそらく生きたまま埋められたのだろう。丸まっているが、干乾びる前の寸法は『僕』等程はあっただろう。もしかしたらそうかも知れない想像を、確認してしまったら何かが壊れる気がして訊くことができない。楠木くんは悲しそうな顔になった。「やっぱりキミも理解してくれないのかい?ボクを気持ち悪いと思うのかい?」『僕』は、誤解されている時間を少しでも縮めようと慌てて首を横に振った。圧倒はされたが、嫌悪はしていない。驚愕ではあったが、尊敬すらしている。『僕』は解る。『僕』が解る...■鉄の匂い031■
それから『僕』は楠木くんと遊ぶようになった。『僕』が転校してくるまでは、苛められていたのは楠木くんだった。みーと手下が居なくなってなってからの5日間あったタイムラグは少し気になったが、友達が出来た喜びが全てに勝(まさ)った。楠木くんは変わった子で、『僕』とも遊んだが、みんなとも遊ぶ子だった。『僕』は、みんなに苛められた経緯からみんなの輪には入っていけなかったが、楠木くんは気にせず輪に入り、なんだったら中心に居ることも多々あった。休み時間は、みんなと遊ぶ楠木くんを校庭の隅から眺め、放課後は楠木くんとふたりだけで帰って遊んだ。楠木くんは、放課後はみんなとは遊ばなかった。『僕』と遊ぶようになったからだと最初は思ったが、放課後に楠木くんを誘う子は誰も居ないので、前からの事だとわかった。みーと糞が居なくなるまでの楠木くん...■鉄の匂い030■
「彼奴(あいつ)ら、居なくなって良かったね」サラサラのおかっぱ頭の生徒が話し掛けてきたのは、それから5日経った金曜日だった。「どしたの?分からないの?彼奴らのことだよ。みーと糞(ふん)」生徒は、苛めっ子の手下を糞と呼んでいた。しょんべんと呼ばれていた『僕』にはちょっと複雑。「みーと糞って、これまでもちょいちょい突然来なくなったり、でもまた突然来る様になったりしてたんだけど、今回はもう来ないんじゃないかな」生徒は、男子で一番背が高い楠木くんだった。「そんな予感するんだよな。君、どう思う?」これまで一度も直接会話をした事がなかったのに、今日突然お昼休みに近付いて来たのだった。「あれ?知らなかった?君をいつも苛めてたボスはみーで、みーにいつもくっついてるのは、金魚の糞ってことで糞って呼ばれてるんだよ」戸惑ったのは、突...■鉄の匂い029■
結局、学校へは行った。四時限目から。手下の死体はゴミ箱に隠した。縦横深さがそれぞれ3メートルもある巨大なゴミ箱があったので。中身は、掻き集められた落ち葉や腐った倒木の破片。春まで貯めておいて腐葉土を造る設備の様だ。側は枕木で、子供が落ちないようにと背の高さくらいの鉄柵に囲われている。が、その鉄柵はあくまでも落下防止の標識なので、潜り抜けるのは容易だった。手下の両足首を持って柵の所まで引き摺る。スカートが捲れ上がり、小便でびしょびしょのパンツが丸見えに。柵を越えて一度中に降り、枯れ葉を掻き分け窪みを作り、中から引っ張り女を落とす。後は重みで沈んでいく女に避けておいた枯れ葉を被せたら出来上がりだ。逆さに吊るした時に小便が上半身に廻った為、中に落とすのに掴んだ手首は小便塗れになった。手が小便臭くて敵わない。外に出てゴ...■鉄の匂い028■
「来んなよ。こっち来んなって。来んじゃねーよマジで」小さいナイフで威嚇しながらも後退りする手下。「みーちゃんに何したんだよ?みーちゃんを何処にやったんだよ!」じりじりと距離を詰める。「殺した?殺したのか?オマエ、殺したんだろ?」もう逃がす訳にはいかない。「来んなって言ってんだろしょんべん。聞こえねーのかよこの、しょんべん!」この時間のこの山は人目がない。殺害には好都合だが、アリバイを考えると猶予はない。「しょんべん。この野郎。殺すぞ。来んな!」ナイフを振り回すというより遠心力で振り回されている。叩き落とすのは容易だった。そこまで疑ってるなら二人きりでこんな所に来なければ良いのだがそこは悲しいかな所詮は子供。「何する気だよしょんべんの癖に。ただで済むと思うなよ」辺りを見回し遠くまで人が居ない事を確認する。辺りを見...■鉄の匂い027■
この小学校は、規律にとても緩かった。放課後、家庭科室で勝手にクッキーを焼いていても怒られないし、登校時間を過ぎても門扉が閉ざされることもなかった。出席も誰かが校内で見掛けたといえば本人の返事は問わなかった。だからこの朝礼サボりも手下にとっては日常茶飯事。道行く人の目も気にしないし、道行く人も気に留めない。もしかすると、三日四日(みっかよっか)学校をサボる事も家に帰らない事も珍しくないのかもしれない。小学生なのに。手下はとうとう山頂まで登ってしまった。事件を知る者で生きている者は、『僕』と屍姦した犯人のみ。もし事件を知っているのなら、手下は屍姦した犯人と知り合いという事になるが、知り合いなら二人きりでこの山に入る危険も知っている筈。ということは。手下は事件を知らない。だからこの山に来たのは偶然。その証拠に、手下は...■鉄の匂い026■
翌月曜日。朝。みんなに追い抜かれながら登校すると、校門まであとひとつ角を曲がる所で、クラスメイトに呼び止められた。腕組みをして斜めに『僕』を睨むそのクラスメイトは、『僕』に「しょんべん」という仇名を付けた苛めっ子の手下だった。顎で付いてくる様に促し、すたすたと学校と反対の方向に歩いていく。付いていかなければならなくはなく、付いていけば苛められるのは分かっていた。勿論1対1なら負けはしない。でも、ここで勝っても。それはここだけでの勝利であって、苛めが終結する訳ではない。ここで逆らうのは目立つ。今は少しでも人目を惹く行為は避けたい。が、何故2人きりになろうとするのか理由も知りたかったし、断っても何れ捕まるのは判っているので、仕方なくを装い大人しく後に従うことにした。登校児童がどんどん校門に吸い込まれていく。鮭の遡上...■鉄の匂い025■
叫び声に惹かれて、籠を持った子供が四方から集まってきた。『僕』は周りを子供たちに囲まれてしまった。「これ、お兄さんが集めたんですか?お兄さんがこれやったの?」クヌギの木には大きなクワガタが数匹、集って蜜を舐めていた。「う?うん、そうだよ。クワガタはこの木が好きだからね」子供たちが興奮したのは、『僕』の足元の死骸にではなかった。「お兄さん、すっげー。オレ、こんなでけークワガタ見たことないよー」子供たちは『僕』が蜜を木に塗って誘き寄せたと勘違いしていた。「いーなークワガタ。お兄さんコレどーすんの?」子供たちのスニーカーが走り回ると、枯れ葉から髪の毛が露出した。「オレ、クワガタ欲しいーなー」汗が、毛穴という毛穴から噴き出す。目の焦点が合わなくなる。「だったらみんなやるよ。『僕』は見にきただけだから」じわり移動して脚で...■鉄の匂い024■
転校してきて一ケ月が過ぎていた。これまで毎日曜日、一日座っていた河原には向かわず、『僕』はコンビニで缶ジュースを買って山を目指した。なんとなく手ぶらだと目立つ様な気がしたので。山には、思いのほか人が居た。日曜日に来たのは初めてだったが、他の曜日から推察しても日曜のこの混雑は想像できなかった。途中に見晴台のある階段側の登り口から、じりじりする夏の日差しを体の右半分に受けながら登る。大人よりも子供が多い。みな、手に虫かごを持っているが補虫網はもっていない。カブトムシか。この山はそういう山だったのか。クヌギ・ミズナラ・カシの木のクリの木。足元はめり込むくらいに軟らかい腐葉土。コガネムシ科・カブトムシ亜科・真性カブトムシ族が好みそうな環境だ。甲虫類を求めて雑木を分け入っていく子供たち。『僕』も、虫を探す振りをしながら犯...■鉄の匂い023■
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