源泉は一足先に仕事を追え、一人、部屋に帰っている。リンはなにやら仕事で使うもので買い物があるようで、今はいない。 リンの源泉への想いに少し戸惑いつつ、慣れてはきたが、やはり不思議な縁だと思う。そして、リンの若さ故の勢いに少々圧され気味ではあるものの、
シキとアキラは再び、シキの目覚めた草原に立っていた。今度は、シキは己の両の足でしっかりと大地を踏みしめて。 シキがリハビリに、アキラは仕事に明け暮れているうちに、季節はすっかり秋になっていた。 「シキは、ここで目覚めたんだ。覚えてる?」 「いや……あ
シキはその思うように動かす事の出来ない躯のリハビリに精を出していた。始めは一人で立てなくとも、アキラの肩を借りて立てるようになり、歩けるようになった。そして、その他にも、今までもっていた身体能力を取り戻すべく余念がない。 そして、その間にも、眠る前に
翌朝、アキラが目覚める頃には、シキはもう起きていた。長い間の車椅子生活だったので、己の足で立ち上がる事もままらなかった。 「おはよう、シキ」 「……」 「今、食事の支度するからね」 食事を作る、といっても料理らしき料理はそれ程出来ないし、長らく固形物
シキの意識が戻らなくとも、時は流れ季節は巡る。 それまで意識などした事のなかった、動物や草花がある事にシキを散歩に連れながら感じていた。もっとも、荒れ果てた街ばかりで過ごしてきたから、そういったものと巡り合う機会がなかったのも事実なのだが。 それを
源泉とリンは世界中を飛び回っていた。源泉はルポライターとして、リンは趣味だったデジカメが高じて写真家として、各地での紛争状況などを記事にしていた。 源泉は、煙草をふかしながら、携帯電話をしまってアキラが元気でやっている事は何よりだと感じていた。シキは
暗い近道をアキラは自分より大きなシキを背負って抜け出た。重たいなどと感じている暇はなかった。その道を抜ければ、あの灰色に染まっていた空は晴れ、陽の光が射していた。 そこでは、戦いの日々は嘘のようで、平穏に人々が過ごしている。 しかし、その内気がつくだろ
シキがアキラを置いて出かけていくのはいつもの事。 しかし、暫くして、アキラの中で何か胸騒ぎがした。それが一体何なのか、アキラには見当はつかない。けれど、行かなければ、とアキラの何かがアキラにそう告げていた。 勝手に出て、シキに見つかって、また以前の
シキがいつものように帰ってきた。が、普段とは少々様子が違うようだった。独り言のようにただ、「始末してきた」そう言って、壁に背をもたれさせ座り込んだ。 相手を殺す事など、いつもやっている事だろうに、なぜこのときは違ったのか、アキラにはわからない。 シ
毎日のようにどこかで繰り広げられる死闘。タグを首に掲げ、イグラに参加してみても、それまでアキラが参加していたBl@starとは比べ物にならないもので、アキラの敗戦ゼロという記録など無力に等しかった。命がかかっているから、それだけで比べられるレベルでの問題ではな
研究所では、戦後も新たなる研究が続けられていて、昼間は研究員が絶えない。夜遅くなって、源泉とグエんは警備をかいくぐり研究所に潜入する。膨大な研究資料の数々。紙面としても、コンピュータ内にも残っている。名前や数字、記号。それを読み解くのは難儀ではあったが
グエンは今、組織の任務でエマと共に一人の男を追っている。戦闘の後、突如姿を消したその男。トシマに潜伏しているという情報が、不確定だが入ったのだ。 あの男――コードネーム・ナノ。 その為に、一人の少年・アキラを策略にはめ、トシマへと送り込んだのだった
目が覚めて隣に喬志がいる事、以前の葉と喬志からしたらどうして想像できただろう。夢想だにしなかった事だ。 かつて好きだった人、想いながらも告げられずに終わった恋、今はそれよりも確かに愛おしい喬志がいるから、喬志との関係を大切にしていきたいと思う。 喬
嬉しいのは喬志の方だと思ってた。 葉がこうしていてくれなかったら、喬志はやはり、ずっと変わらずにいただろうし、喬志にこんなに温かい気持ち教えてくれたのは葉だったから。 そして、葉が嬉しいと感じていくれている事が、また喬志も嬉しかった。 最近は、こ
葉がよく聴くようになっていた曲。 どこかで葉の中にある何かと連動するような感覚があって、区切りをつけたい時、気分転換をしたい時に、かけるようになっていた。 そういえば、以前に、喬志が変わりなくウオークマンを聴いていて和也に触れられた時、普段は上手く
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