慧子から、須田冬美の言い分を聞かされてから、花村香澄は 須田冬美と、どのように接していいかわからなくなっていた。 今まで、病気であることも聞かされていたので、かばいつつも ごく自然に接してきたつもりだった。 須田冬美が自分に対してライバル心を持っていることは わかってはいたものの・・・ 人の良い、香澄には、人を陥れるという発想はまったく 理解できないことだったし、思い浮かびもしなかった。 どのように、須田冬美に接したら良いのか・・・ 普通にしているつもりでも、また慧子に泣きつかれたら どうしたらいいんだろう・・・ 香澄は、だんだんと須田冬美を避けるよう..
須田冬美が花村香澄のことを慧子とたまこちゃんに ご相談した次の日・・・ 慧子は須田冬美からのご相談の件を花村香澄に話した。 香澄にしてみれば寝耳に水の話である。 須田冬美とは、極普通に接していたわけで・・・ いじめるとか冷たくするなんてことは、どう考えても なかったわけで・・・・ なんのことを言われているのか、さっぱりわからない 香澄だった。 ただひとつ、秘密のノートを見せられてしまったこと だけが、思い当たる原因の唯一だった。 慧子は、自分も嫉妬心の強い方だったので、須田冬美が 花村香澄に対する嫉妬からこのような行動に出ている ことは、わかっ..
秘密のノート事件以来、花村香澄は須田冬美のことを 恐ろしいとは思っていたものの、体面的にはごく普通に 接してはいた。 そんなある日のこと、須田冬美は慧子とたま子ちゃんを ランチに誘った。 須田冬美は発作で倒れてから外で食事をすることが、苦手で 皆と一緒にランチもあまり行かなかったのだが・・・ この時は、「ご相談したいことがあるんです〜」 と、慧子とたま子ちゃんに猫なで声を出して誘ってみた。 このご相談とは、なんと花村香澄のことだったのだ。 須田冬美は慧子とたま子ちゃんに涙ながらに訴えた。 「私・・・花村さんに嫌われているみたいなんです・・・」 自分が花村..
秘密のノートを見せられてから、花村香澄は須田冬美のことが 心底恐ろしくなった。 そして、このノートのことを山村功に知らせなくては 行けない・・・と思った。 メールの内容をノートに書き綴るなんて、尋常ではない。 香澄は須田冬美の家から帰って家に着くと、なにか毒気に 当たったような、妙な疲れを感じた。 香澄は、秘密のノートを見て、今まで自分が感じていたことが 間違いでなかったことを確信していた。 レッスンの度に増えていく、車の傷は間違いなく須田冬美の 仕業だ・・・そう思った。 次の日、香澄は慧子に秘密のノートのことを話した。 とにかく、山村功には気を..
花村香澄が須田冬美の自宅を訪問すると、須田冬美はレッスン後で 疲れて休んでいたようだった。 香澄が、生菓子をおいてすぐに帰ろうとすると 須田冬美は、相談があるので家に上がって欲しいと言う。 香澄は早く帰りたかったのだが、成り行きで仕方なく 家に上がることにした。 香澄は、なんとなく居心地の悪さを感じたものの 出されたお茶を飲み、他愛もない話をした。 しばらく話をすると、須田冬美はちょっと決心したように 話を切り出した。 その話とは・・・ メル友としてメールのやり取りをしている、山村功の様子が 最近おかしい、と言うのだ。 メールを出しても以前のよ..
慧子は、このところ膝の調子がすこぶる悪かった。 といっても、ダンサーの中には慧子くらいの膝の痛みでも 我慢して、踊っているダンサーもたくさんいるのだ。 けれど、痛いのは我慢できない慧子だった。 膝の痛みにしろ、生理痛にしろ、痛かったり 調子が悪いときはサボリ癖がでるのだ。 そんなある日、彼氏だと慧子だけが思っている安田の実家に 行った慧子は、帰ってきてレッスンするのが嫌になって しまって、いつものように花村香澄に代行レッスンを頼んだ。 香澄は、いつものように真面目にレッスンに臨んだ。 その日は、子供の生徒さんの親御さんが生菓子を差し入れ してくれて・・..
須田冬美は、確かにダンスはある程度踊れていた・・・ しかし・・・どうしても癖が出てしまうのだ。 激しい思い込みの強い性格で、柔軟な対応ができない。 慧子も須田冬美のダンスの癖を直したかったのだが あまり強く言うこともできずにいた。 レッスン中にショックでも受けて、倒れでもして 救急車を呼ぶような騒動は避けたかった。 主婦クラスでも、他の生徒にはストレートに注意できる のだが、須田冬美に注意をするには細心の注意が必要だった。 もちろん、花村香澄はインストラクターでもあったので 慧子の注意をうけることも多かった。 そのうち、須田冬美は注意を受けている花..
須田冬美は、一人でいると、どうしても山村功のことを 考えてしまう・・・そんな、自分が居たたまれなくて ダンスに熱中しようとしていた。 そんな須田冬美の気にさわっていたのが 花村香澄だった。 慧子から信頼され、インストラクターとしてクラスを 任されててもおり、須田冬美の欲しいものを全部持っていた。 こいつさえ居なければ、自分がトップになれるのに・・・ 須田冬美は花村香澄を見るたびに悔しい気持ちになっていた。 慧子に、須田冬美が目をかけて欲しいばかりに いろいろ提案をすると、ほとんどの場合 「花村に任せてあるから」 と言われてしまうのだ。 その頃から、..
大病を患い、生還した山村功にとって、山田好恵は 自分を太陽のように照らしてくれているような気がした。 生命力そのものだった。 須田冬美のメール攻撃といくら病気とは言っても あまりにもひどい思い込みは山村功を精神的にも 追い込んでいた。 やんわりと、迷惑だ・・・という内容のメールを送っても 自分にとって都合のいいように解釈してしまうのだ。 須田冬美にしてみれば、自分が迷惑がられているなんてことは 絶対に認められないことだった。 どんな故実けをしても、認めてはいけないことだった。 そうして、迷惑がられていることをひたすら否定して 独り相撲をとっている..
山田好恵にとって、山村功は、同じ劇団になる前は スーパースターだった。 ストップスの公演では、いつもヒーローだったし 歌も踊りも抜群に上手いし・・・ けれど、同じ劇団になって、四六時中一緒にいるようになると 山村功は、親父ギャグやダジャレをとばすことに、一生懸命に なっているのだ・・・ それまでとはイメージが全く違ってしまった。 20歳も違う山村功を男性として見ることが云々・・・ といったことではなく、そのギャップに戸惑っていた。 山田好恵にしてみれば、カッコいい王子様がひょうきんおじさんに 変身してしまった感じなのだ。 醜い蛙が王子様になる話は聞い..
山村功は恋をしていた。 ・・・といっても、須田冬美ではない。 同じ劇団の・・・前から知っているのだが・・・ 最近、劇団に入団してきた山田好恵に、恋をしていた。 そうだ、慧子が我が子のように可愛がっている山田好恵だ。 山田好恵に山村功は、これまでの自分の価値観を覆すような 不思議な魅力を感じていた。 普通の女の子のように取り繕ったりすることもなく 天真爛漫で・・・ 慧子の天真爛漫には、悪意があったが、山田好恵の天真爛漫には 悪意のかけらも感じられなかった。 だが、山村功は結婚していた。 子供も・・・女の子が二人いる。 可愛い盛りなのだ。 し..
山村功は悩んでいた・・・ 須田冬美の旦那に、はっきり断れ・・・といわれても 断りたいのは、やまやまなのだ。 病気だというので、ここまで関わってしまったのだ。 病気でもなんでもない状態なら・・・ 自分からなんて絶対連絡しないだろう。 山村功は結婚しているわけだが・・・ その状態を差し引いても・・・ タイプではないのだ。 正直、見ているだけでイライラした。 須田冬美が、服を脱いで全裸で自分に迫ってきたとしても・・・ 据え膳食わぬは、ナントやら・・・と言われたとしても・・・ 決してそんな関係にはならない。 むしろ逃げ出すかもしれない・・・ とさえ、思っ..
そんなある日のこと・・・ 山村功の元に、一人の男が訪ねてきた。 須田春樹・・・冬美の夫である。 春樹は冬美の我侭な性格は良く理解していた。 子供のように我侭な冬美でも、春樹にとっては かわいくて仕方ないのだ。 冬美の病気も我侭な性格故、なかなか治らないことも よくわかっていたし、たくさんの人に迷惑をかけていることも 理解していて、申し訳なく思っていた。 この頃になると、冬美は山村功からのメールの返事が来ないと 時間も関係なく電話さえするようになっていた。 しかもメールの内容もかなり過激になっていた。 完全に自分は山村功の恋人だと思い込んでいたのだ。 ..
その頃、須田冬美はというと・・・ ますます、山村功にハマっていた。 そして、山村功からのメールの返事が来ないといった ことで、パニック障害の発作をおこし何度も救急車で 運ばれるといった状態になっていた。 最初のうちは、励ますつもりで、「人を好きになるのは 素敵なことだよ」などと歯の浮くようなメールを送っていた 山村功は、正直もうあきれ果てていた。 須田冬美は、自分の中で疑似恋愛のような状態を作って しまっていたのだ。 自分と山村功は恋人同士のような錯覚を起こしていた。 ヨン様に憧れる、おばさま達ももしかしたらヨン様と 自分の妄想の中で疑似恋愛している..
安田の母親は、慧子の恐ろしさもまだわかっておらず 慧子と安田を結婚させようとしていたのだが・・・ 今まで、慧子と結婚してしまった男達より、安田は まともだった。 何故なら、結婚する前に慧子の恐ろしさに気付いたからだ。 安田は無理に慧子をさけるようなことはしなかった・・・ そんなことをしたら、慧子の自分に対する執着がますます ひどくなることは目に見えていた。 頻繁にかかってくる電話は、忙しいときは無視したし 面倒なときも無視した。 が・・・暇な時は電話に出てやった。 安田は、仕事となると食事をとらないことも あるほど、仕事熱心だった。 故に慧..
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