それからしばらくして車を停めたのは、秀樹のマンションの駐車場だった。俺の家か啓史さんの家に送り届けられるのかと思っていたから、意外だった。 車を降りると、あとはわかるだろうと言わんばかりに秀樹はとっとと行ってしまい、俺はノロノロとそのあとを追った。俺が車から少し離れたタイミングでピッと施錠の音がする。裏口から入ってエレベーターに乗り、秀樹の部屋のあるフロアで降りると、玄関の扉が開けっ放しになって...
車の中なのが息苦しいような気がして、新鮮な空気を取りこもうとドアをあけた。だけど、それはなんの役にも立ってくれなかった。目のまえが暗くなってきて力が抜け、しがみついていたドアがさらに開いて座席から転げ落ちそうになる。あわやというところで引きあげられて、からだがシートに沈んだ。「……コ、ユウコ? 息、吐くんだ。ゆっくり、吐く」 耳に息がかかるくらい近いはずの秀樹の声が、その姿が見えないほど遠くで叫ん...
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