ヨージの妻・キョーコは、沖縄県立博物館でボランティア活動をしている。 歴史や文化に興味を持ち、生徒相手に展示の案内や体験学習の手助けをするのが彼女の楽しみだ。 読谷の自宅から那覇にある博物館までは片道およそ一時間。だが、遠い道のりも、彼女にとっては心弾む小旅行のようなものだった。 「今日も楽しんでおいで」とヨージはいつも笑顔で送り出す。 自分の好きなことに熱中するキョーコを、心から応援した...
セルフラーニングの方法,英語,数学などの情報を発信するつもりです。
行動分析学のスキナーが開発したプログラム学習に興味があり,独学できる教材を作っています。 さんすう,数学では,理解を重視する「水道方式」に興味があります。 自分で学べる,それも理解を重視しながらにこだわっています。 著書「プログラム学習英語中1レベル」 「同中2」「同中3」(東銀座出版社) 「わかるできる解ける中学数学1年」 「同2年」「同3年」(以上民衆社)
ヨージが新聞を開くと、今日もまた詐欺のニュースが目に飛び込んできた。 投資詐欺で何千万円を失った人、ロマンス詐欺に騙されて何百万円を送金した人――そんな話ばかりだ。 最近では「闇バイト」という言葉もよく聞く。 簡単な作業で高額報酬が得られるという甘い誘いに、引っかかる人が後を絶たないらしい。 メールを開くと、「おめでとうございます!」という件名のメールが届いていた。 ヨージはそんなものは決...
ヨージは久しぶりに高校の同期会に顔を出した。集まったのは男女8人、懐かしい顔ぶれだった。酒を酌み交わしながら思い出話に花を咲かせていると、ヒロシがふと口を開いた。 「ヨージ、お前のFacebookの投稿、読んでるよ」 ヨージは嬉しくなった。ブログを毎日更新し、それをFacebookにもシェアしているが、こうして実際に読んでくれていると聞くのは格別だった。 「ありがとう! 読んでくれるの、すごく嬉しいよ」 「...
ヨージは、読書をよくする。 Amazon Kindleの電子書籍をTalkBack機能で読み上げさせ、それを耳で楽しむのが彼の読書スタイルだ。 朝食を終えると、庭へ出て庭の手入れをする。その間、スマホからは本の朗読が流れ続けている。これが毎朝の習慣で、およそ一時間ほど。 昼食前には軽い筋トレをする。腕立て伏せやスクワットをこなしながら、ここでも本の朗読を聞く。 その時には妻も昼食の準備をしながら朗読を聞いてい...
あなたらしくない 文になっているよ ヨージは毎日ブログを更新している。だが、最近になってその執筆スタイルが大きく変わった。 まず何を書くかを頭の中でじっくり考え、それを整理してからスマートフォンを開く。 そして、キーボードのマイクマークをタップし、音声入力モードにして話しかける。 すると、とりあえずの文章は出来上がるが、そこには句読点もなければ、言い間違いや変換ミスも多かった。 これまで...
ヨージは久しぶりに高校の同期の集まりに参加することにした。 飲み会なので自動車は乗れない。歩いていくには遠すぎるため、妻に途中の沖縄市の高速バス停まで送ってもらうことにした。ここまでだいたい二十分。 バスが来た。ヨージはクレジットカードを握り、タッチ決済端末にタップする。 乗るときも降りるときも、これだけで済む。使うのはこれで数回目だが、相変わらず便利だと思う。 飲み会は男女8人が集まった...
ヨージの庭には、高くそびえるカニステルの木がある。 見上げると、その高さは優に五メートルを超えている。 黄色い実がたわわに実り、豊作の予感を漂わせていた。 この実はコウモリの好物だ。数年前まで、夜になると彼らが群がり、熟した実をむさぼり食った。 ヨージはそれを防ぐのに苦心したが、昨年は不思議とコウモリの姿が消えた。 もぎたての実を独り占めできるのは嬉しいが、静かな夜に耳を澄ませても羽音ひ...
ヨージはスクーターを愛用していた。 乗用車は基本的に妻が使い、彼が運転するのはほんのたまに。 スクーターなら駐車の心配もいらず、渋滞の横をスルリと抜けることができる。それが何よりも快適だった。 ところが、ある日スクーターのヘッドライトが点かなくなった。 エンジンオイルも交換の時期だ。 そこで、近くのバイクショップへ向かった。しかし、店はシャッターが閉まっている。 店主が一人でやっている店...
ヨージは、庭で草むしりをしながらネックスピーカーを首にかけ、スマートフォンの音声を聞いていた。TalkBackの音声が静かな庭に響く。『悪い夏』。染井為人の作品だ。 以前読んだ同じ著者の『正体』があまりにも面白く、その著者の本を探していたところ、Kindle Unlimitedでこの作品を見つけたのだ。 月額980円で読み放題というサービスが、ヨージの読書欲をさらに加速させた。 物語は26歳のケースワーカー、守を中心に...
ヨージのスマホにAmazonからの通知が届いた。 「配送中。荷物が本日到着予定です。」 注文したサプリメントが届くのだ。しばらくすると、さらに通知が来た。 「配達完了: ご注文商品の配達が完了しました。」 ヨージは玄関に向かった。置き配されているはずだ。玄関の外には、宅配便用に置いた板の椅子がある。いつもならそこに荷物があるのだが、今日は見当たらない。 「おかしいな……」 少し不安...
ヨージが暮らす読谷村座喜味の老人クラブ「友愛会」は、結成から六十年を迎えた。 その節目を祝う記念祝賀会が開かれることになり、妻のキョウコも班長としてその運営に関わることになった。 役員の一人として、彼女には感謝状の授与を手助けする役目が与えられた。 「授与するのは会長だけど、感謝状や記念品を事前に準備し、会長に手渡す役が必要なのよ」 しかし、どのタイミングでどのように動けばいいのか、キョウ...
ヨージは、ブログの原稿を執筆する際、すっかり生成AIの力を借りるようになっている。 何を書くかは自分で決める。そして、内容を次々とGoogle Keepに書き込んでいく。 音声入力を使い、句読点やカギ括弧のことなど気にせずに、ひたすら喋って文章を作る。 そして、それが一通りできると、ほとんど修正もせずにChatGPTに送るのだ。 「次の文章を小説風に書き換えてください」 そう一言添えて。 すると、ChatGPT...
チルド室のレバーが壊れた。これがダメになると、冷蔵庫のドアがうまく閉まらない。 隙間ができるたび、ピーピーと警告音が鳴る。妻は「もう買い替えないと」と言った。 もう20年近く使っているのだ。確かに、大きな買い物になるが、そろそろ潮時だろうとヨージも思った。 なじみの電気屋に電話をかけると、しばらくしてやって来た。 店主は壊れた箇所を見て、「ここだけ交換すれば直るかもしれませんね」と言った。 ...
ヨージは学生の頃から、外出するときには必ず文庫本か新書本をポケットに忍ばせていた。 ちょっとした隙間時間ができると、すかさずページを開き、文字の世界に没頭する。 それが習慣になったのは、加藤周一の『読書術』に影響を受けたからだ。 その本の教えに感銘を受け、以来、読書はヨージの日常の一部となった。 しかし、今はもう本を持ち歩かない。スマートフォンの中に電子書籍があるからだ。 もっと言えば、...
ぼくは民泊を営んでいる。宿泊者が自由に料理できるよう、台所には一通りの道具を揃えている。 炊飯器もあるし、コーヒーメーカーもある。 先日、フランス人の若いカップルが泊まった。二人は料理学校で出会ったそうで、料理には並々ならぬ関心があるらしかった。 滞在中もよく自炊していた。 「日本の炊飯器は、フランスのものより時間がかかるね」 彼らはそんな感想を漏らしていた。 確かに日本の炊飯器は、じ...
そのフランス人カップルが泊まったのは、ぼくの民泊だった。 二人は料理学校で知り合ったという。なるほど、料理好きなのも頷ける。 キッチンには必要なものを一通り揃えていたつもりだったが、彼らのこだわりはそれ以上だった。 ある日、彼女がやってきて、「大きな鍋の蓋はありますか?」と尋ねた。 普通の鍋の蓋なら置いてあるが、フライパン用の大きな蓋はなかった。 これまではそれがなくても誰も困らなかった...
新聞の見出しに大きく踊る「デジタル赤字 6.6兆円」という文字が、目に飛び込んできた。思わず息をのむ。 「デジタル赤字か……身が縮む思いがするな」 ぼくは小さく呟いた。 日本の消費者や企業が海外のデジタルサービスを利用することで、国外への支払いが増え、国際収支のバランスが崩れている。 つまり、日本が生み出すデジタルの富よりも、海外に流出する額のほうがはるかに多いということだ。 ぼ...
年が明け、2024年も過去のものとなった。そこで、ぼくは一年間に撮りためた写真をまとめ、フォトブックを作ることにした。 それをKindle出版で、紙の書籍としても出版する。もう数年も続けていることだ。 これまで教材などを何冊もKindleで出版してきたが、毎回苦労するのが表紙作りだった。 Kindleはサイズや仕様に厳しく、PDFに変換してアップロードしても、何度も不合格になる。 やっと合格したかと思えば、表紙が...
ヨージのもとに電話がかかってくることは、めったにない。 だからこそ、パソコンの前で作業をしている最中に、トルコ行進曲の着信音が鳴り響いたとき、彼は少し驚いた。 画面を見ると、表示されたのは「03」から始まる番号。東京からの電話だった。 通話ボタンを押すと、落ち着いた女性の声が聞こえた。 名乗った社名も名前も、今となっては覚えていない。 ただ、「助成金」「雇用保険」「厚生労働省」などの単語が...
先日、NHKの「あさイチ」で写真写りを良くするためのいくつかのワザが紹介されていた。 それらのポイントを心に刻み込み、いくつかの魔法のようなテクニックを思い返す。 笑顔の秘訣:口角を上げて笑うと、自然な笑顔が生まれるとのこと。ウイスキーを思い浮かべるとより良いそうだ。 シンデレラ角度:カメラに対して30度の角度で顔を横に向けることで、立体感が増すという。 二重あごの解決法:おでこを前に突き出す...
ヨージのもとに、Airbnbを通じて一通の宿泊予約リクエストが届いた。元の言語は ドイツ語だ。 ――こんにちは、ヨージ! 友人と日本を3週間旅行する予定で、沖縄にも数日滞在したいと考えています。対応いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。 いつものように、ヨージは宿の立地について考えた。 彼の宿は公共交通機関が不便な場所にある。バス停こそ近いが、通勤通学時間を外れるとバスはほとんど来ない。 事...
スマホ カメラがプロのカメラマンに 昨日のブログに、スマートフォンで写真を送るのが驚くほど楽になったことを書いた。 ITの発展とは、単に高度な技術が使えるようになることではなく、それを誰もが簡単に使いこなせるようになることなのだろう、と。 今、ITの進歩は凄まじい。もはや「進化」と呼んでもいいほどだ。 これから、スマートフォンでできることはさらに増えていくだろうし、それを誰もが手軽に使えるよう...
妻は、自分で撮った写真をLINEで姉や友人に送ることがある。 ある日、ぼくが撮った写真を眺めながら、「これ、私に送って。姉さんにも転送するから」と言う。 スマートフォンの画面をすいすいと操作し、あっという間に写真を転送してしまった。 スマホ 操作が苦手な妻が楽に写真を送る様子を見て、ぼくはつくづく思う。写真を送るのが、こんなに簡単になったのか、と。 昔は違った。 スマートフォンなどない時代、...
レミと彼のパートナーがこの宿にやってきたのは、一月の初めだった。 フランスから遥々沖縄へ。彼らは滞在中、レンタルスクーターを借り、海風を切って島を巡っていた。 温暖な冬の沖縄は、彼らにとって快適な旅先だったようだ。 ひと月が過ぎ、ついに出発の日が訪れた。チェックアウトの前夜、LINEにメッセージが届く。 —— 明朝6時36分のバスで出発します。もうスクーターは返却しました。バス停までは歩...
フランス人の若いカップルが、ぼくらの民泊に泊まっていた。ある日、ジョギングから戻った彼らが興奮した様子で話しかけてきた。 「走ってたら、犬を連れた男性に声をかけられたんだ。で、地元の集まりに招待されたんだよ!」 話を聞くと、その男性はぼくらのことをよく知っているらしい。名前を尋ねると、やはり知っている人だった。彼の息子と娘は、ぼくらが学習塾をやっていた頃の教え子だったのだ。 「その集まりって...
「ねえ、私のメールアドレスって何だったかしら?」 妻が不意に尋ねてきた。スマートフォンを手にしながら、困ったような表情をしている。 「えっと……」 ぼくは自分のメールアドレスなら完璧に覚えているが、妻のものは曖昧だ。しばらく考えたが、やはり確信が持てないので、スマートフォンで確認し、彼女に教えた。 「ありがとう。でも、また忘れちゃいそう」 「それなら、ユーザー辞書に登録してお...
フランスからのカップルが、ぼくの民泊にやってきた。 彼らは1ヶ月ほど滞在する予定で、チェックインの前から何度かメッセージを交わしていた。 そのやり取りの中で、女性の方は「バイトをしたい。どこか紹介してもらえないか?」と尋ねてきた。 バイト——。 ぼくには土地の仕事事情がよくわからなかったし、外国人が働けるのかどうかも曖昧だった。 だから「あなたが来てから考えよう。できるだけ協力...
陽二は朝、目を覚ますと、ゆっくりと布団を抜け出した。 まだ眠気の残るまま玄関へ向かい、郵便受けを開ける。 中には新聞といくつかのチラシ。その中の一枚に、彼の目がとまった。 ——断水のお知らせ。 「やっぱりな」 少し前から家の前の道路では水道工事が行われていた。 工事のたびに道が封鎖され、時には遠回りしなければならない。少し不便ではあったが、仕方のないことだ。 そして、この流...
生成AI と直列回路、 並列回路 陽二はカフェの片隅でコーヒーをすすりながら、目の前のスマートフォンを指でなぞった。 画面には生成AIのチャット画面が開かれている。 最近、彼はこのAIと対話しながら、いろいろなことを試していた。 「AIの思考の流れって、まるで電気回路みたいだな……」 彼は、ふと口にした自分の言葉に興味を持ち、ノートを取り出して書きつけた。 直列回路と並列回路...
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ヨージの妻・キョーコは、沖縄県立博物館でボランティア活動をしている。 歴史や文化に興味を持ち、生徒相手に展示の案内や体験学習の手助けをするのが彼女の楽しみだ。 読谷の自宅から那覇にある博物館までは片道およそ一時間。だが、遠い道のりも、彼女にとっては心弾む小旅行のようなものだった。 「今日も楽しんでおいで」とヨージはいつも笑顔で送り出す。 自分の好きなことに熱中するキョーコを、心から応援した...
昼下がりの台所。 ヨージは、テーブルに並べられた皿を前に、妻のスマートフォンを手にしていた。 自分のスマホは今、充電中。残り少ない電池残量が気になって、しばらく使うのをやめている。 「ちょっと、スマホ貸して」 そう言って、妻のスマホを借りた。 野菜からゆっくり食べる、昼食の小さな習慣。 最初の5分間は、野菜だけを噛み締める時間。スマホのタイマーは、そのための大切な道具だった。 けれど、使...
ヨージは最近、生成AIという不思議な存在と、少しずつ距離を縮めていた。 日々使いながら、その底知れぬ力に驚かされることも多い。 けれど、まだ「使いこなしている」と胸を張って言えるほどではない。 まるで海辺で波の動きを観察しているだけのような、そんな手応えだった。 「どう使えば、もっと深く潜れるのか…」 そんな問いを胸に抱きながら、昨日もブログを書いた。 「沖縄平和の礎」の名を読み上...
「沖縄平和の礎」名前を読み上げる集いに参加 3週間ほど前の5月21日、午後1時過ぎ自宅のチャイムが鳴った。 運動中だったヨージは上半身裸だったので、対応に出たのは妻のキョーコだった。 リビングまで届く声が聞こえた瞬間、ヨージは誰が来たのかを察した。 慌ててシャツを着込み、玄関へ向かう。 そこに立っていたのは、彼の知人であり、平和運動の先輩でもあるTさんとIさんだった。 辺野古の新基地建設...
ヨージは机に向かい、静かにパソコンのキーボードを叩いていた。 彼の前には、高校1年生向けに作成中の数学教材『ひとりで学べる高校数学A』の原稿が広がっている。 誰にも頼らず、ひとりで学び進められるように——それが、ヨージの目指す教材のかたちだった。 だからこそ、彼は内容を細かく階段のように刻み、一歩一歩確実に登れる構成に仕立てた。 すでに最後まで書き上げ、第1回目の推敲も終えていた。 ...
ヨージの家には、テレビが二台ある。 ひとつはリビングルームに、もうひとつはベッドルームに置かれている。 ベッドルームのテレビは、ほとんど妻専用だ。ヨージはそこでは見ない。 妻は、洗濯物をたたみながら、あるいは朝食のパンをかじりながら、録画した番組をのんびりと楽しんでいる。 一方、リビングルームのテレビは、二人で並んで見ることも多い。 けれども操作が少し複雑なため、妻は自分ひとりではうまく...
ヨージは、文章を書くのが嫌いではなかった。いや、むしろ、少し自信があったと言ってもいい。 「ヨージくんの文章は、わかりやすいな」 かつて、新聞に投稿した文章を読んだ叔父が、そう言ってくれたのだ。 「難しいことを、私たちにもわかるように書いてくれる」 そう評価されたときの喜びは、今でも胸に残っている。 彼は学生の頃から数学が得意だった。 答えにたどりつくまでの筋道を、理路整然と積み上げる作業...
ヨージは沖縄・読谷村で民宿を営んでいる。 ある晩、宿に滞在しているスペインからの若いカップルとその友人と一緒に、ヨージたちは食卓を囲んだ。 料理は持ち寄りだった。彼らはスペイン風のトルティージャを焼いてきてくれた。 妻はゴーヤーチャンプルーとそうめんチャンプルー、もずくの酢の物を作った。 異国の味と島の味が、ひとつのテーブルの上で仲良く並んだ。 食事をしながら、いろんな話をした。 スペ...
ヨージは、例の原稿を整えていた。「ピアノが空を飛んだ日」——その思い出を綴った一篇だ。 ブログに載せるために音声入力で 羅列的に内容を入力し、 全く 整えることもなく、いつものようにChatGPTに依頼する。「小説風に書き換えてください」 すると、まるでプロの作家が書いたかのように、美しくまとまった文章が返ってきた。 一息ついたそのとき、ふと一つの記憶が顔を出した。 ——そういえば...
ピアノを運び出しの日が近づくにつれ、ヨージはふと昔のことを思い出した。 このピアノ―― ぼくが「保母免許」を取るために練習した、あのピアノだった。 まだ「保育者」なんて言葉が一般的じゃなかった頃、男性でも「保母」と呼ばれていた時代。自分で保育園を開きたいという夢が芽生え、その第一歩として免許を取ろうと決めた。 試験には筆記と実技の両方があった。 筆記試験では、教育原理や児童心理学、衛生学や栄...
ヨージの妻は決断を下した。 もう四十年以上も前に手に入れたピアノを、ついに手放すことにしたのだ。 電話で買取業者に連絡を入れると、数日後、査定に来たスタッフは「無料で引き取ります」と穏やかに告げた。 かつては高価だったピアノも、いまでは値段もつかない。 けれど、運搬費がかからないだけでも有難いと思えた。 もう何十年も動かすことのなかった黒いピアノが、ある日、静かに家を出ていった。 引き...
読み終えた、というより──聞き終えた、と言うべきだろうか。ヨージはスマートフォンのアシストリーダーを使って、『ネメシスの使者』を耳で読んだのだった。 中山七里による社会派ミステリーで、文春文庫から刊行されたこの作品は、彼の心に重たい問いを残していった。 内容はこうだ。 死刑判決が確実視された殺人犯が、予想外にも温情判決によって無期懲役となった。 しかしその後、加害者の家族が次々と何者かに...
ヨージは、ひと月ほど前に観たNHKの『明日が変わる トリセツショー』をきっかけに、階段を二段ずつ上がるという健康法を始めた。 始めてみると、それは思ったほどきつくはない。 ただ、楽々というわけでもなく、少しだけ気持ちを奮い立たせて一歩を踏み出す、そんなちょうどいい負荷だった。 「これなら続けられそうだな」と、今日もヨージは階段を二段ずつ上っていた。 ヨージは民泊を営んでいる。 ある日の午後、...
沖縄・読谷村の静かな一角に、「セルフ宿」と名づけられた小さな宿泊所がある。 看板も目立たないその宿は、一組限定。けれど、その自由さと落ち着いた空気に惹かれて、長期滞在を希望する旅人たちが後を絶たない。 「セルフ宿」――そう名づけたのには理由がある。 調理器具から食器、冷蔵庫、炊飯器、洗濯機、シャワー、トイレに至るまで、生活に必要なものはすべて揃っており、自分で生活を組み立てられるようにしている...
夜の静けさのなか、ヨージはひとつの「警告」と向き合っていた。 スマートフォンの画面に表示されたのは、SDカードの容量不足を知らせる無機質なメッセージ。 「そろそろ限界か……」 長年使ってきたカードを新しいものと交換することに決めたのだった。 作業は色々 苦労したが なんとかできた。 着信音にはモーツァルトの「トルコ行進曲」、目覚ましにはグリーグの「朝」。 そして、毎朝欠かさず聴いて...
ヨージは、午後のやわらかな光が差し込む書斎で、ふとスマートフォンの画面に目をやった。そこには見慣れぬ警告が表示されていた。 「SDカードの空き容量が少なくなっています」——見て見ぬふりをしていた問題が、ついに正面から立ちはだかった。 「面倒だな……」と、ヨージは小さくつぶやいた。 それでも放っておくわけにはいかない。 覚悟を決めると、引き出しの奥からマイクロSDカードを取...
ヨージは、ふと思いついた疑問をスマホのマイクに向かってつぶやいた。 「ねえ、チャットGPT。『自分史』ってあるよね? ぼく自身はまだ書くつもりはないけど、そういうのを誰かが書く手助け、君ならできるんじゃないかな?」 AIの画面には、すぐに丁寧な返事が表示された。 「はい、それは私の得意分野です。話し言葉のまま送っていただければ、それを整理して文章に整えることができますし、足りない部分があれば質問...
ヨージは、ある日ふとしたきっかけで一冊の本を手に取った。 タイトルは『道をひらく』。著者は松下幸之助——あの「経営の神様」とまで呼ばれた男だ。 パナソニック(旧・松下電器産業)の創業者として、日本の家電産業を世界に押し上げた立役者。テレビのドキュメンタリー番組などで、その温厚で深みのある人柄を紹介されているのを何度も見たことがある。 そんな人物の書いた本なら、きっと何か得るものがあ...
ヨージは、日々の暮らしの中で生成AIをよく使っている。 とはいえ、そのAIがどこまでのことができるのか、実はまだよく知らない。 けれど、
かかってくるのは迷惑電話 ヨージのスマートフォンから、不意にモーツァルトのトルコ行進曲が流れた。 電話の着信音だ。珍しいことだった。 彼はかねてから「電話は嫌いだ」と公言していたし、そもそも彼に電話をかけてくるような友人や知人は数えるほどしかいなかった。 だからこそ、その音は彼の日常にとって、どこか異物のように響いた。 画面を見ると、見覚えのない番号が表示されていた。 番号の下には「迷惑...
ドイツ周遊旅行10日間の4日目、5月31日はポツダムのツェツィーリエンホフ宮殿に行きました。 ツェツィーリエンホフ宮殿は、ポツダム会談が行われたことで有名な宮殿です。 ポツダム会談では、ポツダム宣言が発表され、第二次世界大戦後の戦後処理の方向性が示されました。アメリカのトルーマン、イギリスのチャーチル、ソ連のスターリンによって行われたこの会談により、日本はポツダム宣言を受諾し、無条件降伏しました。 ...
ドイツ周遊10日間の旅の7日目、6月2日にケルン大聖堂に行きました。 以下はAIによる説明です。 ケルン大聖堂は、ドイツのケルンにあるゴシック様式の大聖堂です。正式名称はザンクト・ペーター・ウント・マリア大聖堂 (Dom St. Peter und Maria) です。ゴシック様式の建築物としては世界最大であり、ローマ・カトリック教会のミサが行われています。 ケルン大聖堂の南塔展望台までの階段は533段あります。高さは約100メー...
昨日のブログでは、ベルリンでの自由行動の時間にマルクス・エンゲルス像、森鴎外記念館、ヘーゲルの墓のある墓地に行ったことを書きました。 ヨーロッパやアメリカで街を自由に歩いていると感じるのは、通りの名前がきちんと表示されており、角ごとにその表示があることです。これはとても助かります。 マルクス・エンゲルス像のある公園から森鴎外記念館まで歩いて行くには、ウンター・デン・リンデン(Unter den Linden)...
ドイツ周遊10日間の5日目、6月1日は午前中にベルリン市内を観光し、その後は自由行動となりました。 ベルリン大聖堂の前で、僕たちはグループの皆さんと別れました。 その後、妻と二人でベルリン市内の公園、「マルクス・エンゲルス・フォーラム」に行きました。 マルクスとベルリンの関係は深く、1848年にはベルリン革命に参加するためにベルリンに移住しました。 1849年には共産主義者同盟の指導者として活動し、「...
ドイツ周遊旅行10日間の8日目、5月3日にはライン川クルーズが予定されていました。 ローレライの観光をしたり、ランチを楽しんだりするとのことでした。 ホテルを出て、バスはライン川に向かいました。 バスの中で添乗員が悪いニュースがあると言いました。 ライン川の支流であるネッカー川が氾濫しており、ライン川も水位が上昇しているため、クルーズがどうなるかわからなくなったとのことです。 バスはしばらく...
ドイツ周遊の旅に行ってきました。 各地でドイツ料理を食べました。 名物のソーセージの他に、ポークやビーフ料理、ポテト料理、そしてパスタ料理などもありました。 妻は最初の頃から塩辛くて食べられないと言って、かなりの量を残していました。 同じグループの人たちも同じように、塩辛いと言って残す人が多かったです。 妻の薄味にだいぶ慣らされてきた僕ですが、もともとは塩辛いものが大好きなので、特に塩辛...
ドイツ周遊10日間旅行の2日目、5月28日に白亜の名城ノイシュバンシュタイン城を観光しました。 グループのメンバーがトイレに行っている間、手持ち無沙汰で立っていました。 すると、30代くらいの男性が僕に話しかけてきました。 「英語が話せますか?」と聞かれたので、「少しは話せます」と答えると、 「息子があなたのことをヒーローに似ていると言っています。一緒に写真を撮ってもらえませんか」と言われました。 ...
昨日はドイツ旅行の5日目、5月31日にベルリンの壁を見るためにチェックポイント・チャーリーに行ったことを書きました。 そこで、ベルリンの壁を越えるために東ドイツの人々がどのように工夫していたかについて書きました。 それほど東ドイツの人々は国を脱出したかったのです。 経済的にも政治的にも不自由な状態にあったからです。 さて、東ドイツは社会主義の国と言われていました。 社会主義の国といえば、マル...
10月26日からドイツ周遊旅行に10日間行ってきました。 5日目の10月31日、ベルリンの壁を見るためにチェックポイント・チャーリーに行きました。 以下は、生成AI Google Geminiによる説明です。 チェックポイント・チャーリーは、第二次世界大戦後の冷戦期に、ベルリンが東西に分断されていた時代に、東ベルリンと西ベルリンの境界線上に置かれていた国境検問所です。 現在は、チェックポイント・チャーリー跡地が観光...
5月27日から今日6月5日まで、ドイツ周遊の10日間旅行に行っていました。5月26日に東京で前泊し、出発しました。 しかし、この間、このブログではそのことに触れませんでした。 最近のニュースなどによると、SNSなどで旅行に行ったことが知られてしまい、空き巣に入られる被害があるとのこと。それでそうなったら大変だと思い、書かなかったのです。 旅の中では、いろいろブログに書いておきたい話題があります。旅に関係...
生成AIは非常に高い能力を持っています。その利用価値は非常に高いです。 しかし、僕の感覚では、ほとんどの人が使っていません。なぜでしょうか。 1つの理由として考えられるのは現状維持バイアスです。 現状維持バイアスについて、生成AIのGoogle Geminiに説明してもらいました。 現状維持バイアスとは、「変化を避け、現状を維持したい」という心理傾向です。具体的には、以下のような状況で起こります。 * 新しい...
最近、何かわからないことがあると、Google検索で調べるよりもGoogle Geminiに尋ねることが多くなっています。 Google Geminiは僕の質問に直接答えてくれるからです。 Google検索で調べると、直接答えが出ることもありますが、参考になるサイトがたくさん並び、その中から自分で答えを探さなければならないことが多いです。 それは面倒なので、Google Geminiに尋ねるのです。 Google Geminiには、人間に話しかけるよう...
少し前に、中学生や高校生には読ませたくないという前置きをした上で、方程式や因数分解を解いてくれるサイトがあることを紹介しました。 しかし、最近もっとすごいことが分かりました。 方程式や因数分解をそのまま入力して、AIであるGoogle Geminiに尋ねるだけで解いてくれるのです。 次の質問をしました。 「次の方程式を解いてください X 3乗マイナス9x2乗プラス27x マイナス27イコール0 するとすぐに回答があ...
「ひとりで学べる高校数学1」を作っています。現在、3回目の推敲作業を行っているところです。 ここで、なぜ僕がこの教材を作ろうと思ったのかについてお話しします。 これまで、小学2年生から6年生までの算数、中学1年生から3年生までの数学の教材を作ってきました。中学理科や 英語の教材も作りました。おかげさまで、どれも好評をいただいています。 その理由は、学ぶ内容を細かく分けて階段状にし、上りやすくしたか...
ひとりで学べる高校数学Iを作っています。 現在、3回目の推敲作業を行っており、もうすぐ終わります。 3回目の推敲作業を始めるとき、これが最後で、終わったら出版に向けた作業をしようと考えていました。 ところが、間違いがまだ見つかるのです。 解答に間違いがあったら学習に支障をきたします。そういうミスは極力無くさなければいけません。 まだ間違いがあるかもしれないので、もう1回、4回目の推敲作業を行...
京都に住んでいる 妻の弟夫婦がやってきました。 いろいろ おしゃべりをし そして僕がこのテレビはインターネットだけどあなたのところはどうかと尋ねました。 インターネットテレビではない どの返事です。 それで僕はインターネットの TVer で色々 番組が見られるから便利だよと勧めようと考えました。 沖縄では NHK の他に 民放テレビが3局あります。TBS 系 フジテレビ系 朝日放送系です。それ以外の日本テレビ ...
昨日、妻が老人会の班長になり、会員であるお年寄りたちを訪ねると、とても喜ばれたことを書きました。 話相手を求めているお年寄りは多いのでしょうね。 家庭の環境にもよるでしょう。大家族のところではそれほどでもないかもしれませんが、一人暮らしのお年寄りにとっては、誰かが訪ねてくることはとても嬉しいことだと思います。 そういうお年寄りにはヤクルトを取るのも良いのではないかという考えが浮かびました。 ...
妻は今年度、読谷村座喜味老人会の班長になりました。以前も担当したことがありますが、他にやる人がいないとのことです。 先日は老人会の年会費を集めに行きました。そこでは「待っていたよ」と言って、前もって準備をしていたお年寄りもいました。 90歳以上は会費が無料ですが、今回は総会資料があったのでそれを配りに行きました。 それはポストなどに入れるだけでもいいのですがチャイムを鳴らしたり 呼びかけをした...
僕の左目は網膜動脈閉塞症を患っています。それは目の動脈硬化のようなものです。 そのため、眼科に通院しています。目の状態が悪化している時には、注射することになります。 何度も麻酔の点眼をしてもらった後、器具で目を閉じないように大きく開いて注射をします。 そんなことを他人に話すと、「目に注射をするのか」と言って怖がります。 妻の甥に話すと、彼も目に注射をされたことがあるので、とても怖かったと言...
沖縄県立博物館で「新収蔵品展 令和5年度 収蔵資料」が行われています。 期間は、2024年5月21日(火)から2024年6月23日(日)までです。 以下は沖縄県立博物館のサイトからの引用です。 「新収蔵品展」は、前年度に寄贈・収集・購入・移管・修理された資料を一堂に集め、広く一般に公開することを目的として開催します。今後の展示や研究活動で活躍する多岐にわたる分野の資料が展示されており、見ごたえがあります...