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  • 【2748冊目】芥川龍之介『蜘蛛の糸・杜子春』

    蜘蛛の糸・杜子春(新潮文庫)作者:芥川龍之介新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン70冊目。「蜘蛛の糸」「犬と笛」「蜜柑」「魔術」「杜子春」「アグニの神」「トロッコ」「仙人」「猿蟹合戦」「白」を収録。芥川といえばこの作品、と誰もが思うであろう短編が揃っています(これに「羅生門」「芋粥」「鼻」が加われば、まさに芥川入門書ですね)。子どもの頃は「蜘蛛の糸」「杜子春」「魔術」のような、寓話のような作品が好きでしたが、今読むと、「蜜柑」「トロッコ」のような作品が気になります。どちらも子どもが登場するため、少年少女むきの作品と思えますが、その味わいは大人になってからのほう…

  • 【2747冊目】山本周五郎『さぶ』

    さぶ (新潮文庫)作者:周五郎, 山本新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン69冊目。最初に読んだのは大学生の頃だっただろうか。そのときは通り過ぎるように読んだのだと思うが、それなりに年を重ねてから読むと、印象が全然違う。たとえば初読のときは、主人公がどう見ても栄二なのにタイトルが「さぶ」なのが不思議だった。特に本書のメインとも言える寄場での日々はほとんど栄二のみで、さぶはときどき面会に来るに過ぎない。しかもさぶときたら鈍くてどんくさく、とても主人公という感じではない。でも、これはやはり栄二が主人公で、なおかつタイトルが「さぶ」であることが大事なのだ。なぜなら、…

  • 【2746冊目】フランツ・カフカ『変身』

    変身 (新潮文庫)作者:フランツ・カフカ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン68冊目。朝起きると虫になっていたグレーゴル・ザムザの物語、という知識は多くの人が持っているでしょうが、それだけではもったいない。私は何回読んだかわかりませんが、そのたびに印象が変わります。おそらく読む人、読む時期ごとに、まったく違った見え方となる小説ではないでしょうか。今回印象的だったのは、本書のほとんどが虫になったザムザの独白であるということでした。なので、いきなり自分が巨大な虫になっている異様なシチュエーションなのに、なんだかそのことにはあまり触れず、自分の仕事のこととか、家族へ…

  • 【2745冊目】松岡圭祐『ミッキーマウスの憂鬱』

    ミッキーマウスの憂鬱(新潮文庫)作者:松岡 圭祐新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン67冊目。ディズニーランドが舞台のお仕事小説という、まあ、こういう機会がなければ絶対読まなかったであろう小説でした。ディズニーランドの「表と裏」の対比がひとつの読みどころになっているのですが、そもそも私自身、ディズニー愛がほとんどゼロ、ディズニー映画もディズニーランドもできれば避けて通りたいと思っている人間なので、そのあたりは少々シラケ気味。まあ、誰もがディズニーランドを「夢と魔法の王国」だと思っているワケじゃありませんのでね。とはいえ、客観的に見れば、お仕事小説としてはなかな…

  • 【2744冊目】『江戸川乱歩傑作選』

    江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)作者:乱歩, 江戸川新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン66冊目。「二銭銅貨」「二癈人」「D坂の殺人事件」「心理試験」「赤い部屋」「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」「芋虫」を収録した一冊です。初期作品が中心のセレクションですが、探偵モノであらためて読んで上手いな、と思ったのは「心理試験」。倒叙モノですが、心理テストをごまかそうとしてかえって墓穴を掘るという展開が鮮やかです。「屋根裏の散歩者」「人間椅子」「鏡地獄」「芋虫」の後半4編はいずれもオールタイムベスト級の傑作。特に、唯一中期の作品から選ばれた「芋虫」は、何度読んでもと…

  • 【2743冊目】NHKスペシャル取材班『超常現象 科学者たちの挑戦』

    超常現象: 科学者たちの挑戦 (新潮文庫)作者:NHKスペシャル取材班新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン65冊目。幽霊に死後の世界。生まれ変わりにスプーン曲げ。透視能力にテレパシー。「超常現象」とか「超能力」といわれるモノには、どこか胡散臭さがつきまとう。超常現象を扱うテレビ番組の多くがこれまで取ってきたスタンスは、超常現象があるものとして扱うか、完全否定するかのどちらかだった。だが、本書の元となったNHKスペシャルは、そのどちらにも与しない。もちろん、生まれ変わりや幽霊についての話を集めたり、科学的な検証を試みたりはしている。だがその最終的な結論は「今のと…

  • 【2742冊目】一條次郎『レプリカたちの夜』

    レプリカたちの夜(新潮文庫)作者:一條次郎新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン64冊目。とてもヘンである。そして忘れがたい。ちょっと類をみない小説だ。夜中の工場にあらわれるシロクマ。姿を消す工場長。自分自身のレプリカ。頭がターンテーブルになっているカッパ。ぷりんぷりん音頭を踊るうちに溶けてしまう女性。次から次へと登場するシュールでミステリアスな状況。その中に、主人公どころか物語ごと巻き込まれていく。シュールなのに文章が読みやすいので、理解しがたい状況でも、読者の頭の中にあざやかにイメージが浮かぶ。これは新時代のカフカか安部公房か、ブルガーコフかデヴィッド・リン…

  • 【2741冊目】山崎豊子『約束の海』

    約束の海 (新潮文庫)作者:豊子, 山崎新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン63冊目。海上自衛隊の潜水艦と釣り船の衝突事故に翻弄される二等海尉、花巻朔太郎を主人公とした長編小説です。歴史をまたいだ大長編として構想されつつ、著者の死で中断された作品ですが、本書だけでもそのスケールの大きさは一級品です。慣れない専門用語や潜水艦乗りの独特の雰囲気に戸惑う部分もありましたが、途中からはそんなことは気にならなくなります。なにしろ小説としての厚みが凄い。だいたい、事故が起きるまでに本書の三分の一、130ページを費やして、潜水艦乗りの日々をたっぷり描写しているのです。後半で…

  • 【2740冊目】宮部みゆき『魔術はささやく』

    魔術はささやく (新潮文庫)作者:みゆき, 宮部新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン62冊目。およそ20年ぶりの再読。平成元年に刊行された、宮部みゆきの長編第一作ですが、そうは思えないクオリティの高さには、あらためて驚かされます。次々に起きる事件、予想のつかない展開、驚くべき犯罪方法、いずれも見事ですが、一見バラバラに見える要素が、ラスト近くになって一挙に結びつくくだりには、背筋が震えるほどの快感を覚えます。そしてなんといっても、主人公である高校生の守が魅力的です。父が横領事件を起こして失踪した守は、周囲からさげすまれ、排除されてきました。でもそんな中で、大事…

  • 【2739冊目】中村文則『土の中の子供』

    土の中の子供 (新潮文庫)作者:文則, 中村新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン61冊目。短いけれど、重く暗い、ねっとりと絡みつくような小説です。いわく言い難い異様な迫力があって、読み始めたら本を置けなくなりました。親に捨てられ、引き取られた親戚の家で壮絶な虐待を受けた「私」は、山の中で生き埋めにされそうになり、逃げ出します(だから「土の中の子供」なのです)。同じような傷を負った女と住み、タクシードライバーをやっているのですが、心の中にはぽっかりとした虚無が広がっています。その虚無は、気がつくと心の中にじわじわと入り込み、悪意と妄想を撒き散らすのです。中村文則…

  • 【2738冊目】二宮敦人『最後の秘境 東京藝大』

    最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常 (新潮文庫)作者:敦人, 二宮新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン60冊目。いや〜、これは面白い本でした。マンガ『のだめカンタービレ』や『ブルーピリオド』でなんとなく知っていたつもりにはなっていましたが、甘かった。現実はその斜め上を行っています。なんといっても、通っている人がみんな超個性的で、美術や音楽に一途に邁進しているのがカッコいいですね。口笛の世界チャンピオンや、田中久重の再来といわれる天才からくり人形造りもいれば、三味線と「カワイイ」の融合を目指すキラキラシャミセニストも、ブラジャーを顔につけた仮面ヒーロ…

  • 【2737冊目】太宰治『人間失格』

    人間失格 (新潮文庫)作者:治, 太宰新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン59冊目。人間失格といえば「恥の多い生涯を送って来ました」という有名な書き出しですが、実はその前にプロローグがあるのをご記憶でしょうか。3枚の写真について書かれています。本書の主人公、葉蔵の写真ですが、それを眺めている「私」とは誰なのでしょうか。著者自身、でしょうか。なら、太宰の分身のように描かれるこの大庭葉蔵という人物は誰なのでしょう。なんだか持って回った言い方になりましたが、結論からいえば、葉蔵は太宰自身であり、その手記を公表しているのも太宰自身なのだと思います。自分のみっともなさ、…

  • 【2736冊目】朝井リョウ『何者』

    何者 (新潮文庫)作者:朝井 リョウ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン58冊目。話題の多い作家さんですが、読むのは本書が2冊目です。最初に読んだ『世界地図の下書き』は児童養護施設を舞台にしたすがすがしい作品でしたが、さて、本書はどうでしょうか。就活に臨む大学生たちが登場人物です。はるか昔のこととはいえ、不安と焦りのなかでもがく就活生たちの姿に、かつての自分自身が重なり、なんとも懐かしく読み終えました。自分が何者なのか、何になろうとしているのか、手を替え品を替え、理不尽なまでに問われ続ける日々。友達に内定が出たと聞いて感じる、どこか素直に祝えない感情。ああ、就…

  • 【2735冊目】森下典子『日日是好日』

    日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ (新潮文庫)作者:典子, 森下新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン57冊目。ちなみに前回、前々回に続き、こちらも映画化された作品です。なんという偶然。とはいえ、本書は小説ではなくエッセイです。著者がお茶を学びはじめてから25年にわたる、悪戦苦闘と気づきの日々が、みずみずしく描かれています。私自身はお茶を学んだことがありません。なので、本書で説明されている作法の細かさには驚きました。茶室に入る時は左足から、敷居と畳のへりは踏まず、畳一帖は6歩で歩く。お湯を汲む時は釜の底、水の時は真ん中から・・・・・・。こんなのは…

  • 【2734冊目】司馬遼太郎『燃えよ剣』

    燃えよ剣(上) (新潮文庫)作者:司馬 遼太郎新潮社Amazon 燃えよ剣(下) (新潮文庫)作者:遼太郎, 司馬新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン56冊目。先日の『ひらいて』に続き、こちらも映画化とのこと。新潮文庫100冊、そういう選書なんでしょうか。それにしても気がかりなのは、ジャニーズに土方歳三が務まるのか、ということですが。あの厚み、あの迫力は、なまなかな俳優では太刀打ちできないでしょう。それほどに、本書で土方歳三が放っている存在感は圧倒的です。喧嘩の名手で、組織づくりの天才。学はなく学者肌の男を嫌うが、実はこっそり俳句をひねるという風雅な面ももつと…

  • 【2733冊目】綿矢りさ『ひらいて』

    ひらいて (新潮文庫)作者:綿矢 りさ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン55冊目。社交的で可愛い少女が、クラスの冴えない男子を好きになるが、彼には恋人がいる。持病があり地味目のその女の子に近づいた主人公の少女は、なんと女の子のほうを誘惑し、身体の関係をもってしまう。主人公の少女は、なかなかにとんでもない。男の子に勝手に惚れて、机に隠した恋人からの手紙を盗み読み、相手に近づき、なぜかその相手とデキてしまう。なんとも自分勝手だし、むちゃくちゃだ。ふつうに考えたら、共感なんてできなさそうだ。でも、読んでいると、引き込まれるのである。身勝手な振る舞いに腹が立ちつつ、…

  • 【2732冊目】清水潔『殺人犯はそこにいる』

    殺人犯はそこにいる (新潮文庫)作者:潔, 清水新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン54冊目。読んでいて、腹が立って仕方がなかった。拷問まがいの「自白」と間違いだらけの「鑑定」で、一人の人間が有罪となり、死刑となる。そんなことが許されるのか。許されるのである、この国では。足利事件の菅家氏は著者らの活躍もあって再審無罪となり釈放されたが、九州の「飯塚事件」では、再審を求める声にもかかわらず、死刑が執行されてしまった。この「飯塚事件」では、DNA鑑定のネガフィルムのうち、都合の悪い部分が見えないよう、切り取って証拠提出されていたという。そして本書では、冤罪が生み出…

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