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自治体職員の読書ノート
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http://hachiro86.hatenablog.com/
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しがない自治体職員の読書メモ。
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192回 / 365日(平均3.7回/週)

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hachiro86さんの新着記事

1件〜30件

  • 【2485冊目】井村雅代『シンクロの鬼と呼ばれて』

    シンクロの鬼と呼ばれて (新潮文庫) 作者:井村 雅代,松井 久子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2015/10/28 メディア: 文庫 日本で6大会、中国で2大会、そしてふたたび日本で1大会。著者は、なんと9回のオリンピックでシンクロ選手にメダルを取らせてきた「メダル請負人」である。本書はその舞台裏を、みずから克明に語った一冊。中国に行った理由、なぜ選手をギリギリまで追い込むか、そしてなぜ日本チームに戻ってきたか。その理由はすべて本書に書かれている。世界のトップレベルで戦うとはどういうことかという、その極限のせめぎ合いが、これまで読んだことのないくらい詳細に書かれていて、メダルを取る…

  • 【2484冊目】塩浜克也・米津孝成『疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業』

    疑問をほどいて失敗をなくす 公務員の仕事の授業 作者:塩浜 克也,米津 孝成 出版社/メーカー: 学陽書房 発売日: 2019/12/10 メディア: 単行本 役所に限らず、どんな職場でも「最初の先輩」はたいせつだ。特に新人職員にとっては、社会人のイロハや組織のルールをわかりやすく教えてくれる人がいるかどうかは決定的。だが、運が悪いと、周りが忙しすぎて面倒を見る余裕がなかったり、先輩自身が基本的なことを知らないこともある。先輩を自分で選べない新人職員にとって、その違いは大問題だ。 そんな「迷える新人」にとって、本書は救世主となりうる一冊だ。なにしろ仕事の基本から組織、法律、議会対応まで、最低限…

  • 【2483冊目】上橋菜穂子『精霊の守り人』

    精霊の守り人 (新潮文庫) 作者:上橋 菜穂子 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2007/03/28 メディア: 文庫 言わずと知れた、現代日本に生まれた傑作異世界ファンタジー「守り人シリーズ」の第一作である。 ちょうどこの本が出たころはファンタジーから遠ざかっていた。児童文学ということもあって、手に取るにも遠慮があった。気がつくと巻数を重ね、文庫化もされていたが、今度はシリーズ全10冊という量に腰が引ける。今回、ある知り合いが勧めてくれたのをきっかけに、ようやく手に取ってみた。 面白い。見たことがないはずなのに、どこか懐かしい世界観。女用心棒バルサに皇子チャグム、薬草師タンダに呪術師ト…

  • 【2482冊目】ヴィクトル・ユゴー『死刑囚最後の日』

    死刑囚最後の日 (岩波文庫 赤 531-8) 作者:ヴィクトル・ユーゴー 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1982/06/16 メディア: 文庫 死刑廃止を訴えるのに、若き日の文豪ユゴーが選んだ方法は、一人の死刑囚の最後の一日を克明に記すことだった。余計な要素をギリギリまで削ぎ落とし、死刑囚が最後の朝をどんなふうに迎え、死のことをどう感じ、どんな思いで断頭台までを歩いたか、ただそれだけを書き込んだ。この死刑囚が何をしたのか、被害者はどんな思いを抱いているか、あるいは死刑囚の家族は何を感じているか。それすらも、本書にはまったく出てこない。ただ死刑囚の娘との最後の面会が、死刑囚の視点から痛…

  • 【2481冊目】一柳廣孝・久米依子『ライトノベル研究序説』

    ライトノベル研究序説 作者:一柳 廣孝,久米 依子 出版社/メーカー: 青弓社 発売日: 2009/04/01 メディア: 単行本 未踏の原野が広がっている。ライトノベルという名の原野である。 私が中学生~高校生の頃は、そもそもライトノベルという名前自体がなかった。だが、ゲームブックを経てTRPGにハマり、『ロードス島戦記』は誌上リプレイをリアルタイムで読むところから入ったが、『スレイヤーズ』はイラストのノリについていけず読まなかった。思えばそのあたりで、ライトノベルに続く道から外れてしまったのだろう。 その後ウン十年というもの、横目でチラチラ眺めながらも、近寄りがたい雰囲気に押されてライトノ…

  • 【2480冊目】今西錦司『生物の世界』

    生物の世界 (講談社文庫) 作者:今西 錦司 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 1972/01/15 メディア: 文庫 1941年に「遺書のつもりで」書いたという、今西錦司最初の生物学系の本。本当に大事なこと、本当に必要なことだけを絞り込み、急き立てるように論を展開しているのは、戦争で命を落とすかもしれないという差し迫った危機感と、それゆえ自分が生き、思索した証を残したいという切実な思いからなのだろう。今西錦司といえば、の「棲み分け理論」や、「同位社会」「同位複合社会」の考え方も登場するが、なんといっても、その基盤となっている今西ならではの世界観が素晴らしい。それを拙いながら要約してみると…

  • 【2479冊目】小此木啓吾『対象喪失』

    対象喪失―悲しむということ (中公新書 (557)) 作者:小此木 啓吾 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 1979/11/21 メディア: 新書 死別、離婚、失恋。大切な人との別れは人生につきものだ。そんな時、人はどのようにして悲しみを乗り越えるのかについて、フロイトの理論をベースに書かれた本書は、1979年の刊行ながら、今も読み継がれる名著である。むしろ震災などの影響もあって、本書の重要性はかえって高まっているのではないか。 著者によれば、自分にとって大切な対象を失った場合、2つの心的反応が起こるという。1つは急性の情緒反応(emotional crisis)、もう1つは持続的な…

  • 【2478冊目】川上未映子『ヘヴン』

    ヘヴン (講談社文庫) 作者:川上 未映子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/05/15 メディア: 文庫 苛め(著者は「いじめ」でも「イジメ」でもなく「苛め」と書く)を扱った小説ということは知っていた。たしかに、かなりひどい苛めの描写が頻繁に登場する。特に、実際に苛めを受けていた経験のある人にとっては、かなり読むのがしんどいかもしれない(決して無理しないで!)。とはいえ、本書はたんなる「苛めはいけません」というだけの本ではない。苛める側の無神経な残酷さをこれでもかと描くことで、「僕」や同じように苛められているコジマのもつ「弱さの強さ」あるいは「弱さの美しさ」のようなものが、不思…

  • 【2477冊目】クリス・クラッチャー『ホエール・トーク』

    ホエール・トーク 作者:クリス クラッチャー 出版社/メーカー: 青山出版社 発売日: 2004/04 メディア: 単行本 主人公のT・Jは黒人と白人と日系の混血で、IQ高くスポーツ万能、ドラック中毒の母親から引き離されて養父母のもとで育てられている高校生。通っているカッター高校は何事もスポーツ優先、体育会が学校で一番という日大みたいな学校だ。そこでひょんなことから水泳チームを作ることになったT・J。集まってきたのは、脳に障害を負ったいじめられっ子のクリス、プールの水位を上げることができるほどの巨漢サイモン、存在感が薄くほとんどしゃべらないジャッキー、小難しい言葉ばかりを使う秀才ダン、ボディビ…

  • 【2476冊目】手塚治虫『鉄の旋律』

    鉄の旋律―The best 3 stories by Osamu Tezuka (秋田文庫) 作者:手塚 治虫 出版社/メーカー: 秋田書店 発売日: 1994/03/01 メディア: 文庫 「黒手塚」全開の短編3本を収録した一冊。手塚治虫のダークサイド。 「鉄の旋律」は、冒頭こそゴッドファーザーの漫画版っぽい印象だが、超能力で義手を動かすというとんでもない発想の方に向かっていく。着想自体は荒唐無稽だが、自分の能力が自分でもコントロールできなくなるという恐怖は実は普遍的なテーマであって、それこそ核兵器などにも言えること。主の身体を離れてずるずる動き回る義手がなんとも不気味。 「悪魔の開幕」はあ…

  • 【2475冊目】福田ますみ『モンスターマザー』

    モンスターマザー: ―長野・丸子実業「いじめ自殺事件」教師たちの闘い― (新潮文庫) 作者:福田 ますみ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/01/27 メディア: 文庫 いやあ、怖い本だった。読んでいて思い出したのは『黒い家』だが、あちらは小説。本書はノンフィクションである。 いわゆるハードクレーマーに遭遇することは、私たちの職場であれば多かれ少なかれ避けられないが、本書に出てくる高山さおりほどの凄まじいクレーマーには、さすがにお目にかかったことがない。 長野県の丸子工業高校の1年生、高山裕太が自殺した。当初は所属していたバレー部のいじめが原因とされ、母親はいじめの事実を認めろ、…

  • 【2474冊目】髙橋秀実『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』

    「弱くても勝てます」: 開成高校野球部のセオリー (新潮文庫) 作者:高橋 秀実 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/02/28 メディア: 文庫 驚くべき一冊。これは野球の革命だ。練習は週1回。試合ではサインは出さない。エラーはあって当たり前。それより勢いとドサクサで大量得点し、コールド勝ちを狙うのが開成流だ。そしてなんと「反省はしない」。どうして? 「反省してもしなくても、僕たちは下手だからエラーは出るんです」 そう。ここは天下の開成高校。頭が良く勉強はできるが、野球のレベルは決して高くない。だが、自分たちのヘタさを自覚し、そこから組み立てる独創的な戦術は、なんと東東京予選ベス…

  • 【2473冊目】松本俊彦『薬物依存症』

    薬物依存症 (ちくま新書) 作者:松本 俊彦 出版社/メーカー: 筑摩書房 発売日: 2018/09/06 メディア: 新書 「ダメ、ゼッタイ」を連呼する薬物教育。薬物所持で逮捕された芸能人を声高にバッシングするマスメディア。「薬物依存は犯罪だから、一度でも使ったら逮捕して刑務所に入れるべき」という「識者」の意見……。こうしたものに取り巻かれたわが国は、国民の「生涯の薬物経験率」がわずか2.4パーセントという際立った「低薬物依存国」である。そのこと自体は喜ぶべきであろうが、少数派となった薬物依存症者にとっては、過酷で生きづらい国となってしまっている。 確かに薬物の所持や使用は法律で禁じられてい…

  • 【2472冊目】山田風太郎『あと千回の晩飯』

    あと千回の晩飯 山田風太郎ベストコレクション (角川文庫) 作者:山田 風太郎 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2011/12/22 メディア: 文庫 人を食った、という表現がぴったりのエッセイ集。残りの人生で食べられる晩飯はあと千回くらいか、というところから始まり、老境を迎えた心境を綴る。なんて書くと、淡々とした随筆を想像するかもしれないが、そこは山田風太郎、老いてはいても枯れてはいない。むしろ老人ならではの言いたい放題、書きたい放題なのだが、言いたいことを言っていても威張っておらず、嫌味がないところに人間としての成熟を感じる。自分を絶対視して若者や世相をディスるのではなく、…

  • 【2471冊目】葉真中顕『ロスト・ケア』

    ロスト・ケア (光文社文庫) 作者:葉真中 顕 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2015/02/10 メディア: 文庫 デビュー作というのが信じられないほどの、重厚な社会派ミステリー。超高齢社会を迎えた現代の日本のありようを、迫真のリアリティで描き出す。 「地獄の底」と形容されるほどの、家族介護の壮絶な実情。精神的にも肉体的にも追いつめられた果てに起きるのが、悲惨な虐待だ。本人も生き続けることに絶望し、家族も罪悪感と義務感に引き裂かれながら、それでも介護を続けるしかない現実。そこから本人と家族を救うはずの介護保険制度は、度重なる制度改正で事業所の経営が圧迫され、そこで働く人々はギリギリの…

  • 【2470冊目】ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』

    マクベス (新潮文庫) 作者:シェイクスピア 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 1969/09/02 メディア: 文庫 言わずと知れたシェイクスピア四大悲劇のひとつである。本文わずか112ページ。だがその中に、人類の体験しうるもっとも深く、もっともおぞましいドラマが濃縮されている。王を殺し、罪を重ねるマクベスは間違いなく「悪」である。だがその悪は、意思に基づくものというより、周囲に流される種類の悪であった。妻にそそのかされて王を殺し、魔女の予言に振り回されて王位を簒奪する。だがそれゆえに、マクベスは罪深い。予言によって王となったマクベスは、予言の通り破滅する。森が動き、女から生まれなかった…

  • 【2469冊目】岡田哲『明治洋食事始め とんかつの誕生』

    明治洋食事始め――とんかつの誕生 (講談社学術文庫) 作者:岡田 哲 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2012/07/11 メディア: 文庫 いきなりですが、クイズです。次の料理を、誕生した順番に並べて下さい。いずれも明治維新以降の日本人が作り上げた傑作です。 とんかつ/カツ丼/カツカレー/ポークカツレツ/ハム/牛丼/牛肉のすき焼き/あんパン ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 答えは次のとおり。登場順です。 ◆牛肉のすき焼き 1869年(明治2年)、神戸元町に牛肉すき焼き店「月下亭」が開店。ちなみに関西風のすき焼きは、割り下を入れずに油脂のみで肉を焼く。関東に伝わったのは関東大震災以降で、…

  • 【2468冊目】柏木亮二『フィンテック』

    フィンテック (日経文庫) 作者:柏木亮二 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2017/07/20 メディア: オンデマンド (ペーパーバック) 金融の世界に、今とんでもないことが起きているらしい。電子マネーからスマートフォンバンキング、クラウドファンディングにP2Pレンディング、人工知能による与信モデルに仮想通貨まで、フィンテック=ファイナンス+テクノロジーの最前線を総覧する一冊。もともとは2016年の刊行だが、基本的な部分はおそらく今でも通用する。キーワードは「イノベーションのジレンマ」と「破壊的イノベーション」。いずれもクレイトン・クリステンセンという人の造語である。クリ…

  • 【2467冊目】川北稔『8050問題の深層』

    8050問題の深層: 「限界家族」をどう救うか (NHK出版新書) 作者:川北 稔 出版社/メーカー: NHK出版 発売日: 2019/08/30 メディア: 単行本 「ひきこもり」「8050問題」の現状を、データ、具体例、問題点、解決策にわたり、コンパクトかつバランスよく捉えた一冊。福祉関係者にも、当事者やその家族にも「最初の一冊」としておススメしたい。 言うまでもなく「8050問題」とは、80代の親と50代の(無職だったりひきこもっていたりする)子どもの組み合わせをいう。だがもちろん、問題は今になって生じたわけではない。それまで何年も何十年も家族の中で抱え込んできた問題が、親の高齢化によっ…

  • 【本以外】映画『パラサイト 半地下の家族』を観てきました

    韓国初のパルムドールを獲った話題作。一部ネタバレがありますので、未見の方はご注意を。 貧困や格差を正面から扱った作品としては、日本なら『万引き家族』、米国なら『JOKER』があるが、これもその系譜に連なる一作。家族がもうひとつのテーマになっている点では『万引き家族』と似ているし、貧しき者、虐げられた者の反乱という点では『JOKER』に似ている(そのルーツを辿れば『タクシードライバー』にまで至るのだが)。だがそれは、あくまで「似ている」だけであって、そのどちらとも違うきわめて独創的な作品になっている。なんといっても、「笑い」と「サスペンス」が混然一体となっているのがすばらしい。 もっとも、貧しき…

  • 【2466冊目】工藤美代子『悪名の棺 笹川良一伝』

    悪名の棺 笹川良一伝 (幻冬舎文庫) 作者:工藤 美代子 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2013/04/10 メディア: 文庫 福祉の仕事をやっていると「日本財団」という名前をよく見るが、そのたびにこの人の社会への貢献の大きさを思わされる。だがその業績は、果たして見合うだけの評価を受けてきただろうか。日本に限ったことじゃないのかもしれないが、「破格の人物」を遇するのが、われわれは本当にうまくない。この手の人は決して清廉潔白ではなく、たいていは「清濁併せ呑む」タイプが多いので、おおかたはバッシングの対象となる。先物取引で莫大な財をなし、戦中は「大衆右翼」を自称して団体を組織、戦後はA級戦…

  • 【2465冊目】パトリック・ジュースキント『香水』

    ある人殺しの物語 香水 (文春文庫) 作者:パトリック ジュースキント 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2003/06/10 メディア: 文庫 生まれつき人間離れした嗅覚をもつグルヌイユが主人公。なんといっても、グルヌイユの視点(嗅点?)からの「匂いによって描かれる世界」が圧巻だ。 悪臭渦巻く18世紀のパリで産み落とされた。堕胎を繰り返していた母親は死刑になり、孤児として放り出されたグルヌイユは、たぐいまれな嗅覚を武器に香水調合師の弟子に潜り込む。初日にしてこれまでの常識を超えるものすごい香水を生み出したグルヌイユだが、放浪と流転の末に目指したのは、人間の匂いを閉じこめるためのとんでも…

  • 【2464冊目】日高敏隆『世界を、こんなふうに見てごらん』

    世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫) 作者:日高 敏隆 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2013/01/18 メディア: 文庫 日本の動物行動学のパイオニアであり、たぶん日本でもっともチャーミングな学者のひとり、日高敏隆の晩年のエッセイ集。たいへんに読みやすく、やわらかく、それでいてものごとの本質の深みをしっかりと突いているのが、いかにもこの人らしい。子供の頃は、学校をさぼって近所の原っぱに行き、芋虫に話しかけたり観察したりしていた。犬の死骸を見つけると、肉が腐って骨と皮になるまでずっと観察し、どんな虫が出入りしているのかを確かめた。そんな子供の頃のセンス・オブ・ワンダーを晩年…

  • 【本以外】ゴッホ展に行ってきました

    思いがけず急に予定が空いたので、休みを取って上野の森美術館の「ゴッホ展」に行ってきました。13日までの開催なので半ばあきらめていたところだったので、ラッキーでした。 雨天の平日ということでそんなに混んでないかな、と思っていたのですが、行ってみたら予想外の人の多さ。終了間近ということもあるんでしょうが、さすがはゴッホ、というところでしょうか。上野の森美術館の動線設定の微妙さもあいまって、館内は行き来する人でやや混乱気味。まあ、以前ここの美術館で開催された「怖い絵」展ほどのカオスではありませんでしたが。 「ハーグ派」「印象派」の影響によってゴッホの絵がどう変わったか、という点に着目して、ほぼ時系列…

  • 【2463冊目】南直哉『仏教入門』

    仏教入門 (講談社現代新書) 作者:南 直哉 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2019/07/17 メディア: 新書 この著者の本は、以前『老子と少年』を読んだ。未だに忘れられない本だ。著者は禅僧とのことだが、あの本はまったく「仏教臭さ」を感じなかった。むしろタオイズムに近いものを感じた。 本書は正面切っての『仏教入門』を謳った一冊だ。とはいえ、いわゆる学問的な解説書ではない。著者自身が最初に書いているように、これは著者なりの理解に基づく仏教論なのだ。ちなみに著者は永平寺で20年修行をされたとのことで、道元の影響がかなり強く、『正法眼蔵』が多く引用されている。 仏教で避けて通れないのが「…

  • 【2462冊目】安丸良夫『神々の明治維新』

    神々の明治維新―神仏分離と廃仏毀釈 (岩波新書 黄版 103) 作者:安丸 良夫 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 1979/11/20 メディア: 新書 幕末から明治初期にかけて日本中を吹き荒れた「廃仏毀釈」とはなんだったのか。いや、そもそも、それまで習合していた神仏を人為的に分離し、国家神道という人口宗教を作り出した神仏分離とはなんだったのか。廃仏毀釈が起きた期間は短く、地方によって温度差もかなりあった。だが、その短い期間で、ひょっとすると日本人の宗教観は根底から変わってしまったのかもしれない。そもそも、この時期に行われたのは単なる仏教攻撃ではなかった。それは国家神道として囲い込まれ…

  • 【2461冊目】池上正樹『ルポひきこもり未満』

    ルポ ひきこもり未満 レールから外れた人たち (集英社新書) 作者:池上 正樹 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2018/09/14 メディア: 新書 紹介しようかどうしようか、最後まで迷った一冊。この「読書ノート」では、自分が手に取った本の半分くらいを紹介しているのだが、紹介しないことにした(紹介する価値ナシと判断した)本のほとんどは、そもそも読むのを途中でやめている。 ところがこの本は、何かありそうな気がして、最後までしっかり読んでしまった。出てくる事例がリアルで説得力があるので、読んでいてそれなりに引き込まれたためだ。ちなみに本書が取り上げるのは、非正規雇用、ひきこもり、生活保護等…

  • 【本以外】『スター・ウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け』を観てきました

    一部ネタバレがありますので、ご注意を。 圧巻の142分。予測を次々に裏切り続けながら、スター・ウォーズ・サーガの基本ラインはしっかり守り、とにもかくにも42年間のクライマックスを作り上げたエイブラハム監督の手腕に拍手。 ずらりと並ぶスター・デストロイヤーにデススターの廃墟といったビジュアルも素晴らしく、次々に新しい光景が出てくる中、ラストで出てきたイウォーク族や惑星タトゥーインの懐かしさがハンパない。ああ、戻るべきところに戻ってきた、と思える瞬間。スカイウォーカーの物語は、ここにようやく帰還のときを迎えたのだ。 それにしても、スター・ウォーズとはいったい何なのか。映画としてみれば、建て増しに建…

  • 【2460冊目】川上未映子『すべて真夜中の恋人たち』

    すべて真夜中の恋人たち (講談社文庫) 作者:川上 未映子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2014/10/15 メディア: 文庫 あけましておめでとうございます。今年も良い本に出会えますように。 さて、2020年の一冊目は、ひさびさの川上未映子。相変わらず、きらめくような文章が美しい。この人の場合、筋書きやキャラクターを書くために文章があるというより、美しい文章を生み出すために、小説という形態が必要なのかもしれない。内容は恋愛小説だけど、なんとも淡くてせつないのは、主人公の冬子自身が実に痛々しいからだ。自分に自信がなく、人とのコミュニケーションが苦手で、飲み会の返事を出すのに3日悩み、…

  • 【2459冊目】松本俊彦編『「助けて」が言えない』

    「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか 作者: 出版社/メーカー: 日本評論社 発売日: 2019/07/12 メディア: 単行本 今年も残すところあと数日だが、今年の「読書ノート」更新は今日がラストの予定。中止したり再開したりと相変わらず揺れまくった一年でしたが、お付き合いいただいたみなさま、ありがとうございました。 そんな今年の「最後の一冊」は、とても重い一冊。 日本の福祉制度は、基本的に申請主義と言われる。その中で、自ら助けを求めない人を支援することは、たいへんに難しい。だからこそ「受援力」なんてことが言われたり、支援者も再三の説得に疲れ果てて「支援を求めないのだ…

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