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  • 【2731冊目】池谷裕二『受験脳の作り方』

    受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法 (新潮文庫)作者:裕二, 池谷新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン53冊目。タイトルからは、胡散臭い「脳トレ本」みたいに見えますが、内容は一般に言われている勉強法を脳科学の視点から検証するという、たいへんまっとうなもの。それも、安易なノウハウではなく、むしろ王道といわれる勉強法に裏付けを与えるものになっています。例えば、記憶を定着させるには反復を繰り返すしかないこと(「成績がよい人は、忘れても忘れてもめげずに、海馬に繰り返し繰り返し情報を送り続けている努力家だと言えます」(p.39))、特にアウトプットの反復が大事で…

  • 【2730冊目】井伏鱒二『黒い雨』

    黒い雨 (新潮文庫)作者:鱒二, 井伏新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン52冊目。井伏鱒二の代表作にして、異色作です。他の作品にみられる飄々としたユーモアは影をひそめ、原爆の惨禍が徹底的に、しかしどこまでも客観的に語られます。語り手である重松が、原爆投下直後からの「被爆日記」を清書しつつ、当時を振り返るという構造になっています。なぜ被爆日記を清書しているかというと、姪の矢須子の縁談に際して、矢須子が被爆していないということを証立てるために、矢須子の手記とあわせて仲人に提出するためなのですが、実はこの矢須子も実は黒い雨を浴びており、後に後遺症で亡くなるのです。…

  • 【2729冊目】梶井基次郎『檸檬』

    檸檬(新潮文庫)作者:梶井基次郎新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン51冊目。梶井基次郎は、肺結核のため31歳で死去しました。そのためもあってか、多くの作品で死の影を感じます。しかし、この作家が不思議なのは、死や病というシリアスなテーマを扱っているのに、あまり湿っぽくならないところ。むしろ、自分の病や生命さえ突き放し、時には面白がってみせる、乾いたクールな視点を感じます。代表作「檸檬」がまさにそういう小説です。「えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終圧(おさ)えつけていた」という重い書き出しで始まりますが、ふと思いついて果物屋で檸檬を買ってからは、「私」の足取…

  • 【2728冊目】齋藤孝『孤独のチカラ』

    孤独のチカラ (新潮文庫)作者:孝, 齋藤新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン50冊目。ふうふう、やっと折り返し点。さて、本書はまことにつまらない本でした。まあ、著者の本は『声に出して読みたい日本語』も『読書力』もイマイチでしたので、あまり期待はしていなかったのですが、それにしても本書がなぜ名だたる新潮文庫の名著を押しのけ、100冊のうちの1冊に選ばれたのか、私にはよくわかりません。孤独が人間にとって大事なものだ、という前提は同感です。しかし「多くの人に、孤独に対してそのようなポジティブでクリエイティブなイメージをもってもらいたい」(p.39-40)と言われる…

  • 【2727冊目】遠藤周作『沈黙』

    沈黙 (新潮文庫)作者:遠藤 周作新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン49冊目。内容は説明不要でしょう。キリシタン禁制下の江戸時代を舞台に、情熱あふれる若きポルトガル人宣教師が棄教するまでを描いた作品です。マーティン・スコセッシの映画も話題になりましたね。主人公が外国人、それを拷問にかけるのが日本人という「配役」が、日本の小説としては異色ですが、本書のテーマはもっと深いところにあります。それはタイトルにも示されているとおり、神の「沈黙」です。悲惨な目に遭う人々を前に、なぜ神は沈黙しているのか。それは『ヨブ記』から『カラマーゾフの兄弟』におけるイヴァンの問いに至…

  • 【2726冊目】小野不由美『魔性の子』

    魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)作者:小野 不由美新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン48冊目。幼い頃に神隠しに遭った高里。彼が戻ってきてから、その周りでは奇妙な出来事が続いていた。高里をいじめたり、危害を加えようとする者は、なぜかケガをしたり、命を落としたりするのだ。そんな高里のいるクラスに教育実習生としてやってきた広瀬は、高里に共感し、彼を守ろうとするのだが・・・・・・ホラーであって、学園ドラマであって、ファンタジーでもあるという、独特の味わいのある一冊でした。意図せず周囲に危害を加えてしまう高里の心情が切なく、そんな高里を守ろうとする広瀬の情熱に胸打…

  • 【2725冊目】柚木麻子『BUTTER』

    BUTTER(新潮文庫)作者:柚木麻子新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン47冊目。男たちに取り入って財産を奪い、殺害したとされる獄中の梶井真奈子。その独占インタビューを実現しようとするが、次第に梶井に取り込まれていく里佳。その親友でかつては敏腕記者、今は専業主婦となった伶子。3人の女たちをめぐるドラマを描いた迫真の一冊です。著者の本を読むのは本書が初めてでしたが、もっとライトな作風というイメージがあったので、こんな迫力のある小説とは思いませんでした。特に女性読者にとっては、三人の女性を通じて、自身の生き方を根底から問い直すような作品になっているのではないでし…

  • 【2724冊目】フョードル・ドストエフスキー『罪と罰』

    罪と罰〈上〉 (新潮文庫)作者:ドストエフスキー新潮社Amazon 罪と罰〈下〉 (新潮文庫)作者:ドストエフスキー新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン46冊目。何度読んだかわからない。そして、読むたびに新しい発見と感動がある。名作とはまさにこういうものだと思う。頭でっかちで神経質なラスコーリニコフと、アル中の父と子だくさんの貧しい家族のため身を売る「絶対聖女」ソーニャ。この二人を両極として、登場するすべての人物が強烈で、個性的で、しかもある種の典型となっている。ルージンの俗物ぶりや、陽気な好人物ラズミーヒンなども忘れがたいが、今回印象的だったのは、冒頭近くに…

  • 【2723冊目】ウィリアム・シェイクスピア『ハムレット』

    ハムレット (新潮文庫)作者:ウィリアム シェイクスピア新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン45冊目。父王の亡霊が登場する冒頭のシーンから、いくつもの死体が転がる壮絶なラストまで、圧倒的な密度と緊張感に満ちた復讐譚。シェイクスピア悲劇の最高傑作のひとつであります、佯狂、という言葉があります。狂人のふりをすることですが、本書のハムレットは、まさにこの佯狂に見えます。でも、読んでいくうちに、だんだんわからなくなってくるのですね。実はハムレットは、本当に狂っているのではないか? 復讐のため、狂うふりをしているうちに、実際に狂気に取り憑かれてしまったのではないか? と…

  • 【2722冊目】杉浦日向子『一日江戸人』

    一日江戸人 (新潮文庫)作者:日向子, 杉浦新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン44冊目。漫画家にして江戸文化案内人の著者による、イラスト付き「江戸ガイド」。江戸人たちの生活事情をリアルに解説し、居ながらにして江戸の生活を感じられる一冊だ。取り上げられているトピックはファッション、食べ物、長屋の間取り、ナンパの仕方から遊び方まで多種多様。なんとも羨ましいのが、江戸人の仕事ぶり。江戸の庶民の多くは「月の半分」も働けば家族を養うことができたという。しかも、お金に困れば外に出て「米つこうか、薪割ろか、風呂焚こうか」と呼ばわれば、すぐにバイトにありつけたそうである。「…

  • 【2721冊目】燃え殻『ボクたちはみんな大人になれなかった』

    ボクたちはみんな大人になれなかった(新潮文庫)作者:燃え殻新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン43冊目。実はこの本、単行本で一度読んでいる。チープすぎて「読書ノート」に取り上げる気にもならなかったのだが、まさか「新潮文庫の100冊」に選ばれ、読み返すことになろうとは。ただ、二度目の読後感は、最初ほど悪くはなかった。あの時代(ちなみに著者と私はほぼ同年代)のガジェットがいろいろ出てきて懐かしいし、著者なりに感じてきた切実さやせつなさのようなものを書き残しておこう、という気持ちも感じた。ただ、印象としてはやはり、薄い。ライトノベルというより、少し前にはやったケータ…

  • 【2720冊目】早坂吝『探偵AIのリアル・ディープラーニング』

    探偵AIのリアル・ディープラーニング(新潮文庫)作者:早坂吝新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン42冊目。AIが探偵、高校生の輔(たすく)がワトソン役のライト・ミステリーです。AIが人間的すぎたり秘密組織「オクタコア」がベタベタのアニメの悪役っぽかったり、まあいろいろありますが、そういうことは気にせず、さらさらと掻き込むように読むべき一冊ですね。ただ、AIをテーマにするだけあって、AIをめぐる基本問題(フレーム問題、シンボルグラウンディング問題、不気味の谷、中国語の部屋など)もそれなりに盛り込まれています。あと、人名が超テキトーで笑えます。たとえばAI探偵を生…

  • 【2719冊目】ルイス・キャロル『不思議の国のアリス』

    不思議の国のアリス (新潮文庫)作者:ルイス キャロル新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン41冊目。矢川澄子の訳、金子國義のイラスト、いずれも極上。誰もが知っている、不思議でコミカルでアイロニカルなアリスの世界が、日本語で生き生きと再現されている。時計をもったウサギ、水ギセルをくわえたイモムシ、帽子屋、ウカレウサギ、チェシャ猫、すぐに「首をちょんぎれ」と叫ぶトランプの女王様。一度読んだら忘れられないキャラクターが勢揃いだ。おもしろいのは、やはり会話だ。噛み合うようで噛み合わないシュールなやり取り。でも、アリスだって負けてはいない。奇妙な連中にも一歩も引かず、言…

  • 【2718冊目】『吾輩も猫である』

    吾輩も猫である (新潮文庫)作者:次郎, 赤川,素子, 新井,衣良, 石田,浩, 荻原,陸, 恩田,マハ, 原田,由佳, 村山,マリコ, 山内新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン40冊目。表題通り、「猫」をめぐるアンソロジーです。共通点は「猫の一人称」であることだけ。それでも漱石先生の影響力の強さか、なんとなく似通った内容になってしまうのが、不思議といえば不思議。赤川次郎の「いつか、猫になった日」は猫視点のミステリで、「三毛猫ホームズ」作者ならではの巧さが光ります。新井素子「妾は、猫で御座います」は漱石へのオマージュでありながら、独特の語り口調がおもしろい。石…

  • 【2717冊目】三島由紀夫『金閣寺』

    金閣寺 (新潮文庫)作者:由紀夫, 三島新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン39冊目。圧倒的な美文で綴られる、圧倒的に醜悪な自己韜晦。再読でしたが、読むのがツラい一冊でした。初読は大学生の頃だったと思いますが、当時は主人公の溝口に、うっすら共感さえ覚えていたような。でも、今読むとその徹底的に自己中心的で自己回帰的な思考ループには、嫌悪しか感じません。人を見れば非を探し、見つければ愉悦に浸り、見つからなければかえってその相手を憎悪する。溝口の思考はその繰り返しです。その果てが、金閣を焼くという発想でしょう。それも、自分の中にどうしようもなく聳え立ったイメージとし…

  • 【2716冊目】さくらももこ『さくらえび』

    さくらえび (新潮文庫)作者:さくら ももこ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン38冊目。ご存知、さくらももこの大爆笑エッセイ。さくらももこが編集した雑誌『富士山』(この雑誌も気になる!)からのエッセイが元になっているようですが、父ヒロシが買ってきたコイをダメにしてしまった「ヒロシのコイ」や息子と絵本を作る話など、日常のちょっとした出来事を面白おかしく語るうまさは相変わらずです。なかで印象的だったのは、母がさくらももこだと知らない息子が「さくらももこ」に宛てて手紙を書く「息子の手紙」、ビートたけしが自宅にやってきたエピソード(これは「ちょっとした出来事」じゃあ…

  • 【2715冊目】岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』

    もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら (新潮文庫)作者:岩崎 夏海新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン37冊目。先日の『赤毛のアン』とは別の意味で、こういう機会がなければ手に取らなかったであろう一冊です。弱小野球部が甲子園に行く、という野球モノ超定番の設定ですが、そもそも本書は小説ではなく、あくまでピーター・ドラッカーの『マネジメント』を理解するツールとして高校野球が使われていますので、あえて直球ど真ん中を選んだとも言えます。弱小野球部にしては監督やメンバーが豪華なのも、そういう意味では納得。小説としての出来にツッコミを入れる…

  • 【2714冊目】ルーシー・モード・モンゴメリ『赤毛のアン』

    赤毛のアン (新潮文庫)作者:モンゴメリ新潮社Amazon 「新潮文庫の100冊2021」全冊読破キャンペーン36冊目。いや〜、まさかこの年になって『赤毛のアン』を読むことになるとは思いませんでした。しかも「もっと早く読んでおけばよかった」と思うとは! 名作と呼ばれる作品は、男の子向けとか女の子向けとかにこだわらず、一度は手に取ってみるものですね。とにかく主人公アンの魅力が圧倒的です。おしゃべりで夢想家、率直で意地っ張り。でも、その素直で屈託のない人柄に、周りの人がどんどん惹かれていくのですね。今は死語かもしれませんが、アンこそは、女の子の魅力のエッセンスがきらめくばかりに詰め込まれたキャラク…

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