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2007/08/04

  • P分署捜査班 寒波 [book]

    マウリツィオ・デ・ジョバンニ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第三弾 前作同様の黄金スタイル ロヤコーノとディ・ナルドが追うのは兄妹、兄は科学者、妹はモデル、の二重殺人。ロマーノとカブレーゼは中学校教師から持ち込まれた父親による虐待疑惑。加えて、副署長ピザネッリの自主捜査、”自殺者”の周辺を探って殺し屋を接点をさぐる、の三本立て・・・ 捜査活動と並行して語られる各々の私生活で抱える孤独、苦悩が本書の肝のひとつでもある。 肩の凝らない愉しいシリーズだ。

  • 帝国の亡霊、そして殺人 [book]

    ヴァシーム・カーン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ CWA賞ヒストリカル・ダガー賞受賞作 1949年12月31日、大みそか、インド初の女性刑事、ペルシス・ワディアしかいないマラバール署に一本の電話が、「ジェームズ卿が殺されたのです」。 ジェームズ卿が住むラバーナム館ではパーティーが行われていて、犯行はその最中、凶器は曲がり刃のナイフ、上着のポケットから暗号めいたメモ、金庫は空、不思議なことに死体はズボンをはいていない・・・ インドは1月26日に正式に共和国となる。ジェームズ卿は政府の重要な問題に取り組んでいた。過去の精算はそれまでに解決しなければならないと厳命を受けるペルシス。 ワトソン役はロンドン警視庁付きの犯罪学者、ブラックフィンチ。独立運動、インド、パキスタン、共和国化の混沌の真っ只中を舞台に繰り広げられる歴史ミステリー。 女性警部として生きずらい時代を明晰な頭脳と不屈の..

  • P分署捜査班 誘拐 [book]

    マウリツィオ・デ・ジョバンニ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第二弾 コネで入庁したアラゴーナは無能なうえに傍若無人で騒々しい。つかみどころのないディ・ナルドは前任署内で発砲騒ぎを起こしている。無口なロマーノは怒ると自制を失い、容疑者や同僚の首を絞めた前歴を持つ。ロヤコーノはアーモンド形の目を持ち、中国人と呼ばれるシチリア人警部・・・四人のろくでなし刑事の後任は、いずれもほかの分署が嬉々としてお払い箱にしたろくでなし刑事。 ビッフォファルコーネ署長のパルマ、副署長のピザネッリ、<おふくろさん>と呼ばれるカラブレーズを加えた7人が追う事件は、辻褄が合わないことだらけの窃盗事件と入念に仕組まれた児童誘拐事件。加えてピザネッリが単独で調査し続ける自殺案件。 はぐれ者軍団?と思いきや、前作「集結」で初陣を飾り、チームとしての連帯感も生まれる。事件に立ち向かう7人の姿を公私両面から描..

  • 哀惜 [book]

    アン・クリーヴス/早川書房/お薦め度 ★★★★ アガサ賞最優秀長編賞受賞作 海岸で刺殺死体が発見される。死体は精神を病み、アルコールに溺れるホームレス状態で町に来たサイモンだと判明する。最近は複合施設でボランティアをしていた・・・ サイモンが学習障害のあるルーシーとバスに乗り合わせていたことが度々目撃されていた。 捜査に当たるのはバーンスタブル署の警部マシュー、シングルマザーのジェン部長刑事、経験の浅いロス刑事の三人。マシューの夫、同性婚、は複合施設の実質的な運営者。 断片的な情報しか集まらない情況のなか、ルーシーと同じ学習障害をもつクリスティンが誘拐される。後に解放されるのだが、サイモンのフラットに閉じ込められていたことが判明、誘拐と殺人のあいだにつながりがあることもわかっているのだが・・・ サイモンの心の闇は交通事故で子供を死なせたことに起因、立ち直ろうとしていたのに。 ..

  • ロンリー・ファイター [book]

    ハーラン・コーベン/早川書房/お薦め度 ★★★★ マイロン・ポライター・シリーズ第四弾 ウィルにゴルフ界でのエイジェント獲得を勧められたポライターは全米オープンの会場に足を運ぶ。そこでウィるの従姉である女子プロのトップ、リンダから助けを求められる。息子が誘拐されたので救出してほしいと・・・ リンダの夫ジャックは23年前同じ会場で開催された全米オープンで優勝を目前に指示した番手と違うクラブをキャディから渡され勝利を逃し、今日に至るまで低迷していた。そんなジャックが二位に大差をつけ独走中。 千載一遇のチャンスに息子が誘拐されるなんて・・・23年前のことが関係しているのか? しかもウィルは協力しないと宣言、ポライターひとりで事件解決に当たらなくてはならない。つまり「ロンリー・ファイター」・・・ 相変わらず軽妙なジョークと機知で敵に立ち向かうポライターの孤軍奮闘ぶりを愉しんでください。..

  • 木挽町のあだ討ち [book]

    永井沙耶子/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ 時代小説ミステリー!? 人情物+ミステリー仕立て+「オーシャンズ11」 芝居小屋の立つ木挽町の裏通りで、菊之助は父親の仇の下男を斬り、本懐を遂げる。この一件は「木挽町の仇討」と呼ばれる。 二年後、菊之助の書状、「この者は某の縁者につき、事の次第やそこもとの来し方など語ってほしい」、を携えた若侍が芝居小屋を訪れる。 幇間の「一八」、元武士、立師の「与三郎」、衣装の支度、繕いの「ほたる」、小道具作りの「久蔵」、戯作者の「金治」の五つの場が描かれる。人情物+ミステリー仕立て・・・ 松井今朝子の「吉原手引草」を彷彿させる。 終幕、「国元屋敷の場」で仇討の真相、「オーシャンズ11」、が明らかになる。 人情物といい、伏線のはり方、回収といい、秀逸な時代小説。

  • ポリス・アット・ザ・ステーション [book]

    エイドリアン・マッキンティ/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ ジョン・ダフィー・シリーズ第六弾 麻薬の密売人が相次いでクロスボウの矢で撃たれた事件を捜査するため、休暇を途中で切り上げ現場に向かうダフィー。 今回の事件は二件目、死亡した被害者は前科持ちの売人、ブルガリア人の妻と団地に住んでいた。 犯行声明はどこからも出ていない。 ブルガリア人の妻が麻薬の運び屋ではないかと尋問するが手掛かりはつかめず、高額の保釈金を払い釈放と同時に行方をくらました。 完全に行き詰ったダフィーを救ったのはブルガリア人通訳の紙切れ、そこには車のナンバーが・・・ ここから北アイルランド紛争の続きを交えながら物語は進み、シリーズ最大の危機がダフィーの身に降りかかる。ここから物語は一気に加速、クライマックスになだれ込む。 毒気の強かったダフィーがベスとエマを得、自分たちの将来をぶつかりあいながら描いたり、..

  • ステイト・オブ・テラー [book]

    ヒラリー・R・クリントン/ルイーズ・ペニー/早川書房/お薦め度 ★★★★ 国際政治スリラー 67代国務長官、ヒラリー・R・クリントン、2009年~2013年 国務省南・中アジア局員に届いた奇妙なメール、<19/0717 38/1536 119/1848>・・・ロンドン、パリでバス爆破事件が起こる。 ジャンクメールとしか思えないものは爆発したバスの番号と爆破時間、暗号ではなく警告だった。<119/1848>は8時間後フランクフルトで119番のバスが夕方の6時48分に爆発するを示していた。 新国務長官、エレン・アダムスは新大統領のライバルを支援していたにもかかわらず長官を拝名。前政権の過去4年間の無策ぶりを目の当たりにしてきた。 前政権はパキスタンの武器商人、核物理学者バシル・シャーを釈放し、わずか数カ月の間に、核合意から離脱し、イランに核開発計画、タリバンやアルカイダに、を自由に..

  • 大江戸奇厳城 [book]

    芦辺拓/早川書房/お薦め度 ★★★☆ 伝奇小説!? 頭脳明晰な”ちせ”、男装の”浅茅”、阿蘭陀人との間に生まれた”アフネス”、お家騒動から逃れた”喜火姫”、武芸百般の”野風”・・・ 前半は五人の少女の連作短編、「オーシャンズ11」ならぬ「オーシャンズ5」!? 後半は「宇内混同」、世界征服計画、を目論む巨悪が歪んだ思想のもとに「奇厳城」、フランス国のそれの如く天工の産物にあらず、を一夜して築く。その根城に五人が飛び込み対峙する「ミッション・インポッシブル」!? 前半を受けて後半五人がもっと活躍する姿を読みたかったが、作者の思い込みが大きすぎて状況説明、うんちく、蛇足?に頁が割かれ、五人の影が薄くなってしまった・・・ 「大鞠家殺人事件」の作家がなぜ?と思いながら読み進み、あとがきを読んで、芦辺拓のやりたかったのは「時代劇小説」、「時代劇時代」、考証的に誤りとされるアイテムをあえて選..

  • 警部ヴィスティング 疑念 [book]

    ヨルン・リーエル・ホルスト/小学館/お薦め度 ★★★★ 未解決事件四部作最終 休暇中のヴィスティング、自宅の郵便箱に差出人不明の封書が届いた。中には12-1569/99と書かれた紙が・・・ 1999年に隣接する警察署管内で起きた1569号事件を意味していた。休暇中にもかかわらず、捜査資料を借りだしに動くヴィスティング。 事件の内容は17歳の少女が行方不明になり、二日後絞殺死体で発見された。少女の体内から別れた恋人の体液が検出され、元カレは禁固17年の刑に服していた。 差出人不明の封書は二通、ヴィスティングが担当した事件、三通、捜査資料Noとインターネットアドレス、四通、ある場所を示す緯度と経度、・・・誰かが裏で糸を引いている。 1999年の事件は冤罪事件だったのだろうか!? 定年間近のヴィスティングがひたむきに事件に向き合う姿がうれしい。

  • 頬に哀しみを刻め [book]

    S・A・コスビー/ハーパーBOOKS/お薦め度 ★★★★☆ エドガー賞最優秀長編賞ノミネート 「人は復讐を正義のように語るが、復讐はちょっといいスーツを着た憎しみさ」 同性婚の男性カップル、黒人のアイザイアと白人のデレク、が胸に、顔に銃弾を浴び殺された。 葬儀から二ヶ月、デレクの父バディ・リーはアイザイアの父アイクを訪ねた。遅々として進まぬ警察の捜査に、ふたりで犯人を捜すことを提案する。一端は申し出を断るアイクだったが、何者かがふたりの墓石を破壊した。それを機にアイクはバディー・リーの話に乗ることを決意する。 ふたりともムショ帰り、アイクは自身の歯止めが効かなくなる怖さを知っていた。 自分の息子の同性婚を受け入れることが出来なかったことへの懺悔の家族小説と憎しみの犯罪小説が融合する。 父親たちの”挽歌”・・・しびれる一冊。

  • 嘘と聖域 [book]

    ロバート・ベイリー/小学館/お薦め度 ★★★★ 新シリーズ第一弾 恩師、老弁護士トム、妻ジャズの死からいまだ立ち直れていないボーセフィス・ヘインズが主人公の新シリーズ テネシー州、共和党の地盤、第二十二司法管轄区検事長のヘレン・エヴァンジェリン・ルイスは女子高生レイプ事件の裁判、被告は街の実業家、に臨もうとしていた。 その矢先、元夫、弁護士、<Z銀行>の頭取、の殺人容疑で逮捕されてしまう。ルイスの銃から発射された銃弾、残された指紋、目撃証言・・・すべてがクロであることを示している。 ルイスは弁護をボーに依頼する。当初は固辞していたが、親権問題で祖父母と争っている最中でもあり、再生の足掛かりとすべく弁護を引き受ける。 しかし、事件の裏にはルイスが38年間隠し続けてきたタブーがあった・・・ 驚きの結末が待っているのだが・・・ルイスの後だしジャンケンにまんまとはまるボー、陪審員!?..

  • カムバック・ヒーロー [book]

    ハーラン・コーベン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ マイロン・ポライター・シリーズ第三弾 エドガー賞最優秀ペーパーバック賞受賞作 NBAのチーム・オーナーの依頼は、失踪したかつてのライバル、グレグ・ダウニング、を探しだすため、代役?としてチームに加わることだった。マイロンの報酬は契約金+ドラフト一巡目の選手とのマネジメント契約。 かつての栄光、カレッジバスケットのスター、と現実、10年ぶりにコートに立つ、のかい離に心萎えるマイロン。カムバック・ヒーローなのだが・・・ シリーズとしてどうしても触れておかなければならないマイロンの挫折、プロ入り間もないオープン戦で、ふたりの選手にサンドウイッチされ、膝を痛め、16ヵ月後、歩けるようになったが、コートには戻れず、スポットライトから消えた。 マイロンの失望の闇と”親友”と思っていたかつてのライバルの失踪がリンクするラストは哀しすぎる!?..

  • 死が三人を分かつまで [book]

    ケイティ・グティエレス/UーNEXT/お薦め度 ★★★★ 実録系サスペンス ブログにパートタイムで執筆するキャシー、彼女の目にとまった新聞記事、テキサス州ラレードのモーテルでアンドレス・ルッソの遺体が発見されたのは、ドロレス・リヴィエラとアンドレスが結婚して一年、交際を始めてから三年近くたったころだった。メキシコシティ在住のアンドレスは妻のドロレスを訪ねてラレードに来たのにドロレスの家ではなくモーテルに宿泊したのだろうか。 当初ドロレスが容疑者と目されていたが、まもなく夫のファビアンが最有力容疑者として浮上した・・・ 30年前の事件を掘り起こし、一冊の本にしたいと野望をいだくキャシーはラレードに住むローレ・リヴィエラ(ドロレス・リヴィエラ)を訪ね取材権を獲得する。事件当日のことは語らないという条件で・・・ ローレはラレードで夫ファビアンと双子の息子マテロとガブリエルと、ドロレスは..

  • グッゲンハイムの謎 [book]

    ロビン・スティーヴンス、原案シヴォーン・ダウド/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 「ロンドン・アイの謎」の続編 前作とは逆に、テッドは母と姉と一緒にグロリアおばさんとサリムの住むニューヨークへ・・・ おばさんはグッゲンハイム美術館の主任学芸員、そのコネ?で休館日にもかかわらず入館をさせてくれるという。 改装中の館内を見学中、突然白い煙が・・・火事だ!の声にテッドたちは外に避難。煙のもとは発煙筒、みんなが外に出た隙にカンディンスキーの<黒い正方形のなかに>が盗まれてしまった。最後に外に出たおばさんが犯人と疑われて逮捕されてしまう。 テッド、姉カット、いとこのサリムがタッグを組んでおばさんの無実を証明しなければと立ち上がる。前作同様、仮説をたてて、ひとつづつ潰していく。テッドの他の人とは違う能力が冴えわたる。

  • 沈黙のメッセージ [book]

    ハーラン・コーベン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ マイロン・ボライター・シリーズ第一弾 カレッジバスケットボールのスターだったマイロン・ぼライター、プロ入り直後ケガがもとで引退、一時期FBIの捜査官となる。現在はスポーツ・エージェントととしてマネジメント、スカウティングに忙しい。 そんなマイロンがマネジメント契約を結ぶカレッジフットボールのスター、クリスチャンの入団交渉で、オーナー側は恋人キャシーの失踪事件にクリスチャンが関与してるとして契約金のダウンを要求する。 キャシーの失踪、強盗に殺された父親、ポルノ雑誌に掲載されたキャシーの写真・・・契約問題から失踪、殺人事件にまで首を突っ込むことになるマイロン。 マイロンのワトソン役は最新刊「WIN」で活躍したウィン、ロックウッド三世、息の合ったコンビが縦横無尽に暴れまくるシリーズ第一弾。アメリカ・プロスポーツ界の内面を描きながら怪奇..

  • WIN [book]

    ハーラン・コーベン/小学館/お薦め度 ★★★★☆ マイロン・ポライター・シリーズのスピンオフ ハーラン・コーベンがこんなシリーズ書いていたなんて・・・慌ててシリーズ第一作の「沈黙のメッセージ」、アンソニー賞最優秀ペーパーバック賞、を手にする。 本書の主人公はマイロンの親友でもあり頼りになる助っ人ウィン、ウィンザー・ホーン・ロックウッド三世、大金持ちで、テコンドーの達人、その一方で女性の心情や人の生命にはほとんど関心がないという特異なキャラ。 ロックウッド家の盗まれた名画、フェルメールとピカソ、殺人事件、”貯蔵家”、迷宮入りのした学生運動事件、<ジェーン・ストリート・シックス>、一族の謎、叔父の死、いとこの誘拐、を追う。 特異なキャラに加えて、法で罰すことのできない「悪」を自らの手で裁く男でもあるウィル。怒涛の展開にページをめくる手が止まらない。秀逸なノンストップ・エンタメ小説。 ..

  • だからダスティンは死んだ [book]

    ピーター・スワンソン/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 超絶サスペンス ブロック・パーティーで知り合った隣人の二組の夫婦、ヘンと夫のロイド、マシューと妻マイラ、ヘンとロイドは引っ越してきて二ヶ月、マイラに招かれディナーを共にする。 部屋を案内され、マシューの書斎でヘンが目にしたのは、二年半前の未解決事件、ダスティン・ミラー殺人事件、で持ち去られた?ジュニアオリンピック、エペ、三位のトロフィーだった・・・ マシューに固執するヘン、その一方でトロフィーを見た時のリアクションで感付いたことを悟るマシュー。 マシューを尾行するヘンが遭遇したのはマシューが男を殴り殺す現場、警察にふたつの事件を話すものの、真剣に話を聞こうとしない警察。ヘンの病状、躁鬱症、とヘンが起こした過去の事件が起因していた。 犯人は明らかなのに・・・殺人者マシューに抱く安心感、夫、浮気をしている、ロイドに抱く不信感、マ..

  • 審議官 隠蔽捜査9.5 [book]

    今野敏/集英社/お薦め度 ★★★★☆ シリーズ第十二弾 九編収録のスピンオフ短編集 表題作「審議官」は前作「深花」の後日譚。ご機嫌取りをする?竜崎・・・ 竜崎の家族、妻、長女、長男を主人公とする短編、三作ともいいですね・・・ わたしのお気に入りは竜崎の後任大森警察署長、藍本百合子警視正、美貌の・・・だんだんマイクル・コナリーぽくなってきている今野敏!?新しいキャラクターの出現でシリーズの幅がどんどん広がる・・・ ニヤニヤしながら読了、スピンオフでは出色の出来映え・・・

  • 炎の爪痕 [book]

    アン・クリーヴス/東京創元社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第ハ弾にして完結編 ペレス警部を訪ねてきたのは、ファッションデザイナーのヘレナ、シェトランド本島へ一家で移住、買い取った家を修復、島では際立った建物になっていたが、前の持ち主が納屋で縊死して以来、脅迫めいた紙片が舞い込んでいることに悩まされているという相談だった。 具体的な事件が起きているわけではないので、心に留めておく程度の返事しかできないペレスだったが、またしても同じ納屋でヘレンと親しい一家の子守りエマの死体が見つかる。 隠しごとの出来ない島だけに事件に尾ひれがつき、ラウドスピーカーまで登場する始末・・・えまの過去、現在を調べても実像がなかなかつかめない。 エマの交際相手、ラウドスピーカーの彼の母親と姉、エマに想いを寄せるヘレンの夫、エマが住みこみで働く一家の夫婦、子供たち・・・遅々として進まぬ捜査。それを阻害している..

  • ミン・スーが犯した幾千もの罪 [book]

    トム・リン/集英社/お薦め度 ★★★★ カーネギー賞受賞作 200人は殺した中国系アメリカ人の殺し屋、ミン・スー、復讐しなければならないリストにはあと五名、セントラル・パシフィック鉄道の東端から妻?の待つカリフォルニア州サクラメントまで、予知能力を持つ老人、予言者、に導かれ西を目指す。 その途中で奇術ショーの一座に巡り合い、リノまで用心棒兼道案内人を務めることになる。一座は特殊能力?を持つ、火をつけても燃えない炎女、人の記憶を消せるナヴァホ族、テレパシーを使える少年、刺青の異教徒と座長の六人・・・ 鉄道を使えばいいものの、懸賞金がかけられているミン・スイー、鉄道沿いの安全な道を選びながら、馬と馬車で進む。その途中で寄り道をし、リストからひとり、ふたりと削除していく。 奇術ショーの一座の面々との交流、ギャング一味との攻防戦、予言者の導き、シエラ・ネバダ越え、心通わす?クーガーの出現..

  • 軋み [book]

    エヴァ・ビョルク・アイイスドッティル/小学館/お薦め度 ★★★★ CWA賞新人賞受賞作 レイキャヴィーク警察を辞め故郷のアークラネスに戻ったエルマは地元警察に職を得たる。レイキャヴィークと違い人口7000人の魚港町、大した事件は起きないはずだった・・・ 勤務早々、観光名所の灯台付近の海で不審死体が発見される。被害者はエリーサベトという女性パイロット、幼年期をアークラネスで過ごしていた・・・ 現在進行形の捜査とエリーサベトの幼年期が交互に語られる。 一種の村社会、お父さんの名前は?お母さんの名前は?みんながみんなを知っている。エルマも然り、エリーサベトも然り・・・ただ、エリーサベトはアークラネスを嫌い、避けていた。それがなぜアークラネスで殺されたのか? 血のつながりが濃いがゆえに事件は混とんとする。アイスランドが色濃く反映されたミステリー!?わたし的には好きだな。

  • 黒石 新宿鮫Ⅻ [book]

    大沢在昌/光文社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第十二弾 前作から阿坂課長を向かえ、新組織でスタートを切った新宿鮫 後ろ盾の桃井課長を亡くした鮫島の変貌ぶり、独断専行の捜査からチームワン阿坂課長、矢崎、藪、そして鮫島、での捜査には驚かされる!? シリーズもここまで来ると書き手としてもなかなか辛いものがあることはわかるが、シリーズを続ける以上、アイデアを出さなければならない。マイクル・コナリーのハリー・ボッシュ・シリーズはリンカーン弁護士やナイト・ショーのレイネ・バラードを登場させ、常に活性化をはかり、読者を飽きさせない。 <新宿鮫>は鮫島の際立ったキャラと独断専行の捜査が持ち味のシリーズだった。そこに何を加えるか?現時点ではワンチームと底を見せない阿坂課長・・・レイネ・バラード的な存在が本書では公安のスパイだった矢崎なのか? わたし的には優等生になった鮫島は見たくない。延々と語ら..

  • 木曜殺人クラブ 二度死んだ男 [book]

    リチャード・オスマン/早川書房/お薦め度 ★★★★ シリーズ第二弾 因縁のある男、元夫でMI5の諜報員、から招待状をもらうエリザベス、その要件とは、二千万ポンド相当のダイヤを調査対象者から盗み、ニューヨークのマフィアとコロンビアのドラッグカルテルから追われているので助けてほしい、と・・・ 一方、<木曜殺人クラブ>のメンバーであるイブラハムが路上強盗にあい、スマホを盗られ、暴行を受けたのだ。容疑者はすぐにあがったが、証拠がなく警察も逮捕が出来ない。事件のお陰でイブラハムはひきこもりになってしまう。 木曜殺人クラブのメンバー、クリスとドナの警察コンビ、前作にも登場、MI5の諜報員スーとランス、ビジネスマン、ドラッグディーラー、マフィア・・・多彩なメンバーが登場、風呂敷を広げ、あちこちへ蛇行しながら物語は進む。 わたし的にはちょっとついていけない!?会話は健在。ここがいいという人たちも..

  • 真珠湾の冬 [book]

    ジェイムズ・ケストレル/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ エドガー賞最優秀長編賞受賞作 1941年、太平洋戦争前夜、ホノルル、白人男性と日本人女性が惨殺された怪奇な事件が起きる。ホノルル警察の刑事、マクレディが捜査にあたる。彼はハワイ人ではなく、大卒、陸軍あがり・・・ 捜査に新たな進展が・・・ウェーク島で酷似の事件が発生する。犯人は香港方面に向かったと思われた。戦局が危うい中、出張を命じられ、ウェーク島、香港に赴くマクレディ。 香港で犯人の罠にかかり、警察に逮捕され、12月7日、開戦を迎える。日本軍の攻撃で陥落する香港、マクレディは捕虜となり日本へ・・・ 日本に連れて行かれたことには外務省第一秘書管、高橋の思惑が働いていた。これ以上は書けませんが、戦後、事件の捜査を再開するマクレディが辿る数奇な運命は読み応えあり・・・スケールの大きなエドガー賞受賞作。

  • 大鞠家殺人事件 [book]

    芦辺拓/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ 「ミステリーが読みたい!2023年版」国内編第三位 戦火の昭和18年、大阪船場、化粧品販売で富を築いた大鞠百薬館の長男、軍医として出征、に嫁いだ軍人の娘、美禰子は、夫の帰りを大姑、小姑のいる大鞠家で待つことを選択する。 大鞠家の二代目である千太郎は明治39年、パノラマ館から忽然と姿を消し、妹の喜代江が丁稚を婿さんに迎えた。その長男が軍医、三代目を継ぐ予定の二男、茂彦は長男同様出征中、長女、月子と二女、文子がいる。 大鞠家で起きる惨劇、長女の月子が刺され、一命を取り留めたが、なぜか血のりを塗られ発見される。それに続き二代目の婿さんが縊死?祖母の死、酒樽の中で溺死する義母・・・ 大鞠家から一人減り、二人減り、三人減り・・・横溝正史ばりのおどろおしさはないが、淡々とした筆致に好感がもてる。わたし的には初めて手にする作家だが、お薦め度は高い。 ..

  • ダーク・アワーズ [book]

    マイクル・コナリー/講談社/お薦め度 ★★★★ レイネ・バラード&ハリー・ボッシュ・シリーズ第三弾 2020年→2021年の大みそか、ロス市警総動員の警戒体制、ハリウッド分署のバラードは性犯罪課のムーア刑事をバディに警邏中、ふたりが追っている”ミッドナイト・メン”、連続暴行事件、の警戒も含まれていた。 新年を迎えるころ、あるパーティーで参加者が銃を空に向けて撃ったと同時にパーティーの主催者でもある修理店のオーナーが頭を撃ち抜かれて死んだのだった。 現場に残された薬莢から10年前の未解決事件で使用された銃であることがわかる。10年前の捜査責任者はなんとボッシュだった。バラードはボッシュの支援を受け、二つの事件を不眠不休で追う。 ブラック・ライヴズ・マター運動とコロナ禍が色濃く反映されている作品でもある。全米各地で抗議デモがおこり、警察官の過剰な暴力行為に対して不信感を抱くようになる..

  • 入れ子細工の夜 [book]

    阿津川辰海/光文社/お薦め度 ★★★☆ 本格国内ミステリ2022 第7位 四編収録の短編集 著者あとがきにあるように、豊富な読書量からインスパイアされ、アイデアをもらい出来あがった短編。本人的には愉しんでいる作品!?ではあるが、それが読者にとってどうかは別問題・・・ いろんな形式でやってみることを実践している。 「危険な賭け~私立探偵・若槻晴海~」、「2021年度入試という題の推理小説」はいらいらするばかり。表題の「入れ子細工の夜」、「六人の激昂するマスクマン」でいらいらが収まる。相性の悪い作家は健在なり!? 表題作は最近多い作中作、劇中劇、をもうひと捻りした作品。 四編ともコロナ禍を意識したものだが、コロナ禍のミステリーといえば「56日間」/キャサリン・リンダ・ハワード/新潮社が断然お薦め!

  • 愚者の階梯 [book]

    松井今朝子/集英社/お薦め度 ★★★☆ 時代ミステリー 昭和十年、翌年ニ・ニ六事件勃発、木挽座に満州国溥儀皇帝陛下をお迎え、勧進帳を演目に据えた。そのセリフが<不敬>にあたると亀鶴興行を糾弾する国士があらわれ、対応は専務の川端が窓口となった。 その後も同様の糾弾が続き、木挽座で川端が縊死?する事件が起こる。事件はすんなり片がついたように見えたが・・・川端から相談を受けた手前、桜木治郎、大学講師、は責任の一端を感じつつ、捜査に協力することに・・・ 警察はなかなか自殺で事件を処理することなく継続捜査を続ける。そうこうするうち、木挽座の大道具方を束ねる棟梁が殺され、事件の混迷度を増すばかり。二つの事件は関連があるのか? 作者十八番の歌舞伎と時代に指示されつつあるキネマを対比させながら物語をは進む。 急速に右傾化する日本を作者は、「いつの間にかこの国には深い闇が垂れ込めてきているようだ..

  • 2022年ベストミステリー 海外編 [book]

    年間「海外編ベスト10」 第一位 「われら闇より天を見る」/クリス・ウィタカー/早川書房 第二位 「キュレーターの殺人」/M・W・クレイヴン/早川書房 第三位 「優等生は探偵に向かない」/ホリー・ジャクソン/東京創元社 第四位 「殺しへのライン」/アンソニーホロヴィッツ/東京創元社 第五位 「悪い弁護士は死んだ」/レイフ・GW・ペーション/東京創元社 第六位 「スクイズ・プレー」/ポール・ベンジャミン/新潮社 第七位 「魔王の島」/ジェローム・ルブリ/文藝春秋 第八位 「ロンドン・アイの謎」/シヴォーン・ダウド/東京創元社 第九位 「死まで139歩」/ポール・アルテ/早川書房 第十位 「天使の傷」/マイケル・ロボサム/早川書房 「われら闇より天を見る」はミステリーの範疇を超えた秀逸な作品。第二位から第五位まではシリーズもの、とりわけ癖になったのは「悪い弁護士は死んだ」..

  • われら闇より天を見る [book]

    クリス・ウィタカー/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ CWA賞ゴールド・ダガー受賞作 30年前に起きた忌まわしい事件、仲良し四人組、当時15歳、スター、ウォーカー、ヴィンセント、マーサ、スターの妹リリーを誤って殺したヴィンセント、裁判で証言をしたウォーカー、ウォーカーの恋人マーサ。 ヴィンセントは本来であれば少年院送りが相当だと思われていたが、大人と一緒の刑務所に送られた。そこで殺人事件を起こし、10年+20年の刑を務めていた。 一方、警察署長となったウォーカー、裁判で証言したことを今でも悔いている。 妹を殺されたスターは13歳の娘ダッチェスと弟ロビンの三人暮らし、酒、薬に溺れる生活を続け、ダッチェスがロビンの母親代わりを務めていた。 刑期を終えたヴィンセントが町へ帰ってくる。 ヴィンセント、スター一家を気遣うウォーク。そんな折り、スターが殺され、現場にいたヴィンセントが通報..

  • 2022年ベストミステリー 国内編

    年間「国内編ベスト3」 第一位 「やっと訪れた春に」/青山文平/祥伝社 第二位 「方舟」/夕木春央/講談社 第三位 「プリシパル」/長浦京/新潮社 青山文平の「やっと訪れた春に」はすべてが秀逸な一冊でした。わたし的にはダントツの一位!

  • 嘘は校舎のいたるところに [book]

    ハリエット・タイス/早川書房/お薦め度 ★★★★ サスペンスなのだが!? 一方的に夫に追い出される形でアメリカからイギリスに移住してきたセイディと娘のロビン。母の遺言でロビンをセイディの嫌っていた母校に編入させることで幾ばくかのお金がおりるようになっていた。 刑事専門の法廷弁護士だったセイディ。何とか生計を維持するため親友の事務弁護士の計らいで補助弁護士の職を得る・・・ 学校では新入りのセイディに対してPTA会長をはじめ取り巻きがプレッシャー?をかける。ロビンはロビンで仲間はずれにされ孤立する。 一方、補助弁護士の仕事は、教師が性犯罪者として教え子から告発された裁判の証拠集め。 学校、家庭内で奮闘するセイディとロビン、裁判の補助で勘を取り戻すセイディ。少しづつ好転したかに見えた公私だったが・・・ 閉鎖的な学校を舞台にしたありがちな?サスペンス。

  • このやさしき大地 [book]

    ウィリアム・K・クルーガー/早川書房/お薦め度 ★★★★ 冒険小説 リンカーン・インディアン教護院、インディアンの子供たちが集団生活を送る施設、のなかの唯一の白人兄弟、孤児、のアルバートとオディ、生意気な?オディは<黒い魔女>と言われる院長に目をつけられていた。 ある日、横暴な管理人に呼び出され、あやうく殺されそうになったオディアは管理人を殺してしまう。兄のアルバート、スー族の口のきけないモーズ、竜巻きで母親を亡くしたばかりのエミーと共に教護院から脱走を図る。 四人は川を下り、セントポール、オディアのあばが住むという、に行くため、ミシシッピ川を目指しカヌーをこぎ出す。 行く先々で様々な人々との出会い。別れを通じ、少年の成長していく様を描いた冒険小説。 少々ベタのところもある冒険小説だが、時代が1932年ということなので許そう!?しかもリンカーン、リンカン、を訪れたことがある小生..

  • ロンドン・アイの謎 [book]

    シヴォーン・ダウド/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ 児童向けミステリー!? アメリカへ移住するまえにロンドンの姉の家を訪れる妹と息子のサリム、彼のたっての希望で大観覧車ロンドン・アイに乗りに出かける。 切符売場に並ぶテッドと姉カットとサリム。長蛇の列、ラッキー?なことに見知らぬ男から声を掛けられる。一枚切符があるのであげるよ、と・・・ サリムだけが観覧車にのり、テッドとカットは下で見護ることにするが、一周した観覧車からサリムは降りてこなかった。消えたのだ。 十二歳の名探偵テッドのお出ましだ。<・・・症候群>で人間関係の機微には疎いが、物事を論理的に組み立てるのは得意、しかも気象学に関しては専門家。そんな頭脳明晰なテッドがサリム失踪?の謎を解く。 何と言ってもテッドのキャラがいいですね。<レインマン>、ダスティン・ホフマン主演、がカジノで大儲けするシーンが頭をよぎる!? 児童..

  • 方舟 [book]

    夕木春央/講談社/お薦め度 ★★★★ 大どんでん返し 登山サークルで一緒だった6人と柊一の従兄、山菜とりで道に迷った3人、両親と息子、10人が地下建築で一夜を明かすことになる。 翌日の明け方、地震に見舞われ、扉が大岩でふさがれ、地上に出ることが出来なくなる。方舟と書かれた案内図によれば地下建築は三層、1階と2階は小さな部屋に分かれており、3階は大きなまじきりで仕切られ、水に浸かっている。 地下建築の捜索の結果、10人が助かるためには、誰か1人が犠牲となって作業室の巻き上げ機を巻き上げることしかないようだ。 そんな状況下、この地下建築に案内した裕哉が死体で発見される。 3階の水かさは増すばかり。裕哉に続いてさやか、三人家族の父親が殺される。犯人を突き止め、説得、巻き上げ機を巻き上げさせることは出来るのか!? 完全なクローズドサークルのなか、水没まで刻々と時間は削られて行く。探偵..

  • 透明人間は密室に潜む [book]

    阿津川辰海/光文社/お薦め度 ★★★★ 2021年版「このミス・・・」国内編2位 「入れ子細工の夜」を手にする前に・・・ 4編収録の中編集、作者の言葉をかりれば、中華、イタリアン、フレンチ、和食ありの趣向をこらした料理、作品、が並ぶが、味付けがイマイチ私好みではないようだ・・・そういえば「紅蓮館の殺人」もそうだった。 書評家としても日夜がんばっている姿をツイッターでフォロー、その読書量には敬服せざるを得ない。 四編のなかでお気に入りは「六人の熱狂する日本人」、アイドルオタクが裁判員裁判に直面したら、というユーモア・ミステリーでもあり「悪ふざけ」でもある。 「入れ子細工・・・」の予習編としてはいいのかな!?

  • プリンシパル [book]

    長浦京/新潮社/お薦め度 ★★★★ クライム・ノベル プリンシパルとは、そのバレエ団のトップの階級にいるダンサーのこと。 昭和二十年八月十五日、塩尻駅で玉音放送を聞いた教師の綾女、憎しみと血の匂いの記憶を呼び覚ます東京へと、彼女を運んでいった。 関東最大の暴力組織四代目水嶽本家に掲げられた看板は「水嶽商事株式会社」・・・兄たちが出征中のため、父が会長兼社長の肩書で代行を務めている。 兄たちが戦場から戻るまで。見せかけの会長兼社長に据えるため綾女は呼び戻されたのだった。 父の死を知った敵対する連中が水嶽本家を急襲する。そのことで綾女は腹をくくる。父親と同じが血が流れていることを思い知る。 昭和二十九年までのGHQ工作、秘密の汚れ仕事、政界工作、裏金・・・敵対する組織の弱体化工作、裏の顔・・・水嶽商事の統制のとれた商業組織への変貌、表の顔・・・裏の顔と表の顔を使い分けながら戦後の..

  • 56日間 [book]

    キャサリン・ライアン・ハワード/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ サスペンス・ミステリー コロナウィルスが猛威をふるい始めようとするダブリンのスーパーマーケットで女、キアラと男、オリヴァーが出会い?交際を始める。 二度目のデートの後ふたりはオリヴァーの部屋に行く。ハンデミック宣言が出された日でもあった。 その後、ロックダウンが始まり、キアラとオリヴァーは同棲生活を始めるが、お互いの封印された過去?が垣間見える。 物語はふたりが出会った56日前からと今日、オリヴァーの部屋で男の腐乱死体が発見される、が交互に語られる形で進む。 ネタばれ?パンデミック下の意図された出会い、封印されたお互いの過去、驚愕の告白、慟哭の結末・・・コロナ禍で生まれた現在と同時進行?のサスペンス・ミステリー。

  • スクイズ・プレー [book]

    ポール・ベンジャミン/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ ハードボイルド 純文学作家ポール・オースターがポール・ベンジャミンの名前で発表した幻?のデビュー長編作にして正統派のハードボイルド。 私立探偵マックスのもとへ元大リーガーのチャップマン、昨年までニューヨーク・ヤンキースのクローザーと同姓、が事件の依頼に訪れる。チャップマンはその絶頂期交通事故で片脚を失い、今は次期上院議員候補と目されている。 そんな彼のもとへ脅迫状が・・・かつての同僚、検事、からの紹介でもあり依頼を受けることにする。 チャンドラーのにおいぷんぷんのハードボイルド、私立探偵もの、軽妙な軽口、運命の女?・・・どれをとっても王道。いい作品に出合いました。

  • 天国の修羅たち [book]

    深町秋生/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★ ヘルドッグス・シリーズ完結編 捜一の巡査部長神野真里亜と新宿署マル暴刑事樺島は暴力団をも恐れない老ジャーナリスト殺人事件の捜査本部に召集され、バディを組んでいた。 元同僚の鑑識係からある人物、どうの昔に死んだはずの、の指紋が現場から検出されたが、捜査会議で不問にふされたことを聞き出す。 樺島のかつての同僚の事件で関わった元刑事のジャーナリストと接触、指紋の件と引き換えにおぞましい警察内部の闇を聞いてしまう。その代償は捜査本部から外され休暇を与えられた。 警察官として納得がいかない神野、それに呼応する樺島は独自の捜査を始めるが、気づけば警察組織を揺るがす陰謀に巻き込まれていた。 事前情報は冒頭部分で要約した形語られるので完結編から読んでも問題ないようだ。完結編だけあって後半の疾走感はたまらない。著者のもうひとつのシリーズ完結編、わた..

  • 窓辺の愛書家 [book]

    エリー・グリフィス/東京創元社/お薦め度 ★★★☆ MWA賞作家 殺人コンサルタント、犯罪小説家の執筆に協力、の老夫人ペギーが死んだ。自然死?というに介護士のナタルカは納得がいかなかった。 刑事のハービンダー、前作にも登場、にそのことを伝えたが警察は動くことができない、と。しからば友人ふたりとアマチュア探偵三銃士として真相を探り始める。 ところが初っ端からドラブルが発生する。ペギーの部屋を調べていると、銃をもった覆面の人物が侵入、一冊の本を奪って消えた・・・ 物語の始まりとしては期待をもたせるが、アマチュア探偵三銃士と刑事との関係がゆるいというか甘いというか・・・情報共有なんかしちゃって・・・ 本好きにはたまらない題材をあつかってはいるが、前作「見知らぬ人」以上に相性がよくないようだ。

  • 真夜中の密室 [book]

    ジェフリー・ディーヴァー/文藝春秋/お薦め度 ★★★★ 久々のリンカーン・ライム・シリーズ 検察側の専門家証人として証言するライム、弁護側弁護士とのかみ合わない?やりとり・・・そんな場面から物語は始まる。 ニューヨーク、真夜中の密室、短時間で鍵のかかった部屋に侵入、飲食をしたり、物の位置をかえたり・・・失敬するのは下着、包丁・・・お土産は新聞紙に書いたメッセージ、因果応報ー解錠師ロックスミス・・・ そんな事件が立て続けに二件、ニューヨーク市民を不安に陥れる。市警からの依頼でライムが捜査に乗り出す。 冒頭の裁判の結果、被告は無罪、検察の面目丸つぶれ、市長の逆鱗にふれ、市警との契約を解除されるライム。 契約解除をされたものの、ロックスミスを密かに追うライムとアメリア、ウォッチメーカーを彷彿させるためか? 出足は期待を持たせるが、殺人事件を犯すわけでもないロックスミス、ニューヨーク..

  • 月夜の羊 [book]

    吉永南央/文藝春秋/お薦め度 ★★★★ 紅雲町珈琲屋こよみシリーズ第九弾 いつもの朝の散歩の途中、<たすけて>と書かれたフキダシメモを見つけ、がま口にしまい店、小蔵屋、に戻るお草さん。その日夕方、女子生徒が行方不明になる・・・ その後、家出と判明、女子生徒は無事に家に帰った。フキダシメモはいったい誰が書いたのか!? 一人世帯がわかる古い町内会の地図をたよりに散歩の脚を伸ばすお草さん、ある一軒家の前に鍵のついたままの小型車が・・・玄関にも鍵がついたまま・・・高齢の女性が倒れているのを発見、通報する。 お節介やきのお草さんが見ず知らずの高齢女性に関わることで物語は大きく膨らむ。 幕間のほっこりミステリーに癒されます。

  • その少年は語れない [book]

    ベン・H・ウィンタース/早川書房/お薦め度 ★★★★ リーガル・スリラー 落下事故で病院に運ばれた少年ウェス、緊急手術が施されたが、術後ウェスは”QUIET BOY”になってしまった。弁護士のシェンクは母親に取り入り、医療ミスで病院側を訴える仕事を得る。 11年後、ウェスの父親が殺人事件の容疑者として起訴され、ウェスの母親のたっての頼みで弁護を引き受けるシェンクには刑事弁護の経験がなかった。 二つの物語が並行して語られる。 医療ミスの裁判は困難を極める。シェンクの妻の残した遺産にも手をつけなければならないほどだった。手術ミスを証明するための切り札は医師ではなく、大学講師のビレッジに委ねられた。 刑事事件の調査員をシェンクの息子ルーベンが一手に引き受け、調査を進める。 ふたつの事件に関連する人物は、ビレッジ。裁判の証人であり殺人事件の被害者と、オカルト三人組、シェンクを脅したり..

  • 堕落刑事 [book]

    ジョセフ・ノックス/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ マンチェスター市警エイダン・ウェイツ・シリーズ第一弾 逆読み、第三弾→第二弾→第一弾、のデビュー作 証拠保管室からドラッグをくすね、停職処分をくらい、最後通告を待つ身のウェイツ。上司からウェイツへの提案?は麻薬密売組織”フランチャイズ”への潜入捜査、選択肢のないウェイツは”捨て駒”となる。 更におまけにが・・・組織のボスのところに身を寄せている司法大臣の十代の娘をドラッグに染まる前に救い出す任務も加わる。 ボスの屋敷で週末開かれるパーティにもぐりこみ、ボスとの距離を縮め始めたころ、大臣の娘が過剰摂取?で死亡、事態はあらぬ方向へ・・・ 麻薬密売組織の抗争、大臣に寄り添う公安、組織が飼いならす警官・・・ぼろぼろになりながら任務を遂行するウェイツが健気?だ。 三作とも愉しませていただきました。

  • 印 [book]

    アーナルデュル・インドリダソン/東京創元社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第六弾 湖のほとりに建つサマーハウスで首をつった女性マリア、歴史研究家でサマーハウスの持ち主、が発見される。第一発見者は友人のカレン、警察は自殺と断定する。 疑問を抱くカレンはレイキャヴィク署のエーレンデュルを訪ね、マリアと霊媒師との会話が録音されたテープを渡す。警察としてではなく、個人として事件を調べることにする。 マリアは幼い頃、父を亡くし、湖で溺れ、母親レオノーラの庇護の下で暮らしてきた。濃厚なふたりの関係のなかに、夫が同居、当然不協和音が鳴り響く・・・ それと並行した未解決の失踪事件が語られる。三十年前、卒業を目前とした少年、それとは別の女子大生の失踪。少年の父親は事あるごとにエーレンデュルに事件の進展を尋ねてきた。 母親がマリアに約束した、向こう岸に着いたら必ず印、サイン、を送るという言葉、死後の..

  • 魔王の島 [book]

    ジェローム・ルブリ/文藝春秋/お薦め度 ★★★★☆ サイコ・サスペンス 一度も会ったことのない祖母の遺品整理に孤島に向かうサンドリーヌ、戦後子供キャンプの職員として働き始めた人たちだけが住む不吉な島?・・・ 祖母の同僚だった女性から話を聞くことが出来たが、心臓発作を起こし急死。彼女が残した言葉、「サンドリーヌ、あなたはこの島にいてはいけない」。 島から抜け出し?海岸で発見されるサンドリーヌ、彼女が警部と精神科医に話した真実の一部は少女時代に拉致され、地下室に監禁されたこと・・・ 再び島へ。祖母の話、三匹の子ぶた、初めは、わらで避難所をつくったけれど、たちまち吹き飛ばされてしまった。あの島の話のなかにいても安全じゃなくて、すぐに逃げないといけなくなった。木でつくったふたつ目の避難所も、また壊されようとしている。今度も警部が疑っているから。 三つめの避難所のこの島まで、あなたを探し..

  • キュレーターの殺人 [book]

    M・W・クレイヴン/早川書房/お薦め度 ★★★★☆ ワシントン・ポー・シリーズ第三弾 三件の猟奇的事件、死体はひとつだけ。切断された二本の指が、クリスマスプレゼントのマグカップのなか、ミサが行われた教会、精肉店の店内で発見される。 加えて、現場には”#BSC6”という文字が・・・ ポー部長刑事と分析官のブラッドショーが捜査に乗り出す。上司のフリン警部は身重にもかかわらず捜査に加わる。 被害者の身元が次々に割れる。そのうちのひとり、死体が発見された、の自宅周辺を捜査中、ポーは森の中で競技用の凧を発見する。そこからある兄妹に行きつき、ふたりを逮捕する。兄の供述から犯人と断定するが、FBI捜査官、現在は左遷中、からの情報提供により、”#BSC6”に行きつく。 ”#BSC6”とは、”ブラック・スワン・チャレンジ”、オンライン上でせめぎ合うゲームではなく、無防備な人間をたくみにあやつる計..

  • ハヤブサ消防団 [book]

    池井戸潤/集英社/お薦め度 ★★★☆ らしくない?作品 ミステリ作家三馬太郎、取材の帰りに亡き父から相続して久しい山村、ハヤブサ地区、の家に立ち寄り、その景観に魅了され移住を決意する。 早速、自治会の寄合に参加、顔見世を終え呑みに誘われる。村で唯一の居酒屋△、ここでも村の常連を紹介され、消防団に勧誘される。迷って末入団を決意する太郎・・・ 入団早々、初陣を飾る?火事が起きる。しかも放火の疑いのある・・・前にも二件の火事が起きており、原因は不明のままだった。 前半の中心は連続放火?事件。あやしい人物としてソーラーパネルを設置するため山の買取営業をしているセールスマンが浮上する。 連続放火事件に続き、村の問題児の死体を発見する。 町長の家が放火されるに至り、殺人と合わせ、ミステリ作家太郎の疑惑を真実に変え、点を線にする作業が本格化する。 目新しい題材ではないが、新興宗教の話が後..

  • 52ヘルツのクジラたち [book]

    町田そのこ/中央公論新社/お薦め度 ★★★★☆ 2021年本屋大賞第一位 52ヘルツのクジラとは、他の鯨が聞き取れない高い周波数で鳴く、世界で一頭だけのクジラ。 あることがきっかけで知り合う、貴糊と「ムシ」。貴糊はこれからの人生を義父の介護に搾取され、「ムシ」は母親に虐待され・・・貴糊は自分と同じ匂いを「ムシ」から嗅ぎ取る。 大分の片田舎に移住してきた貴糊、ここに至る理由と孤独な人生、自分が一番大切な人の52ヘルツを聞き逃した贖罪が、「ムシ」の発する52ヘルツに耳を澄ますことだ。 孤独なふたりの新たな魂の物語。 物語の紡ぎ方が巧い作家さんだ。本屋大賞、全国の書店員が選んだいちばん売りたい本、第一位も納得。

  • 殺しへのライン [book]

    アンソニー・ホロヴィッツ/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ シリーズ第三弾 探偵ホーソンとわたし、作家ホロヴィッツは「メインテーマは殺人」の刊行を前にプロモーションとしての文芸フェスに参加するため孤島を訪れる。 フェスの参加者は不健康な料理本を出すシェフ、盲目の霊能者、歴史家、児童文学作家、フランスの朗読詩人・・・フェスを後援するのは大富豪、島に暮らすオンラインカジノのCEO。 前半はたっぷりこれらの登場人物に頁が割かれる。 事件は大富豪の邸宅で催されたパーティで起きる。主賓が椅子に右手だけ拘束されず、両足、左手は梱包用テープ拘束、刺殺された。それに続き妻も・・・ 謎解きの定番、孤島もの。途中、アガサ・クリスティを読んでいるのかと思ってしまうほど・・・安定感抜群のシリーズ第三弾、最後の最後まで謎解きを愉しみました。

  • ギャンブラーが多すぎる [book]

    ドナルド・E・ウェストレイク/新潮社/お薦め度 ★★★★ 幻の逸品!? タクシー運転手のチェット、大のギャンブル好き、競馬、ナンバー賭博、ポーカー・・・、たまたま乗せた客から穴馬情報を得、それに乗ることに・・・ まんまと穴を当て930ドル、配当ー借り、を受け取りにノミ屋のトミーを訪ねるが、彼は撃ち殺されていた。 第一発見者のチェットは容疑者にされたうえ、敵対するギャング組織から追われるはめに。 そんな時、美女を乗せたチェット、銃を突きつけられ尋問?される。美女はノミ屋のトミーの妹アビー、チェットは930ドルを取り戻すため、アビーは兄を殺した犯人を捕まえるため、戦線協定を結ぶ。 敵対する両陣営の鉢合わせ、そこからの脱出劇、チェットとアビーのロマンス?、全員集合の犯人当て・・・果たして幻の逸品なのか!?

  • ファイナル・ツイスト [book]

    ジェフリー・ディーヴァー/文藝春秋/お薦め度 ★★★★ コルター・ショウ・シリーズ完結編 父アシュトンは、民間諜報会社ブラックブリッジが画策している<都市部活用計画>なるプロジェクト、麻薬をばらまき治安を悪くし、地価を下落させ地上げする、を調査中、不慮の事故死を遂げた。その謎の行方を引き継いだコルター・ショウ。 ブラックブリッジの元社員が死の直前に持ち出した極秘の文章が隠されていると思われる場所に印がついたサンフランシスコの市街地図。謎を解く鍵は極秘文章にあることは間違いないようだ。ショウはもちろんブラックブリッジも血眼になって探していた。 ショウにとっては父の復讐戦、執拗なフラックブリッジの妨害を受けながら真実に一歩一歩迫って行く。 その過程で十数年間音信不通だった兄ラッセルが突然あらわれショウを援護する。ご都合主義に思えてしょうがないが・・・ 兄とふたり、父が探っていた陰謀..

  • 彼は彼女の顔が見えない [book]

    アリス・フィーニー/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 驚愕のサスペンス アダムとアメリアの夫婦はカウンセラーの助言で夫婦の危機を乗り越えるため二泊の旅に出る。行く先はアメリアがくじで当てた山奥の教会、改装され宿泊できるようになっている。 悪天候のなかアメリアの運転でどうにかこうにか辿り着くが、大雪で身動きがとれない。教会には誰もおらず、食料とワインの在処が記された紙が・・・ふたりの探検と不審な出来事が始まる。 物語は教会での現在進行形と配達されない妻からの手紙が十年分交互に語られていく。 そこで読者は現在の夫婦の距離感と妻から見た夫婦の距離感の変遷、アダムぬきの、が伝えられる。情報の出し方が秀逸・・・ 終盤に待ちうける視点の交換が驚愕のサスペンスを生む。一気読みの一冊。

  • 奪還 [book]

    リー・チャイルド/講談社/お薦め度 ★★★★ シリーズ第十弾 カフェでエスプレッソを飲んでいるリーチャーが見たのは身代金の受け渡し現場、次の日も同じカフェにいたリーチャーのもとにひとりの男が・・・昨日、目撃したことを問われる。 民間軍事会社の経営者の妻子が拉致されたことによる身代金受け渡しだった。前妻も拉致され殺されたことから、警察への通報を嫌う経営者、リーチャーは請われて妻子の救出に協力することに。 たび重なる身代金の要求、リーチャーの推理はことごとくはずされ、犯人に出し抜かれるはめに・・・ 今回のバディは元FBIの私立探偵、妻子が拉致されたときの運転手、英国訛り、を追い、イギリスまで飛ぶ。経営者の裏の顔が明らかになるにつれ、どちらにどうかかわるか、リーチャーの下した結論は大失策を招く。災害級の過ち、宇宙の歴史でまさに最大の過ちだった。 名誉挽回で見せる武闘派リーチャーにスッ..

  • フォーリングー墜落ー [book]

    T・J・ニューマン/早川書房/お薦め度 ★★★★ ハイジャック・スリラー 三人の主人公、コースター航空のパイロット、ビル・ホフマン、その妻キャリー、フライトアテンダントのジョー。 物語はインターネットの修理に訪れた男がキャリーに銃口を向ける。ロサンゼルス発ニューヨーク行きの機長ビルのもとに一通のメールが届く。添付の画像には自爆ベストを着せられたキャリーの姿が・・・ 犯人の要求は飛行機を墜落させること。選択を迫られるビル、家族の命、息子と娘も拉致された、か乗客の命か・・・ビルの出した答えは飛行機を墜落させるつもりはないし、家族を殺させるつもりもない、と。 ビルは永年一緒に仕事をしてきたジョーに事件の経緯を知らせる。ジョーはいとこのFBI捜査官に連絡、ビルの家族の救出を頼む。 コックピットでのビルと犯人のやり取り、オンラインでのキャリーと家族と犯人のやりとり、コックピットから隔てら..

  • やっと訪れた春に [book]

    青山文平/祥伝社/お薦め度 ★★★★☆ 唸る青山節 代が替わるごとに、岩杉能登守を名乗る家が入れ替わる。岩杉本家と分家の田島岩杉家である。だから近習目付も二人いる。十一代藩主には長沢圭史が、十二代になるはずだった当主には団藤匠が近侍していた。 だが、十二代藩主の急逝、直系男子にあたる者は、今年七十八歳になる祖父しかいない。服忌があけると祖父は今後、田島岩杉家出身の者が藩主に就くことを遠慮したい旨の願いを提出した。 これにより、五代から百八十年に亘って続いてきた橋倉藩の藩主交代は終わりを告げた。 加齢による身体の衰えを感じていた圭史は致仕願いを出す。いまならば、近習目付は一人、匠だけ、でもなんとかなる、と・・・ そんな矢先、遠慮願いを出した田島岩杉家の当主が暗殺される。やっと訪れる春を楽しみにしていた圭史は独自に捜査を始める。 物語の肝は「鉢花衆」、「御成敗」のとき、四代藩主に..

  • 優等生は探偵には向かない [book]

    ホリー・ジャクソン/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ 第二部 前作「自由研究には向かない殺人」の後遺症?、あの事件の結末がもたらした痛み、家族、友人を危険な目に合わせたピップ、探偵、の苦悩、からスタート。 <グッドガールの殺人ガイド>と題するポッドキャストの配信で前作が紹介される。紹介されるが、読んでいるわたしでも名前を追えない。あまり気にせず読み飛ばすことに・・・ 前回の教訓からもう探偵はやらないと心に誓ったピップだったが、友人の兄が失踪、行方を探してほしいとと友人とその母親から頼まれ、仕方なく依頼を引き受けてしまう。 ポッドキャストでインタビューを配信、SNSを駆使、リスナーから情報を得る手法は警察をも凌ぐ。ピップの強み! 今回のポイントは<なりすまし>、一定のターゲットに対して恋愛感情を抱かせ、情報を得、ターゲットを絞って行く。ピップとなりすまし人との知恵比べにはまってい..

  • あきない世傳 金と銀13 [book]

    高田郁/角川春樹事務所/お薦め度 ★★★★ シリーズ第十三弾にして完結編 まずは吉原での衣装競べ、ライバルたちの豪華絢爛な衣装、そのなかでも音羽屋のきらびかさは贅を尽くしている。最後のランウェイは芸者の歌扇、歌扇らしくあるための衣装は観客の度肝抜く・・・しかし、二票差で音羽屋に軍配があがる。 幸にとって勝敗は二の次だった。江戸本店で頃合いの品から贅を尽くした品まで扱うことの限界を感じ、手ごろな呉服と太物を店先現銀売りする本店と選りすぐりの呉服を屋敷売りする新店に分けることを決意する。 新店開業に伴うまさかの裏ぎり、災禍・・・どう乗り越えていけるのか。 マーケティング的にいうと、百貨店、本店、の限界を知り、術無い思いをすることなしに買い物を楽しんでもらえるセレクトショップ、本店と新店の棲み分け、へ。田原町全体でワンストップショッピングを楽しめるモール構想、商いの大海へ漕ぎだす幸の姿..

  • ガン・ストリート・ガール [book]

    エイドリアン・マッキンティ/早川書房/お薦め度 ★★★★ 刑事ショーン・ダフィ・シリーズ第四弾 杉江松恋氏が言うには、「このシリーズ、全部読むのが面倒臭かったなら、最初の三作は飛ばして<ガン・ストリート・ガール>から読んでもいいと思う。それも面倒臭かったなら、五作目の<レイン・ドッグス>は後回しにして<ガン・ストリート・ガール>の次は最新刊<ポリス・アット・ザ・ステーション>でもいい・・・」 馬券屋の富豪夫婦が自宅の居間で射殺され、同居の息子マイケルの姿が見えない。家庭内の争いによる単純な事件か?と思われた。 ダフィ警部補は新入りの部下と捜査に当たる。行方不明のマイケルが遺書を残し、崖下で死体で発見される。 マイケルに続いて恋人?も自殺と思しき死を遂げる・・・ マイケルの大学時代の交流関係から彼のビジネス?が明らかになる。武器製造会社の社員、労働組合代表、アメリカ領事館宅のゲス..

  • 捜索者 [book]

    タナ・フレンチ/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 600頁超の大作 アイルランドに移住した元シカゴ市警の刑事カル、廃屋を修繕しながら田舎生活を愉しんでいた。そんなある日、カルを監視する視線を感じた。視線の主は十代の子供だとわかり、デスクの修理作業を手伝えと持ちかける。 口数の少ないその子はトレイ、何か事情と要件を抱えていることはわかったが、ふたりで共同作業を進めることに・・・ そんなことが続いた後、トレイは失踪した兄、19歳、を探してほしいと切り出す。最初は断ったものの、兄を慕う思い、家庭環境を聞いてしまうと、情にほだされ兄を探すことを約束してしまうカル。 ここまでで200頁、ゆっくり物語は進む。 兄の友人、ガールフレンドに話を聞いて回るが、失踪の理由に心当たりはない、と。元警官のカルの臭覚が違和感を覚える。 カルの行動は村人の知るところとなり、隣人の老人、マート、から手を..

  • 潔白の法則 [book]

    マイクル・コナリー/講談社/お薦め度 ★★★★☆ リンカーン弁護士シリーズ第六弾 リンカーン弁護士、ミッキー・ハラー、の車のトランクから射殺死体が発見され、逮捕された。高額の保釈金を設定されたことで娘に迷惑をかけられないと判断したハラーは拘置所から個人弁護をすることにする。 ハラーを救うため、ハリー・ボッシュ、元妻、検察官、が集結、裁判を支援する。 保釈を勝ち取ったハラーだったが、検察が容疑を切り替え大陪審へ持ち込んだため再逮捕され再び収監されてしまう。さらに拘置所内で命を狙われ九死に一生を得る。 「わたしがやっていないことを証明する唯一の方法が、だれがそれをやったのかを証明することだ」、「それが潔白の法則だ」。 武漢で発生した新型コロナウィルス感染症がハラーの裁判にも大きな影響を及ぼす。最短の期間で決着を図ろうとするハラーに時間との戦いが・・・ リンカーン弁護士ミッキー・ハ..

  • アキレウスの背中 [book]

    長浦京/文藝春秋/お薦め度 ★★★☆ サスペンス MIT((ミッション・インテグレイテッド・チーム)いわゆるタスクフォースに召集された警視庁捜査三課七係、下水流(おりづる)主任らが命じられたのは、ある日本人マラソン選手への脅迫、今後の協議会への参加をやめなければ、本人および家族の命にかかわることが起きる、をしている犯人の特定と逮捕。 一か月後に開催される東京WCCR(ワールド・チャンピオンズ・クラシック・レース)、世界ランキング上位の招待選手三十名と国内外の有望なランナー十名で争われる賞金レース。しかも日本政府が認可する公営ギャンブルの対象マラソンレース第一号。 下水流以下三名は嶺川選手が所属するDAINEX総合研修所へ向かう。そこでは当日、嶺川が着用するウェア、シューズの最終調整が行われていた。熾烈な企業間競争の最前線。 MITの規模は総員百数十名、三十数班のユニットに分かれて..

  • 業火の市 [book]

    ドン・ウィンズロウ/ハーパーBOOKS/お薦め度 ★★★★ 新三部作の第一部 1986年、ロードアイランド州の州都プロヴィデンス。これまでアイルランド系とイタリア系マフィアは仲良く共存していた。何世代にもわたって同盟関係を築き上げていた。 ダニー・ライアンはアイルランド系マフィアの一員、彼の父親は同盟関係を築き上げたひとりだが、今では盟友のジョンが首領となっている。 ダニーはジョンの娘婿としてファミリーに加わっているが、ジョンの息子たちとは異なり、一兵卒の立場に甘んじている。 アイルランド系は波止場を支配し、イタリア系は賭場を支配し、組合も両方で分かち合っていた。彼らは力を合わせてニューイングランドを仕切っていた。 四十年に及ぶ良好な関係はその一夜にあっさりと崩れ去った。ジョンの次男リアムがイタリア系マフィアのナンバー2ピーターの弟ポーリーの恋人を略奪したのだ。 ポーリーの怒..

  • 南の子供たち [book]

    S・J・ローザン/東京創元社/お薦め度 ★★★★ リディア・チン&ビル・スミス・シリーズ第十二弾 前作、「ゴースト・ヒーロー」、の刊行が2014年、8年ぶりのシリーズ 事件解決のためにわたしがミシシッピにいくことを母が望んでいる。 ミシシッピにいとこがいる、それだけでもビックリ、その人が父親殺しの容疑で拘置所に入れられている。即刻いとこを自由の身にするため南部へ行くことを命じられた。 頼れる相棒ビルを伴い町を訪れると、件のいとこは拘置所から脱走していた。事件の依頼人であるいとこの大叔父の家に滞在して調査を始める。 百年前に中国人がミシシッピ・デルタに移住し、中国人の経営する食料雑貨店がすでに存在し、新参の移民を受け入れていた。 本書のテーマであり、事件の背景に関与しているミシシッピをはじめとする南部に暮らす中国系アメリカ人の歴史だ。「黒人でなくたって、中国人じゃないか。白人に..

  • 嵐の地平 [book]

    C・J・ボックス/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 猟区管理官ジョー・ピケット・シリーズ第十五弾 前作「越境者」のラストでロデオ・カウボーイのダラス・ケイツと駆け落ちたピケット家の養女エイプリルが意識不明の状態で発見される。 ふたりの交際に反対していたジョーは、ダラスがこの件に関わっていると疑う。ダラス家の両親に話では、ダラスはロデオ大会で大けがをし、実家に戻って静養中だと。 エイプリルは救急搬送された病院で脳が回復するように一時的に昏睡状態にする治療方法を提案される。 そんなとき、FBIに拘束されていたネイト・ロマノウスキ、ジョーの朋友、が条件付きで釈放され、恋人のリヴ・ブラナンと一緒に新しいビジネス、鷹による害鳥駆除、の第一号クライアント?のもとへ向かうが、知ってか知らずか危機が迫っていた・・・ ヒールとしてのケイツ家のゴッドマザーが男四人、夫、息子三人、を操り、シナリオを描..

  • ボンベイのシャーロック [book]

    ネヴ・マーチ/早川書房/お薦め度 ★★★★ 歴史ミステリー+冒険小説 主人公、ジェイムズ(ジム)・アグニホトリ大尉は病院で三十歳になった。負傷から回復という、時間のかかる、飽き飽きするような仕事?をこなすうち、ある記事が頭から離れなくなった。 それは二人の若い女性が昼日中に大学の時計塔から転落死した事件だった。 新聞の続報は「世紀の裁判、悪党どもは無罪釈放」、つまり、法廷の判断は自殺だった。それに対して被害者の夫であり兄であるアディ・フラムジーが編集部宛に書いた手紙に心を揺さぶられ、事件の真相を知りたいと願う。 退院後、新聞社に就職、記者として事件を調べようとする過程で取材でアンディと話すうち、探偵としてアンディに雇われることになる。 時代はイギリスがインドの統治に乗り出したころ、治安の悪い地方でシャーロック・ホームズばりの変装で目くらまし、情報を収集するジム、やがて思ってもみ..

  • ザ・フォックス [book]

    フレデリック・フォーサイス/KADOKAWA/お薦め度 ★★★★ 国際謀略小説 アメリカの国家安全保障局の鉄壁のコンピューターがハッキングされた。頭がよくて人をだますのが得意な狐を思わせることから”フォックス”と呼ばれた。フォックスの正体は18歳のひきこもりの少年だった。 アメリカは犯人引き渡しをイギリス政府に要求するが、フォックスはアスペルがー症候群を患っており、アメリカに引き渡されたら生きてはいけない。そこでイギリス首相の私的顧問サー・エイドリアン・ウェストンが一計を案じる。 こうして一大プロジェクト<トロイ作戦>、ハッキングによるサイバー戦、が始動する。そこで得られた成果をアメリカにも共有するかわりにフォックスの身柄引き渡しを免除してもらうことに・・・ トロイ作戦は、対ロシア、対イラン、対北朝鮮、対<頭領>、エリツィンと言えない?、対ハメネイ師、対金正恩、へサイバー攻撃を仕..

  • 塩の湿地に消えゆく前に [book]

    ケイトリン・マレン/早川書房/お薦め度 ★★★★ MWA賞最優秀新人賞受賞作 謎解きのない?サスペンス ふたりの女の死体が<サンセット・モーテル>のすぐ裏の湿地に、二本の棒線のように並んでいる・・・八週間後には、さらに女が五人増えることになる・・・七人の女、七つの警告。 こんな書き出しで始まる・・・ ボードウォーク沿いで占いの店を出している少女クララ、ある日、行方不明の少女の叔父が来店、少女の話を始める。サイキック、霊能者、じゃなくても少女の身に何か悪いことが起こったことは明白だった。 それ以来クララは不気味なビジョンに襲われるようになる。それらは占いに来た女性客や、失踪中の女性に関係があると思われ、さらにビジョンは強くなる。 ニューヨークからアトランティックシティに逃げ帰ってきたリリー、少しお金を貯めようと閑散としたカジノのスパで働き始める。カジノに出禁のクララと初対面でブ..

  • ファズイーター [book]

    深町秋生/幻冬舎/お薦め度 ★★★★ シリーズ第五弾 おまけのおまけ!? 千波組は破たん、組長の有嶋は失脚したのだが、四ヶ月前の事件を契機に、かつての傘下の組員にタブーの薬に手を染めさせ、荒稼ぎをしている。八神瑛子のアンテナはその情報をキャッチ、配下一味を一網打尽にする。 一方、上野署管内の交番勤務の若い巡査が何者かに刺される事件が発生。なぜ、新人を交番にひとりにしたのか世間の非難を浴びる。まだ、品川で起きた刑事射殺事件も未解決のままなのに・・・警察への報復なのか? ハ神は失脚した有嶋がことを急いていることから近々大きな花火をあげるのではないかとあたりをつけ、情報収集を急ぐ。 有嶋と警察への報復がいつしか交わり、大きな花火へと点火する。この辺は柚月裕子を彷彿させる? 確かに武闘派八神の面目躍如だが、いかんせん新鮮味に欠ける。最初におまけのおまけと書いたのはそういうこと。新たな..

  • 過ちの雨が止む [book]

    アレン・エスケンス/東京創元社/お薦め度 ★★★★ 「償いの雪が降る」の続編 大学を卒業したジョーはAP通信社の記者となっていた。ある日、編集長からジョーの書いた記事が上院議員の名誉を棄損したとして訴えられたと知らされる。それと同時に、自分と同じ名前の人物の死体が発見され、凶行の疑いがあると書かれたプレスリリースを渡される。 ジョーの父親は彼が生まれた時、消え、いまどこに住んでいるのかもわからない。顔も知らない実父かもしれない!? 編集長から警察で撮られた古い顔写真を受け取り、父という神話に骨がつき、肉がつきはじめた。 早速、車を飛ばし現場の町へ向かい、聞き込みをはじめる。誰もが死んだ男について芳しくない印象をもっていることがわかってくる。 父親捜しと同時に殺人事件の真相を追うジョーに、自閉症の弟ジェレミーの後見人争いで袂を分かった母親の影、恋人ライラから受け取った母親からの手..

  • 王女に捧ぐ身辺調査 [book]

    アリスン・モントクレア/東京創元社/お薦め度 ★★★★ ロンドン謎解き結婚相談所シリーズ第二弾 エリザベス女王在位70周年、プラチナ・ジュビリー、の年に本書を読むなんて・・・ アイリスとグウェンの結婚相談所に持ち込まれた案件は、グウェンのいとこ、英国王紀に仕える、からだった。エリザベス女王が想いを寄せるギリシャのフィリップス王子について、王子の母親、アリス、のスキャンダルを臭わす脅迫状、<タルボットがコルフ島で見つけたものを持っている。彼が知っていたことを知っている。返してほしいかアリスに訊け、値段は追って知らせる>、が届いたとのだという。 戦時中は特殊作戦の訓練を受けて情報部の仕事していたアリスン、人を見る目は確か、上流階級の出身、シングルマザー、夫は戦死、のグウェンの対照的なふたりが活躍するシリーズ第二弾。 息の合ったコンビがそれぞれの得意分野でアンテナを張り巡らせ、ある時は..

  • 笑う死体 [book]

    ジョセフ・ノックス/新潮社/お薦め度 ★★★★☆ 三部作の二 休業中のホテル、警備員が殴られ、客室で<笑う死体>が発見される。現場に駆けつけたのはレイトショー、深夜勤務、のエイダン。死体は歯も指紋もなく、末期がんを抱えていた。 更に、スラックスに縫い付けられた紙片、”タマム・シュッド”、”終わった”と記された、と預かり証”831”が・・・ 第一作、私は未読、により忌み嫌われる警官を演じなければならないエイダン。負の遺産、公私とも、特に私の方は少年期の暗い過去が並行して語られる、が付きまとう汚職警官、いつ切り捨てられてもおかしくない人物設定が本シリーズの肝。 エイダンのバディの上司サティが異才?を放つ。ふたりはパートナーでありながらお互い憎しみ合っている。 警察小説+犯罪小説+謎解き小説と多才な顔を見せる本書、三部作の一、「堕落刑事」も手にしたい。

  • 母の日に死んだ [book]

    ネレ・ノイハウス/東京創元社/お薦め度 ★★★★☆ シリーズ第九弾 孤独死による腐乱死体、死後10日ほど経過、遺体は邸の主人であるテオだった。家はおよそ20室、孤児院を営みたくさんの子が暮らしていたようだ。 屋外のゲージには息絶え絶えの愛犬と人骨が・・・ゲージの床下を剥がしてみるとラップフィルムにくるまれた3人の遺体が出てきた。 テオの妻リタ、自殺?、は生前、里子の世話に心血を注いでいた。 里子たちの人間関係、里子と夫妻の関係、ラップフィルムにくるまれた他の未解決事件、行方不明になったのは母の日の前日か当日・・・ドイツ全土に広がる連続殺人事件!? ピアの妹キム、司法精神科医、の過去がサブストーリーとして事件にかかわり、700頁の超大作を一気読みさせる。

  • 噤みの家 [book]

    リサ・ガードナー/小学館/お薦め度 ★★★★☆ D・D・ウォレン・シリーズ 仕事部屋で頭を撃ち抜かれ夫の遺体、銃を手に持った妊娠中の妻イーヴィは逮捕されたが容疑を否認する。彼女は16年前誤って銃を暴発させ父親を射殺してしまった過去を持っていた。 16年前の事件でイーヴィを知っていたD・Dウォレン刑事が捜査に乗り出す。一方、D・Dの秘密情報者のフローラは射殺された夫を知っていた。フローラを誘拐監禁したジェイコブと三人で酒場に居合わせてたことがあった。 16年前の事件、今回の事件があらぬ方向へ舵を切る。D・D、フローラ、FBIの特別捜査官、実話犯罪マニアの特別チームが真相を追う。 先の読めない展開が読者をくすぐる。どう決着をつけるのか想像しながら読み進める。最初と最後では景色が全く違う物語。

  • 死亡告示 [book]

    ジェフリー・ディーヴァー/文藝春秋/お薦め度 ★★★★ 二分冊その2 短編五編、中編一編収録 表題の「死亡告示」、経歴、大けがを負った事件、出自、功績、同僚の証言、葬儀の日程、はリンカーン・ライムのものだった。 リンカーン・ライム・シリーズを再整理するにはもってこいの死亡告示!?ついつい忘れてしまったものを思い出させる。 しかも過去の小説化されたシリーズについても言及、連続誘拐殺人犯を取り上げた「ボーン・コレクター」、中国の人身密売人”蛇頭”を捕らえるまでを描いた「石の猿」、頻繁にライム元警部と捜査協力しているアメリア・サックス刑事が南北戦争直後に発生した事件を捜査した「12番目のカード」、ニューヨーク市の電力網を凶器とする殺人者を追う「バーニーング・ワイヤー」などがある、と。 中編の「永遠」は新たなシリーズ化を予感させる?主人公のキャラ、統計とデータを通して世界見る、と真逆な..

  • シルバービュー荘にて [book]

    ジョン・ル・カレ/早川書房/お薦め度 ★★★★ 遺作 ロンドンでトレイダーをしていたジュリアン、仕事をやめ書店主となったが、商売はうまくいっていない。そんな彼のもとをエドワード・エイヴォンという男が訪ねてきた。父のことをよく知っていて、地下室に興味を示し、ある提案を持ち掛けられる。 イギリスの情報機関「部」で国内保安の責任者を務めるプロクターのもとを若い女性、リリー、が母親から手紙を言付かった、と訪れる。プロクターは重大な事態が起きていることを知り、調査を開始する。 やがて、その調査はジュリアンの周辺に迫る。 一見関係ないように思える物語がいつしか交錯する。シルバービュー荘に集うエドワード、デボラ夫婦、その娘のリリー、ジュリアン。エドワードとデボラは元スパイ、死期の近いデボラからのメッセージは・・・ 静のスパイ小説、家族内でもシェア出来ない過去、現在・・・最後のリリーの言葉が響..

  • 匿名作家は二人もいらない [book]

    アレキサンドリア・アンドリューズ/早川書房/お薦め度 ★★★★ サスペンス・ミステリー 作家志望の編集アシスタント、フローレンス・ダウロ、フロリダとニューヨークのギャップに圧倒され?何も書けなくなったいた。しかも上司との良からぬ関係を持つに至り、危うい行動に出てしまったことで出版社を首に・・・ そんな窮地を救ってくれたのはベストセラーの匿名作家、モード・ディクソン、何とフローレンスをアシスタントに採用してくれたのだ。都会を離れ隠遁生活を送っているモードの家に住み込むことになった。 フローレンスの仕事は手書き原稿のタイプ、調べ物、雑用、メールの返信代行・・・特にモードの手書き原稿は乱筆のため判読不能の部分が多く、フローレンスの作家志望の拡大解釈がどんどんエスカレートしていく。 そんな折り、モードの急な思い立ち?の取材旅行、モロッコ、に同行、フローレンスが起こした自動車事故、モードを..

  • 平凡すぎて殺される [book]

    クイーム・マクドネル/東京創元社/お薦め度 ★★★★ ダブリン・トリロジー(三部作)第一弾 顔のパーツは各カテゴリーでもっともよくあるタイプ、まったくもって平凡な青年ポール。訳あって入院中の老人を慰問?する”おばあちゃんのなだめ屋”を務めている。 ある日、慰問した老人に誰かと間違われて刺されてしまう。老人はガンを患っていてポールを刺したのち亡くなる。老人は元ギャング、三十年前に人質が誘拐犯と駆け落ちした事件?に関わっていた。 老人の最後に立ち会ったことで組織からあの手この手で狙われる羽目になるポール。 そんな彼に手を差し伸べる?看護師ブリジッドと天敵刑事バニー、三人で組織の秘密を暴きだす・・・ 前半部分がスローな展開なのでかみ合わない会話が面白く響かない。しかし、怒涛の結末は圧巻。第二弾に期待したい。

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