火葬場からもくもくもくと白い煙が昇っている。 煙はお祖母ちゃんの形をしていて、お祖母ちゃんの匂いがした。 これからお祖母ちゃんはどうなるの、と私は尋ねた。 昇って漂って散って薄れて消えちゃうんだよ、とお祖母ちゃんの煙は答えた。 私もいつか昇って漂って散って薄れて消えちゃうのかなあ、と私は言った。 そうだねみんないつか昇って漂って散って薄れて消えちゃうんだろうね、とお祖母ちゃんの煙は笑…
・右手の薬指の爪だけ、伸びるのが早い。 ・不用品回収業。
・夢の中で天気予報を見た。 はずれた。
葉子の影は、僕が葉子の葬式からアパートに帰って来て、ネクタイを緩めながら部屋に入ると、ベッドに腰掛けて待っていた。 影は全くその通り影で、影だけでそこにいて、真っ黒でペラペラだった。 「おかえり」 「あ、ああ……ただいま」 声を聞いたらすぐに葉子だとわかった。鼻にかかることのない、すっきりした女性にしてはちょっと低い声。四日前の「おやすみ」以来の懐かしい声。 「骨、軽かったよ」 驚くより…
・深夜、飲み物を買いに外へ。 大雨。 屋根を叩く雨音。 バタバタバタバタ。 ・早朝、帰り道。 誰かの家から聞こえる目覚まし時計の音。 ピピピピピピピ。 止めるのを忘れて出かけてしまったんだろうね。
・仕事嫌いサンタ
僕の会社の同僚に、とても顎が長い人がいる。その顎の先は肩より下で、胸のあたりまで来ている。 あまつさえまだ伸びているようにも見える。先端は鋭く細く尖り、触ると痛そうなほどだ。 誰でも彼の顎を初めて見ると酷く驚く。僕も最初は驚いた。 けれど顎に関して何か言うのは彼に失礼な気がして、気にならない振りをした。 誰にでも他に無い特徴の一つや二つぐらいはあるものだ。 そしていつの間にか慣れた。…
・ドッペルゲンガー養成所(1万字くらい?) ・小説の小説(やってみたい) ・作中作でもいいし ・原稿作法再確認(忘れてるものあるかも)
一月がそろそろ終わる時分、僕はマフラーに顔の半分を埋めながら、俯き気味で歩いていた。寒いのは苦手だ。嫌いではないけれど。 住宅街の外れにある家までの道は、夜十一時を過ぎる頃には人気がほとんど無くなる。目立つ明かりは疎らな車とコインランドリーぐらいのもの。好き好んで一人暮らしに選んだ静かな町だけれど、毎日こうだと寂しくなることもある。 大学の授業と家庭教師のアルバイトの日々。単調なことが嫌い…
姉とはちょうど十歳離れている。父に似た姉と母に似た僕とは、性格もかけ離れている。それでも二十年間仲の良いと言える姉弟であれたのは、僕が素直に言うことを聞く従順な弟だったからだと思う。 「大学生なんてどうせ、時間持て余してばっかりでしょ?」 半年前に離婚した男と会って来るからと、そんな言い草で娘の知佳の子守を頼まれたときも、特に反論はしなかった。当然忙しい大学生だっているはずで、僕だって暇人と…
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