「遅い、遅いぞ武蔵!」 待ちくたびれた小次郎は、男の顔を見るなり声を張り上げた。 「いや~、悪い悪い」 無精ひげを生やした武蔵は、悪びれた様子など全くなさそ…
じめじめじめ。 すでに6月も終わりに近づいているというのに、窓の外は相変わらずの雨。 どしゃ降りではなかったけれど、1週間も雨が続いていれば気が滅入るには十…
休憩室は緊張感に包まれていた。 店長の機嫌がやけに悪そうなのだ。 普段から気分屋でワンマンなところもある彼だけに、その不機嫌さのありありと浮かんでいる表情は…
一週間つけてるだけで痩せるという、うわさのスーパーアブサンダーEX。 最近ウエストが気になるものの、運動嫌いな俺にはぴったりだった。 テレビでもあれだけ太っ…
奈良橋は、トップで快調に飛ばしていた。 38kmをすぎ、すでに2位以下を大きく引き離している。 よほどのことがない限り、彼の国際大会初優勝は間違いなかった。…
「自分の意思で始めたのなら、それは立派なことさ」 慶介の目は真剣そのものだった。 いや、今に限ったことではなく彼はいつもこうだった。 「でも学校で授業がある…
妻は料理が得意だった。 今夜もシェフ顔負けの料理がテーブルに並び、さっき食べ終えたところだ。 妻が食器を片付けるのを尻目に、わたしが食後の紅茶をリビングに運…
王国は未曾有の危機に直面していた。 突如として侵攻を始めた帝国軍に完全に不意をつかれ、王国側は体勢を立て直す間もなく敗戦を重ねた。 今まさに敵は王都にまで迫…
「夫と別れたいんです」 彼女がわたしのオフィスを訪れたのは、一昨日のこと。 今はテーブル越しに、その夫と二人ソファに座っている。 「だから、急になんだってん…
思った以上に仕事に手間取り、気付けば時計の針は次の日を示していた。 最近、こんな日が続いている。 そろそろ疲労もピークに達しようとしていたが、かといってなか…
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