４５秒で読める超短編小説

五輪の書

「遅い、遅いぞ武蔵！」 待ちくたびれた小次郎は、男の顔を見るなり声を張り上げた。 「いや～、悪い悪い」 無精ひげを生やした武蔵は、悪びれた様子など全くなさそ…

2007/08/03 01:49

梅雨明け

じめじめじめ。 すでに6月も終わりに近づいているというのに、窓の外は相変わらずの雨。 どしゃ降りではなかったけれど、1週間も雨が続いていれば気が滅入るには十…

2007/07/02 16:12

危険球

休憩室は緊張感に包まれていた。 店長の機嫌がやけに悪そうなのだ。 普段から気分屋でワンマンなところもある彼だけに、その不機嫌さのありありと浮かんでいる表情は…

2007/04/07 04:58

マグニチュード7

一週間つけてるだけで痩せるという、うわさのスーパーアブサンダーEX。 最近ウエストが気になるものの、運動嫌いな俺にはぴったりだった。 テレビでもあれだけ太っ…

2007/04/03 08:28

孤独なマラソン

奈良橋は、トップで快調に飛ばしていた。 38kmをすぎ、すでに2位以下を大きく引き離している。 よほどのことがない限り、彼の国際大会初優勝は間違いなかった。…

2007/03/30 11:52

正しい英語教育

「自分の意思で始めたのなら、それは立派なことさ」 慶介の目は真剣そのものだった。 いや、今に限ったことではなく彼はいつもこうだった。 「でも学校で授業がある…

2007/03/22 09:37

ふんわりタオル

妻は料理が得意だった。 今夜もシェフ顔負けの料理がテーブルに並び、さっき食べ終えたところだ。 妻が食器を片付けるのを尻目に、わたしが食後の紅茶をリビングに運…

2007/03/14 01:43

希望の小箱

王国は未曾有の危機に直面していた。 突如として侵攻を始めた帝国軍に完全に不意をつかれ、王国側は体勢を立て直す間もなく敗戦を重ねた。 今まさに敵は王都にまで迫…

2007/03/11 03:35

縁切りバサミ

「夫と別れたいんです」 彼女がわたしのオフィスを訪れたのは、一昨日のこと。 今はテーブル越しに、その夫と二人ソファに座っている。 「だから、急になんだってん…

2007/03/08 01:04

サービスステーション

思った以上に仕事に手間取り、気付けば時計の針は次の日を示していた。 最近、こんな日が続いている。 そろそろ疲労もピークに達しようとしていたが、かといってなか…

2007/03/04 01:31