2007年9月
「見てごらん、渉。怪奇月食が始まる」 言って夕凪が指差す先には、少しずつ欠けて行く真紅の月が浮かんでいる。 「そうか、今夜は月食だったんだ」 二人して瞳を輝かせ、暫し自然の神秘に見とれ
夕方、相変わらずの大雨の中帰宅した渉を、心配顔の母が玄関で出迎えた頃には、もうすっかり陽も暮れてしまっていた。 「随分と遅かったのね。裏の路地で土砂崩れがあったから、まさか渉が巻き込まれ
いつもならば美術館へは最短距離で辿り着ける裏の細い路地を通るのだが、この日はどうしても大通りを歩きたいからと言う夕凪に従い、あえて遠回りをした。 大通りは、買い物帰りの家族連れや老婦人
八月十日。その日は珍しく土砂降りの雨で、暇を持て余していた渉は、縁側から庭をぼんやりと眺めながら大きな溜息を落とした。 突風が雨粒をさらい庭の木々を激しく揺らす。 視線を門の方へと滑ら
突き当りを右に折れ、浅い石段を五十段ほど下ればもうそこは一面の砂浜で、すっかり群青に染まった空と碧海の境界線からは金の満月が顔を覗かせつつあった。 「渉、月だ!」 とたんに笑顔を輝かせ
夕暮れだと言うのに、8月末の風はまだまだ蒸し暑い。 ただでさえ今年の夏は猛暑で、庭の草花も、たった1日水遣りを忘れるだけで元気を無くすと言うのに、今日の暑さはいつにも増して厳しかった。 母
2007年9月
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