☆=☆☆☆☆☆<br>◎=☆☆☆☆<br>◇=☆☆☆<br>△=☆☆<br>▽=☆
◎DUNEデューン砂の惑星(Dune:PartOne)なんとまあ、今回のドゥニ・ヴィルヌーヴ版は『DUNE』5度目の映像化なのね。1984年のデイヴィッド・リンチ版しか知らずにきたからなあ。なるほど、夢から始まり、そこですべてが語られるわけね。で、惑星アラキスは、香料と砂蟲の星なのね。原住民にとっては幻覚をもたらす健康維持に欠かせない嗜好品てだけのものが星々をゆく者たちには必要不可欠なものだと、それでこの星を植民地にしたがり、香料に長年さらされたせいで瞳が青に変色してしまった原住民フレメンは抵抗して戦ってるっていうわけね。それと並行して、ティモシー・シャラメは謎の『言葉』を使えるように修行してるわけか。高貴そうな顔立ちだから、とっても雰囲気は合ってる。鍵になる伝説の救世主リサーン・アル=ガイブになって大領...DUNEデューン砂の惑星
△真実への旅路(TheWrongedMan)なんかつまんないなあ。撮り方が単調すぎるんだな。テレビだから仕方ないけど、22年も服役してるにしちゃあ、登場人物の年齢がほとんど変わって見えないのはまずいでしょ。判決を先に言ってもいいのかな?DNAの鑑定結果が出てから裁判を経なければいけないにせよ、半年も掛かるもんなの?日本でもかな?だとしたら、司法制度は非合理じゃない?真実への旅路
◎ウォルター少年と、夏の休日(SecondhandLions)ハーレイ・ジョエル・オスメントは見るからに好い子で、なんでこんな子が強欲のかたまりのようなキーラ・セジウィックのひとり息子なのかっていう出だしで、そこへもって偏屈のかたまりのような大叔父がロバート・デュバルとマイケル・ケインっていう展開はいかにもコメディの鉄則を踏んでるんだけど、まあ、おもしろかった。豚が一匹、犬たちに混じっていつもへこへこついてくるのも、愛嬌あるし。ウォルター少年と、夏の休日
☆竜馬暗殺(1974)初めて観たのは文芸地下だっただろうか?1980年代だったような気がするけど、よく覚えていない。とにかく、原田芳雄のかっこいいことといったら、ない。発声も演技もその独特さが際立ってて、松田優作が憧れて真似しようとしたっていうのは、とってもよくわかる。ぼくもご多分に漏れず『祭りの準備』や『君よ憤怒の河を渡れ』の原田芳雄をどれだけ真似したことか。ていうくらい、原田芳雄は影響力が凄まじく、役者としての破壊力があって、それがそのまま坂本龍馬の化身になり、幕末の志士たちってこんな感じじゃなかったんだろうかっていう気にしてくれる。もちろん、龍馬たちがええじゃないかの騒ぎに紛れて白塗りのまま出歩いたりしたかどうかなんてわからないし、たぶんなかったとおもうんだけど、そんなことはどうでもいい。原田芳雄の...竜馬暗殺
☆聖地には蜘蛛が巣を張る(عنکبوتمقدس)イラン、マシュハド。聖地なのかな?冒頭、こうある。人は、避けたいものと出会うものだ。そのとおり。いや、これは凄いそ。最初に登場した子供を残して朝まで商売に出る娼婦をおいかけてくから、あ〜彼女が危機におちいって証言しつつ、連続娼婦殺人事件を解明していくのかとおもいきや、あっさり廃墟のアパートで殺されちゃうとか、ありか?主人公メフディ・バジェスタニはそのあと出てくるんだけど、化粧が濃いかどうかの差しかわからず、同一人物かとおもっちゃうじゃん。そしてその娼婦つまり蜘蛛殺しの取材にきた女性記者が主人公なのね。予約してあるホテルで早くも女性差別を受けるんだけど、Gパンを履いてるのが体制への反感みたいな話なのね。町を浄化してる奴を警官が捕まえるか?妻は子供の「誰と戦った...聖地には蜘蛛が巣を張る
ゴースト・オブ・ミシシッピー(GhostsofMississippi)娘がベッドにお化けがいるといって泣きついてくる。部屋に入ると窓から出ていったと。パパの子どもの頃もお化けがクローゼットにいた、おばあちゃんがミシシッピーの古い歌を歌ってくれると、お化けは出ていった。それを歌ってと娘に頼まれ、ディクシーランドを歌ってやる。そう、映画の象徴になるのはここだね。お化け、つまり、人種偏見だね。全体にあざといけどね。ま、役者たちのわざとらしさとかはあんまり関係なくって、つまり、1963年のメドガー・エヴァース射殺事件の30年後に行われた公判をどう伝えるかっていうことが肝要なんだもんね。スザンナ・トンプソンと『推定無罪』を観てる。アレック・ボールドウィンはこの頃、かなりハリソン・フォードを意識してたんだろうね。映画...ゴースト・オブ・ミシシッピー
◎ボディ・バンク(ExtremeMeasures)追悼ジーン・ハックマン。実に、おもしろかった。脚本がよく練られてて、ひさしぶりに物語の展開に感心できる映画を観られたっていう感覚がある。ヒュー・グラントは21世紀に優しさとトロさに磨きが掛かってしまって、こういう活劇には似合わなくなっちゃったけど、いやいや、なかなかやるじゃん。反対に、ジーン・ハックマンはこの頃から正義をごりおしする悪役の印象が強くなってきちゃうんだけど、まあ、そんなふたりが共演するっていうのも、うん、おもしろかったな。伏線の張り方がうまく、ヒュー・グラントと恋愛関係にあるんじゃないか的な看護婦サラ・ジェシカ・パーカーも、FBIなのにジーン・ハックマンに操られてるデヴィッド・モースも、おなじくニューヨーク市警のビル・ナンも、家族の快復を願う...ボディ・バンク
△PLAN75(2022年)倍賞さん、上手いなあ。わざと下手に『林檎の樹の下で』を歌うんだけど、音程は外せないようでしっかりしてるのは微笑ましいけど、うらぶれた感じはよく出てる。カラオケのところと、佳境、PLAN75を受け入れて病院で安楽死をしかけるものの、結局できず、帰り道(どこへ帰るのか、アパートも出ちゃったから行くところがないんだけどさ)に夕陽を眺めながら歌うところなんだけど、枯れてる観が好いね。にしても、だらだらしてるなあ。つまんないなあ。フィリピン人の掃除婦のちょろまかし話はいらんなあ。ていうか、これ、生活保護をはなっから受け入れる人もいるわけで、そういう人については追いかけないのな。PLAN75
◎夜の鼓(1958年)はじめだらだら。有馬稲子、妖艶。金子文雄をかたくなに拒んでから、森雅之にせまるところ、凄い。からだが夜泣きしてる。三國連太郎が叩き通しに叩いたあと、でも愛しているからちから加減がある。だから顔を見ずに一刀両断する。顔を。凄い。森雅之を京都に追い詰め、新しいオンナと鱧を味わう祇園祭の中、月鉾の近くで斬る。見物人に、見届けるために来たのか。つきそいか。これはお上に届け出ている仇討ちだから騒ぐなという乳母、凄い。祇園囃子が流れる。斬る。効果音なし。凄い。夜の鼓
◇死と処女(DeathandtheMaiden)あれ?冒頭、シガニー・ウィーバーの袖無しのブラウスの下の黒いブラジャーが透けてたのに、ローストチキンをむしりとってワインをあけて胡座をかいて食べ始めてから、吹き降りのベランダに出るまでにブラジャーだけ外してる。雨に濡れて乳首が透けるところを撮りたかったのか、ほかに理由があるのか、どうせ洗面所でブラウスを脱いじゃって上半身は裸になっちゃうから意味ないような気がするんだけどなあ。女はみんな陵辱されたのは知ってたでしょ?なぜ言わなかった?話すとわたしたちの間にあいつの影が入ってくる。そらそうだろ。14回も犯されたわ、とか、そんなことをのちの恋人には話せんだろ。シューベルトの『死と処女』を強姦し続けた医者がかけ続けてて、その音楽が耳について離れなくなってるっていう設...死と処女
キリング・オブ・ケネス・チェンバレン(TheKillingofKennethChamberlain)2011年11月19日午前5時20分、ニューヨーク州ホワイトプレーンズでひきおこされた68歳の黒人の強制捜査事件だろう。映画では3人の警官の中の元中学教師だけが冷静で、古参のふたりは街に毒され、とくにガムを噛んでる警官が暴力的に描かれてるけど、まあ似たり寄ったりのことが起きたんであろうことはよくわかる。それにしてもこのおんぼろアパートの玄関のやりとりだけで80分ってのは、かなり冒険的な脚本だなあ。でも、そうか、舞台ならアリか。ケネスの独り言に誰かと会話してる、中に誰かいるとおもいこんだ警部補の緊急連絡のせいで、警備会社の電話越しの引き上げ要請は無視され、スワットまで投入され、駆けつけた姪の静止まで無視される...キリング・オブ・ケネス・チェンバレン
◇特捜部Q知りすぎたマルコ(Marcoeffekten)コンビのふたりが変わってしまった…。ニコライ・リー・カースがウルリッヒ・トムセンに、ファレス・ファレスがザキ・ユーセフに。ふてぶてしさと得体の知れない堪え性が妙に支え合ってる観があったのに、なんだか、これといって特徴の無いふたりになっちゃった。すくなくとも、ぼくはそう感じた。中身も、これまたトーンダウンしてる。煙草を吸わなくなったとかいってガムをしきりに噛み続けるウルリッヒ・トムセンがなんだかしょぼくれてるしね。まあ、なんていうのか、ロマのマルコが父親のもとへ辿り着きたいっていう心情と行動に絡んで、失踪した小児性愛者とされる役所の職員の真実を探求していくにつれ、アフリカの援助金の横領を調査していて罠に嵌められたのではないかっていう疑念が生じてくるのは...特捜部Q知りすぎたマルコ
愛欲のまぼろし(Orso)「ぼくにも経験はあるよ。相手を怒らせ、愛情をためす。自信がないからだ。ためす必要なんかないのにな」そうおもうけどなあ。眠ってる男の背中に落書き。「わたしたちには永遠と1日がある」よくわからん。佳境、行方知れずになり、留守電。「今は森の中かどこかにいて電話に出られないの。伝言を残してくれたら折り返すかも。永遠と1日のうちにね」姉は告白する。妹は死んだと。6か月前に橋から転落したと。橋の欄干に腰掛けてる不安定なとこはこの伏線か。愛欲のまぼろし
◎ドリーム・シナリオ(DreamScenario)剃ったんか、髪の毛を、ニコラス・ケイジ?ま、もともと薄いんだから、剃ろうと剃らまいとどっちでもいいんだけど、まあそんななりふりかまわないダサい大学教授であることが大切な映画だった。おもしろかった。ただし、佳境になるとちょっとつまらなくなる。これって『ミッド・サマー』の監督だったアリ・アスターが製作になってるせいか、どうも最後がつまんなくなるようにできてるのかもしれない。なんの変哲もない、まるで害の無い、居ても居なくてもどっちでもいいほど存在感の薄い進化生物学の大学教授であるからこそ、ニコラス・ケイジはそこらじゅうの夢の中にさまよいこんでも、なんの問題もない。ただ、特徴的なハゲ頭と眼鏡と髭と図体のでかさと弛緩したような歩き方が、そこらの無害なおっさんたちとは...ドリーム・シナリオ
◇ミッドナイト・マーダー・ライブ(OntheLine)メル・ギブソンのひとり舞台なんだけど、トーク・レディオとどうちがうのかな?まあ、鼻持ちならないDJっていう設定なんだから、ギブソンの熱っ苦しい演技もけっこう嵌まってる気はする。ウィリアム・モーズリーの情けなさも嵌まってるけど、見ているうちに「あ、これって」とおもいだした映画が2本ある。マイケル・ダグラスとデビッド・フィンチャーの『ゲーム』とグスタフ・モーラーの『THEGUILTYギルティ』で、まあそのふたつの作品をおもいだして組み合わせてるんだねって。ただまあ、ラジオ局だけが舞台っていう密室劇は、どうしても開放感がないし、低予算な感じがありありとしてきて、これまでのメル・ギブソンの映画っぽくないなあって気もしちゃう。ミッドナイト・マーダー・ライブ
◇AGHOSTSTORYア・ゴースト・ストーリー(AGhostStory)なんか淡々とした物語で、自分ケーシー・アフレックが死んだあと、妻ルーニー・マーラがどんな人生を送るのか見つめるだけっていう、それでまた忘れ去られてゆくだけっていう、でもじつはそんな存在は自分ひとりだけじゃなかったっていう、なんだか淋しすぎるけれども穏やかな話だったような気がする。それくらい、ぼくにとっては、印象が薄かったなあ。AGHOSTSTORYア・ゴースト・ストーリー
悲劇の将軍山下奉文(1953)なるほど、たしかにシンガポール攻略ののち、すぐに山下奉文は牡丹江に追いやられてるなあ。3年ぶりの転任もフリッピンだからなあ。それにしても、この映画に出てくる山下は優しいなあ。記録写真だと、もうすこし暴れん坊な感じで、パーシバルとかと交渉してるけどなあ。まあ、早川雪州だから、仕方ないのかな。それにしても、みんな若い。岩崎加根子は、焼け出された女学生の役だけど、面影があるだけでまるで別人みたいに若いなあ。信欣三もそうで、幼い息子と植えながら逃げる若いお父さんの役なんだけど、若すぎる。でも、このあたり、フィリピンの密林のところなんだろうけど、大泉撮影所からすぐの平林寺の林にしか見えないなあ。佐伯清の指示なのか、それとも音楽プロデューサーでもいたのか、ベルリオーズの「断頭台への行進」...悲劇の将軍山下奉文
◎トールキン旅のはじまり(Tolkien)母親(ローラ・ドネリー)の突然死によってバーミンガムのキング・エドワード高校に転入したとき、ラテン語の教師に「トールカイン」と呼ばれ、それを訂正することで鬱陶しがられるが、苗字をまともに呼ばれたことのない僕にはその気持ちはよくわかる。もっとも僕の場合、チョーサーの詩は暗記してなかったけどさ。友達になったやつがいう。「もし僕が棒を手にこう言ったら?僕はケーキを食べすぎた、君たちはよせ。これが親の本質だ。われわれは食べたが子供はやめろ。ケーキは愉しいことの比喩だ」そしてかれらは、会員制の高級カフェで自分にとっての棒とはなにかという談義に入る。なるほど、アタマの良い領家のがきんちょらしい日常だな。僕の高校時代とはまるでちがう。ぼくらは喫茶「杉」に入り浸ってただけだもんな...トールキン旅のはじまり
◎ホビット決戦のゆくえ(TheHobbit:TheBattleoftheFiveArmies)もうすこし他に物語の結び方はなかったろうかっていう感じがする。前作『ロード・オブ・ザ・リング』と似たような展開っていうか、ほぼおなじ、崖にへばりついた城の攻防という展開で、そう、第3部にその戦いが集中するという展開で、こりゃあちょっときついなって気がした。もちろん、特撮はたいしたものだし、戦いそのものの迫力はいうことないんだけど、でも、リチャード・アーミティッジ演じるドワーフ王の黄金に目が眩んだことへの悔悟と人間性の回復に重点が置かれてしまった分、マーティン・フリーマン演じるホビットのビルボ・バギンズの影が薄くなってしまったのは、なんだか物足りなさを感じちゃうけどね。ただまあ、なるほど、指輪がどうしてビルボ・バギ...ホビット決戦のゆくえ
◎ホビット竜に奪われた王国(TheHobbit:TheDesolationofSmaug)ピーター・ジャクソンの三部作の作り方は、いつもおんなじなんだろうか?『指輪物語』でもそうだったけど、この『ホビット』でも、第一部だけを独立させておいて、第二部と第三部は上下巻になってる。まあ、最初から三部作にするんだってことがわかってたら、そうするのが妥当なのかもしれないけどね。ただ、おなじといえば、城の作り方なんだけど、前の『指輪物語』でも山の斜面と谷を利用して正面に巨大な城壁を築いて、あとは地下や山の上に城を築いてる。これがどうもなあ。おもいだすのは『スターウォーズ』の未完成デザインのデス・スターで、これを叩き潰すときはいつも中に突入して爆破する。この『ホビット』でも『指輪物語』とおなじような城にしちゃうのは、ち...ホビット竜に奪われた王国
◇ホビット思いがけない冒険(TheHobbit:AnUnexpectedJourney)前作の『ロード・オブ・ザ・リング』がおもっていたよりも面白かったために、期待値が高くなっていた分、落胆も大きくなった。たしかに、0マーティン・フリーマンは好演しているし、イアン・マッケランはその魔法使いの役柄を自分のものにしてるけど、どうにも散漫な印象を受ける。冒険させるために仕組まれた冒険ってな感じで、またいえば、前作よりも旅の目的が小さすぎる。もちろん、ドワーフの王国を再建するといのは決して小さな目的じゃないんだけど、でもまあ、前作は世界そのものを救うという究極の目的があった。その分、小さいかなと。また、ドワーフの王そのものに傲岸不遜な性格をもたせてしまったためか、ちょっと魅力が乏しいというのも影響してるような気が...ホビット思いがけない冒険
☆陪審員2番(Juror#2)この作品がなんで劇場で公開されなかったのか、わからない。すこぶる、おもしろかった。ニコラス・ホルトの、自分が実は過失致死させてしまったんじゃないか、真犯人は自分で、この事実を話せば裁判は逆転無罪になる、でも自分と妻子を守るためには事実を話すわけにはいかない、ならばどうすればいいのだろう、そうかこの轢き逃げ事件を無罪にしてしまえばすべてあいまいなままになるのかもしれない、という心理サスペンスがぎりぎり迫ってきて、いやまじ、ほんとに熟練の演出で、上手な映画だった。ニコラス・ホルトを追い詰めていく検察官トニ・コレットも冷静ながらも同時に耐えがたいほどの焦慮を見せる演技で、じつに好い。これが『十二人の怒れる男』とちがうのは、無実の罪を着せられているという設定はおなじながらも、良心的な...陪審員2番
◇林檎とポラロイド(Mlla)ほ~『スカボロー・フェア』から始まるのがちょっと意外だった。アリス・セリベタリスがバスの中でいきなり覚醒するのと同時に、記憶喪失になってるのにも気がつくっていう出だしは好い。で、記憶回復プログラムを遂行してゆくうちに、ダンスホールに行って、酔いどれて、誰か誘ってトイレでその場限りのセックスをしろと、まあ、つぎつぎに指令が下ってくるんだけど、こんなことで記憶が回復するとはおもえない。それにしても、洋画はほんとにトイレでセックスする場面が多いなあ。淡泊な映画なんだけど、その単調さは飽きてくる。つまんないなあとおもうこともしばしば出てくる。ちなみに、林檎は記憶に効くらしい。なるほど、それで食卓に林檎が出されているのか。これ、ほんとに記憶喪失だったのかどうか、ほんとはなにもかもおぼえ...林檎とポラロイド
◇フリークスアウト(FreaksOut)サーカスに、いきなり爆撃がある。すごいCGの合成。圧巻だな。映像もだけど場面のつなぎ方がまた凄い。フェリーニの『道』をおもいだすなあ。はじめの音楽も、ニーノ・ロータっぽいし。けど、あとはそうでもないんだけどね。それにしても、デザインが秀逸だ。ピアノのデザインひとつからして違うなあ。ああ、しかし、そうかあ。イスラエルっていう名前のユダヤ人が仕切ってるアルビノの虫使い、磁石人間、怪力狼男とその彼女になる狼女、電気少女……。これ、サーカス団や、せむし男の仕切っているパルチザンもそうで、つまり、この映画そのものが「不完全な悪魔の村」ってことなのか。つまり、畸形人間の物語なわけだね。江戸川乱歩をおもいだすけど、それはさておいても、ひとつひとつの場面や設定はおもしろい。けど、全...フリークスアウト
キラー・コンドーム(KondomdesGrauens)公開時は、観られなかった。観たかったんだけどね。なんといっても、この怪物コンドームのデザインが、エイリアンのH・R・ギーガーってのがまじらしい。すげえ~とはおもいながらも、どれだけつぶさに観察しても、なにもギーガーである必要はないな。しかしまあ、この手の物語ってのは、誰でもおもいつくんだけど、たいがいは予算がないとか、冗談はさておきってなことになって中止になる。この作品は、それをやっちまったところに価値を見いだせる。さて。捜査を担当した32センチのペニスを誇るニコチン中毒の刑事のもとへ、オクラホマから容疑をかけられている女子大生の両親がやってくる。「娘に何があったか話してもらおう」「ニューヨークの薄汚、い連れ込み宿で、教授のペニスを噛み切った。残念だが...キラー・コンドーム
◎すずめの戸締まり新海誠が神代史を好きなんだなあってことは、今回もよくわかったし、ぼくもそうだから登場人物の名前から舞台から物語にちりばめられた言葉や名詞はとても嬉しい。それと、ドラえもんのどこでもドア。魔法少女まどか☆マギカのキュゥべえ。砂の惑星の砂虫・サンドワーム、あるいは、もののけ姫のディダラボッチ。千と千尋の神隠しの廃墟、魔女の宅急便のルージュの伝言、ETの自転車もおもいだしたけどね。ま、スウィートメモリー、夢の中へ、卒業、バレンタイン・キッス、けんかをやめて…とか、ぼくの年代にはしみじみわかるわ。ま、それもそうだけど、新海誠、やけにキレがよくなってる気がした。筋立てもそうだけど、やけにテンポが良い。廃墟がでかすぎないか?って感じはあったし、東日本大震災をここまで出してくるのかあってのはちょっとび...すずめの戸締まり
◇オッペンハイマー(Oppenheimer)とんでもなく評価が高いけど、ちょっとふしぎだ。これまでのクリストファー・ノーランの作品の方がおもしろかった気がするんだけどなあ。まあ、公聴会にいたるまでの半生を描くのに、時間をこれでもかってくらいに交錯させるのはいつもどおりの構成なんだけどね。キエミリー・ブラントがリアン・マーフィと連れ立って遠乗りに出た先で、こんなふうに前の夫の話をする。「彼はスペインへ」「戦うため?」「旅団に加わってね。そして塹壕から頭を出して撃たれた。思想のための犬死」「意味はある」「私たちの未来を犠牲にしてファシストの弾を一発止めた。無意味でしかない」端的だなあっておもった。ただ、アメリカ人にとって日本人はおまけなのか?って感じがした。ロスアラモスの理論部をひきいてほしいとキリアン・マー...オッペンハイマー
◇レイニーデイ・イン・ニューヨーク(ARainyDayinNewYork)中身と関係のないミートゥ・スキャンダルで、アメリカでは上映中止になったとかいう、妙ないわくつきの作品になっちゃったね。そんなことも関係してるのかどうか、ウディ・アレンにしては評価が低い。まあ、実際のところ、あんまりおもしろくなかったかも。結局、カルトな映画監督、プロデューサー、人気俳優の3人からいっぺんに言い寄られるエル・ファニングとティモシー・シャラメの恋のなりゆきの物語なんだけど、出だしのやりとりは軽妙だ。でも、エル・ファニングの超ミニがやけに目につく。こういうところが、ウディ・アレンの余計なことまで連想させちゃうのかなあ。くわえて、エル・ファニングは記者志望の大学生なんだけど、男に言い寄られると子宮が身もだえし始めるとかで、「...レイニーデイ・イン・ニューヨーク
◎マディソン郡の橋(TheBridgesofMadisonCounty)つまり、4日間の濃密な恋の物語というだけで、とりたてて斬新な撮り方をしているわけでもなければ、ものめずらしい恋というわけでもない。いつイーストウッドが歯を噛みしめてマグナムをぶっぱなすんだろうとおもってたら、最後まで怒鳴ることすらなかったっていうのはくだらない冗句だけど、まあ、今回は監督だし、メリル・ストリープの目線だしってこともあって、イーストウッドは単なる相手役に終始してる。それにしても、メリル・ストリープは、イタリアで結婚適齢期までくすぶってて、ちょうど戦争で村へやってきたジム・ヘイニーにくっついてアメリカに渡るんだけど、摩天楼の都会を夢見てたのが、だたっぴろいだけのアイオワの片隅に住まわせられて、子どももふたりこしらえて、ただ...マディソン郡の橋
◎ライフ・オブ・デビッド・ゲイル(TheLifeofDavidGale)性的異常者に味方することで有名とされる記者をケイト・ウィンスレットが演じてるんだけど、あいかわらず性格のきつそうな演技だ。これもまたあいかわらず露出をしぼった渋い画面。気持ちよく影が黒に潰さアラン・パーカーアラン・パーカー。ミシシッピー・バーニングをおもいださせる不気味な迫力だなあ。刑務所の中を案内されるとき、こんなふうに言われる。さすが、アメリカだ。「ここは日本庭園だ。コインを投げ込まないでくれよ」ちなみに、ケビン・スペイシーは、ジャック・ラカンの言葉を引用して講義をしてる。「夢想は非現実的でなければならない。実現するとたちまち興味が失せてしまう。生きるためには夢は決して叶えられてはならない。我々が欲するのは、それではなく、それの幻...ライフ・オブ・デビッド・ゲイル
フローレストラウマを抱えた女(HisFatalFixation)ストーカーもここまでくると、めちゃくちゃだな。ストーカー被害に遭って、PTSDを発症したせいで幻想に苦しむのもよくわかる。感情の抑制が利かなくなって、他人に対して攻撃的になるのもほんとにわかる。けど、深い仲になった相手の妻に勘違いの怒りをたぎらせ、相手の家に乗り込んで花束をたたきつけて、ちからになれるとおもってたとか叫ぶのはちょっとなあって話だ。あの仕事が大好きなの、居場所がなくなると困るの、とか言うのも、この脚本、どうかとおもうな。それに、ストーカーになった男、そのときに殺された彼氏、あらたに出会って告白してくる男、妻と疎遠になってるのかどうか微妙な医院のオーナー医、最後につきあうことになるマンションの管理人。ちょっと相手が多すぎないか?フローレストラウマを抱えた女
◎海の淵(LandkrimiTirol:DasMädchenausdemBergsee)なんとなく感傷的なギターのメロディが好いなあっておもってたら、どんどんと人間関係の深みに嵌まっていく。そんな映画だった。ミリアム・ウンガーっていう監督も、パトリシア・アウリツキーという女優も、とにかく地味だ。ただ、物語は決して地味ではなくて、湖に重しを入れられたリュックを背負わされて沈められた売春婦の存在意義みたいなものを探っていくんだけど、この相関図がなんともいえない。相関関係は、サッカーの監督で、かつ、町の名士がいて、とうに離婚してるんだけど、こいつを父親に持った女刑事パトリシア・アウリツキーが捜査をする過程で徐々に知れてくる。むなくそが悪くなる関係で、どう書けばいちばんわかりやすいんだろう?パトリシアの実家には、...海の淵
帰らざる日々(1978)懐かしい。たぶんそうなんだろうけど、藤田敏八の描いてきたこういう青春時代のやるせなさってのは、田舎の高校生とか地方出身の大学生には刺さるもんがあったんだろうなあ。それにしてもなんつーか、自主制作映画の35ミリ版っていうのがなによりしっくりくるかなあ。喫茶店に掛かるのは『旅の宿』だが江藤潤が不良に見えない。映画館は『日本侠客伝』で『唐獅子牡丹』が流れ、朝丘雪路の経営するスナックで掛かるのは『傷だらけの人生』だ。江藤潤の家、むかしの町家だなあ。向かって左の戸を開けると通り庭。入って右手が江藤潤の部屋。浅野真弓を手籠めにしようとしたとき、浴衣の足元から覗き込むようなアングルで下着を撮るんだけど、趣味の良くないカットながら白い下着ってのがなんとなく当時を匂わせる。しかし、当時の喫茶店はええ...帰らざる日々
ゴッド・セイブ・アスマドリード連続老女強姦殺人事件(QueDiosnosperdone)いやあ、かなり気を入れて見ちゃったわ。老女の強姦殺人とかって、心の底から見たくないし、あっちゃいけないものだし、もう、そんな映画とか見たくないはずなんだけど、見ちゃった。で、いやまあ、腕白小僧がそのまま刑事になったロベルト・アラモはまあありがちな人間で、奥さんと別居してるもんだから美人の娘マリア・バリェステロスとふたり暮らしなんだけど、この禿げオヤジが好い。で、どもりの相棒アントニオ・デ・ラ・トーレなんだけど、まじめだとおもってたら冷静スープを持ってきてくれた清掃係の女性が自分に気があると察するや、うしろから抱きすくめ、強姦まがいの姦淫をしかける。まじかよって話で、強姦殺人の物語で、犯人を追いかける刑事にそれはまずくな...ゴッド・セイブ・アスマドリード連続老女強姦殺人事件
◎デビル(Devil)おもしろかった。原案がナイト・シャラマンだそうで、なるほど、エレベーターに罪を犯した5人の男女が乗り込んでて、実はその中に姿を変えた悪魔がいて、同乗してる連中をつぎつぎに斬殺していくっていう筋立てはそれだけでも充分におもしろいし、エレベーターのあるビルの上から自殺者が出ることでそれが悪魔を呼び寄せる儀式になってるっていう出だしもまたいい。この自殺者が実は他殺なんじゃないかって直感する刑事クリス・メッシーナもまた因縁めいてて、5年前に奥さんと子どもをひき逃げされてて、その犯人が実はエレベーターに乗ってるってのもいい。そう、ひき逃げが罪で、その贖罪をさせられるために悪魔に呼ばれたっていう感じになってるんだね。信心深い警備員ジェイコブ・バルカスが監視カメラからすべての出来事を見守ってて、お...デビル
◇ラスト・フル・メジャー知られざる英雄の真実(TheLastFullMeasure)懐かしい、ストリート・オブ・ファイヤーのお姉エイミー・マディガンじゃん。エド・ハリスと夫婦そろって出演してるのか。ま、キャストはいい。ピーター・フォンダの遺作らしいけど、そうか、かなりむくんでるもんね。クリストファー・プラマーもこれが実写の最後の作品だそうで、なんだかね。ただまあ、ウィリアム・ハートといい、サミュエル・L・ジャクソンといい、キャストはそろえてる。セバスチャン・スタンとアリソン・スドルの若夫婦を除けば、有名どころを揃えてきてるんだけど、惜しいかな、脚本が弱いね。アビリーン作戦の全容がまるでつかめない。だからおもしろくないんだな。ベトナム戦争も森の一隅だけで話は進んで、ここと交互に1999年の物語が進行するんだ...ラスト・フル・メジャー知られざる英雄の真実
ハングマン(Hangman)アル・パチーノの愛車ビュイック・リヴィエラがカッコいい。音楽もありきたりだけど不気味さが好い。連続殺人だとおもわせながら、実はアル・パチーノの過去の事件が絡んでるのが徐々に明らかにはなるものの、SMのレズビアンの片割れが殺されたり、教会で十字架に磔にされて豚の皮を被せられて窒息死させられたりと、あれこれ、派手なところに惑わされる。つまり、犯人に乗せられるわけだね。画面の中、道路や壁に時刻が表示されてるのはなぜかとおもってたら、そうか、犯人は毎晩11時に殺しをしてるから、その前後の時間だけ観客に報せてくれてるわけかってなことはわかるんだけど、これ、過去の事件とおなじ時刻だとかいう因縁が欲しかったな。途中までは、アル・パチーノとカール・アーバンとブリタニー・スノウの3人だけが動いて...ハングマン
スフィア()たしかにそのとおりだといってしまった。サミュエル・L・ジャクソンがダスティン・ホフマンにこう言う。「考えてみれば妙だ。(将来造られるアメリカの宇宙船がブラックホールに突入して50年前の太平洋に突入したという)彼の説は、タイムトラベルだ。我々は帰還して話す。その方法や危険性についてな。ではなぜ50年後の宇宙船が未知の突入と言う?なぜ知らない?それは我々が話してないからで、話してないのは海上に戻ってないからだ。つまり、ここで死ぬんだ。引き算の理屈だよ。あの球体の中に入れたら」なるほど『アビス』と『2001年宇宙の旅』と『エイリアン』を足して割ったわけね。水の球体がモノリスで、ジュリーなるコンピュータの解読による宇宙人の言語がハルなのね。ま、サミュエル・L・ジャクソンの名前がハリーだし。しかしそうか...スフィア
ザ・クリミナル合衆国の陰謀()ケイト・ベッキンセイル、好演してるけど、この役の記者は、ちょいと頑な過ぎて、身を入れて観るのはためらうなあ。『君は譲れないものが多いな』そのとおりだ。囚人仲間とベッドのとりあいをして叩きのめされたときに弁護士から言われるんだけど、つまり、面会室でセックスした夫に付き合ってる女がいるのかと質し、ここでも揉み合い、抱いてくれてありがとうと吐き捨て、もうめちゃくちゃ殺伐としてきたときのベッドのとりあいなんだけど、まあ脚本の畳み掛けは上手いとはいえ、どうもねえ。なるほど、通学バスのシーンの中で息子が斜め後ろに居る場面は伏線だったのか。ザ・クリミナル合衆国の陰謀
CHASEチェイス猛追(LastSeenAlive)ガソリンスタンドで給油中に水を買いに行った奥さんが誘拐されたかもしれないっていう手出しなんだけど、それに気づいて行動し始めるまでの段取りが長くて…。それはいいとしても、冒頭の刑事が容疑者らしき爺さんをちからづくで口を割らせようとするのをなんで前置きしたのかわからん。つか、後半、まるきり違う話じゃん。わけわからんヘロインの精製アジトみたいなところに潜入して、悪人としかおもえんやつだけどおもわず撃ち殺しちゃったりするって展開はどうよ?まあ半年前に浮気してたオトコがそこのボスだったてな展開だったはずなんだけど、その恨み辛みはなんも触れないまんま銃撃戦になって、死んだとかいわれて埋められてたはずの奥さんはどーなってんだいって話で、いやもう破綻してはいないけど、お...CHASEチェイス猛追
◇放課後(1973)知多東宝で宣材を配ってた。鮮明な記憶だ。この作品の価値は世田谷線の動画かなあ。あとは当たり前のことながら昭和58年の風物がそのまんま観られるってことくらいかなあ。それにしても、主人公はいったい誰なんだろえね。栗田ひろみはどうしても物足りないし、かといって地井武男と宮本信子の新婚家庭に喫茶店キャンディのママ宇津宮雅代が絡んだ4角関係っていってもなあ。てなことを考えるだけの映画だったのかなあ。宣材をもらって、それをアルバムにまで貼って、いつか観られる日が来るのを愉しみにしてたんだけどなあ。50年待ったのになあ。放課後
ザ・ハントナチスに狙われた男(Den12.mand)1940年4月9日、ナチス占領下のノルウェーに、ヒトラーがノルウェー要塞を築いたっていうクレジットから始まる。で、3年後の3月27日、トフテフィヨルドでイギリスから来た工作船が拿捕される。そこから1日刻みで展開していくんだけど、12人の地下活動家が追われて11人が捕まり、民間人に助けられた男がイギリスに報告に行くためにスウェーデンまで逃げて行くっていう話だ。寒そ〜。けど、氷の海峡を脱走した男が生きていると信じて追いかける親衛隊の少佐が根性のかたまりで氷水に20分浸かってても死なないっことをみずから証明するくらいだ。すげえ信念。『ドイツ軍はオーロラも盗んだかな?』『そんなのむりよ。隠れるところはいっぱいある』地図好きな少女に励まされる場面が好い。けっこう人...ザ・ハントナチスに狙われた男
シビル・ウォーアメリカ最後の日(CivilWar)物語に気持ちを入れるまで時間が掛かる。だってとっくに内戦が始まってるから。テキサスとカリフォルニアが西部同盟とか組んで叛乱を起こして、フロリダが与しかけてるのはテレビの大統領による投げ掛けでわかるが、それだけだ。音楽の扱い方がどうもしっくりこない。現実のポップスを流すことの効果はわかるけどどうもね。国連の支援団体の女の子がめちゃくちゃ綺麗だ。とかおもってたら、後半、ゆるい音楽とスローモーションが始まり、戦火の爪痕を点描するのを観て、わかった。これ『地獄の黙示録』なのね。狙撃兵に、相手は誰だ?と尋ねたとき、さあにと、やつらが狙ってくるからおれたちも狙うと答えてライフルをかまえたとき、確信したわ。でも、記者が戦場に立つときの心構えとして、ヘルメットをしないって...シビル・ウォーアメリカ最後の日
◇ブラックライト(Blacklight)FBIの中でも特殊諜報員っていうのか、とにかく窮地に陥った仲間を救出するだけを仕事にして、これまでに一度も相手を殺したことがないっていう、なんだかむりっぽい設定の役柄なんだけど、なにを演じてもリーアム・ニーソンは説得力がある。すごい存在感だな。つっても、たいがいの作品は、過去になんだかとてつもない戦いの日々を送ってきた男が引退するか引退間近になって事件に巻き込まれるんだけどね。で、今回もおんなじ。後半、旧い仲間が殺され、ネタを横取りした新聞記者が殺され、さらに娘と孫が行方不明になってくると、がぜん、おもしろくなる。ブラックライト
☆海峡(1982年日本142分)staff原作/岩川隆『海峡』監督/森谷司郎製作/田中友幸、森岡道夫、田中寿一、森谷司郎脚本/井手俊郎、森谷司郎撮影/木村大作美術/村木与四郎衣裳/川崎健二音楽/南こうせつ主題歌/南こうせつ『友ありて』作詞:阿木燿子、作曲:南こうせつcast高倉健三浦友和森繁久彌吉永小百合大滝秀治笠智衆藤田進伊佐山ひろ子☆1985年(昭和60年)3月10日、青函トンネル本坑全貫通無性に、この映画が好きだ。世の中にはいろんな人がいて、ただトンネル掘ってるだけじゃねーかといわれそうだけど、でも好きなものは仕方がない。森谷司郎の作品では『八甲田山』と双璧なくらい好きだ。だから、数年おきに無性に観たくなる。まあ、そういう映画があってもいいわけで、たぶん、ぼくの中でいちばん感受性のつよい時期に観た映...海峡
◇札幌オリンピック(1972)最初のカット、頭上からジャンプがフレーム・インしてきたときは、びっくりした。けど、佐藤勝の音楽はやけに明るくてイメージがきつすぎた。笠谷幸生とジャネット・リンは懐かしかった。でも、これって当時を懐かしむ人間だけの愉しみなんだろうなあ。氷の上をエッジが擦っていく音がやけに耳に残るのは、どういうことだろう。エッジはスケートだけじゃなく、スキーもそうで、無音の中に効果音のようにぎしゅぎしゅ入ってくるのはちょっと疲れた。篠田正浩の興味はどうやら選手よりも会場の整備員や報道班員といった裏方にあるようで、選手たちの買い物やファッションまで執拗に追いかけている。札幌の歴史もクラークまで遡って語られたりと、監督の興味が延々と撮されるのはどのドキュメントもおなじだが、詩歌の朗読めいたナレーショ...札幌オリンピック
◇日本の夜と霧(1960)ほぼ舞台劇なんだけど、台詞の失敗くらいじゃNGにできないほど予算がなかったのか、それとも大島渚は「それがリアルなんだ」というんだろうか?で、戸浦六宏、哲学論争で気張る。「歌や踊りがマルクス主義とどういう関係があるんだ?ロシアやスイスの民謡を女の子と歌うことが革命となんの関わりがある?」映画の中でたったひとつほっとできた台詞なんだけど、この舞台劇のような大仰な台詞と長回しは、つまり、撮影期間が足りなかったってことね?長回しだし、フィルム不足だし、台詞を噛んだくらいじゃあNGは出してられないしね。しかし、この学生運動と戦前の青年将校たちはどうちがうんだろう?「宗教なら信じるか信じないかの二者択一でいい。しかし、政治というメカニズムの中ではあれかこれかという押しつけはよくないとおもう。...日本の夜と霧
◎にっぽん泥棒物語(1965)植木照男、がんばったね。昭和40年の作品だからカラー化が勧められてはいたもののまだまだ未熟なところもあったし製作費も嵩む頃なんだけど、この作品については、白黒が活きてる。松川事件のニュースがほんの一瞬挟み込まれるときに、なんの違和感ないからだね。ま、それはそれとして、当時の松川あたりをおもえば夜ともなれば真っ暗だったろうし、泥棒の林田(三國連太郎)が9人の真犯人とすれちがったときに顔がわからなくするためには画面を暗くしておく必要があったのかもしれないんだけど、やっぱり暗くてよく見えない。くわえて福島弁がわからないから、台詞がかなり聴き取れない。でもまあ、この二重苦がありながらも、おもしろかった。さすが山本薩夫。三國連太郎が花沢徳衛の仕入れてきた松川事件の容疑者が10万円の保釈...にっぽん泥棒物語
◇動乱(1980)昭和7年4月仙台から始まる。姉の手紙で脱走する展開は『銃殺』とほぼ同じ。脱走兵の永島敏行の姉が吉永小百合なんだけど、身売りサせられそうな貧農にしては小綺麗だし、訛ってないのが気になるなあ。そして皇道派の五一五事件。皇道派かと問われる高倉健は「自分は軍人であります。政治に興味はありません」というが、これに対して小池朝雄が「国民が豊かになるにはまず国家が豊かにならにゃならん。そのためには強い軍隊が必要だ」という。まあ、定番の理屈だね。満洲朝鮮国境にて匪賊と戦い、陸軍の横流しした武器で負傷した部下が「日本帝国陸軍の兵隊はいったい誰のために死ぬのでありますか?」と叫ぶにおよび、高倉健は手紙をしたためる。『國軍の御威光は今や地に堕ちたり。我が隊にはもはや医薬品なく、弾薬なく、食糧もなく、あるは兵士...動乱
◎帝銀事件死刑囚(1964)大学の時に初見したんだけど、そのときの印象とさほど変わらない。山本陽子が生き残りの女性事務員の役で、かわいすぎる。笹森礼子と出てくるんだけど、もちろん、ふたりとも綺麗なんだけどさ。ま、それはさておき、熊井啓はこれが初監督作品だそうな。ちからがあるなあ。事件で使用された劇薬はアセト・シアン・ヒドリンといい、これは陸軍の特殊研究所で取り扱われていたらしい。神奈川県川崎市稲田登戸の陸軍第九研究所、通称登戸研究所で、もちろん、一般人はこの存在はまず知らない。従って、すくなくとも画家の平沢貞道には、この劇薬を入手する手だてがない。ここに関係していた傷痍軍人の少佐を演じた佐野浅夫が上手に填まってる。見事なもんで、731部隊の生き残りっていう設定なんだけど、性根の据わった感じがあって好い。佐...帝銀事件死刑囚
◎日本万国博・Expo'70(1971)日本万国博(DocumentaryFilm"JapanWorldExposition,Osaka1970)というのが、正式なタイトルなのかどうかよくわからない。クレジットでは『日本万国博』とだけ、ある。各国の風物詩のような点描から大阪天理丘陵の整地から始まり太陽の塔の顔がつけられてゆゆく家庭を経て、丁寧な手仕事による仕上げの様子、そして開会時の空撮。堂々とした正攻法の演出は、いかにも谷口千吉。くわえて、金管が鳴らされる音楽がなんだかやけに好ましい。石坂浩二のナレーション「1970年3月14日、アジアで初めて開催された日本万国博覧会の開幕です」ありきたりだが、のちに編集された『記録映画日本万国博』のナレーションはもうすこし詳しい。ほお、香港は独立参加なんだね。このとき...日本万国博(Expo'70)
◎絞殺(1979)「…やってしまおう。…おしまいだ」西村晃が乙羽信子に言う。昭和五十年代の非行や家庭内暴力は戦後3番目の多さだったらしい。町内会や婦人会など、まわりの好奇な目に見られ、そのストレスに耐え切れず神経を病んでしまう。つらいだろうなあ。小金井から千住に越してきて、営んでいたスナックも移転させた。でも、変わらない。教師役は戸浦六宏。当時、いやらしい教師役は戸浦六宏か穂積隆信かっていう印象がある。ふたりとも憎々しげな演技が上手だった。戸浦さんの方がずる賢く、穂積さんの方がお人好しで小心なぶん卑怯さや卑屈さがよく表れてた。ちゃぶ台、茶だんす、家具調テレビ、レコード・コンポーネント、サイドボード、水割りセット、洋ダンス、ガラスケース入りの唐子人形、親のむつごとの声が生々しく漏れ聞こえる明かり障子とモルタ...絞殺
△積木くずし(1983)いやまあ当時は不愉快で見る気もなかった映画なんだけど。非行と家庭内暴力はこの頃がピークだったのかもなあ…。つか、なんだか、テレビサイズだなあ。渡辺典子が不良に走る理由が後半にならないと見えてこないのと、前半はケンカしたりシンナー吸ったりするからってそれほど問題をかかえた非行少女には見えないのが、物語がわかっているだけに外された感じがする。ことに非行に走りつつも、母親のいしだあゆみには恋の悩みを泣いて相談するくらい良い子に見えるのがまだるこしい。途中、錦糸町の駅前を深夜にふらついて警察に捕まるとかゆーのも中途半端な気もするし。まあ、藤田まことが京都ロケに行ってるときにいしだあゆみからちからづくで金をせびろうとするところから徐々に凄くなってくるんだけどね。それにしても『絞殺』もそうなん...積木くずし
◇第五福竜丸(1959)今見ると、なんか身が入らない。まあ、新藤兼人の特徴のひとつなんだろうけど、やっぱりどことなく明るい。宇野重吉のとぼけた風味がそう感じさせるのかもしれない。いや、本人はいたって大真面目に演技してるかも。ま、そんなことはいいんだけど、ピカドンを見たときの船員たちの、最初の、見世物を見るような反応がやけにリアルだ。特撮が当時としては妙に上手で、これは『ゴジラ』なんかもおなじことを感じる。徐々に被曝状況がわかってくるのとともに、宇野重吉とその妻の乙羽信子ら家族たちに焦点が絞り込まれていくんだけど、ここもまた悲劇を煽るような演出はない。どことなくあっけらかんとした悲劇で、これもまたいい。ただ、主張されるところは自明だからことさら声を大にする必要は無いって新藤兼人は判断したのか、宇野重吉演じる...第五福竜丸
◎日本列島(1965)日本はアメリカに255の基地を提供している、ていうナレーションから始まる。これだけでも十分に衝撃的だ。物語は、CIDのリミット曹長が殺されたことから始まる。死体が、否も応もなくアメリカに運ばれる。これに対して日本の警察は憤るが、CIDもまた困惑する。この不可思議な事態について、宇野重吉はいう。「米軍に圧力が掛かった事件ですね」では、圧力をかけたのは誰か。上層部か?「いや。軍じゃないでしょうね。もっと強大な、おそらく…」捜査会議は揉める。刑事は歯嚙みする。「被害者は日本国内で死んでるんだ、われわれにも調べる権利がある。占領下ではない。日本は独立国としてお互いに協定を結んでるんですからね。それを無視して…」宇野重吉の教え子のオンリーが死ぬんだけど、その蒲団の口許に包丁が置かれてる。小刀の...日本列島
☆東京オリンピック(1964)オリンピックは人類の持っている夢のあらわれである。という字幕が消えるや日輪のアップ、そしてそれと二重写しとなるように巨大な鉄球が映し出され、戦争に翻弄されたオリンピックの開催年が詠み上げられ、古めかしいビルが叩き壊され、代々木公園、体育館、国立競技場が完成し、望遠レンズで撮られたクルマとヒトとコンクリートがきゅうぎゅうに密集された東京の街にメインタイトルが重なる。そしてオリンポスの丘から始まる聖火ランナーのリレーに沿ってアジアの各地が映し出され、日本の最初は沖縄のひめゆりの塔。本州に入れば広島の原爆ドームに空撮で入り、平和公園で日の丸の小旗をふって出迎える人々のまんなかを抜け、京都の古道を、霊峰富士の裾野を聖火ランナーがゆく。開会式に登場する各国は、キューバ以外の国はあらかた...東京オリンピック
☆戦争と人間第一部運命の序曲(1970)『満蒙はわが日本帝国の生命線である』この映画の肝は奉勅命令だ。満鉄付属地外への出兵は天皇陛下のご命令がいる、すなわち奉勅命令の伝宣が必要だと、中谷一郎演じる河本大作は、芦田伸介演じる満洲伍代にいう。この満洲伍代は、甥の歓送会の席上、実業家の市来善兵衛の「蔣介石が北伐を始めるや否や日本は現地居留民の保護を名目に山東へ出兵したんだが、いや、これをもってまたぞろ中支線以南の反日感情を燃え上がらせて、おまけに北京の張作霖が負けるとなると、中南支はおろか満洲からもなんの収穫も期待できなくなるわけだ。よほど慎重にやってもらわんと」という慎重な意見に「いかんいかん、そんな弱腰じゃ」と活を入れ、在留邦人の生命財産が実際に侵されようとするときに、外務省の舌三寸や片々たる文書でこれが守...戦争と人間
◎銃殺(1964)菊の御紋を戴いた厳しい扉を開けて、丹波哲郎演じる相澤三郎の永田鉄山暗殺事件から始まり、この扉が丹波さんがやってくると閉じ、タイトルが被さり、また開くと、陸軍練兵場になってる。うわ、最初から合成じゃん。青年将校の会議で、こう意見が出る。「軍隊を使用して直接行動に出るのは、陛下ご自身が、重臣元老を斬らねばならないとお考えになったときだけ許されるべきだ。わたしには陛下がそうお考えになっているとはおもえないのだ」しかしこれは否定され、うやむやになる。将校鶴田浩二は牛鍋をつつきながらいう。「ここ2、3年、どん底の生活苦に喘いでいる農民や労働者の家庭では、一家の働き手を兵隊にとられて自分の娘を売らなきゃならない悲惨な親もある。その一方、兵隊の中には自分の貰った慰問袋をそっくり家(うち)に送っている者...銃殺
二・二六事件脱出冒頭、秘書官の三國連太郎が帰ってくると応接間にふたり、よく似た男がいる。首相ともうひとり。応援演説に立った代議士。これで、あ〜このふたりが入れ代わるのかと察しはつくんだけど、複雑なあらすじな分、これは良い伏線だ。庭を眺めて赤坂までの地下道は使えるのかと尋ねる伏線もわかりやすい。中原ひとみと久保菜穂子がふりはじめた雪を眺める静けさのあと官邸襲撃が始まる静と動の展開もいい。高岩肇、親切で上手い脚本だ。ただまあ、斬られたり撃たれたりしたときの断末魔はあいかわらずの東映調で、音楽もそうだが、ちょいといただけない。特高部曹長の高倉健の登場はやや遅いけど、長いプロローグは二・二六事件の官邸襲撃の前に持ってくるのもなんだか役者中心になって野暮だから、これでいい。この脚本はじつにうまくて、健さんが出勤した...二・二六事件脱出
◇戒厳令(1973)のっけから一柳慧の現代的な電子音楽、また広角的な奥行きを見せたコントラストの強い画面。蝉の声の降り注ぐ中で、十かぞえて下駄を脱いで短刀を引き抜いた朝日平吾(辻󠄀萬長)が安田善次郎の暗殺に走る。画面の端に人物を置いて空虚な空間を見せる、なんとも不安定な構図がつづく。ひと目でそれとわかる吉田山の東面の長屋住宅。ここでも不安をかきたてる画面は変わらない。三國連太郎演じる北一輝は、墓場の中でいう。『戒厳令の下ではどんな小さな行いもまちがいですらも厳粛さの内に取り込まれる。戒厳令が場所を得てすべての無秩序の中から秩序を見出しつつあるからだ。戒厳令は人々に秩序を与えるのではない。ただ人々の無秩序の中にある秩序を見出すのだ。やがて人々も気づくだろう。自分たちの内にある秩序について。(略)もしかしたら...戒厳令
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