【通りすがりの怪談】怪其之四十三 ~救急車~
怪談 ~救急車〜 救急車の揺れと共に、男は意識を取り戻した。頭は鉛のように重く、全身は痺れたように動かない。耳に入ってくるのは、救急隊員の逼迫した声とけたたましいサイレンの音。「鹿島さん!鹿島さん!」救急隊員が必死に呼びかけている。しかし、男は返事をすることはおろか体を動かすことすらできなかった。まるで魂だけが抜け殻に閉じ込められているような感覚。(一体、何が起こっているんだ)男は混乱しながらも、必死に状況を把握しようとした。「鹿島さん、わかりますか」救急隊員が呼びかけている名前が、自分の名前ではないことに気づいた時、男は愕然とした。(鹿島?俺の名前は鹿島じゃない。まさか....)その時、脳裏…
2025/02/27 21:00