【通りすがりの怪談】怪其之五十九 〜月光~
怪談 ~月光~ 男は一人山奥にいた。今日は満月のはずだが、生憎空は厚い雲で覆われ一筋の月の光も見られない。足場の悪い中、男は必死にスコップを使い穴を掘り続けた。やがてポツポツと雨が降り始めたと思ったら、あっという間に大雨となった。ずぶ濡れになりながらも、やっと穴を掘り終えると、近くに止めてあった車のトランクを開いた。中には若い女性の遺体が体を丸めるように収まっている。トランクから女性の遺体を穴の中に移し土の上に寝かせると、さきほど穴を掘った時に出た土を、穴の中の女性を覆うように戻していく。全ての土を穴に戻し終えた男は、スコップを放り出すと力尽きたように倒れ込んだ。荒く息を吐き出しながら、他とは…
2025/03/31 21:54