【通りすがりの怪談】怪其之三十五 〜負の遺産~
怪談 ~負の遺産~ 昔から、血の味がするような感覚が突如として襲ってくる。そして口の中に生肉を噛み砕いたような吐き気を催すような味がしばらく残り続ける。成長するにつれ、徐々にその異様な味がすることはなくなっていった。私は安堵感の中で充実した生活を過ごすことができるようになった。やがて社会人になり日常に追われるうちに、あの異様な味は記憶の彼方に追いやられた。まるで悪夢が消え去ったかのように。しかし、それは束の間の平穏だったのかもしれない。結婚し子供が生まれ成長し、言葉を覚え始めた頃、ある日突然に我が子は「口の中が変な味がする」と訴え始めた。私は子供の頃に、自分だけが抱えていた奇妙な感覚が、我が子…
2025/01/29 22:34