ちくま日本文学027 菊池寛 (ちくま文庫) 作者:菊池寛 筑摩書房 Amazon 若造には小説は書けない? 「二十五歳未満の者、小説を書くべからず」と菊池寛は言う。人間を書くのが小説であるから、人間を知らない若者は小説を書けないのだ、と。『小説家たらんとする青年に与う』のメッセージはこれだけである。 この論考が書かれたのが1923年。25歳という年齢を現代に置きかえると35~40歳くらいだろうか。とにかく自分なりの人生観を持つまでは書くなと言う。というより書きようがないのだ。仮に技巧で書けたとしても、それは小説ではない。 自分自身の人生観――そういうものが出来れば、小説というものも、自然に作…