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2023/04/26

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  • 最終章:終わりの祈り

    沈黙の神殿、その最奥。八つの石台の試練を越え、彼らはついに最深部へと辿り着いた。そこには何もなかった。祭壇も、玉座も、敵も。ただ一枚の黒い石板が、空間の中心に埋め込まれているだけだった。「……これが、“深淵の声”か?」リオネルが近づくと、石板の上に淡い光が浮かび始める。それは文字でも図でもなく、感情のようなものだった。「よく来た。ここが終わりであり、始まりである」その“声”は耳ではなく、胸に直接響いた。「お前は……神なのか?」ミリアが問うたが、答えはなかった。代わりに、神殿の壁がひとりでに動き出し、周囲の空間が広がっていく。それは、世界の記憶だった。かつて滅びかけた文明、犠牲となった命、守られた願い。あらゆる“終わり”が、この場所に集まり、静かに記録されていた。「俺たちは、これを知るために来たのか?」エリ...最終章:終わりの祈り

  • 第七章:記憶の水鏡

    神殿の奥、第一の試練の間は、まるで湖底のようだった。壁も天井も、水に覆われたかのようにゆらぎ、音がすべて鈍く響いた。足を踏み入れるたびに波紋が空間に広がる。だが、それは本物の水ではなかった。ただの幻か、それとも記憶の残滓か。「ここ……どこか懐かしい……」ミリアが呟く。言葉と同時に、空間の中央にぽつりと浮かび上がったのは、一枚の鏡だった。鏡は水面のようにたゆたっており、誰が覗いてもその奥に“自分の記憶”が映し出される。リオネルが鏡に近づくと、鏡面に淡く、過去の光景が揺れた。まだ幼い自分。誰かの手を振り払って、走る姿。父の怒鳴り声。母の沈黙。──そして、家を出たあの日の、空の色。「……やめろ」彼は顔を背けた。だが、鏡は誰の声にも応えず、ただ映し続ける。カイもエリスも、皆がそれぞれの記憶に向き合っていた。希望で...第七章:記憶の水鏡

  • 第六章:沈黙の神殿

    月が雲間から顔を覗かせたとき、リオネルたちはようやく神殿の入り口にたどり着いた。深い森に隠され、苔に覆われた石の構造物は、まるで時そのものに忘れ去られたかのようだった。「これが……“沈黙の神殿”か。」エリスが呟く。風が止み、鳥のさえずりすらも消えていた。まさに“沈黙”という名がふさわしい空間だった。重々しい扉には、かすかに光を帯びた文様が浮かび上がっている。見覚えのある文様だった。リオネルがポケットから取り出した古びたペンダントの裏にも、それと同じ印が刻まれている。「この扉……俺たちを待っていたのかもしれない。」彼がペンダントを扉に近づけると、低く鈍い音と共に文様が輝きを増し、扉がゆっくりと開いていった。中は暗く、そして静かだった。まるで音が吸い込まれるかのような異様な空気。神殿内には、朽ち果てた彫像や壁...第六章:沈黙の神殿

  • 第五章「剣なき戦い」

    そして、その日は来た。空が焼け、天上より雷の柱が地を貫いた。人々は叫び、神々は沈黙し、世界は静かに、だが確かに、“神殺し”の時代へと突入した。だが、誰よりも早くそれを知っていた者がいる。問いの火を撒き続けた、灰色の女神――アテナである。■神々の陥落はじまりは、天の王ゼウスが地に落ちたことだった。彼はもはや人々の祈りに応えられず、嵐は祝福ではなく災厄と見なされ、その名は祝詞からも消えていった。ポセイドンは怒りに沈み、ハデスは人間の“死を避けようとする知恵”によってその領土を蝕まれた。人はもはや、神を必要としなくなっていた。なぜなら――彼ら自身が、神を超える問いを持つようになったからだ。そして、誰が教えたのかと問われれば、その答えは、ある一点に収束してゆく。「灰の都より来たりし、剣を持たぬ戦神」――■対話なき...第五章「剣なき戦い」

  • 第四章「選ばれしではなく、選びし者」

    黒の書を封印し、問い槍《インテルロクス》を静かに納めた夜、アテナは天と地のはざまを見つめていた。神々は空に鎮座し、人は地に生き、海はその狭間で命を育んでいた。だが、知というものは――そのどこにも属していなかった。それは空にも、地にも、誰の手にも縛られぬもの。ならばそれを、“所有物”ではなく、“火”として渡すべきなのだ。■神ではなく、灯火となるアテナは、自らが神であることを捨てたわけではない。だが、導き手ではなく、問いを灯す“火種”となる道を選んだ。彼女は再びアオリウムの書庫に戻り、書架の隙間から、**“灰の欠片”**と呼ばれる光る石を取り出した。それは知の結晶。一つひとつが、問いの源であり、可能性の芽。アテナはその欠片を七つ選び、それぞれを世界の各地へと旅立たせることにした。■七つの欠片風の谷:言葉を持た...第四章「選ばれしではなく、選びし者」

  • 第三章「未来の書と終末の予言」

    黒の書――それは誰も書いたことがなく、誰も読むことが許されなかった未来の書。アテナの前に置かれたその一冊は、まるで燃え尽きた灰を束ねたような、煤けた革に覆われ、ページの縁はまるで過去そのもののように脆く砕けていた。だがその書は、確かに未来を記していた。それも、最悪の未来を。■預言の内容第一の章にはこうあった。「人は問いを持ち、知を得たとき、神に従うことをやめる。知識は剣となり、剣は神を穿つ。」第二の章では、アテナ自身の名が記されていた。「戦わぬ神、アテナ。彼女が種を撒いた地より、神殺しの思想が芽吹く。やがて学び舎は兵営となり、哲学は武器に変わる。」そして最後の章には、アテナが“神々の死”の引き金となる存在として記されていた。彼女の名の下に、人は剣を掲げる――と。■苦悩アテナは、初めて迷った。知を信じること...第三章「未来の書と終末の予言」

  • 第二章「灰の都ミュネウス」

    アテナが神々の宴を去ったあと、彼女は天を離れ、地に降り立った。大地はまだ若く、世界の果ては空に飲まれ、山は火を噴き、海は狂い、風は形を持たなかった。だがそのすべての中心に、アテナは静かに立った。そして彼女は、自らの手で都市を築く。剣ではなく、設計図によって。力ではなく、言葉によって。その都は、ミュネウスと名付けられた。■灰に沈む都ミュネウスは、火山の噴煙が常に空を覆う地に建てられた。陽光は届かず、光の代わりに“知の火”が灯された。灰は絶えず降り積もり、建物の輪郭すら曖昧にしていたが、それがかえって、都に「時間すら静止しているかのような気配」を与えていた。都市の中央には、アオリウムの書庫がそびえていた。その門にはこう刻まれている。「扉は問う者にのみ開かれ、答えを望む者には閉じられる。」アテナの哲学は常に一貫...第二章「灰の都ミュネウス」

  • 灰色の智剣アテナ

    第一章「雷より生まれしもの」世界がまだ形を持たず、空と海と大地が綱引きのように互いを引き裂いていた時代、空の王、ゼウスは深く恐れていた。それは「思考する力」――知によって神をも倒す“予見”の存在だった。ある日、預言者ガイアがこう語った。「お前が娶るであろう女神“メーティス”。その子は、汝を超え、神をも終わらせる。」恐れたゼウスは、メーティスを黄金の杯に変え、飲み込んだ。彼女の姿は消えたが、その思考と魂は、ゼウスの中で脈打ち続けた。数百年後――ある夜、空に十の雷が連なって落ちた。嵐が天界を裂き、神々が駆けつけた時、ゼウスの額から、巨大な稲妻とともに“それ”は生まれ出た。鋼の鎧を纏い、青白い瞳に星々の映る少女。その手には長槍、背には盾。神とは思えぬ静謐と整然をその身に宿していた。「我、アテナ。知と戦の守り手。...灰色の智剣アテナ

  • 《蒼穹の裂け目 〜終焉と再生〜》

    《深淵の心臓》をもってバリアライアを封じたネレウスは、その身を海そのものへと還し、世界に再び静けさを取り戻させた。しかし、静寂は永遠ではなかった。〈空の裂け目〉それは、ある朝のことだった。空が裂け、空中から“水”が逆流した。空から落ちてきたのは“天海”――かつてゼウスが封じた神々のもう一つの海。そこから現れたのは、翼を持つ海神「ストロメアス」。彼はゼウスによって異界に追いやられた“天の海の王”であり、ネレウスが姿を消した今、海の全てを統一すべく動き出したのだ。「海は二つに分かれるべきではない。地と空、深淵と天海――いずれかが消えねば、均衡は保てぬ。」ストロメアスは天海の軍勢を率い、地上の海を侵食しはじめた。〈記憶の呼び声〉その頃、“海そのもの”となったネレウスは、意識の外側で微かな呼び声を聞く。それは、か...《蒼穹の裂け目〜終焉と再生〜》

  • 《波間の継承者 ネレウス》

    ポセイドンが姿を消して千年――海は静けさと混沌を交互にたたえながら、なおもその神の帰還を待ち続けていた。だが、海底の“アンフィトリテの砦”に眠る《深淵の心臓》は、微かに鼓動していた。それは、海の力が新たなる選ばれし者を呼んでいる証。――そして選ばれたのは、あの少年ネレウスだった。〈目覚めの時〉ネレウスはもはや少年ではなかった。彼は人の姿を捨て、海そのものとなり、名もなき守護者として波の記憶を辿っていた。ある夜、星が海に落ちるという奇跡が起きた。蒼い流星が《深淵の心臓》の上に降り注ぎ、長き眠りについていた砦が震えた。――封印が破られたのだ。砦から漏れ出した魔力に引き寄せられ、“海を喰らうもの”と呼ばれる古代の災厄が再び目覚めた。それは、かつてポセイドンが封じた七つの海獣の中でも最も恐ろしき存在、「バリアライ...《波間の継承者ネレウス》

  • 《深淵の王 ポセイドン》

    かつてこの世界がまだ若く、空も海も名を持たぬ混沌の時代――深き蒼の底から、一人の神が目覚めた。その名はポセイドン。水の奔流が彼の髪となり、嵐の轟きがその声であった。彼は、兄ゼウスが空の玉座を得た後に、広大な海洋を与えられた。だがポセイドンの海は単なる水の広がりではない。それは命と死の狭間に横たわる「神の鏡」であり、神々の心すら映し出す、揺るがぬ深淵だった。〈トリトニスの契約〉あるとき、ポセイドンは“トリトニス”と呼ばれる古き海の巫女と契約を結ぶ。彼女は未来を見る目を持ち、時の流れの歪みを知る者。巫女は言った。「いずれ、天の炎(ゼウス)と地の闇(ハデス)が争い、世界は三つに裂かれましょう。その時、海の心が揺らげば、世界は沈みます。あなたは《深淵の心臓》を守らねばなりません。」《深淵の心臓》――それは世界の海...《深淵の王ポセイドン》

  • 最終章:此岸(しがん)と彼岸(ひがん)を結ぶもの

    春が来ていた。東京の空は少し霞みがかっていたが、寒さの中にもやわらかい陽射しが差し込むようになっていた。ユウキはその日、満員電車に乗りながら、車窓に映る街の風景をじっと見つめていた。かつては息苦しさの象徴だったこの通勤路も、今は違って見えた。人々の顔。騒がしいアナウンス。沈黙する群れの中にも、無数の「縁」が流れている。どの瞬間も、どの人も、永遠に同じではない――そう思えるようになった。オフィスに着くと、ユウキは落ち着いた足取りで席に着いた。相変わらずタスクは山積みだし、上司の声は大きい。けれど、それらに呑まれることはなかった。自分が何か“特別な存在”になる必要はない。ただ、自分という「今ここ」の存在を、そのまま引き受ければいい。否定でも、逃避でもなく、肯定でも執着でもなく。ただ、気づき続けること。それが、...最終章:此岸(しがん)と彼岸(ひがん)を結ぶもの

  • 第7章:存在の彼方へ

    ある晩、ユウキはふと、般若心経のある一節を思い出した。>「色即是空空即是色受想行識亦復如是」何度か繰り返し読んでいた箇所だ。けれど、その意味が、今になってゆっくりと、自分の内側に沈み込んでいくような気がした。「色即是空」――この世界に存在する“すべてのモノ(色)”は、実体を持たない“空”のあらわれである。「空即是色」――その“空”はまた、すべてのモノの中に具体的にあらわれている。形あるものは空であり、空は形あるものに他ならない。つまり、「無」であることは、「存在しない」ことではない。次の週末、ユウキは再び古書店を訪れた。あの店主に、もう一度会いたかった。静かな店内に入ると、店主はいつものように柔らかな笑みで出迎えた。「ずいぶん、顔つきが変わられましたね。」ユウキは、少し照れながら笑った。「“無”について、...第7章:存在の彼方へ

  • 第6章:空へ向かう対話

    ユウキは翌朝、少し早めに出勤した。会社のデスクに着き、PCの電源を入れる前に、一枚のメモ用紙を取り出した。そこに、昨日からずっと頭に浮かんでいた言葉を書いた。「空とは、否定ではなく、つながりの自覚。」自分でも驚いた。以前なら、こんな抽象的な言葉を、職場で思い浮かべる余裕などなかった。だが今、それは単なる思索ではなく、身体の奥から湧いてくる“感覚”だった。その日の午後、同僚の一人――後輩の佐藤が、どこか落ち着かない様子でユウキに声をかけてきた。「先輩……ちょっと、話せますか。」休憩室で向かい合うと、佐藤はぽつりと言った。「正直、最近きつくて。やること増えてるのに、全部中途半端で。評価も下がって、もう何をしてるのかわからなくなるんです。」その姿に、かつての自分の姿が重なった。ユウキは、しばらく考えた末に、静か...第6章:空へ向かう対話

  • 第5章:かつての旅人

    風景が、遠ざかっていく――。ユウキの視界は、まるでフィルムを逆回しにしたかのように、ぐるぐると回転していた。見慣れた東京の街並みは溶けてゆき、摩天楼は土煙となり、電車の音は鳥のさえずりへと変わった。――そして、目を開けたとき。彼は、1500年前のインドの大地に立っていた。強烈な陽射し。赤土の地面。どこまでも続く道の先に、ひとりの青年がいた。腰に粗末な布を巻き、頭を剃り、裸足で歩く。背には経巻の束、手には木の杖。その姿には、見覚えがあった。――夢で何度も見た、あの“僧侶”。だが今はまだ、彼は「完成された導師」ではなかった。まだ若く、迷いを抱えた一人の修行者にすぎない。彼の名は、ディーパンカラ。釈尊の教えが口伝されていた時代。師から弟子へ、言葉から心へと真理が渡されていたその時代。ディーパンカラは、己の心の苦...第5章:かつての旅人

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