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  • 新星きらめく『私が鳥のときは』(平戸 萌)

    それぞれが自分の場所で、受験生として全力を尽くそうと約束していた。(『私が鳥のときは』の本文より) この作品がデビュー作っていうことだし 中学受験界隈では多分ノーマークだろう。 氷室冴子青春文学賞の大賞作品がこれだ。 受賞作『私が鳥のときは』が3割に対し、 書き下ろし長編がこの本の7割を占める。 意外だったのは受賞作じゃない方の話も 同等かそれ以上に素晴らしかったところ。 表題作は中3女子の受験話がメインだが 『アイムアハッピー・フォーエバー』は 中1女子の部活絡みの話が中心になるよ。 探求心溢れる作問者でないとこの作品に 気づけないと思うけど素材文適性は高い。 以下は問題文によさそうな場面の…

  • まだまだ使われそうな『大きくなる日』(佐川 光晴)

    「ご両親から支持されていないと思ったら、子供が自分の力を伸ばせるわけがないじゃありませんか」(本文より) 2016年に出た優先度Aランクの旧作。 これはテキストや模試でお馴染みだろう。 入試でも忘れたころに出てくる作品だし 普通の新作より先に読んで損は無さそう。 大人にもじんわりくるものがある本だが 子どもでも読めそうな易しいな文章だよ。 以下は俺が4年前書いたレビューの前半。 四人家族の横山家とその周囲の人びととの関わりが、9人の目線で描かれる短編集。幼児目線の第一話では戸惑いましたが、最終話ではその男児が立派な中3生に成長していて、暖かい気持ちになれました。魅力的な人物がとびきり多い作品で…

  • アメリカの自由さが際立つ『空と星と風の歌』(小手鞠 るい)

    わたしが生まれ、育ってきた日本に、こんなふうに生まれて、こんなふうに育って、こんなにも悩み、苦しんできた人がいたなんて、想像したこともなかった。(本文より) たまに出題される作家の11月の新作だ。 この先生は発刊のペースがものすごいな。 アジアの人々への差別がテーマなんだが 大人も知らないような話もたっぷりある。 学びがギューッと凝縮されてる感じだよ。 だから読書感想文を書きやすさも抜群だ。 しかもつらいとき心が軽くなる考え方も 盛り込まれているから救われたりもする。 以下は俺のレビューのラストの部分だよ。 日本では多様性が勘違いされているのではないかという部分も刺さりましたね。偏見を持たない…

  • 受験とは長距離走の苦にも似て『あと少し、もう少し』(瀬尾 まいこ)

    自分の力が発揮できる場にいるって大事だろ(本文より) 2012年に出た優先度Sランクの旧作。 頻出の瀬尾まいこ先生の本では最注目だ。 やっぱしチームの心を合わせる話になる 駅伝や合唱モノは素材の定番中の定番よ。 この作品では先生の役どころも面白いし それぞれの葛藤にも共感ポイントがある。 いつまでも使われる理由は読めば解るよ。 俺がむかし描いたレビューの前半がコレ。 主人公は田舎の中学の駅伝メンバー6人。全員が主人公になるという連作短編集です。それぞれがローティーンらしい悩みに思い苦しみながらも、チームで走るという共通の目的を通じて交流し、成長していく様がさわやかに感じられました。 『あと少し…

  • 解りあうことの難しさ『アナタノキモチ』(安田 夏菜)

    わりと入試に出る作家の先月に出た作品。 この先生は『二月の勝者』の参考文献に なっている 『むこう岸』にも要注目だよ。 今作は相手の気持ちを掬い取ったうえで 尊重することの難しさと大切さを訴える。 物語のキーマンになるのは支援級の少年。 このテーマでここまで書くのかと大人が 衝撃を受けるくらいだから、子どもにも 学びや気づきがたっぷりなストーリーだ。 人の気持ちがわからないことを自分事と 考えるきっかけになる価値ある一冊だよ。 素材には主人公の少女と新しい友達との ボタンのかけ違いが起きる場面がよさげ。 俺のレビューの始めのほうはこんなだよ。 母に棄てられた発達障害の少年を引き取ることになった…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年1月前後)

    1月の新刊はそれなりにある感じですわ。 追加で判明したらこの記事に書き足すよ。 1/10発売 『風に立つ』(柚月 裕子) 傑作の予感!少年の更生を描く家族小説。 1/18発売 『となりのきみのクライシス』(濱野 京子) どうなる?トラブルまみれの6年生たち。 1/24発売 『彼女たちのバックヤード』(森埜 こみち) 3人の中3女子が抱えるそれぞれの事情。 1/24発売 『成瀬は信じた道をいく』(宮島 未奈) あの破天荒少女がパワーアップして帰還。 1/30発売 『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』(八束 澄子) 入学式で運命的な出会いをする少年少女。 2/13発売 ☆先行…

  • 想像力に圧倒される『空想の海』(深緑 野分)

    読むことによって世界は広がり、あり得ないものが見え、遠くへ旅し、一度の人生では経験しえない物語を味わえる。(本文より) 5月発売の不思議要素が強めの作品だよ。 麻布の2021年入試で界隈を驚かせた 『緑の子どもたち』所収の短編集ですわ。 『緑の子どもたち』は異質世界で言葉の 通じない者たちが交流を始めるハナシだ。 物語としては後味もよくって魅力的だが 入試の素材としてはかな~り異質な部類。 同様に使い勝手って意味では微妙な話が 多いなか『髪を編む』はちょっとよさげ。 まるっと問題文にできそうな長さだしな。 『髪を編む』のさわり(素材文適性△) 大学生の妹の髪を編んでやる社会人の姉。 受験の日に…

  • 感情をブルンブルン揺さぶる『腹を空かせた勇者ども』(金原 ひとみ)

    複雑な感情に踊らされて泣いたり怒ったりすることのない人生を送りたい!(本文より) 20歳で芥川賞を受賞したが中受界隈で 注目されてない作家の6月に出た新作だ。 コロナ禍の中高一貫女子校が舞台なんで 試しにと読んでみたがびっくりしたわ~。 感情を揺さぶるって点ではもうダントツ。 リアルさを追求した会話やあえて狙った 冗長すぎる心情表現がたまにあることで 素材文適性は削がれるが吸引力が抜群だ。 以下は強いて挙げた出題によさげな箇所。 問題に使えるかもしれない場面 序盤△友人家庭の大ピンチを知るシーン 序盤△仲良し留学生が差別を打ち明ける 中盤△定食屋の少年との交流とトラブル 終盤〇マックで仲良し三…

  • 桜蔭の出題者に選んで欲しい名作たち

    普通なら入試の国語素材に選ばれるのは、 前年の夏までに発売された作品になるが、 女子最難関の桜蔭はひと味違うんだよな。 2020年出題 前年の7月25日発売 『思いはいのり、言葉はつばさ』(まはら 三桃) 2021年出題 前年の11月14日発売 『あしたのことば』(森 絵都) 2022年出題 前年の9月8日発売 『そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会』(高柳 克弘) 2023年出題 前年の10月12日発売 『ひみつの犬』(岩瀬 成子) こんな具合で桜蔭の出題者が選ぶ素材は 最新すぎて他校が選べない物が多めだよ。 わが校は一気呵成に問題を仕上げるから 他さんとは違うって自負があるのかもな。…

  • 【レベル別】中学受験生向け推薦図書(旧作42作品)

    相変わらず閑散としたサイトから呟くよ。 旧作の推薦図書一覧ってのも作ってみた。 リストの説明は真面目に書くことにする。 優先度Sに8作品、Aに12作品、Bに22作品 長年愛されてきた旧作を中心とした中学受験生向けのお薦め本リストです。すべて当サイトか又は読書メーターで私がレビュー済みの作品になります。 表の見方に関して、【優先度】をS・A・Bに分類していますが、これは作品の優劣を示すものではなく、作問者が選ぶ可能性を私の勘で割り振ったものに過ぎません。ただ、どれもがとびきりの優良図書であるという点は間違いないかと思います。 【難易度】は1が「難しい」で大人向け、2は「やや難しい」で中高生向け、…

  • 音楽と絆が生み出すもの『ラブカは静かに弓を持つ』(安壇 美緒)

    スパイという語でチェックから外した本。 本屋大賞2位だが読書感想文コンクール 高校の部課題図書にもなったんで読んだ。 書店の目立つ場所にずっと置かれてたし 高校課題図書は割と入試で使われるから たぶん作問者も気づきはすると思ってな。 で、感想いうとメチャメチャ面白れーわ。 もうね、語彙力吹っ飛んじまうほどだよ。 素材文適性はあんまし高くないんだけど 師匠が初めて海外経験を語る場面などは 傍線引っ張って心情を問うのによさげだ。 俺のレビューの概要部分はこんな感じヨ。 過去に縛られ雑に日々をやり過ごしていた男が、音楽を通じた出会いで自分を取り戻していく物語です。主人公は著作権団体の職員。証拠固めの…

  • 異邦人たちの葛藤『M』(岩城 けい)

    どいつもこいつも、人種を見ないで人を見ろ!(本文より) たまに出題される作家の6月に出た作品。 父の仕事の都合でオーストラリアに移り のちに母と姉が帰国しても現地に残ると 決意したマサト少年シリーズの最終巻だ。 現地に溶け込もうとする意志を阻む壁が 丹念に描かれていて勉強になる作品だよ。 一方で、今作は小学生には見せたくない くだりが数ヶ所あるんで悩ましいところ。 素材文適性はそれほど高くはないんだが アルメニア女性との対話が狙い目だろう。 役者に興味はないかと聞かれるくだりや 自分たちのルーツを語り合うシーンなど。 俺のレビューの出だしはこんな文章だよ。 進路に迷う豪在住の大学生が主人公。日…

  • 終盤がとくに刺さる『鈴の音が聞こえる 伝えるということ』(辻 みゆき)

    同じ年齢で、同じ障害をかかえてると、親兄弟でもわかってもらえない自分の気持ちを、こいつだけはわかってくれる、って思えるときがあるんだよな。(本文より) たまに出題される作家の昨年11月に 出た新シリーズで既に3冊が発売済み。 本の外見はもう完全に女子ウケ全振り。 これを手にするのは正直勇気が要った。 序盤でやはり少女小説かなと感じたが、 後半に差し掛かると止まれなくなるな。 盲学校などを併設した私立中が舞台で かなりの学び要素も含まれてるうえに ストーリーが尻上がりに良くなってく。 素材文適性も後半に若干はありそうだ。 とくに教室の女子トークに男子2人が 混ざる場面なんかはいいかもしれない。 …

  • 非合法の渦中で『金環日蝕』(阿部 暁子)

    受験界では『パラ・スター』で知られる 阿部暁子先生の昨年10月に出た本だよ。 これは読友さんたちの評判も凄かったわ。 ミステリ的要素が強めなので素材文には さほど向かないけど面白さは保証できる。 展開の妙が魅力だが会話のノリもいいよ。 尻もちをついた子の絶妙な切り返しとか 調理中に男っ気がないことを揶揄された 主人公が兄貴に言い放ったセリフとかな。 「いきなり何?ウインナーと一緒に焼かれたいの?」(本文より) ま、難易度が高いんで小学生には厳しい。 以下は前に書いたレビューの書き出しだ。 心理学を学ぶ大学2年生が主人公。正義感が強く向こう見ずな彼女が、引ったくりに出くわしたのをきっかけに、思わ…

  • 境界線の子どもたち『付き添うひと』(岩井 圭也)

    これまでのことより、今からどうするかが大事なんです。(本文より) 『生者のポエトリー』が界隈で注目され、 出題もあった作家の昨年9月に出た作品。 主人公は未成年の事案にこだわる弁護士。 大人を弁護する場合は弁護人、子どもの 場合は同じ仕事でも付添人というらしい。 ごく普通の家庭で暮らす子どもたちには 想像することも難しい境遇が描かれてて とびっきりショッキングな内容だったわ。 刺激が強すぎて素材文適性はやや低いが、 親世代にとって学びが多い本になりそう。 以下に俺のレビューから一部拾い上げた。 対少年の切り札を持つ弁護士が、大人と信頼関係を結ぶすべを知らない子どもたちに辛抱強く寄り添い、周囲に…

  • 真心が芯まで響く『水車小屋のネネ』(津村 記久子)

    性格のいい友達を見つけるのは、子どもの人間性がまだ剝き出しのまま混ざり合っている小学校ではとても難しい。(本文より) たまに出題される作家の3月に出た新作。 紹介作品の中では最大級のボリュームだ。 あらすじに「しゃべる鳥」とあるんだが 動物視点の話ではまったくないんですわ。 18歳の姉が8歳の妹と親元から逃れて、 つつましい暮らしの末に満たされていく。 ヒトコトで言うとこんなストーリーだよ。 注目は姉妹の引っ越し先の人々の優しさ。 小学校の担任の先生もいい人だったな~。 真心が連なり広がっていくさまが熱いよ。 読めば優しい気持ちになれそうな作品だ。 完全に大人向けなので子供には難しいが 素材文…

  • 無敵の笑みに誘われて『トモルの海』(戸部 寧子)

    想像や夢が、現実を追い抜く瞬間だってあるわ。(本文より) フレーベル館ものがたり新人賞大賞作品。 この賞は村上雅郁先生や蓼内明子先生を 輩出している由緒あるもので要注目だよ。 今作は小5の野球少年が不思議な少女に 出会って忘れられない日々を過ごす話だ。 とくに幻想的なシーンが印象的だったな。 こっちまで引き込まれそうになるもんよ。 受賞作だけあってやっぱし味わい深いわ。 子どもたちも夢中になるんじゃないかな。 金曜日には書店に並ぶことになるこの本。 俺の先行レビューはこんな仕上がりだよ。 生きているということは、それだけで素晴らしいんだ。 そんなメッセージが直に伝わってきました。 主人公は野球…

  • 全能男子、狼狽える『ぼくらはまだ少し期待している』(木地 雅映子)

    季刊誌『飛ぶ教室』でも紹介されていた 2022年10月発売のYA小説ですわ。 特別感ありまくりな進学校の高3男子が 同級生を探して思わぬ場所に行くって話。 チャラい内容かと思えば深いネタもあり 生きた経済や心理学、それに心理術まで 学べてしまうという思わぬオマケ付きだ。 特によかったのは養護施設関係者の言動。 スタッフの傾聴スキルも凄いんですわ~。 終盤、ちゃんと終わるかハラハラしたが ラストにかけては一気に畳みかけていく。 俺のレビューの序盤はこんな感じですわ。 主人公は重い過去にとらわれた高校三年生。心に分厚い仮面をかぶったままクールに過ごしていた彼が、大人には頼れないと残して姿をくらませ…

  • 麻布で待ってる!『御三家ウォーズ』(佐野 倫子)

    鉛筆一本で、人生を変えるんだ。麻布で待ってるよ。(本文より) 前記事紹介の『天現寺ウォーズ』収録作。 この本で最大のウエイトを占めてるのが 中学受験編にあたる『御三家ウォーズ』。 勉強が苦手な母親が高い目標をかかげる 息子のために死に物狂いで伴走する話だ。 元・塾講師だという叔母のアドバイスが いちいち適切だから得るものがあるな~。 とくに、伸びしろを出し切らせることに 疑問を投げかけるくだりは共感度MAX。 芯のしっかりした息子も応援したくなる。 これは思わぬ拾い物だ!と俺は感じたね。 一流作家の妙技とはちょっとちがうけど 当事者を惹きこめるエモさは確かにある。 この先生は年明けにお子さんの…

  • ミステリアスであったかい『ぼくらは星を見つけた』(戸森 しるこ)

    たまに入試でも出る作家の5月発売の本。 世にも不思議であったかい家族の物語だ。 魔法とかが出るわけじゃ全くないんだが どこか幻想的なストーリーが魅力だった。 作品の難易度的には小4以上が目安かな。 本自体が美しくできてて飾るとそのまま 粋なインテリアになりそうな本でもある。 以下は俺が発売時に書いたレビュー抜粋。 多彩なスキルを身につけた若者が、住込みの家庭教師として、ミステリアスな雰囲気をまとう人たちが暮らす家に赴きます。その家には「子どもに先生と呼ばせてはいけない」という特別な決まりごとがありました。 『ぼくらは星を見つけた』感想・レビュー 実物の装いはさらに美しい(2023/5発売)

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