-このお話しを最初から読む- 「物理的な力が加わって出来たもの」 その医師の言葉は、まるで虐待を疑われているように聞こえた。 私がそう捉えたことに医師も気付いたのか、 「もちろん彼が自分でやっている可能性もありますよ」 とは言ってくれたが、幼稚園で1度虐待を疑われてしまったことで周りの目を気にするようになってしまった。 アザだらけの太郎の顔を見て、お医者さんも看護師さんも何を思っているのだろう。私達が診察室からいなくなったあと、「あのアザ、絶対に親がやっているよね」ってコソコソ話すのでないか。きっと虐待を疑われている。 そんなことばかりが脳裏に浮かぶ。 病気ではないと断言されてしまった以上、も…
-このお話しを最初から読む-翌日、太郎は受診をした。 行きつけの小児科と数回しか受診したことがない皮膚科で迷った挙げ句、やはり皮膚の専門の先生に見てもらいたいということで皮膚科を選んだ。皮膚科では、今までの流れを細かく伝えた。 寝て起きたらアザが出来ること。 色々な対策をしたが改善されなかったこと。 先生はジーっと太郎のほっぺを見つめ、軽く触診してから 「病気の可能性は無いね」 と言い放った。 〈病気の可能性は無い〉という先生の一言は、私を複雑な気持ちにさせた。 もちろん病気と言われたら何よりショックだろう。 病気は無いに越したことはない。 でも病気と言われれば、虐待を疑われなくて済む。 とて…
-このお話しを最初から読む- 私の言葉を園長は 「確かに1人だけ名指しをして疑うようなことを言ってしまったことは間違っていた」 と考え直してくれた。 「私も偉そうなこと言って申し訳ございません。どうしてもそこだけは納得行かなかったところだったので正直にお話させて頂きました。しかし、これからも太郎のことで色々とご迷惑をおかけすると思います。どうかよろしくお願い致します」 最後に園長は謝罪の言葉を述べてくれた。 モヤモヤが少し無くなったような気がした。 あとは病院。 明日仕事が休みだから、病院は明日連れて行こう。皮膚のことだから、皮膚科の方がいいのだろうか。小さなことでも、何か原因がわかりますよう…
-このお話しを最初から読む- さすがに園長の言動に納得のいかなかった私は次の日の仕事終わりに、太郎を迎えに行く前に職員室へと向かった。 用事のある相手はもちろん園長。 「お話がありまして」 園長と2人きりの空間を作ってもらった私はゆっくりと話し始めた。 「太郎の顔のこと、私自身も普通ではないことはわかっている。何が原因なのかわからないことが、親として情けない。園長先生が仰ってくれたように、早急に受診をして原因を突き止めていくつもりです。この顔は他人が見れば、虐待を疑ってしまうようなアザということも理解できる。幼稚園側が役所に連絡したこと、それは義務であり正しいことだと思う。世の中には本当に虐待…
-このお話しを最初から読む- 「パパも私も、そういうことは一切していません」園長の目を見てはっきりと答えた。 「そうですよね。ごめんなさいね、変なこと聞いて」 そして、園長との話し合いは終わった。しかし私の中では、悔しさと悲しさが残っている。 〈太郎が、血の繋がっていない父親に虐待されている子だと思われている〉この事実が堪らなく悔しく、悲しかったのだ。 仕事から帰ってきたパパに園長どの会話を話した。 「なんで疑われるのが、俺だけなんだろう」 パパは悲しそうにそう呟いた後、自分を納得させるかのように 「でもしょうがないか。今の時代、血の繋がっていない父親が虐待していたニュースなんてたくさんあるも…
-このお話しを最初から読む- 突然の園長の言葉に私は言葉が出なかった。 太郎とパパは血が繋がっていない。 けれどどんな時だって、パパは一生懸命子供達と向き合っている。 仕事が休みの日はどこにだって連れて行ってくれる。 特に今私は妊娠中。 この時は既に悪阻は落ち着いていたが、悪阻が酷かった時は仕事から帰ると真っ直ぐ風呂場に直行して体を洗い、そのまま寝室に向かって寝るという日々が続いた。そんな中パパは、「子供達に栄養のあるものを食べさせてあげないと!」と、毎日夜ご飯を作ってくれた。 働いて疲れている中、一生懸命育児をしてくれているパパ。 だけど、パパと子供達は血が繋がっていない。こういうことが起き…
-このお話しを最初から読む- 状況が変わったのはそれから数日後のことだった。いつものように幼稚園に太郎を迎えに行くと、先生の様子がいつもと違った。 「あ、お母さん。園長がお母さんにお話しがあるみたいなんだけど、時間大丈夫ですか?」「…!?はい、大丈夫です」 そのまま私だけ奥の部屋に連れて行かれた。 そこには園長先生が。 机を挟んで向かい合うように座った私と園長。 そして園長は、少し話しづらそうに話し始めた。 「今日は太郎くんの顔の怪我のことについてお話しをしたくて、この時間を設けました」園長は真剣な表情を崩さず、淡々と話を続けた。「園児の顔に原因のわからないアザ等を見つけた場合、役所に報告する…
-このお話しを最初から読む- 100円ショップで緩衝材シートのような物を買ってきて、その日は寝室からトイレまでの色々な所を保護した。 例えばドア。そしてドアノブ。 他にも角がある家具等、どこにぶつかっても怪我をしないように。 けれど、それでも太郎の顔が良くなることは無かった。 思いつく原因は底をついていた。 幼稚園の先生とも、1度病院で見てもらった方が良いのでは?という話も出てきた。 私はその時、妊娠中だったが産休前だった為まだ働いていた。 平日は基本仕事。 しかし病院の話しを先生とした1週間後に平日の休みがあったので、その時にでも太郎のことを病院に連れて行こうかな、なんて考えていた。-お話し…
-このお話しを最初から読む- 「ベッドから落ちるのでベッドで布団で寝かせるようにしたのですが、それでもアザは出来るのです。もしかしたら、夜中にトイレに行っている間にどこかにぶつけて帰って来ているのかもしれません。今日からは寝室からトイレまでの間のぶつかりそうな所を、ぶつかっても大丈夫なように保護しようと思います」 毎朝幼稚園の先生に、太郎の現状を報告するのも日課になっていた。 やはり虐待等の問題が多い今の時代、首より上の箇所に出来た怪我は幼稚園側も状況を把握していないとダメらしい。 そしてその中でも〈怪我の原因がわからないもの〉については、幼稚園側から役所に連絡をする決まりになっているのだ。 …
-このお話しを最初から読む- その日から太郎をベッドで寝かすのをやめた。 パパと太郎の男チームは布団へ、ママと花の女チームがベッドへ場所をチェンジ。 これで太郎がベッドから落ちることは無くなった。しかし、それでもアザが出来るのは変わらなかった。 アザが治った頃にまた別の場所に、そのアザが治った頃にまた別の場所に。 ここ最近はアザが無い太郎の顔を、全然見ていない。 花が原因では無かった。 ベッドから落ちたのも原因ではなかった。 最近は夜な夜な夫婦会議をすることが日課になっている。 「ベッドで寝かすのをやめても、何も変わらないね」 何か別の対策は無いかと、パパに助けを求める。 「もしかしたら夜中に…
-このお話しを最初から読む- 案の定次の日も、幼稚園でアザのことを言われた。「また新しいアザが出来ていますね」 「そうなんです。でもいつも、朝起きたら出来ているんです。」 そう。何回もアザが繰り返し出来ていくうちにパターンがわかってきた。アザは必ず朝に発見される。 夜に寝る時になかったものが、朝起きると出来ているのだ。 「なので夜に何か変わったことがないか、考えてみたんです。よく考えると太郎は頻繁にベッドから落ちていて…壁とベッドの間に挟まって寝てることもあるので、それが何か関係しているのかな?と思い、今日の夜からはベッドで寝かすのをやめてみようと思います」 「そっか。早く綺麗な顔になるといい…
-このお話しを最初から読む- 謎のアザに不思議がっているのは私と先生だけではない。 もちろん、パパも。 実は旦那と血が繋がっている子はお腹の中いる3人目の子だけ。 太郎と花は私の連れ子。しかし子供達は〈パパ、パパ!〉と慕っており、パパと私と太郎と花の家族4人で楽しく仲良く暮らしいている。 「また幼稚園の先生に、アザのことを聞かれたよ」 夜、子供達が寝静まってから夫婦でアザのことについて会話をした。 パパも心配そうに答える。 「なかなか治らないもんな〜。花かと思っていたけれど、ここまで何日もアザが出るなら親の俺たちがつねっているところ見てないのもおかしいもんな」 「そうなんだよね…でもそれ以外に…
-このお話しを最初から読む- しかし、花はまだ2歳。「花ちゃんが?」私の言葉に先生は少し納得がいかないようだった。 しかし花が普段から噛んだりつねったりする子だと先生に伝えると、納得してくれたらしい 私は日常生活の太郎と花の様子を今まで以上に気にかけることを約束した。もちろん私だって家事をやらないといけないし、この時はお腹に3人目の子を授かっていたから体調が優れない時もあるし、常に見ている訳にはいかないけれど。 しかしその後も気にかけて2人を見ていたが、見る限りでは楽しそうにおもちゃで仲良く遊ぶ太郎と花。喧嘩をする様子はなかった。花は確かにつねったり噛んだりする子だけれど、よく考えたらそんなこ…
-このお話しを最初から読む- それから1週間。 その後も太郎のアザは、治った頃にまた別の場所に出来てしまい良くなる気配はなかった。 1週間の間は特にアザのことについて触れてこなかった先生だったが、前回以降初めて話題を振られた。 「顔のアザ、良くならないですね」 良くなるどころか、悪化するほっぺたのアザに、先生も不思議そうだ。 「家にいる間にどこかにぶつけたりしている様子は無いのでもしかしたら妹かな?と思ってるんです…」 〈妹〉…そう、妹とは太郎の2個下の花。実は花は当時、保育園ではなかなかの問題児だった。 我が家は、兄妹別々の場所に預けている。 太郎は幼稚園で、花は保育園。 花が通っている保育…
-このお話しを最初から読む- 翌日。 「おはよ〜」と眠たそうに目をこすりながら起きてきた、太郎と2個下の妹の花。食卓に座った太郎と花は、出来立ての朝ごはんを食べ始めた。 美味しそうにご飯を頬張る太郎の顔を見ていると、、 異変に気がついた。顔のアザが増えているのだ。昨日の小さなアザの他に、新しいものがもう1つ出来ていた。 「太郎、ほっぺに新しいアザが出来てるよ!どうしたの?!」「え?アザ?わかんない」 やはり本人は何も知らないよう。 私は昨日の記憶を辿った。 就寝前に見た太郎の顔を思い出す。その時点でアザが1個だった2個だったか、、はっきりとは覚えていない。 寝る前ははなかったような。 いや、気…
「太郎くんの頬のアザ、どうしたの?」 この一言が、私達家族の壮絶な1年半の始まりだった。 太郎の頬に直径1cm程の小さなアザがあることは、2日前から気付いていた。 しかし、太郎は幼稚園の年中さん。 元気いっぱい走り回るのが仕事。 スネには青タンが何個もあるし、膝は擦りむいている。 なんでこんなところにアザがあるんだろう?と2日前に思ったものの、太郎に尋ねても「わからない」とのことだったので、どこかにぶつけたのだろうと特に気にしていなかった。 そして今日幼稚園のお迎えの時に、アザのことを先生に尋ねられたのだ。「私も2日前くらいから気付いていたんですけど本人もわからないみたいで…どこかにぶつけたん…
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