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3泊4日で旅に出る会社員の旅ブログ https://shinjiyoshikawa.hatenablog.com/

会社員でも旅に出たいをテーマに、サラリーマンの吉川が、駐在するメキシコを中心に旅した記録をつづります。チアパス州の奥地にあるエバーグリーン牧場を舞台に繰り広げられる人や動物との出会いが第1作目です。

吉川 真司
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2020/11/27

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  • 第46話 若くて美しい師匠の娘は、軽い足取りで

    シャヤンは完全に白馬と一体化した クリスマスイブのその日、馬術の師匠サムエルに、今日は何をしたいかと聞かれたので、「ギャロップ」の仕方を教えてほしいとリクエストした。 ギャロップとは馬が全速力で走るときの足の運びで、日本語では襲歩(しゅうほ)というらしい。僕はこれまで何度もいろいろな観光地で馬に乗り、ギャロップで走らせてもらったことがあったので、その爽快さを忘れられないでいた。 前日に散策した森の中でも、まあまあなスピードが出たし、あまり苦労せずに走れるだろうという感覚もつかんでいた。バーニャとデイビッドも一緒だが、僕より前から滞在していた彼らの方が、断然馬の扱いはうまいから賛成してくれた。 …

  • 第45話 闇夜でパンをかじったのは

    キッチンは共用、冷蔵庫はない。 母屋で家族のみんなと二日目の夕食を済ませた僕は、また暖房のない寒い小屋の中で目のすぐ下あたりまで毛布に潜り込んだままぐっすり眠り、クリスマスイブの朝を迎えた。そのころには喉の痛みはすっかり消え、爽快な気分で隣の共有キッチンに出ようと部屋の扉を押し開けた。だけど何か様子が違う。 そのキッチンではガスコンロでお湯を沸かしてお茶を飲んだり、夜には軽食のパンを食べたりしていた。 前日に近くの売店――といっても納屋にカップラーメンとパンと水やせっけんなどが置いてある四畳ぐらいのスペースだが――で買った小ぶりなホームメイドの黒糖パンを三つ、虫が入らないように袋の口を縛って木…

  • 第44話 地図と手紙

    ステファニー直筆の地図は力作だった。 小屋に戻り、紅茶で一服しようと共有キッチンでお湯を沸かし始めた。 持ってきた読みかけの小説と備え付けのティーカップを手作りの木製テーブルにのせ、やかんから湯気が出てくるのを待ち、リュックからステファニー直筆「電波探索用地図」を出してテーブルに置いたとき、その裏面の落書きが目に入った。 僕は表面の地図を必死で解読しようと凝視していたせいで、それまで裏は気にしていなかったのだ。そこには、赤いボールペンでいかにもティーンエイジャーの女子が描いた、少女漫画チックなハートマークが三つあり、宛名に「ホセ」と男の名前がある。 「テ・アモ(愛してる)」 書いたのはひょっと…

  • 第43話 電波と夕日、誰もいない木の根っこで

    谷間に溶けるように沈んでいく夕日。 山に入ると民家もなくなり、十分ほどトウモロコシ畑の横にできた山道を歩いた。ここをしばらく進んで分からなかったら牧場にさっさと戻ろうと半ばあきらめかけていた時に、携帯電話の電波受信状況を示すバーが一本だけ立ち始めた。 やがてその大木は僕の目の前に無事現れた。予想していたような、村人が集まるにぎやかな社交場はそこにはなかった。僕の他には誰もいない。 野草に咲いた薄い黄色の花の上を、ひらひら飛ぶ黒い蝶がいるぐらいだ。でも確かに携帯の電波は弱いながらも受信できている。電波の受信状況を示す階段状のバー表示が三本になったり、二本になったりしている。でも携帯メッセージなん…

  • 第42話 電波のなる大きな木を目指して

    牧場の裏手から僕は携帯電話の電波を目指した。 小川があると聞いていたので、探したが、見つけることができたのは今にも乾いてしまいそうな水の流れだけだった。その上に橋があると地図に描かれているが、橋というよりは、道の下にその水が通っているだけのようにしか見えなかった。 でもこれで合っていると信じて、次に目指したのは教会だ。 ステファニーの地図で強調されているところを見ると、どうやらこの曲がり角がキーポイントで、ここさえ間違えなければ電波を受ける「魔法の木」にたどり着けるらしい。教会は真っ白な建物で、一見何の目的で建てられたのか分からない小屋だった。でも十字架のマークが控えめに飾られていたので、かろ…

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