様々なテーマを重ねた重厚な内容で、大人の女性向けの小説です。 恋愛、妊娠、結婚生活、出産、ジェンダー問題など、リアリティな話題が盛り沢山です。多くの女性に夢をお届けしたいです。
五月に入り一家三人で祖母の住んでいた足柄の故郷を訪れた。 祖母の家は今ではもう人手に渡っていた。 外観は何も変わっていなかったものの、庭は若干荒れていた…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密⑫これでみんな本当の家族に!
ダイニングからリビングへ移動すると、もう先ほどのぎこちなく気詰まりな空気は跡形もなく消えていた。 マモルさんもすっかり落ち着いてしまい、まるでこの家の…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密⑪黒い霊石の首飾りの秘密
「ちょっと!今いいじゃんっ、そんな話・・!もう~~やめてくれよ~。」 マモルさんは顔を赤らめ、嫌がって情けない声を出したものの、経験上、両親がひとたび酔…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密⑩美憂さんの生い立ち
しみじみと話の余韻を味わうようにしてみんな黙っていると、突然美憂さんが口を開いた。 「実はあたしの方の家柄にも伝説があるんです。」 美憂さんが、美しく周…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密⑨美憂さんの底知れない力
叔父さんは話題を変えるようにして、美憂さんの方に向き直ると店では女将のような仕事をしているのかと尋ねた。 「いいえ、あたしは自分で仕事を持っていて外で…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密⑧エロスと不知火家の伝統芸能
叔父さんはこうした話が交わされている間、口元に皮肉な笑みを浮かべたまま、じっと黙っていた。 私はふと、あの性愛の妖精に彩られた美しい「飛天の間」のこと…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密⑦女性の性の神秘
「遊女という職業にも何か関係のあることなのかしら?」 おばさんはそうした職業に日ごろから嫌悪感を抱いていそうだが、この時はもう好奇心を前面に出していた。…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密⑥境目区域で発揮する女の霊力
「情緒的で、すごく素敵なお話ですわね・・。美しいような、怖いような・・。」 すっかり話に引きこまれたように、素直に感想を洩らしたおばさんの顔も、瞬時に何…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密⑤木之助に宿った魂は、植物の精霊の祖先?
「人形芝居に使用した木彫りの人形は全部で四体、男が三体、女が一体で、あの時の旅の一座の構成と全く同じだったのです。この霊験は夢主の曾祖母をはじめ、話を聞…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密④不知火家と「霊界」
「先ほどお話しした私の曾祖母に当たる遊女のいた足柄山の峠は、駿河国と相模国の境目に当たるのですが、この境にはあの世とこの世の霊界があると言われているので…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密③不知火家の生い立ちと神秘的な精神教育
「自分の三代前の女・・曾祖母は遊女で、一家で旅芸人をしていたそうです。踊り、歌、人形芝居、説法などの芸術を身に付け、最初は足柄、箱根辺りを流していたの…
マモルさんにはどんなに訊いても、あの日以来、もうミーチャも倉場看護師のことも覚えていなかった。 「三年生の先輩?あの女子高のトイレの井戸端会議の話だろ…
中谷産婦人科No.3 二十章 不知火家の秘密①マモルさんのもてなし料理
不知火家と小早川家の間には依然と変わらず気まずい隔たりが残されていた。 小早川家のリビングでは、叔母夫婦を向かいにして、相変わらずお義父さんも美憂さんも…
それから一週間が過ぎた。 ミーチャからは連絡はなかった。 いつものことだが、ミーチャの家を出ると慌ただしい日常が返ってきて、あの部屋で過ごした時間が夢物…
中谷産婦人科No.3 十九章 夢幻の館⑩人間と神様は表裏一体
突如、あの大人の風格に魅了されていた八景島のデートが、遠い昔のことのように脳裏に蘇った。 なぜ野本に似ている人形が・・? そして・・この人形は一体何の…
中谷産婦人科No.3 十九章 夢幻の館⑨ついに明かされる禁断の事実
しかし、頭の中ではまだ何か・・遠回りしようとしていた。 「彼女たちの民族は、信心深いんだ。」 自分の故郷のものと住んでいる土地のものを融合させて作ったと…
中谷産婦人科No.3 十九章 夢幻の館⑧水の精霊と野本の関係?
しかし、ミーチャは私の恐怖心を和らげるかのように微笑み、その物の怪のような青白い顔には、思いがけず、タンポポの花の様な可憐さが広がった。 そして、人形の…
「まず、木や森、草花などの植物の精霊の話からするけど、植物の精霊は確かに建物に現れるケースが多いけどね。」 「・・その話が不思議なんだよね。だって運命…
中谷産婦人科No.3 十九章 夢幻の館⑥次第に押し寄せる不穏な渦巻き
それからも、私とリュウはミーチャの家に食事やお茶にたびたびお呼ばれされるようになった。 「また今日もあの友達の家に行くのか?」 ある朝、マモルさんは玄関…
その絵画を観た時、その色彩豊かな大胆な構図に一瞬で目を奪われた。 しかしなんといっても、強烈なインパクトを与えているのは、中央の六つの乳房を持つ人物だっ…
中谷産婦人科No.3 十九章 夢幻の館④異世界のような昼食会
「ミーチャ、食事だよ!」 突然扉が開いたかと思うと、ミーチャと姿や雰囲気のよく似た少女が食事を載せた銀製のワゴンを運んできて、タイルでできたテーブルの上…
中谷産婦人科No.3 十九章 夢幻の館③美しいが奇妙な部屋・・
目を開けると、室内は思いのほか広々としていて、今しがた見たおんぼろの木造建築からは全く想像もつかなかった、西洋風の色彩豊かな光景が広がった。 フローリ…
中谷産婦人科No.3 十九章 夢幻の館②植物の世界の中に人間の生活が?
店の片側には、天井が高いのをいいことに、棚にしては大きく、建築にしては小さなスケールの、三段飾りになった「透明のスペース」が設置されていた。 薄いガラ…
中谷産婦人科No.3 十九章 夢幻の館①熱帯雨林の中に見る不思議な店
それから数日後、ミーチャからうちで昼食をご馳走したいのでぜひ遊びに来て欲しいという誘いの連絡をもらった。 私はミーチャの話した通り、中谷産婦人科の脇の…
中谷産婦人科No.3 十八章「産婦時代」新しい世界⑧久しぶりの夫婦の会話
マモルさんは炬燵の中から火照った躰を蛇のようにくねくねと這い出すと、汗をぬぐいながら素早くベッドに行き、私に背中を向けながら折りたたんであったパジャマに…
中谷産婦人科No.3 十八章「産婦時代」新しい世界⑦マモルさんの変化
「・・どれ、寝たかな。」 マモルさんは立ち上がると、ソッとリュウをベビーベッドに横たわらせた。 お風呂から上がった後も、マモルさんはずっとリュウを抱き…
中谷産婦人科No.3 十八章「産婦時代」新しい世界⑥家族三人の生活
その数日後、私は叔母夫婦の家を出て、リュウを連れて自分の家へと帰って行った。 住宅地の坂道に辿り着くと、あまりにもノスタルジックな光景に、染み入るような…
中谷産婦人科No.3 十八章「産婦時代」新しい世界⑤一か月ぶりの中谷産婦人科
いよいよ一か月検診を迎えた。 一か月ぶりの中谷産婦人科は何も変わっていなかった。 広々としたロビーいっぱいに外来患者達の雑踏で賑わっていた。 中央の大…
中谷産婦人科No.3 十八章「産婦時代」新しい世界④様々な生き方・・子供を産むことが全てではない
おばさんに毎日のように来ても構わないと言われて喜んでいたマモルさんだが、実際には遠慮もあるし、仕事の都合上そう頻繁に来ることはできなかった。 あらかじめ…
中谷産婦人科No.3 十八章「産婦時代」新しい世界③大自然の象徴物である産婦人科という施設
その夜中から一人ぼっちの授乳が始まった。 静まり返った中で赤ん坊と二人っきりでいるのはとても不安だった。 私は入院中にテレビで見せられた佐渡の別鍋を思…
中谷産婦人科No.3 十八章「産婦時代」新しい世界②マモルさんの決意
家の中に入ると、アロマテラピーのいい香りが漂った。 廊下を通り抜け懐かしいリビングに入って行った。 居心地が良く温かく、五か月前と何も変わっていない。 …
翌日私は最後の朝食を済ませ、おばさんが紙袋を提げて持ってきてくれた入院時に着ていたマタニティウェアに着替えた。 実に久しぶりの私服の肌触りだった。 そ…
中谷産婦人科No.3 十七章「産後四日目」生と死⑦妖怪の真の目的とは
「一番大きいのは宗教の力かしらね。最初は、自然を司るだけの神や女神に過ぎなかったものが、人間がさらに幅広い役目を付け加え、高度な人格を与えてくれるように…
中谷産婦人科No.3 十七章「産後四日目」生と死⑥倉場看護師の語る「妖怪と施設」の関係とは?
就寝時間に入ろうとした矢先に、倉場看護師がカーテンを引いて私の所に入って来た。 私はちょうどこの産院での最後の夜を噛みしめていたところだった。 同時に、…
中谷産婦人科No.3 十七章「産後四日目」生と死⑤彼女の告白
マモルさんや翼さん達が帰った後、私はじっと一人考え込んだ。 知っている人間が死んだのだ。 それが元担任であり過去に私と交際をしていた男だ。 あんなにひ…
中谷産婦人科No.3 十七章「産後四日目」生と死④一体何が・・
「えっ?」 私はびっくりしてマモルさんを見つめた。 「なにっ?どうゆうことなんだよ?」 他のみんなも動揺して騒ぎ立てた。 マモルさんは話し始めた。 「…
部屋につくと、マモルさんは一つしかない折り畳み椅子を翼さんに譲るように、黙って寝台の上に腰かけた。 「両隣に人がいねえとすっきりしていいなぁ!おいっ。」…
中谷産婦人科No.3 十七章「産後四日目」生と死②ヤムさんが死神?まさか・・
その日は九時から沐浴指導があった。 インターホンで倉場看護師から呼び出しがかかる。 ちょうどマモルさんも来ていたので、一緒に同行してもらった。 私は初…
翌朝の検診に橘医師はいなかった。 代わりにいたのは副院長だった。 無意識のうちに橘医師に会うことを待ち望んでいた私は、ひどく物足りない気持ちで思わずが…
中谷産婦人科No.3 十六章「産後三日目」普遍の芸術⑥ママ友になった私たち
二十時になると、私とミーチャはマモルさんとリンさんと別れ、授乳室に向かった。 いつものように二人で並んで腰かけておっぱいを含ませていたが、私はミーチャ…
中谷産婦人科No.3 十六章「産後三日目」普遍の芸術⑤楽しい団らんの時間
「あれっ?ここユマちゃんの場所でいいんだよな?」 ほんの数分ばかりまどろんだところで人声がして目を覚ました。 手元の明かりをつけると、翼さんとミツキさ…
中谷産婦人科No.3 十六章「産後三日目」普遍の芸術④リカバリールーム?
やがて職員のテキパキとした声が部屋の中に入って来た。 その声は近づき、右隣のカーテンが揺れた。 分娩したばかりの女が台車で運ばれてきたようだった。 職員…
午後から始まった授乳を終えて、私は部屋に戻るなりぐったりと横たわる。 時計をのぞくと十五時半だった。 夕食の時間までまだ一時間半もある。 もう幾度とな…
中谷産婦人科No.3 十六章「産後三日目」普遍の芸術②それぞれの話す施設との相性
昼食後の授乳が終わった後に、私は福島さんに誘われて談話室の方へ向かった。 ミーチャはお見舞いに来てくれた親類の人達を部屋に残しているからと言いながらバタ…
中谷産婦人科No.3 十六章「産後三日目」普遍の芸術①橘医師の意味深なセリフ
産後三日目の朝を迎えた。 いよいよ入院生活も残り二日である。 私はいつものように一階に降りていくと、福島さんが駆け寄ってきた。 「あ、不知火さ~ん、知…
中谷産婦人科No.3 十五章「産後二日目」広がりゆく産院の風景⑤男の顔
「ふぅ、助かったよ。」 私は肩で呼吸をしながら思わず言った。 「旦那さん、いい人っぽいね。」 ミーチャは私を楽しそうに横から見上げた。 「そう?」 「う…
中谷産婦人科No.3 十五章「産後二日目」広がりゆく産院の風景④気まずい隔たり・・
今日で三回目の授乳を終え、シャワーを浴びて部屋の前まで戻ってくると、ちょうどマモルさんがロビーの方からこちらにめがけて歩いてくるところだった。 私が小…
中谷産婦人科No.3 十五章「産後二日目」広がりゆく産院の風景③この二階は、最も尊い「実践」を行
講演会は特別会議室というところで行われた。 先ほどと同じような殺風景な教室のような部屋で、黒板の前では院長が堂々と構えていた。 集まったのは同じ日に出…
中谷産婦人科No.3 十五章「産後二日目」広がりゆく産院の風景②同じ日に出産した女性たちとの交流
この日は、産後二日目の産婦達のために、院長が講演会を開く予定になっている。 私は集合場所の二階のロビーのあたりをフラフラしていたが、開始時間までまだ間…
中谷産婦人科No.3 十五章「産後二日目」広がりゆく産院の風景①二日目の朝
翌朝、私が一階のロビーに降りて行くと、早めに出てきたせいもあり、診察室の前には人がまばらにしかいなかった。 ミーチャはもう到着していて、清掃員のヤムさん…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち⑫現代版娘宿のしんみりとした趣の夜
ホッと一息ついてフラフラと自室へ引き上げると、私はそのままパターンと横倒れになってしまった。 思っていた以上に緊張してしまい、他の母親たちのように赤ん…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち⑪初めての授乳
昼食後には母乳マッサージがあり、またもや二階のロビーに呼び出された。 ロビー左手側の「マッサージ室」には新米産婦達の姿があったが、ミーチャは来ていなかっ…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち⑩なぜか怪訝そうなマモルさん
ミーチャの部屋から戻ってくると、今度はもう昼食のワゴンが来ていた。 お昼のメニューは、ごはん、メンチカツ、ポテトサラダ、天ぷらうどん、お吸い物、漬物…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち⑨施設との相性?
おやつは自家製のポテトパイと牛乳だった。 机の上には、ずっしりと厚みのあるポテトパイの載った白のケーキ皿と、牛乳瓶の他に、ピンクの小さな紙が置かれてあっ…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち⑧三人の不思議な結びつき・・
ふと気が付くと私達の座っているソファからやや離れて、新生児室の前に七、八人の産婦達が集合していた。 キョロキョロとしている倉場看護師の姿も一緒である。 …
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち⑦彼女の名前はミーチャ
「え、この人のこの声・・。」 そうだ、この鈴の音色のような美しい声はあの、三年生の先輩だ! 彼女が、彼女があの私の学校の先輩だったというのだろうか! 「…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち⑥可憐な少女との再会
配膳が下げられた後、私は点滴を打たされたりしていた。 早朝の検診の時、血圧が低かったので、別の看護師が、もう一度測定をやりに入って来たリ、ただ事ではない…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち⑤産後の趣き・・娘宿のような暮らし
部屋に戻ってくると、再び真っ暗な起き抜けに感じたままの澱んだ空間がそこに残されてあった。 私はその、女性達が躰から発散させている強烈なにおいのこもった深…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち④せっかく口をきいてもらえたのに・・
この後、別の部屋で産後用のコルセットを身に付け、ユカタを新しいものに取り換え、正式な入院患者になるべく洗礼が行われた。 私が歩いていくと、一階のロビー…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち③橘医師との診察室での再会
「四十三番の不知火ユマさん3番診察室にお入りください。」 私はおっかなびっくり、ドギマギしながら診察室に入って行くと、いきなり橘医師の後姿に出くわした。…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち②産後の女達・・まるで聖母像みたい
洗面用具を置いていくために自分の寝台に戻った時は、部屋の中はもぬけの殻といった感じで、いくつかのカーテンが開きっぱなしになっていて、しどけなくも一様に…
中谷産婦人科No.3 十四章「産後一日目」聖なる青い花たち①充満する性の霊力
『ピンポンパンポン』ーご入院の皆様に申し上げます。検温の時間になりました。まもなく検診が始まります。院長先生が待っているので、外来診察までお越しください…
中谷産婦人科No.2表紙・目次はこちら↓https://blog.ameba.jp/ucs/entry/srventryupdateinput.do?id=…
中谷産婦人科No.2 十三章 究極のマゾヒズム⑦これから始まる五日間の入院生活が不安
面会時間を過ぎた頃、隣でゆっくりとしていた男性がやっといなくなった。 夜の闇が私達の入院部屋を更に包みこむ。 真冬の冷たい風が窓ガラスを叩き、しーんと寂…
お義父さんと美憂さんは一足先に帰り、マモルさんが私を部屋まで送っていくような形でついてきた。 ロビーを抜け、天井の低い細い通路をずっと歩いて部屋の前まで…
中谷産婦人科No.2 十三章 究極のマゾヒズム⑤あの屈辱が・・ものすごく奇妙な感情の芽生え
すると、二階の踊り場にマモルさんが姿を現した。 マモルさんは素早く私達の姿を見つけると、半ばびっくりしたような表情で小走りに近づいてきた。 「お久しぶり…
中谷産婦人科No.2 十三章 究極のマゾヒズム④久しぶりの再会
二十時近くになり、看護師が私の寝台のカーテンを引いて顔をのぞかせた。 「不知火さん、ご面会ですよ。」 その後ろから現れたこげ茶色のロングコートを着た女性…
中谷産婦人科No.2 十三章 究極のマゾヒズム③産婦達との共同生活
泥の様に眠りこけて、今度目が覚めた時はもう夕方だった。 「不知火さん~。」 分厚いカーテンの開く音と、聞き馴染みのある倉場看護師の声に起こされた。 起き…
中谷産婦人科No.2 十三章 究極のマゾヒズム②大自然との一体化体験
二人がいなくなってしまうと、また鳥肌の立つような心細さが押し寄せてくる。 陣痛室に冷たく放置されていたあの拷問の様な長い時間が今にも蘇ってきそうだ。 部…
中谷産婦人科No.2 十三章 究極のマゾヒズム①産後の入院部屋
分娩室から、新しい部屋に移った瞬間はあっという間だった。 台車に乗せられた状況の私の視界に飛び込んできたのは、天井の煌々とした明るい蛍光灯と、一つ一つ寝…
私は、自分の体内で起こった凄まじい自然現象に、未だかつて味わったこともないほどの衝撃を受け、生まれて初めての「肉体の苦痛体験」を知った驚きでいっぱいだ…
どうやって分娩室までたどり着いたかは、ほとんど覚えていない。 私は車椅子に乗せられて、頭を項垂れていた。 何やら学校の廊下のようなところを渡っている感じ…
中谷産婦人科No.2 十二章 陣痛室⑨運命の変わり目に現れた看護師
仕方なくうつらうつらしていると、あのチャイムとアナウンスが聞こえてきた。 辺りはまだ真っ暗である。 私は、院長はまた内診に来てくれるだろうかと心配にな…
中谷産婦人科No.2 十二章 陣痛室⑧大自然を前にすると人間は無力である
時計の針はまるで動かないかのようだ。 できれば眠って気を紛らわしたい。 薬の作用も手伝って、本当は眠くて眠くて仕方がないのだ。 ところが、睡魔に誘われる…
中谷産婦人科No.2 十二章 陣痛室⑦ユカタにまで染みついた孤独の夜
気が付くとすっかり夕方になっていたらしく辺りがもう暗かった。 私は手元のスタンドの明かりをつけた。 カーテンの向こうでも電気がついた。 私はその明るい…
中谷産婦人科No.2 十二章 陣痛室⑥薄気味悪いグリーンの靄
やがて、人のガヤガヤとした声や紙袋のガサゴソする音が聞こえてきた。 どうやら私の向かいの寝台に誰かが入ってきたらしい。 私は孤独から救われた様でホッと…
再びカーテンが開いたかと思うと、昨夜の看護師が現れた。 「院長先生がこれから診察に来ます。」 そう告げると、布団をはいで、ユカタをたくし上げられた状態…
中谷産婦人科No.2 十二章 陣痛室④中谷産婦人科で迎えた初めての朝・・
私は何とか眠りに落ちることができた。 眠っている最中に幾度となく陣痛に襲われたが、二日前から無心に身に付けた呼吸法で、無意識に痛みを逃した。 夢うつつ…
中谷産婦人科No.2 十二章 陣痛室③恐ろしいものの正体とは・・
「・・・痛いっ!」 ほんの少しまどろみかけた時、ぎゅーっと体内から底に刺激するような痛みを感じて目が覚めた。 同時に、トントントントンと、心拍数の激しい…
看護師がいなくなると、私は巨大な闇の中に一人残された。 恐怖と濃密な空気がムーンと部屋中を支配している。 私は仰向けの姿勢のままで、冷たくて硬い寝台に…
通されたその部屋は、まるで牢獄のようだった。 寒々とした暗闇の中にガラーンとした空間が広がり、触るのも憚られるような冷たそうな古っぽい病人専用のベッド…
中谷産婦人科No.2 十一章 産前期⑤最後の妊婦生活の夜・・さようなら二人だけの我が家!
その日の深夜から、今までと違いお腹が張って、痛みが底からズーンと響いてくるものへと変わった。 これはもう、誰が何を言おうと陣痛以外のなにものでもなかった…
翌朝引き続き緊迫感を背負いながら起き上がったが、朝のひんやりとした外気と、朝らしい清々しさの中に紛れていった。 お腹の痛みもずいぶんと和らいでしまったよ…
二月も中旬に入った。 いよいよ臨月を迎え、予定日が一刻一刻と近づいてくるのが感じられるようになった。 私の体を気遣い、日中に美憂さんやミツキさんからたび…
中谷産婦人科No.2 十一章 産前期②マモルさんの弟の木之助?
「え?木之助?」 私が驚いていると、マモルさんは立ち上がり、例の木のコブの人形を持ちあげ、柔らかく抱きしめながら戻って来た。 私はその木のコブの人形の隣…
中谷産婦人科No.2 十一章 産前期①妖怪と精霊・・マモルさんは信じる?
「ねぇ、マモルさんは妖怪とか妖精を信じてる?」 ある日、いつものように夜が更けていくのをゆったりと楽しんでいる時に、私はマモルさんのマグカップに紅茶を注…
中谷産婦人科No.2 十章 闘いの母性⑦十人十色・・さまざまな女の生き方
「とにかく・・通常の主婦と違い、何かとても自由な生活を楽しんでいらっしゃることが分かりましたわ。」 これまで黙っていたミツキさんがすっかり業を煮やして…
「では緑川さん、お聞かせくださいな。あなたはどのような上流な楽しいお暮しをされていますの?」 阿部さんのその声は思いのほか穏やかで、表情にも敵意はなく…
しばらく沈黙が続いたのち、阿部さんがまた新たに何か思いついたような調子で口を開いた。 「ところで、皆さんは全員、主婦の方たちなのかしら?」 その言葉は…
やがて阿部さんが、しみじみと味わうような口調で言った。 「・・でも先生、今回はカレーなんて珍しいわね。たまにはこんなのもいいわねー。」 「ええ、皆さん…
中に足を踏み入れると、建物の殺風景な外観からは全く予想もつかなかったような空間が現れた。 まず最初に驚いたのは、大きく引き伸ばした本物の植物の画像が床…
「あのぉ、すみません・・今日料理教室に来た方ですか?」 私達を見ると、明るい色に染めたフェミニンな長い髪をなびかせながら慌てたように近寄って来たその女性…
不定期にマモルさんの夜の遅くなる日々が舞い込んでくる。 少年時代の自分の女装姿のことであれほど恥ずかしがっていたマモルさんだったが、私とミツキさんが思…
中谷産婦人科No.2 九章 二人だけの愉しいパーティ④新しい空間・・巣作り
こんな風にマモルさんと自宅で過ごす時間は様々だった。 ある時は一緒に四コマ漫画を描いたり、アクセサリーを作ったり、拾ってきた植物の標本の制作をすること…
中谷産婦人科No.2 九章 二人だけの愉しいパーティ③いつもとは違う自宅・・官能の夜
マモルさんの瞳が、からかうように大きく揺れているのが見ないでもわかる。 「フフフ・・かわいいなぁ・・俺に見られてるのが嬉しそう・・!」 とベッドの裾の方から…
中谷産婦人科No.2 九章 二人だけの愉しいパーティ②黒レースのランジェリー
私達の恋愛は、暮らし始めた時のぎこちない雰囲気が今ではすっかりなくなり、お互いがお互いにのめり込むように、激しく深まっていく感じがした。 マモルさんは常に…
中谷産婦人科No.2 九章 二人だけの愉しいパーティ①自宅デート
マモルさんは以前、「楽しいことなんていくらでも見つけられる。」と話した通り、確かに遊びの達人であった。 無心に愉しみの中に耽るコツをよく心得ており、彼独自…
中谷産婦人科No.2 八章 魔性のカメレオン⑥性の本性・・病み上がりに見たもの
翌朝、陽が射す時間帯になってマモルさんは起きだした。 熱が引いたみたいですっきりとした顔をしている。 冷蔵庫から水差しを取りだすと、グラスに並々と注ぎ、喉仏…
中谷産婦人科No.2 八章 魔性のカメレオン⑤非日常・・乱れ狂う妖気の花
そう・・あれは忘れもしない、数日前の寒い日曜日の黄昏時のことだった。 私が買い物に出ようと玄関から外へ踏み込んだところで、マモルさんが一人の見たこともない大…
中谷産婦人科No.2 八章 魔性のカメレオン④翼さん一家との食事会
やがて翼さんが帰宅してきた。 「あら、お帰りなさい。早かったわね。」 とミツキさんが声をかけると同時に、かずきちゃんもともやちゃんも立ち上がった。 「パパ~…
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