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  • 或る花の名前

    花は良いなと、より思うようになった。 足音のしない店内に、花の命を感じた。 深い眠りから私を覚ましたのは、誰かが差し伸べた、温かな手だった。 眠りの底に着いたとき、お日様の香りがした。 「もうすぐ花が咲くね。」という、誰かの言葉が聞こえる。 私はそれを待っていたのだと思う。 窓に付いた水滴を一粒、それと優しい気持ち。 横目には、涙目で外を見つめる、白い顔。 あの青く澄み切った空から聴こえる、知らない歌。 いつ枯れるかも分からない、花束を抱えたまま 重力から解き放たれて、ここから旅立とうとする人へ送る 一輪の花。

  • 熱帯夜を拐う。

    夜更けにも関わらず、誰かが音楽会を開こうとしている、そんな気がした。 そよ風に乗せられて、運ばれて来た夜の香りは、寝室を客席へと一変させる。 寝苦しいとは思わなかった、ただ昔からある扇風機の音だけが、僕の耳へ届いた。 まるで夏祭りの後、そこで流した土と埃を含む汗を、ラムネですぅと流すような 飲み続けるに連れて、コップの底に溶けきれずに残っていた、蜂蜜の香りのような そんな夏の夜に、家族で川の字で寝ている僕達、これは優しい気持ちになれる。 僕達の世界には様々な香りが溢れている、夏が訪れると、僕はいつも思い出す。 記憶にこびり付いている、一つしかない、僕だけの香り。 僕達が認知しきれない「何か」が…

  • 小窓から。

    新居とも見て取れない、だけど懐かしい香りを感じる一軒家。 空が赤トンボと同じ色に染まってきた時、僕は小さな小窓から中を伺う。 陽に照らされた室内には僕の影が一つと、地平線に沈む陽が一つ。 僕は今でもこの景色を思い出して、この景色を見つめている。 僕の瞳が捉えたこれは、果たして幻なのか、果たして宇宙なのか、果たして愛なのか。 似たような住宅街に佇む、だけど誰も見たことがないであろうこの家。 小窓の向こう側、室内に足を踏み入れた時、大発見を見付ける気がしている。 今と、過去と、空間が交差して誰も見たことがない宇宙になる。 銀河系は僕の手の平で円を描き、命の始まりと終わりが一つになる。 誰かが想いを…

  • つれづれなるままに。

    あの暗がりに或る扉の向こう側、そこには何が或るのだろうか。 月の裏側か、空の裏側か、心の裏側か。 「夜」はまだ覚めぬ、覚醒した世界へと繋がっていると思う。 海面に揺れる朧月と、月を目指す竜の鱗。 その甘い海の中を、儚げに溺れていく少女。 深い海底の底に眠る、かつて栄えた人類の痕跡を見た。 起こしてはならない人、そっと手を握る。 硝子の様に砕け散る、その少女の心は、誰にも気付かれることはなく。 暗く冷たい海の底で、長い時の中、かつて私だった者の手を握る。 電車の汽笛、自動車の急ブレーキ、青に変わらない信号機。 少しずつ、そして確実に壊れて行く音を、夜は許容する。 遠い所に、手を握っていた頃に、思…

  • 反対の人間

    見覚えのある背中を追うようにして、慌てて煙草を消し、店内へ入る。 商品棚の間から顔を覗かせるも、それらしい姿はどこにも見当たらない。 諦めて缶麦酒をレジへ持って行こうとしたその時、その背中は店内を出る所だった。 「待て」と車に乗る所へ、声を掛ける。 僕は煙草を吸っていた、見覚えのある背中が店内へ入るのを見て、慌てて後を追う。 店内へ入ると深夜だからか、奥の方から遅れて挨拶が聞こえる。 姿が見当たらないので諦めようとしたその時、その背中は店内を出る所だった。 店員の挨拶が、遅れて聞こえる。 駐車場へ車を停止させた所だった、車内に効かせている冷房が一段と強くなる。 晩ご飯を買い早く寝ようと思い、顔…

  • 指揮者がいないオーケストラ

    季節外れの暑さに、春は砂糖菓子のように溶けていく。 もし言葉に手足が生えていたら、重力に逆らって、心まで届くだろう。 春の終わりか、夏の始まりか、知らせるように鳴くカエルの合唱が届く。 景色を、光の線のような残像で捉える。 果てしない道を見るように、ただ見ていた。 汚いことばかり教えられて、美しいことは見付けなきゃいけない。 家出をする少女が持つような、ビー玉のような儚さと、強さ。 大人に対して抱いていたあの感情を、忘れていることに気が付く。 どこでどのように変わっていったのか分からないまま、ブラックホールに吸い込まれる。 地球を横目に見ながら、ここではない月に飛んで行きたいと思う。 忘れ物を…

  • a.

    沈んで来た所が丁度、海の底だった。 誰かを呼ぶように泣く子供の泣き声が、まず耳に届く。 次に、足元で秒針を刻む、昔からある時計が目に付いた。 静寂が仁王立ちをし、暗雲の向こうから泣き声は聞こえる。 まるで四方を壁に囲まれているように、息苦しい。 よく目を凝らすと、目の前に色を失った本棚がある。 誰かを待ちくたびれて、そのまま時が流れて行ったような本棚。 そこから一冊、文庫本を手に取ってみる。 暗く、題名が読みづらかったが、そこには「a」と書かれていた。 トイ・ストーリーに出てくるバズ・ライトイヤーは、「無限の彼方へ、さぁ行くぞ」と言い残して、飛び立った。 なにも「無限」を目指そうとは思っていな…

  • 誰も知らない扉の開け方。

    缶珈琲を飲み終わった後、煙草を吸い終わった後、美しいことを見た後 瞳の奥に小さな灯火を携えて、一歩を踏み出す時 その一瞬だけ、自分を好きになれる。 ○か✕か、分からないまま歩み進めてきた今 私の目の前にはようやく、大きな観測所が現れた 未来と過去から来る電波を受信して、なんとなく、ただそれだけで。 幾度も書き加えてきた世界地図に、あてもなく書き加える これは別に宝の地図でもなければ、未来予想図でもない 小さな鏡を取り出して、自分の顔を見るような物。 天国か地獄か、そんなことはどうでも良くて ただ楽園があるのであれば、私の手を引いて連れて行って欲しい そこで私は何も考えず、ひたすらに透き通るよう…

  • 履き慣れていない靴で、走る音。

    私は今、耳を澄まして聞こえることを、空を見上げて思うことを。 内側から迫り上がる声を、外側へ響かせている。 なにもないな、なんて、顔色を伺うように空を見て。 私の中に否応なく侵入してくる物事に、定義と意味をつけて。 いるものと、いらないものに分ける作業が鬱陶しい。 これを放っておくと、よくない。 溜め息を吐くと、目に見えて足下へ転がる。 言葉の繋がりを見るように、自分の繋ぎ目を見て、ほつれている糸。 汚くて、汚れていることばかりが、へばり付くように影を成す。 窓際を覗くと、季節は新緑になっていた。 カーテンが靡くのを、目の端で捉えている。 小川のせせらぎと、小鳥のさえずりを耳にしながら、今日の…

  • オーロラを見ていた乗組員

    かの船はかつて世界中の海を旅していた、大いなる自由の船らしい。 ゆきたい場所へ舵を動かし、風が吹く方角に帆を張る。 陽が沈む向こう側を目指し、そして全てを知り得た。 世界の成り立ちを理解した時、言葉をなくした潜水士は海へ飛び込んだ。 そこからの行方は誰も知らない、船には彼女のぬくもりだけが残される。 大いなる自由の旗の下に集った船員達は、みなどこかへ行ってしまう。 だからこの船には僕一人、たまに白熊が手伝いに来てくれる。 旅を終えてから僕らの役目は、大海原に漂う配達物を引き揚げ、届けることだ。 高層ビルと呼ばれる建物、車と呼ばれる物が走っていた時代の遺産が多い。 あれから世界は大きく変革してし…

  • 想像の魔法

    知らない言葉が重く、海の底に横たわる。 酷く古い言葉、海藻や珊瑚が張り付いている。 誰にも伝わらずに届かなかった言葉が、息を潜めている。 そのむかし、ここは欲望と快楽と探求が渦巻く街だった。 それも過去のこと、今となっては私と残された言葉たち。 わずかな月明かりが海底に差し込む、そこだけにぬくもりを感じる。 浮き上がる泡が、小さくピアノを弾きながら海面へ上がる。 海底の更にその下、地底の底に存在する巨人からの泡。 私はそれを体内に取り込んで、ようやく息が続いている。 此処は最果て、私たちが持っていた力や、求めていた欲。 そういう所謂、人間らしいものはなくなってしまった。 世界に必要なものだけが…

  • 宇宙の外側にあるもの

    宇宙の外側にあるもの、そこには人の心がある。心の奥は、宇宙へ通じている。そこから、宇宙の外側にも行くことができる。「人の心の在処」とはよく聞く疑問であるが、そんなことは誰にも分からない。ただ僕は、宇宙の外側にあるのだと思っている。誰にも認知されない、理解されない、認識することができない、まさに宇宙の外側。心を理解するのは不可能なのである、それは気持ちが通じ合っている、というまやかし。 ただ感覚として、心に傷を持つ人は分かる、どこか影を持つのも。その瞳の奥には、宇宙がある。そういう瞳を見たことはあるか、暗がりの中に確かに持つ、強さと優しさを。その瞳に落ちた時、人はそれを「恋」や「愛」とも呼んだり…

  • 子供の惑星

    流れ着いた小さな島、椰子の木がぽつんと塩風にそよいでいる。 砂浜は陶器のように白く、そしてどこか温かい色を持つ。 辺りは海に囲まれていて、それ以外はなにもない、あってはならない。 私が目を覚ました時、まず海の香りが鼻に付いた。 ずぶ濡れの体を起こすと、空は夏のように青く、海はどこまでも続いている。 ここに私一人、立ち尽くす。世間や社会から離れて、私はどこへ来たのだろうか。 そよ風が体を包む、揺れる椰子の葉。 陽射しを見上げると、陽光を透過する私の体。 雲一つ持たない空に漂う、誰かの願いが灯る鳥。 黄金のラムネを売る、無人の屋台。 冷えたラムネを手に取り、火照った体を潤す炭酸。 汗が頬を伝わる、…

  • 波を掴む

    見えないもの、捉えられないもの、手から零れ落ちるもの。 実体がないもの、感覚が乏しいもの、波のように揺れるもの。 掴んで、零して、また掴む。 君はどう掴む、握り締めるのか、抱きしめるのか。 確実に掴んだと手を握り締めた時、それは嘘かも知れない。 手を開いた時、そこにはなにもなく、揺れる波のようなものがある。 手の平を高く空へ突き上げると、青が零れてくる。 可能性と不確実の色、それが青、蒼。 知らない「なにか」がそこにある。 ゆらりと揺れる波、世間の熱気、伸びた君の影。 言葉だけが波の中を漂い、そして届く。 私たちを繋ぎ留めるのは言葉。 君の影に隠れて問い掛ける、ここは何処と。 流れ着いた小さな…

  • 古の砲弾

    かつてこの地で、かの惑星による大戦があったらしい。 ぼくは今、火星の荒野に立ち尽くしている。赤く焦げ茶の大地には、ごろりと石が転がり、目の前には大きく城壁のような砦が構えている。その城壁を囲むように配置されている、見たこともない大きな戦車。その有様は、「グスタフ」といわれている巨大列車砲のようだ。そいつが幾つもあり、どれも破壊されている。見るもの全てが大きく、ぼくは圧倒されている。 あの城壁の向こうになにがあるのかは、誰も見たことがないらしい。いわゆる「世界の秘密がある」という人もいるけれど、ぼくはもっと単純的なものだと思う。ぼくの仲間は全員、この地に眠っている。指揮官を看取る時、一枚のメモを…

  • 読者登録100人を迎えて

    私事ではありますものの、この度、読者登録が「100人」を迎えました。 いつも立ち寄っていただいている、どこの誰かも分からぬ皆様、ありがとうございます。 なんのまとまりもない文章に目を通していただいて、嬉しいです。 私も訪れられた方のBlogには、できるだけ訪問させてもらいますので、今後ともよろしくお願いします。

  • 潜水士が乗る船

    塞き止める、僕は今、水の中にいる。 ちっとも苦しくはない、そこで水が外へ溢れ出すのを防いでいる。 ここは教室、いわゆる高校生、先生...先生...先生。 沈んだ教室に小魚の群れが来る、地震のように揺れる。 そこに大きなシャチが来る、あるすべてを平らげに来たようだ。 僕たちはまだ何者でもない、優秀、平均、劣等、なにかを待っている十代。 それは大人になろうと変わることのない、つまらなそうにガムを噛む。 シャチの餌になる、そこで生まれ変わる。 ぷくっと空気を零しながら沈む少女、瞳は外を見る。 そうして少女はシャチの胃袋へ落ちて行く、先生は黒板に板書する。 何者でもない僕は潜水士になる、Diverにな…

  • 20th Century Boy

    夕暮れを顔に滲ませながら、疲れた顔で帰る人々。 少しホッとしただろう、一日が何事もなく過ぎて。 夜ご飯はなににしようか、インスタントでもいい。 急ぎ足で歩く人、肩を落としながら歩く人、怒りながら歩く人。 僕らはよくやっているはずだ、我慢は続かないだろう。 ハーモニカの音が聴こえたら、もう帰ろう。 ひんやりとした風が、汗を溶かして行く。 今日はコンビニに寄って、たまには買いたい物を買うといい。 するとどうだ、僕らと似たり寄ったりが、同じ土俵に立っているだろう。 喫煙所で肩をすぼめて吸う紙煙草、弱い煙が夕暮れと繋がる。 空に駆け上がる梯子、鏡のように映し出すのはよれたスーツ。 なんとなく、こうじゃ…

  • 月面着陸にはタイムマシンを携えて

    星空の歩き方を知っているか、手鏡を持ってくるといい。 それを目元に当てると、君の眼下に広がる宇宙。 あっという間に大気圏を越えて来た、君は今、無重力。 ごちゃりとした社会を抜け出して、地球を越えて、空を飛び越えた。 そして君は今、宇宙を歩きにかかる。 上と下が逆になる、世界は変わる。 私たちが普段見上げているあの星々の輝きは、なにやらすべて過去のものらしい。 そこにタイムマシンが存在している。 私たちは何億光年と離れた所から、想いを届ける配達員。 届け方は人それぞれ、願うこともタイムマシンで届けることもできる。 行きたい星を見付けることができたのなら、そこにすぅーっと吸われる。 過去を飛び越え…

  • 僕、パンク・ロックを聴いた

    スーパーで花火を買った後、汗を拭いながら駐車場へ歩く時だった。 「僕、パンク・ロックが好きだ」 「中途ハンパな気持ちじゃなくて」 「本当に心から好きなんだ」 喧騒をぶち壊して爆音が響く、車から聴こえているみたいだが姿は見えなかった。 あの一瞬が、この声が、その歌詞が今でも頭に離れない、だから文書に残すこととする。 とてもシンプルに纏まっている、言いたいことは伝わる。 自分の好きなことはなんだろう、それを大声で叫べるだろうか。 好きなことを好きといい、それをやれているだろうか。 あなたの好きなことはなんだろう、それを教えてくれるだろうか。 僕たちは常になにかに追われている、なのに時間がない。 生…

  • 霧に沈む喫茶店(2)

    人参のスープとタコライス、どちらもとても美味しそう。 スープからはほのかに湯気が立ち昇り、タコライスからは焼きチーズの香りがする。 僕はこの二品を頂くことにした、窓の外ではまだ雨が降っているよう。 静かに雨音を耳にしながら食べ進めていると、精算台の奥から若い女性が出てきた。 黒髪を後ろで束ね、Tシャツから覗く肌は陶器のように色白く、赤いエプロンが印象的。 こつこつこつ、と僕の所に持ってきたのはレシートと、硝子で創られたたんぽぽだった。 とても繊細に創られている、名のある職人が手を尽くしたのだろう。 僕はスープとタコライスを平らげて思案する。 どうしたらこの硝子のたんぽぽを、生花に変化させること…

  • 雨音が止む前に。

    大通りから脇道に抜けると、喧騒は遠のいた。 人混みを離れ、森の香りが漂ってくる小道を進む。 雨上がり、雨粒が滴る小人の道を抜けると、妖精が訪れるような珈琲店がある。 木々に囲まれたその店は、人間界を抜け、どこか異国へ通ずるような佇まいである。 ちりん。と控えめな音を出す戸を開けると、珈琲の心地良い香りが鼻をついた。 僕は窓辺の二人がけの席に座り、胸を撫で下ろす。 店内には古めかしくも、どこかお洒落なイスとテーブルがあり、どれも年期が入っている。 壁に掛けられた古時計が、頑張りながら時を刻んでいる。 橙色の明かりが眠気を誘う、雨が降ってきたのか、ざぁっという雨音が店内に響く。 .....ぼーん、…

  • 題名のない文章

    ふとした時に考える、私たちは何故、感情を感じるのか。 楽しいと笑い、悲しいと泣き、怒られると落ち込む。 それがすべてではなくて、人によって捉え方は異なる。 なにかに共感し、同情し、共有する。 大学生の時、「人間は独り」と語っていた教授の言葉を思い出す。 誰かがいるからこそ、そしてその誰かが、あなたと違うからこそ 私たちは一人、二人、三人と仲間を増やしていく。 涙はどこから来るのか、心はどこにあるのか、痛む心はなにか。 なぜ誰にも分からないのか、いつか解き明かされる日が来るのか。 同じ心は一つとして存在しない、私は今日も分からないまま、社会に流される。 上手くできていると思う。

  • 大雲海

    霧の掛かった峠を抜けると、そこには見たこともない大雲海が広がっていた。 山頂から見下ろす眼下には、雲海が広がっている、時刻は24時を少し回った所。 なみなみとした雲が月明かりに照らされて、ゆっくりと流れて行く。 私はそれを見て、綿あめを嬉しそうに頬張る子供を思い浮かべた。 路肩の茂った木々から、今にも人外の類いが出てきそうな黒々とした山道を抜けると、そこには空の秘密が隠されている。 遥か地平線まで続く大雲海、それを見た時、かつて天使だった彼女は雲に飛び乗って流れて行った。 ここにはなにもない、下界のような地獄とは違い、欲望も快楽も差別も存在しない。 この地獄を抜け出すことができる、秘密の抜け穴…

  • 機動隊とカップラーメン

    「機動隊」と「カップラーメン」と「人情」 どうだろう、この三つのワードを書いただけで、そこには「ドラマ」があると思わないか。 今回は読者の想像力に委ねよう。 ※ 後書き ネタがないだけです、絞り切った残りカスみたいな文章です、許して下さい。

  • 夏、揺れる蜃気楼と線路の人影。

    暑いな、実に暑くはないか。これから今日よりも、一層暑くなると考えると気が滅入る。「夏」という季節には、様々な言葉が当てはめられる。青春、恋人、花火、列車、入道雲.....四季があるとは言えども、やはり人生を象徴するようなものが紛れる季節である。 「蜃気楼」を知っているか、暑い時期にアスファルトの路面上で揺れる熱気のことである。あれを見ると、いよいよ夏が近付いて来たと肌で感じる。 読者が少年少女だった頃、線路上に敷かれたレールを「人生」に見立て、あらゆることを思案した時期はなかっただろうか。それを思春期とも呼ぶだろう、あの頃に持っていた疑問、哲学、感情はどこへ行った。まだ、持っているか。 今とな…

  • こちら旅人、異常なし。

    それはまるで、飴色の角砂糖のよう、触れるととろりと溶けてしまう。 水が張られた田んぼの中を、静かに走る電車、車窓から朝日と同じ色が零れる。 三両編成で、如何にも秘境を走っていそう、秘密の街へと辿り着く。 夜の香りが立ち込める、すぅーっとする優しい煙草のよう、月明かりに照らされる。 車窓から零れた朝日は、雨が降るようにぽちゃっと落ちる、そこに蛍が集まる。 電車の音が遠くなる、後に残されたのは私と、祭りの後の静けさだけ。 あの電車の中で揺られていたのは誰、車窓からぼうっと世界を覗いていたのは誰。 今あなたが思い浮かべたその人が、飴色の電車に揺られている。 目的地もなく、ただ時の流れに身を委ねて。 …

  • 伝説のPajamas

    最近は自宅で過ごす機会が多いと思う。 君は家にいる時、パジャマか部屋着を着るだろう。スーツのようにびしっとせず、仕事着のようにしっかりせず、私服のように見栄えを気にする必要がない。 .....伝説のパジャマを知っているか。 なにやらそれを着ると、今まで経験したことがない高揚感に包まれ、安らぎと落ち着きをくれるアイテムらしい。 それを着れば、悩み、苦しみ、辛さ、これらから解放される。 極上の睡眠が約束されるのである、或いは夢から覚めないこともできる。すべてが自分の思い通りになり、なにも気にする必要はない。 そんな部屋着が欲しいとは思わないか、それはこの世界のどこかある。 私も場所は知らない、ただ…

  • 市街地

    ・怪談になります その日は友人と遊んだ帰り道だった。 すっかり陽が暮れて、辺りはもう暗い。けれど車内にエアコンを効かせていないと、まだ蒸し暑い。私は助手席で、夜に沈んだ街を眺めている。山に囲まれた街、山と山との間にこの街はある。不気味に窪んだその街、山の麓に点在する鳥居は、街を囲むようにして作られていると最近聞く。 私はこの街から車で四十五分ほどの所に住んでいるから、ここがどのような街なのかは余り分からない。ただ、通る度に異様に静かで、窮屈な印象は受ける。家から零れる明かりは少なくて、街灯の明かりの方が強い。 ここを通る時、いつも私を楽しませてくれる友人の口数が減る。気のせいかも知れないけれど…

  • かつて海に沈んだ空

    雨も嫌われたものだと思う、降りたくて降っているわけじゃないだろう。 あの透き通った空は、絵本の中に閉じ込められている。 隠された晴れ間の空、誰かがその本を見付けた時、頁を開いた時に空は晴れる。 かつて海に沈んだ船のように、横たわる空。 そこに糸を垂らして、晴れ間を連れて来る。 嫌がるのをなだめて「いないと困るんだ」と励まして、連れて来る。 この世界で一番「空」を大切にしている人が、晴れた空を隠している。 「本当に大切なものは、誰にも分からない所に置いておくんだ」 そういって、替わりに梅雨を連れて来る。 申し訳なさそうに虹が顔を見せる、僕らの顔が晴れる。 「お邪魔しました」といって消える虹、僕ら…

  • 残り香と風

    忘れている匂いを、ふとした時に想い出すことはない? その匂いに触れた時「ぁ、これはこの人の匂い。これはあの時の匂い」 などと記憶の引き出しを開けて、思い出すことがあると思う。 私も言うに及ばず、ちょっとした場所や景色などを見ると ここはあの人と行った場所、この景色はアルバムにはもうない。 そんな私しか拾わないことを、想ったりする。 これを「残り香」という。 何度拭いても、消えない匂い。 こびりついていて、落とし方を知らない。 いつまでも残り、記憶の引き出しを開け続ける。 忘れられない恋や、記憶、痛みとも言える。 そしてこの残り香が、いちいち、しつこく私の心を揺らす。 いない人をねだり、終わった…

  • 缶珈琲「BOSS」のような文章

    世の中には様々な仕事がある、ここには書き切れないほど多く。 諸君、今日もお仕事お疲れ様である。 「褒める」ということが、なくなりつつあると思っている。 私たちは一体、何故ここまでして、必死に働いているのだろうな。 誰のために、誰かのために、なにかのために。 私は明確な答えを持ち得ないが、みな頑張っているということを知る。 お疲れ様である。 私たちは偉い、我慢して、堪えて、耐えている。 人間にも、物事にも、限界がある。 昨日も、今日も、そして明日も働くのだろう。 たいして好きでもないのに、夢でもないのに、本当に偉い。 実に難しいとは思わないか、そんな人間が集まって働いているのである。 たまったも…

  • ネタを転がして叩きつけて投げ飛ばして

    ・結果、なにもない。 なにもないのである、筆者の頭の中の僅かすぎる空想力が刹那に消えた。 始めから分かっていたことではあるが、本日はネタがない。料理する食材もない、筆者の頭は空である。ネタを投げ飛ばした挙げ句、自分では手が届きそうもない所に行ってしまった。情けない、笑うといいぞ。筆者も笑おう、そしてないものはない。否定は受け付けぬ、肯定が可及的速やかに必要である。

  • 白紙に描く、自由の色

    ただそこにあるべきものがあり、ただそこに白紙の空間がある。 なにもない、0からなにかを始め、生み出すことはとても難しいと思う。 0から1を生み出す人もいれば、5を生み出し、10を生み出すことができる人もいる。 私たちは白紙から、空白に描く、そこに生まれる文章。 白紙から生まれる恋、繋がる愛、描いた命。 白紙を見る、なにを描き、なにを想う。 誰も見たことがない、誰も知らない、誰もいない所。 例えばあなたがそれを目にした時、白紙の空間がそこにはある。 なにをするのもあなたの自由、そこになにかを付け加えるのも、人の世に晒すのも。 白紙は自由、それが自由の香り、そこでなにをする。 すべてがあなたの自由…

  • 階段

    緩く眼が覚める、置き時計を見るとa.m.2:00を少し過ぎる所だった。 その日の夜はやけに生暖かい、額にじんわりと汗をかいていたのが分かる。 暑さに沈む寝室、そよがないカーテン、冷えたお茶を飲もうとリビングへ下りる。 .....階段を下りる、下りる、下りる。その時、私はこれが夢なのではないかと思う。 階段が終わらないなど、起こり得ないからである。何段も何段も何段も、同じ階段を下りている。果たして下りているのだろうか、同じ所で足踏みをしているだけではないかと思ってしまう。 この階段はどこへ続いている、その先は真っ暗で、夜の底へと誘う。 人が見てはいけないなにかが、あるのではないか。これ以上下りて…

  • 夏の人

    5時の鐘が鳴ったのを聴いて空を見上げたら、赤く染まっていた。 今日は一日ずっと遊んでいた、「またね」といって帰る友達。 明日が来ることに、明日が晴れることに、なにも疑いがない。 家に帰ったら、土が付いた手を洗って、ご飯ができている。 「ただいま」と声が聞こえて、お父さんが帰ってくる。 家族が揃うと、晩ご飯の香りが強まった気がする。 TVから野球中継の音がする、麦酒を開ける聞き慣れた音。 窓からは夕暮れの匂いが、カーテンにそよいで入ってくる。 ぼくは昨日も、今日も、明日も外で遊ぶ。 ふいに土埃の香りがする、汗をかいたぼくから。 一日楽しかった、水筒と虫とり網を持って。 「満足」とはああいうことを…

  • 山道

    ・これは夜更けに、ある山道を通っていた時のことである。 季節は初夏、夜を涼しいと感じるようになった頃。その日は一日車を走らせていたのだが、やけに動物の骸が多かったように思う。見る度に、胃の底に重い鉛があるような気分になる。 しばらく峠を走らせていると、前方に車が一台、走っているのが見えた。SUVのような気がする、見えたり見えなかったりするものの、少しずつ近付いていたようである。街頭が無いために、ブレーキランプの灯りは分かりやすかった。 そうして走らせていると、あっという間に追いついてしまう。 .....長い直進に入る、車が揺れる音がする。少し開けた窓から、風が手を入れる。前方の車のブレーキラン…

  • 雨宿りの秘密基地

    ・さて、季節は梅雨になりました。 雨が降る空の下には、いつも秘密基地がある。 誰かが雨の下で、こっそりと雨を楽しんでいる。 子供の頃、傘を持ち出して、皆で作った秘密基地。 僕たちは大人になっても、雨が好きでいたい。 雨の音は落ち着くけれど、独りが多い。 雨上がりの夕空、じめっとした匂い。 僕の心の中にある秘密基地は、まだ誰にもバレちゃいない。 悪い奴は来ない、そこで友達と今日の予定を立てる。 疲れるほど遊んだら、家に帰ってご飯を食べる。 僕は所謂、大人になったのかも知れないけれど、僕はまだ秘密基地にいる。 ◇後書き 雨ばっかりですね。

  • Xの交差点

    「すべての道は繋がっている」たまに思い出す一文である。 交差点を歩く人、その一人一人に道がある。決めた道、決められた道。別れた道、隔たれた道。みなそれぞれの道を歩き、躓いたり転んだりしている。私は思う、今そこを歩く君は、自分の選んだ道に頷けているのだろうか。 私にはそれは分からない、頷けてない人も必ずいる。日常に迷いながら、社会と戦いながら歩く人もいるだろう。例えばその道が正しいのか、正しくないのか。案じることはない、すべての道は、必ずどこかと交わる。それは君が意図せず、偶然かも知れなければ必然かも知れない。 そこで気を落ち込ませることはない、悩み抜いた選択が、意図しなかった結果が、そのすべて…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか。(終章)

    ※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、沈黙の月(三章)」の続きになります。 僕たちはお互いの背後からゆっくりと顔を覗かせる朝日を見ていた、海面は穏やかで、風はほとんど吹いていない。広すぎる海のどこかに、僕たち二人ぽつんと漂っている。すると僕の左手に握られた翼の欠片が、ふわっと吹かれて、彼女の心の中に吸い込まれて行った。同じくして、彼女もなにか思い出したように赤いヒトデを海に浮かべた。そのヒトデは僕の方へ泳いで来ると、差し出した僕の手の平に乗る。互いの心の欠片が戻ったのである、そして朝日に照らされた僕たちは、互いの姿が見えなくなる。陽光が眩しすぎる、僕は思わず溶けて行く彼女に手を伸ばす。 ◇…

  • 大革命

    心を此処に置いて行け、ぼくがその心を海へ持って行く。 海の底へ優しく引き込む、まるで誰かの手を取るように。 ゆわりと砂が踊る、地に着いたら塩の匂いが香るだろう。 すぅっと喉を水が通るように、心が海へ落ちて行く。 ぷくっと金魚が泡を吹くように、鏡の泡は漏れてくる。 そうして落ちて行く心、空っぽの心を満たす母なる海。 波が心を描き出す、揺らめく瞳、映し出すのは北極星。 記憶の糸を辿って、海底遺跡に隠された、幻の心を探し出す。 大航海を終えた海賊船、真っさらに奪われた世界、探求者たち。 心の奥、海の底で待つ、最後の宝石。

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、沈黙の月(三章)

    ・※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(3)」の続きになります。 「君はどうする」駅員はリンドバーグを見つめる。静寂の月に、鼓動が響く。リンドバーグは立ち尽くし、迷う。目の前で回る地球儀の記憶の中に、二人が寄り添って歩く姿が見える。あそこに戻れたらどれほど、幸せだろう。けれどリンドバーグは、今まで彼がしてきた選択の結果を否定したくはなかった。 駅員が突然笛を吹く。「.....間もなく列車が来ます」 「列車?」 「求める人の所へ、鯨は現れるのです。」 僕とリンドバーグが揃う時、そこに不可能はない。僕は宇宙船、サンタクロースの姿になって彼の元へ飛ぶ。サンタクロースという人…

  • 眠りの中で。

    眠りの中、身体と精神が離れる時、僕はなにをしているのだろう。 夢を見ている、夢から覚める、また夢を見る。 現実とはどこに、どのようして、存在しているのか。 或いは今も、誰かの夢の中に、僕と君たちは存在しているのかも知れない。その夢を見ているのは誰か、神か人か、地球か宇宙か。誰かが目を覚ました時、この世界は夢から覚めて、消えて行くだろう。それは本当に一瞬の出来事で終わる、一人も実感することなく、ふっと消えて行く。 世界はまだ眠っていて、夢の中にいる、それが僕たち。世界が目を覚ますきっかけは、誰にも分からない、皿が割れるようにして起こるのかも知れない。そうして砕け散った僕たちは、二度と元には戻らな…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、沈黙の月(二章)

    ・※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(3)」の続きになります。 「君はどうする」駅員はリンドバーグを見つめる。静寂の月に、鼓動が響く。リンドバーグは立ち尽くし、迷う。目の前で回る地球儀の記憶の中に、二人が寄り添って歩く姿が見える。あそこに戻れたらどれほど、幸せだろう。けれどリンドバーグは、今まで彼がしてきた選択の結果を否定したくはなかった。 駅員が突然笛を吹く。「.....間もなく列車が来ます」 「列車?」 「求める人の所へ、鯨は現れるのです。」 僕とリンドバーグが揃う時、そこに不可能はない。僕は宇宙船、サンタクロースの姿になって彼の元へ飛ぶ。サンタクロースという人…

  • 虹の麓

    虹、その存在を私は信じている。あなたは信じているの? あいつはたまにしか顔を見せない癖に、顔を見せる時はいつも空が晴れる。同じようにして、私の心の曇りの合間に、少し虹が見える。虹を見た時、その麓のことを考える。虹はどこから始まり、どこで終わるのか。私にも悩みや、迷いや、苦しみがある。拭いきれない痛み、そのものが。 虹を見ると、そういったものがほんの少しだけ、楽になる。心が少し軽くなる、いつも重たい心が。私は笑顔を絶やさないようにしたい、そうしていれば、悩みが勝手に解決される気がしているから。いつもないものが、ないことが、そこにある。虹に届く時、心に翼が生まれる。心を引き摺っている私を、虹の終わ…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、沈黙の月

    ・※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(3)」の続きになります。 「君はどうする」駅員はリンドバーグを見つめる。静寂の月に、鼓動が響く。リンドバーグは立ち尽くし、迷う。目の前で回る地球儀の記憶の中に、二人が寄り添って歩く姿が見える。あそこに戻れたらどれほど、幸せだろう。けれどリンドバーグは、今まで彼がしてきた選択の結果を否定したくはなかった。 駅員が突然笛を吹く。「.....間もなく列車が来ます」 「列車?」 「求める人の所へ、鯨は現れるのです。」 僕とリンドバーグが揃う時、そこに不可能はない。僕は宇宙船、サンタクロースの姿になって彼の元へ飛ぶ。サンタクロースという人…

  • 空に溶け込むと。

    空を見上げると、私は自分が溶けて行くのが分かる。そのままにしておくと、私はふっと消える。痕跡を隠すようにして、そこには風が吹く。何事も起きていない、そう言いながら世界は回る。そういう人がこの世界には、何人いるだろう。同じ空を見て、同じ気持ちを持って、同じ所を見る。私たちは、運命共同体。 私を埋め尽くすほど広大な空に、溶けて行けるのなら、そうしたい。もしもそうなったのなら、誰が気付くのだろう。私は空から私と同じ人を、空へ誘う。空は空っぽ、なにもない。ただ綺麗だと思いながら、風に乗って行きたい所へ行くだけ。旅をする、世界を見てくる。 私の手を取ったら、空へ連れて行ってあげる。取るか取らないかは、君…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(3)

    ・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足…

  • 待ち人たち。

    ・即ち待ち惚け 私は待ち人が好き、なんだってそう。何かを、誰かを待っている人、私もそう。電車を待つ人、タクシーを待つ人、ヒッチハイクをする人。凄く良いと思う、待てばいいと思う。私は流れに身を任せるだけ、そういう生き方もいい。 ただ待つ、その辛さや、痛みを知っている人は、とても優しいと思う。そして待ち人の求める人に、或いは物を、届けてあげたいと思う。地図を広げて、恋を待つ人、愛を待つ人、夢、星、時、すべていつか終わる。「いつか」ではなくて、「必ず」私たちは終わる。苦しみや辛さ、喜びや悲しみから解き放たれる。その先を見据えた時、見えてくるのは次の時代。 私は、悲しみよりも喜びの方が多い方がいい。そ…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体(2)

    ・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足…

  • 幻のラムネ。

    夜の匂い、滲む額の汗、小川のせせらぎ 人混みの喧騒、若者の話し声、屋台の白煙 ここは夜祭り。 屋台のどこかに、幻のラムネが売られている、それは飴色。 月のビー玉が入っており、味は蜂蜜に近いが、ねっとりしておらず。 乾いた喉をすっと優しく、潤してくれる、まさに宝石。 どこかにある、本当に大切な宝石は、誰の手にも入らない。 誰も知らない、知ることが出来ないが、夜祭りの中にある。 どこまでも連なる人混み、浴衣姿で歩く人々、金魚を持つ子供。 その幻のラムネを飲むと、文字通り世界が変わる、あの頃へ。 人混みの中に佇む人が、在処を知っている、それは人から最も遠い人。 ゆくゆくは君になり、或いは概念になり、…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、或いは未確認飛行物体。

    ・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足…

  • 扉の向こうには、何人の僕がいるのか。

    ・君は誰か。 君は「何者」か、はっきり言えるだろうか。そういう映画があったのを思い出すし、きっと似たような小説も、世に山という程出回っているんだろう。君は自分が誰なのか、何者なのか考えることはあるか。おおかた、こんなことは考えなくていい。しかし僕はたまに思案する、自分が誰なのかを。別に記憶喪失というわけではない、記憶ならしっかりとある。ただ「何者」なのか、それが分からない。 文章を作る僕、調べ物をする私、働く僕、哲学的な私、Blogを書く僕.....何人の僕がいて、そしてどれにもなれない。果たして「僕」を定義するものなどあるのだろうか、あるとすれば、誰かが教えてくれるのだとしたら、それは嘘に聞…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと王者の咆哮。(3)

    ・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足…

  • 鬼滅の刃と全集中の呼吸の、エナジードリンク。

    ・全集中の呼吸とはエナジードリンクのこと。 昨今、社会現象を巻き起こしている「鬼滅の刃」、なにやらこの度、最終回を迎えたらしい。最終回を迎えた時期に、筆者はこれにハマった。アニメーションから入り、まだ全話見切れていない新参者である。 「全集中の呼吸」鬼滅の刃を知る者なら、必ず聞いたことがあるだろう。要約してしまえば、「身体能力向上効果」である。特殊な呼吸法を身に付け、鼓動が早くなり、血液中の酸素の巡りがよくなり、一時的に爆発的な力を得ることができる。ここでお気付きの人もいるだろう、そう、この全集中の呼吸とは「エナドリ」で効果を得ることができる、これは閃きである。 エナドリも鼓動が早くなり、疲労…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと王者の咆哮。(2)

    ・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足…

  • それは現実的で曖昧的で、どこか天狗のお面。

    ・今日は違うことを作ります。「実態が消えて、戻る。」 実物の天狗を見たことはないけど、僕の寝室にはいつも天狗がいる。本物かどうかは知らないし、どうでもいい。空間に浮かぶんだ、勝手に浮かんでおきながら、彼等は困った顔をする。怒っているのかも知れないし、元からそういう顔なのかも知れない。時々だけど、天狗のまん丸の眼が、僕を見る。じろりと見られると、僕はなにか悪いことをしている気分になる。こういう気分になるのは大人だけだから、僕は子供になる。 そう思うと、どんどん幼くなってくる。天狗に睨まれるのは大人だけ、子供にはどうしているのだろう。翼に乗せて、空を駆けているのかも知れない。天狗はいつも困った顔を…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと王者の咆哮。

    ・昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者達。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立ち尽くす彼はその足…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと世界の設計図。(3)

    ・起きている時 昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者たち。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。 立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと世界の設計図。(2)

    ・起きている時 昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者たち。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。 立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、それと世界の設計図。

    ・起きている時 昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者たち。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。 立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立…

  • 君は朝日の寝息を聞いたことはあるか。

    ・起きている時 昨日の夜、君はソファーで泣いていた。僕も君も、一人だった。 彼はその後、君を抱きしめたのかは、今となっては誰も知らない。彼の心に住み着く夢、夢が現実になるのかは誰にも決められない。夜はこれから始まるというのに、彼も君も、身を守る術を知らない若者たち。まだ朝が来ることを信じていなかった、それは今の僕にも分からない、鯨は夜の街にいる。 立ち尽くす彼の背後に忍び寄る影を、僕は知っている。知ることができた。君は列車に乗って、どこか遠くの知らない駅に行くだろう。この街には鯨がいるから、彼も知らないその街は、きっと理想郷。そういうものは、僕も彼も苦手です。僕も彼も、鯨は好きなんだと思う。立…

  • 青ざめた瞳の奥、さらにその奥。

    ・奥の奥の奥 「字は人を表す」と、一度は聞いたことがあるだろう。 勿論、文字を書くにあたり字が綺麗なことはいい。見る人が見れば、その人がどんな人間なのかを想像できる人がいるのかも知れない。あくまでも僕の場合、字ではなく「目」にその人の人間模様が描かれている。 突然だが僕は、「品定めをするような目」が嫌いである。なんとなく伝わるだろうか、例えば人事の目、セールスマンの目、ゴミを見るような目。僕はなにもこれらに対して、否定的なわけではない。僕が苦手なのである。心の奥まで見透かされているよう、などと言うつもりはない。逆に上辺だけしか見られていないように思う、本当に心の奥を見ようとする人間は、そんな安…

  • 寝る前に羊を数えるというよりは、変態を数えることについて。

    ・世の変態について 一言に「変態」とまとめてしまっても、数ある変態がいる。自覚のない変態、変態的な変態、本物の変態。これらを総じて変態と言うなれば、世の中は既に変態で溢れ返っている。国家は停滞し、警察は腐敗し、常識は崩壊する。もしもこの国に、変態しかいなくなったら、日本はどうなるだろう。右と左が逆になり、日本語に謎の言語が入り込み、逆立ちで歩いている人が出てくるかも知れない。そういう世の中にならないためにも、ルールがある。ルールを守らなければ、変態だらけとなるであろう。 君は昨今、現代をどう見ているか、なにを見て、なにを見ていないか。「見方」を変えることは簡単である。子供は特にそういうことが得…

  • 青木ヶ原樹海の木々のざわめきと、沈黙。

    ・僕の感覚 夕陽に赤く染められた富士山、その麓に広がる広大な自然。人は自分の中にある、本質的なものを求めている。無言の木々、頬をかする風、持ち主のいないゴミ。樹海には「魔物」が潜んでいると、感じたことはないか。 沈黙が支配する、あまりにも美しすぎる森。その奥に潜んでいる「なにか」、時折そのなにかの息を感じる。車道を走る車の走行音が、彼を引き戻す。あの奥、木々の間から覗く魔物の眼。あそこには、なにかが確実に、そして絶対的な力を持って存在する。 それは誰かにとって、救いかも知れなければ、答えなのかも知れない。自然を取り込み過ぎて、人間的な許容量をオーバーすると、人は魔物になるのではないか。それが或…

  • 衝動は赤、人魚のラーメン。

    ・味のする文章を作ろうと思う、今日はそれだけ。 衝動は「赤」これは伝わるだろうか、伝わらない人はセンスがある。 君は「人魚のラーメン」を食べたことはあるか、僕はこれから食べるのかも知れない。 人魚のラーメンとは、なにも人魚から出し汁を取っているわけではない。 人魚の音色を聴いた者が食べられる、幻のラーメンなのである。 注文したラーメン、運ばれてきたのは空の器だった。 僕は思わず店員を見る、そこには誰もいない。 空席に人の気配がある、姿は見えない。 厨房からは換気扇が回る音がする、店内からはJazのような音色がする。 僕はここで一人、もう一度、器を確認する。 そこには海がある、今、地平線に夕日が…

  • 僕はデーゼルエンジンの音と、エナドリと煙草、たまにブッラクサンダー。

    ・要するにコンビニを見る度に、喫煙所が生きているか。生きていたら煙草を吸って、エナドリでキメる。 僕が感じていること、考えていること、見ていることを言葉に乗せます。 どんなことを書くか?或いは事実、或いは妄想、或いは哲学的な文章を作ります。 文法とかは気にしません、文章の響きや言葉の美しさを意識します。 「変わっている」と言われてしまえば、この話はこれで終わります。 文章を作る時はキメて行きます。 「僕」或いは「私」という人物について、簡単に説明します。それが見出しです。 加えると、食事をしないとめまいがします。説明は以上です。 昨日の夜更け、さざ波の音が部屋にこだましていました。 彼は浜辺で…

    地域タグ:長野県

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