脳と食の研究者の新谷隆史です。本ブログでは人類史の礎となった様々な食の革命について考察していきます。
第五章近代の食の革命イギリスの産業革命-産業革命と食(1)今回から「第五章近代の食の革命」が始まります。「近代」は、産業革命による資本主義社会の成立と、共同体社会から個人を中心とした社会の成立によって特徴づけられます。ヨーロッパの近代は、おおよそ18世紀の後期から始まったとされています。しかし、近代化は急激に進展したのではなく、さまざまな出来事が積み重なることによって徐々に進行したと考えられています。イギリスでは世界に先駆けて「産業革命」が起こりましたが、この産業革命も様々な要因が絡み合うことでゆっくりと進んで行きました。今回は、このようなイギリスの産業革命について見て行くことで、近代化の概要について押さえてみようと思います。なお、今回は「食」に関係する部分はかなり少なくなっています。(emil_ervによるP...イギリスの産業革命-産業革命と食(1)
コンブと鰹節-近世日本の食の革命(16)「コンブだし」と「カツオだし」は日本料理の代表的な出汁(だし)で、それぞれコンブと鰹節を煮出してとります。コンブにはグルタミン酸ナトリウムといううま味成分が含まれており、鰹節にはイノシン酸という別のうま味成分が含まれていて、これらのうまみ成分によって料理がより美味しくなるというわけです。西洋や中国では、動物の肉からとったエキスが料理のベースになります。このエキスには脂肪分が含まれているため、料理には濃厚な風味が加わります。一方、昔の日本人は動物の肉を食べなかったため、料理の味が素材そのままの単調なものになってしまいがちです。それを補うために発達してきたのが出汁と考えられています。出汁が一般的に広く使われるようになるのは江戸時代からと言われています。今回は、江戸時代のコンブ...コンブと鰹節-近世日本の食の革命(16)
本日は東坡肉(トンポーロー)を食べました。とても美味しかったです。東坡肉については、以前に「安い豚肉で作った東坡肉(トンポーロウ)-10~17世紀の中国の食(4)」でお話ししました。「安い豚肉で作った東坡肉(トンポーロウ)」はこちら豚肉を砂糖と醤油、紹興酒で煮込みます。香りづけに八角も入っているので、日本の豚の角煮と全く別の料理になっています。八角は英語でstaraniseと呼ばれ、地中海沿岸原産のアニス(anise)と同じ芳香成分が含まれています。アニスは古代エジプトではミイラを作るときに消臭剤として使用されたほど強い香りがします。八角が入ると中華料理らしい風味がぐんとアップします。東坡肉(トンポーロー)を食べました
江戸時代の酒-近世日本の食の革命(15)文化人類学的には、江戸時代は飲酒が「ハレ」から「ケ」に変わる時代と見ることができます。「ハレ」とは祭りなどの非日常の行いであり、「ケ」とは日常生活のことを指します。つまり、それまでは祭りなどのハレの場で飲まれていた日本酒が、江戸時代になると日常生活で飲まれるようになったということです。例えば、江戸時代には「居酒屋」が江戸を皮切りに全国に普及するようになり、庶民も気軽に酒を楽しむことができるようになりました。このような背景には、江戸時代になって日本酒の生産量が大幅に増えたことがあります。日常的に飲んでも大丈夫なほどに日本酒の生産が増えたというわけです。今回は「日本酒」を中心に、江戸時代の酒について見て行きます。***************古代の酒は神様にお供えした後に集ま...江戸時代の酒-近世日本の食の革命(15)
江戸時代の果物-近世日本の食の革命(14)今回は江戸時代の果物の話です。17世紀の終わり頃まで、食事以外に食べる軽い食べ物はひとまとめにして、「菓子(くだもの)」と呼んでいました。例えば、中国から伝来した「唐菓子」は「とうくだもの」と読みます。そして、果物も菓子に含まれていました。しかし、江戸時代になって和菓子作りが発展すると、両者は区別されるようになります。その結果、人の手で作った和菓子は「菓子(かし)」と呼ばれるようになりました。一方の果物は、江戸では「水菓子」、上方では「くだもの」と呼ばれました。それでは、江戸時代にはどのような果物が食べられていたのでしょうか。***************江戸時代の人々も、現代人と同じように甘い果物が好きだったようだ。しかし、現代とは異なり、甘い果物は限られたものだった...江戸時代の果物-近世日本の食の革命(14)
江戸時代の和菓子(2)-近世日本の食の革命(13)現在、東京の立川市で、将棋の王将戦第4局が開催されています。もし、この対局で挑戦者の藤井聡太竜王が勝てば、最年少の五冠達成になります。ところで、藤井竜王はどうも和菓子(餡子?)好きらしく、前回の対局でも、会場のホテルが準備したおやつの中から羊羹を選んで食べていたということです。毎度のことですが、この羊羹は大きな話題となり、ホテルにはたくさんの問い合わせや注文が相次いでいるそうです。さて、羊羹には蒸羊羹(むしようかん)と練羊羹(ねりようかん)があり、現在では羊羹のほとんどが練羊羹になっています。ちなみに、藤井竜王が食べた羊羹も練羊羹です。今回は、練羊羹をはじめとして、江戸時代に誕生した和菓子について見て行きます。桜餅(ウイキペディアより:ライセンス)*******...江戸時代の和菓子(2)-近世日本の食の革命(13)
江戸時代の和菓子-近世日本の食の革命(12)日本でも欧米でも、いわゆる菓子と呼ばれるものの多くは砂糖が入っていて甘いものです。もし、地球上に砂糖がなかったら、多くの菓子が現在のものとは別物になっていたと思われます。砂糖の普及は菓子作りの進歩にとても密接に関係してきました。例えば、ヨーロッパでは、17世紀から18世紀にかけて砂糖が手に入りやすくなった結果、菓子作りの技術が大きく発展しました。同じように日本でも、江戸時代になって砂糖が広く普及するようになって、現在私たちが口にする和菓子が作り出され始めました。そして、江戸末期までに現在の和菓子の大部分が誕生します。一方、このような和菓子の発展には、砂糖以外の材料が入手しやすくなったという背景もあります。例えば、和菓子には、米粉や餅粉、小麦粉などの穀物の粉が使われてい...江戸時代の和菓子-近世日本の食の革命(12)
江戸時代の砂糖-近世日本の食の革命(11)私は毎日、NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』を楽しく視聴しています。このドラマでは「小豆の餡子(あんこ)」が重要なアイテムになっています。小豆の餡子は和菓子には欠かせないもので、小豆餡の誕生が和菓子のはじまりと言う人もいるほどです。小豆餡は小豆を砂糖と一緒に炊くことで作られます。この砂糖には、単に甘みの元になるだけでなく、保存性を高めるという大事な役割があります。つまり、小豆餡のお菓子が比較的長持ちするのは、砂糖のおかげなのです。砂糖には高い保水効果があります。砂糖は水にはおおよそ倍の量が溶けることができますが、これは砂糖の高い保水効果のためです。そして重要なことは、このように砂糖に結び付いた水は、細菌などには利用できない水であることです。このことが、砂糖が食品の保...江戸時代の砂糖-近世日本の食の革命(11)
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