けず、踏みつけられても負けない強い力を持ちたいということで「雑草魂」を座右の銘にしていましたが、これからは「コブゴミムシダマシ魂(韻を踏んでいる)」と言った方がいいかもしれません。コブゴミムシダマシ(Phloeodesdiabolicus)はバッタもんみたいな名前を付けられていますが、あに図らんや超強いのです。どのくらい強いかというと、踏みつけられても車で轢かれてもびくともせず、昆虫採集の時にピンを刺すのに一苦労というから驚きです。昆虫大好きな香川照之さんは知っていたでしょうか?この論文によるとコブゴミムシダマシは最大149ニュートン(体重の約3万9000倍)の力に耐えることができるそうです。60キロのヒトでいえば2000トンのひだ型巡視船が上に載っても大丈夫ということですので、一安心です(何が?)。コブゴミム...コブゴミムシダマシが強い理由
EliLilly社が開発しているSARS-CoV-2の受容体結合部位に対する抗体製剤であるLY-CoV555(LY3819253と同じ)のCOVID-19に対する有効性を検証した第2相臨床試験の中間解析結果が報告されました。この抗体はアカゲザルにおける有用性が確認されているものです(https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2020.09.30.318972v3)。アメリカの41センターがこの臨床試験に参加しました。軽症~中等症のCOVID-19患者467人がランダム化され、317人が抗体(平均年齢45歳)、150人がプラセボ(平均年齢46歳)投与を受けました。発症からの日数の中央値は4日です。抗体の投与量は700mg(101人)、2800mg(107人)、7000mg(1...COVID-19に対する抗体製剤LY-CoV555の有効性
HHMIがHeLa細胞の使用に対して賠償金を支払うことを決めた
HeLa細胞という不死化細胞を見たことがあるでしょうか。私は30年近く前に研究で使用したことがありますが、増殖能に富んだ大変美しい細胞です。この細胞はHenriettaLacksという名前のアフリカ系アメリカ人女性の子宮頸癌から1951年に樹立された初めてのヒト細胞株(彼女の頭文字をとってHeLaと名付けられた)であり、その後ポリオワクチンの開発など、この細胞を元に得られた科学・医学の分野の成果は数えきれず、また製薬企業には巨万の富をもたらしてきました。問題だったのは、彼女や家族の承諾を全く得ずに細胞の採取が行われたことです。HenriettaLacks自身は1951年に亡くなりましたが、その事実を知った遺族が、本人や家族の同意を得ずに無断で採取された細胞から得られた情報は不当なものであり、そのゲノム情報なども...HHMIがHeLa細胞の使用に対して賠償金を支払うことを決めた
HHMIがHeLa細胞の使用に対して賠償金を支払うことを決めた
HeLa細胞という不死化細胞を見たことがあるでしょうか。私は30年近く前に研究で使用したことがありますが、増殖能に富んだ大変美しい細胞です。この細胞はHenriettaLacksという名前のアフリカ系アメリカ人女性の子宮頸癌から1951年に樹立された初めてのヒト細胞株(彼女の頭文字をとってHeLaと名付けられた)であり、その後ポリオワクチンの開発など、この細胞を元に得られた科学・医学の分野の成果は数えきれず、また製薬企業には巨万の富をもたらしてきました。問題だったのは、彼女や家族の承諾を全く得ずに細胞の採取が行われたことです。HenriettaLacks自身は1951年に亡くなりましたが、その事実を知った遺族が、本人や家族の同意を得ずに無断で採取された細胞から得られた情報は不当なものであり、そのゲノム情報なども...HHMIがHeLa細胞の使用に対して賠償金を支払うことを決めた
学生時代に雀卓を囲んでいた時、へぼなリーチをかけて、それでも上がったりすると、「なんだその手は!このタコ!」と友人に罵られたものです。タコはヘタクソの代名詞だったわけです(参考文献片山まさゆき著『ぎゅわんぶらあ自己中心派』)。しかし実はタコには5億個ものニューロンがあり(人間は1000億個)、脳ではなく腕に3分の2が集まっていることが知られており、高い知性を有しているのではないかとされています(詳細は「タコの心身問題―頭足類から考える意識の起源[ピーター・ゴドフリー=スミス著みすず書房]をお読みください)。この論文で著者らは、ゲノム解析やパッチクランプ法を用いて、Octopusbimaculoides(カリフォルニア・ツースポットタコ)の吸盤には他の動物には見られないような多くの種類の非定型的なアセチルコリン受...タコは盲杯が得意
SARS-CoV-2とSARS-CoVとの違いとして、前者のSpikeproteinにはプロテアーゼであるfurinの切断部位が存在するという点が知られており、それが感染性の違いと関係しているのではないかと考えられています。今回S1/S2junctionにあるfurin切断部位RRAR^SにVEGF-Aと軸索の伸長阻害因子であるsemaphorin3Aのco-receptorとして働く膜蛋白neuropilin-1が結合し、これが感染を促進する可能性を示した論文が2本Science誌に掲載されました。Neuropilin-1に対するmonoclonal抗体はSARS-CoV-2の感染を抑制することも示されており、今後治療標的の一つとして注目されています。https://science.sciencemag.or...Neuropilin-1によるSARS-CoV-2感染促進
イギリスでワクチン候補投与後に微量のSARS-CoV-2ウイルスを鼻腔投与し、経過を観察するにという臨床試験(ヒトチャレンジ治験)が行われるとのことです。このような試験については以前から話題になっていましたが、多くの問題を包含していると思います。①被験者がリスクを正確に理解していることをどのように確かめるか、②謝金が払われるということですが、経済的に困窮している人を金銭的なインセンティブによって試験に誘導するような仕組みになっているのではないか、③症状が出たらremdesivirを投与するということですが、そもそもremdesivirは軽症患者に対する有効性は示されておらず、論理的に矛盾しているのではないか、④比較対象のない試験デザインで有効性をどのように判断するか、など疑問点が沢山あります。詳細を理解していな...「ヒトチャレンジ治験」への疑問
特に高齢者の術後譫妄は病棟管理だけではなく患者の予後にも関わることが明らかになっている大きな問題です。大腿骨近位部骨折後、譫妄を生じた患者では手術1年後の死亡率が高いことも報告されています(Leeetal.,Am.J.Geriatr.Psychiatry25,308–315,2017)。その原因としては環境の変化や麻酔の影響というものもあるのですが、この総説では"neuroinflammation(神経炎症)"という観点から術後譫妄を解明しようという最近の研究を紹介しています。外科的侵襲(ターニケットの阻血なども含めて)によって生じるな組織障害は、HMBG1などのDAMPs(damage-associatedmolecularpatterns)を生じさせ、これがneuroinflammationの原因となること...術後譫妄におけるneuroinflammationの役割
Biological DMARD IR関節リウマチ患者に対するupadacitinib vs abatacept
EULARで話題になっていた1剤以上のbiologicalDMARDIRの関節リウマチ患者に対するupadacitinibとabataceptを比較したRCTの結果がNEJMに発表されました。Upadacitinibは疾患活動性に対する有効性はabataceptより高いものの、より重篤な有害事象(SAE)が多かったという結果です。24週後の寛解症例はupadacitinib群で30.0%vsabatacept群13.3%(difference,16.8percentagepoints;95%CI,10.4to23.2;P<0.001forsuperiority)で、SAEはupadacitinib3.3%vsabatacept1.6%でした。 Rubbert-Rothetal.,TrialofUpadaciti...BiologicalDMARDIR関節リウマチ患者に対するupadacitinibvsabatacept
スウェーデンの人工関節レジストリーを見るだけでもわかるのですが、北欧の国ではレジストリーやデータベースが整備されており、様々な疾患の罹患率などを振り返って調査できるシステムが構築されており、本当にうらやましいなーと思います。この論文はデンマークからのものですが、腰椎穿刺後30日以内の脊髄(硬膜内・硬膜外)血腫発生が凝固異常coagulopathyと関係するかを調べたものです。様々なレジストリー、データベースを駆使して2008年1月1日から2018年12月31日までに腰椎穿刺を行った患者、脊髄血腫を生じた患者をpickupしました。またそれらの患者の背景因子や検査データを集め、脊髄血腫患者のカルテをチェックして臨床経過を検討するという徹底ぶりです。凝固異常は穿刺時の血小板数150x10(9)/L未満(日本でいえば...腰椎穿刺後の脊髄血腫発生に凝固異常は影響しない
関節軟骨は(変形性関節症にならなければ)生涯を通じて滑らかな摺動面を保つことができる極めて優れたマテリアルですが、このような特性を人工材料で再現することは極めて難しいとされています。ハイドロゲルは生体材料として様々な用途で用いられていますが、関節軟骨と比較すると低摩擦・低摩耗の長期間の維持は困難です。著者らは関節軟骨の低摩擦・低摩耗性の維持の秘密が摺動面に存在する脂質にあると考え、脂質を含有したハイドロゲルを作成しました。水素化大豆ホスファチジルコリン(HSPC)を多層vesicle(MLV)の形で添加して調製したpoly(hydroxyethylmethacrylate)(pHEMA)ハイドロゲル(ソフトコンタクトに使用されています)は、脂質を添加していないハイドロゲルと比較して、高負荷・高接触圧を加えた場合...ハイドロゲルに脂質を閉じ込める
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって「体外式膜型人工肺(extracorporealmembraneoxygenation,ECMO)」という超専門的な言葉が市民権を得たようで、コンビニ前にたむろしている高校生からECMOなんていう言葉が出ると、思い切り引いてしまいます(゜ロ゜;)。最近ではあまり話題にのぼりませんが、春先は重症患者が増えて日本のECMOが足りなくなるのでは、などというような話がワイドショーまで賑わせていたのは記憶に新しいところです。実際に重症な患者さんでECMO装着が必要な方は一定数おられ、海外ではECMO装着患者の死亡率が90%、などという報告もあって皆戦々恐々としていた訳です(Henryetal.JCritCare2020;58:27–28など)。この論文はExtra...ECMO装着患者国際レジストリーにおける院内死亡率
「隣の芝生は青い」この"Sweden'sgamble"というScienceのリポートは読みごたえがありました。日本の中でもSwedenの「緩やかな制限」という方針を称賛する声は少なくありません。主としていわゆる「集団免疫」が速やかに達成されるのではないかという理由、そして経済的なダメージを少なくできるという理由です。Swedenのパンデミック対策を担っているのは日本の厚生労働省にあたるFolkhälsomyndigheten(FoHM)であり、それを率いる国家疫学官のAndersTegnell氏です。FoHMはパンデミック当初から一貫して"stayhome"を推奨せず、マスク着用さえ(パニックを起こすという理由から)否定しています。マスク着用を主張した医師が譴責を受けた、あるいはクビになったという驚くべき事例も...隣の芝生は青い
哺乳類の性は遺伝的に決定されており、遺伝的な要因によってオスでは精巣、メスでは卵巣が発達します。しかし少なくとも8種類のモグラでは、XX染色体を有するメスが卵精巣(ovotestis)という臓器を発達させてオスっぽくなる間性(intersexuality)という現象が見られます。因みにオスの精巣は他の哺乳類と同様です。Ovotestesはovarianpart(OP)とtesticularpart(TP)に分かれており、testicularpartには生殖細胞はないものの、アンドロゲン産生Leydig細胞などは存在します。アンドロゲン濃度が上昇するため、メスは筋肉ムキムキになり攻撃的になります。さてこのような不思議な現象がなぜ起こるのかは興味深いですが、著者らはintersexualityを示すTalpaocc...モグラにおけるメスのオス化のメカニズム
COVID-19の重症型ではしばしば血栓症が見られ、生命予後を左右することが知られています。ICU患者184人を調べた研究では、2週間で49%の症例に肺塞栓を始めとした動脈・静脈血栓が見られことが報告されています(Kloketal.,Thromb.Res.191,148–150,2020)。また死亡例のうち71%が古典的なDIC(播種性血管内凝固症候群)の基準を満たした(生存例では0.6%)という報告もあります(Tangetal.,J.Thromb.Haemost.18,844–847)。しかしCOVID-19の病態とDICとでは異なる点も多く、例えばCOVID-19では血小板減少はDICほど顕著ではありませんし、血中フィブリノゲンはむしろ上昇します。中でも重要なのは、DICでは見られない補体活性化がCOVID...COVID-19における血栓性微小血管症
脊髄上衣細胞からオリゴデンドロサイトへの分化促進による脊髄損傷治療の試み
脳や脊髄における神経幹細胞の存在が発見されて以来、「中枢神経も再生する」というのは半ば常識になっているようですが、かといって脊髄損傷が簡単に治癒する訳ではありません。脊髄に損傷が生じると、神経幹細胞を含む脊髄中心管の上衣細胞(ependymalcell)が増殖することが知られています。損傷した脊髄ではoligodendrocyteが失われて脱髄が生じ、神経伝導が障害されますが、増殖した上衣細胞はoligodendrocyteへの分化はあまり進まず、主としてastrocyteへと分化し、glialscarを形成してしまうため神経機能の修復は生じません。著者らは上衣細胞をsinglecellATAC-seqによって解析し、実はoligodendrocyteへの分化に必要なOLIG2がアクセス可能な状態になっているこ...脊髄上衣細胞からオリゴデンドロサイトへの分化促進による脊髄損傷治療の試み
iPS細胞由来の間葉系幹細胞によるGVHD治療ー第1相臨床試験の結果
脂肪組織や骨髄などに由来する間葉系幹細胞(mesenchymalstemcell,MSC)は、抗炎症効果などが期待されて様々な疾患の治療に用いられています。整形外科分野では札幌医科大学から脊髄損傷に対する骨髄由来MSCの有効性が報告されており、細胞治療薬として保険収載されています(ステミラック®注)。しかし自己MSCを用いる治療には、細胞のリソースに限りがある、細胞ごとに有効性が異なる、などの問題点があります。さてMSCはhumanleukocyteantigen(HLA)classII抗原を欠くため、他家移植が可能であることが知られています。この論文で著者らは、健常ドナー由来のiPS細胞から分化させたMSCをGMPに準拠した最適化された製造工程を用いて製造し(CYP-001)、そのステロイド抵抗性急性移植片対...iPS細胞由来の間葉系幹細胞によるGVHD治療ー第1相臨床試験の結果
COVID-19克服のの切札(?)としてワクチンが切望されている中で、ヒト免疫学(humanimmunology)の重要性が改めて注目されています。本reviewはStanford大学のBaliPulendranとMarkM.Davisによるhuman(clinical)immunologyについての非常に興味深く情報が多いreviewarticleです。動物モデル、中でもマウスモデルが免疫学において果たしてきた役割は極めて大です。しかしいろいろな面でマウス免疫学はヒトの免疫学とは似て非なるものであることも分かっています。何よりもマウスを用いた研究の多くは、遺伝的に均一なstrainを用いて行われており、極めて遺伝的多様性に富むヒトとは異なります。またほとんどの研究にはspecificpathogen-free...ヒト免疫学の重要性
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