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書に耽る猿たち https://honzaru.hatenablog.com/

本と猿をこよなく愛する。本を読んでいる時間が一番happy。読んだ本の感想、本の紹介、本にまつわる色々な話をしていきます。世に、書に耽る猿が増えますように。

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2020/02/09

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  • 『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』山本文緒|真実のプロの書き手

    『無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記』山本文緒 新潮社[新潮文庫] 2024.11.17読了 山本文緒さんは2021年4月にステージ4の膵臓がんと診断された。抗がん剤治療は受けずに緩和ケアを選び、翌5月から書き始めた日記がこの作品である。余命4ヶ月と医者から告げられたから、少なくとも120日以上は行きなくちゃと、まるで無人島にいるかのように夫婦で一体となって生活した記録である。 家が軽井沢にあるというのを初めて知った。並行して読んでいる水村美苗さんの『大使とその妻』(たぶん次回のブログはこれになるかと)の舞台も軽井沢であり「うわ、来た軽井沢!」と勝手に軽井沢という地名だけでにやついて…

  • 『魂に秩序を』マット・ラフ|ひとつの個性同士が共鳴しあう

    『魂に秩序を』マット・ラフ 浜野アキオ/訳 新潮社[新潮文庫] 2024.11.15読了 最初はよくわからなかった。語り手アンドルーの周りには、家族のような自分に近しい人たちが常にいる(というか見守っている)。でも実はそれは多重人格のそれぞれの人格であり、それら一つ一つが「魂」なのだと徐々に気付く。読みにくそうだなと思っていたが「家」のあたりから色々と把握できた。そうなると案外読みやすく感じた。 アンドルーは多重人格者、今でいうところの「乖離性同一性障害」を持つ。複数の人格を持つ彼だが、医師の助けもあって自分なりに折り合いをつけて生きている。脳内でせめぎ合う多くの人格のやり取りを読んでいると、…

  • 『猟銃・闘牛』井上靖|大衆的なテーマにも文学性が息づく

    『猟銃・闘牛』井上靖 新潮社[新潮文庫] 2024.11.11読了 先日井上靖さんの『しろばんば』を読み、その類まれなる物語性と文章に心を奪われたので早速初期の作品を読んだ。 『猟銃』 これは井上さんの処女作で佐藤春夫さんが絶賛した小説である。これが初めての作品とは思えないほど物語として完成度が高い。語り手が猟銃雑誌に詩を載せて云々という出だしが特に素晴らしく、一気に引き込まれた。 13年間不倫をした男性の元に、3通の手紙が届く。愛人の娘、自身の妻、そして愛人から。3人の女性らの想いがそれぞれ異なる筆致で表される。私自身女性だからある程度共感を持ちながら読めたが、これを書いた井上さんは想像して…

  • 『富士山』平野啓一郎|生きることは選択をし続けること

    『富士山』平野啓一郎 新潮社 2024.11.09読了 普段短編集を単行本で買うことはあまりないのだけれど、一部のお気に入りの作家のものは手に入れる。つまり、平野啓一郎さんもお気に入りに入っているということ。手元に置きたいと言うよりも、文庫になるのを待てず早く読みたい衝動に駆られる。 人は誰でも「あの時こうしていれば」とか「あの判断のせいでこんな風になってしまった」「あと少し早ければ」と悔やんだりする。生きるということは選択の連続だと何かの小説に書いてあって、それが常に心の中にある。「あり得たかもしれない人生」や「パラレルワールド」をテーマにした作品群でなんとなく白石一文さん風な感じがした。 …

  • 『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』メイソン・カリー|誰にでもある日常のルーティーン、うまくいかせるか?

    『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』メイソン・カリー 金原瑞人、石田文子/訳 フィルムアート社 2024.11.09読了 あまりにも物語世界に浸り続けると疲れてしまうので、ちょっと休憩してエッセイを読んだ。少し前にX(旧Twitter)でこの本が紹介されていてとても気になっていたのだ。書店でパラパラめくってみると、天才たちの大半が作家だったということもあり、俄然興味津々になる。 著者はアメリカのフリーライターである。「デイリー・ルーティーン」というブログが人気で、これに目をつけたエージェントが本にまとめることを提案したらしい。この本のおもしろいところは、何…

  • 『敵』筒井康隆|日常の飽くなきまでの細かい観察と妄想

    『敵』筒井康隆 新潮社[新潮文庫] 2024.11.07読了 75歳の独居老人渡辺儀助のとりとめもない独白が続く。住んでいる家がどうとか、預貯金やら、老臭やら、身の周りのものなど自身の想いがつらつらと、滑稽な語りで綴られる。長編小説というくくりになっているが、タイトルがついた7〜8頁程の掌編が束になっているようなイメージか。日常生活の飽くなきまでの細かい観察と妄想。いやはや、男性の頭の中を覗いているようだった。老人といえど子供じみたところもあってなんだか微笑ましい。 「昼寝」とタイトルがつけられた章では、午睡のことがかかれているが、確かに夜見る夢と違って昼寝で見る夢は軽い感じがするなぁ。とはい…

  • 『しろばんば』井上靖|少年期を扱った本格小説、やはり井上靖さんは偉大だ

    『しろばんば』井上靖 ★ 新潮社[新潮文庫] 2024.11.05読了 土蔵造りの家に住む洪作は、おぬい婆さんと二人暮らしである。伊豆の湯ヶ島という田舎町で、5歳からの幼少期を過ごした洪作の少年期の心の動きや成長が丁寧に情感たっぷりに書かれた作品である。解説で「少年期を扱った本格小説」とあり、まさにその言葉がぴったりの傑作だった。 両親に会うために、田舎からおぬい婆さんと2人で豊橋まで向かう旅路がとても印象深い。道中の見知らぬ人から貰ったお菓子をめぐる出来事もそうだが、久しぶりに会った母親との邂逅にも心を抉られるようだった。どうしてこんなにも胸がきゅっと締め付けられるような気持ちがするんだろう…

  • 『三つ編み』レティシア・コロンバニ|女性の生きづらさ、そして強さ

    『三つ編み』レティシア・コロンバニ 齋藤可津子/訳 早川書房[ハヤカワepi文庫] 2024.11.02読了 私は今までの人生のほとんどをショートヘアで過ごしてきた。長くしていた時でも、やっと結えるくらいの長さ。だから、表紙のイラストのようないわゆるお下げの三つ編みをしたことはない。昔は三つ編みにした女学生はたくさんいたような気がするけれど、今は滅多に見ないよなぁ。 フランスの女性作家が書いた小説だがフランス人は出てこない。登場する主人公は3人、インド人スミタ、イタリア人ジュリア、カナダ人のサラだ。彼女たちはそれぞれの悩みを抱えているが、強く生きている。 読み始めてまず驚いたというか辛い気分に…

  • 『パンとサーカス』島田雅彦|テロのあとに何が残るのか

    『パンとサーカス』島田雅彦 講談社[講談社文庫] 2024.10.31読了 中国やインドが、どれだけ人口を増やそうが産業により目覚ましい発展をしたとしても、日本の目標でありかつ敵であるのは大国アメリカだと思う。数多ある国のうち、意識しているのは常にアメリカなのだ。この感覚はおそらく日本だけではないように思う。今回の大統領選も、きっとどの国でも大きく報じられている。 空也と寵児は学生時代に「コントラ・ムンディ」という秘密サークルを作る。ラテン語で「世界の敵」を意味するその言葉を胸に、2人はそれぞれ別々の世界で生きていくが、どこかで必ず混ざり合い助け合う。自由な日本を目指して戦うテロリストたちの冒…

  • 『フォース・ウィング 第四騎竜団の戦姫』レベッカ・ヤロス|ストーリ性は抜群、映像化またはアニメ化に向いている

    『フォース・ウィング 第四騎竜団の戦姫』上下 レベッカ・ヤロス 原島文世/訳 早川書房 2024.10.27読了 騎手科に入るためにまずは細い不安定な橋を渡り切らなければならない。落ちたら即死だ。実際に毎年何人かの死者が出る。橋の手前でこれから友になりそうな人物と言葉を交わすが、1人の名前は登場人物紹介の栞に名前がない。きっと橋から落下するのだろうと想像する。こんなスリリングな場面から始まるこの物語は、この先の息もつかせぬ展開を予感させるかのようだ。 子どもの頃に、映画館で『クリフハンガー』という山岳映画を観たことがあり、冒頭の(すでに)クライマックスシーンのような場面を観たのを思い出した。小…

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