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 メインブログでは過去に同人をやっていたエピソードやハマッている作品について、また音楽やミステリ、特撮ヒーローなど、多岐に渡るテーマの戯言を垂れ流していますが、自作のBL小説に特化したサブブログを立ち上げることにしました。随時披露しますので是非とも御一読ください。

ブログタイトル
Welcome to MOUSOU World!
ブログURL
https://xifuren2020.hatenablog.jp/
ブログ紹介文
メインブログ"灰になるまで腐女子です?"の稀腐人が過去から現在に至るまで創作したオリジナルBL小説を公開するサブブログです。よろしければ感想などお寄せください。お待ちしております。
更新頻度(1年)

88回 / 213日(平均2.9回/週)

ブログ村参加:2020/01/08

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ハンドル名
ネオ稀腐人さん
ブログタイトル
Welcome to MOUSOU World!
更新頻度
88回 / 213日(平均2.9回/週)
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ネオ稀腐人さんの新着記事

1件〜30件

  •    ロング・ヴァージョン ⑨(最終章) ※18禁その4🔞

    第九章 オールド・パル ――想いを叶えて 穏やかな土曜の昼下がり。 春らしい、気持ちの良い晴天となったこの日、赤や白の華やかな花をつけた花水木の下で、木漏れ日を浴びながらたたずむ美青年がいた。 県道脇の歩道はこの花水木の並木道になっていて、淡いブルーのジャケットを羽織った男は時折腕時計を気にしながら、道の向こうを眺めている。 一台、また一台と、通り過ぎる車、ようやく現れた大型オートバイが彼の前に停まり、降りてきたのはストライプのTシャツにジーンズ姿の、アーモンド形の目が印象的な若者だった。 「遅くなってゴメン、道間違えちゃった」 「夜勤明けなんだから無理するなって言っただろ」 ブルーのジャケッ…

  •    ロング・ヴァージョン ⑧

    第八章 フォールン・エンジェル ――叶わぬ願い 翌日、仕事を終えて表に出ると、夕闇迫る街路に水銀灯が灯り始めていた。 グレイのスーツ、いつものバッグを提げた建樹はH駅までの道程をおぼつかない足取りで歩き、しばらく行って振り返っては、そびえ立つビル群を眺めた。 城銀の本丸──将和がそう呼んだあの場所で、何度もパソコンの前に座り、辺りを見回しては冷汗の滲んだ掌を見つめ、肩で息をついた。 USBメモリを持ち込もうとしてはためらい、コードを入力し、ワシヅの文字をタイプしようとして指を止めた── そのメモリは今、バッグの底に眠ったままだ。これで良かったのだという安堵感と、明日はどうなるのかわからない不安…

  •    ロング・ヴァージョン ⑦

    第七章 デプス・ボム ――口説き文句 三月も終わりが近づいてきた。いよいよ年度末の月末という、金融機関にとっては一年のうちで最大の山場を迎えるのだ。 企業も公的機関も、そして個人においても決算、一年間の締めくくりの月である。取引先への送金やら、大学の入学金等、いろんな種類の金が大きく動くというわけだ。 このフロアも朝から殺気立っている。受け付けた伝票をひとつ残らず、それもミスのないように素早く送らなくてはならない。 朝礼でセンター長の訓示を長々と聞かされたあと、建樹は所定の席に着いて仕事に取りかかった。 営業店が登録した未処理伝票の、現在のトータルを示す電光掲示板の文字、その数値がみるみるうち…

  •    ロング・ヴァージョン ⑥ 

    第六章 プレリュード・フィズ ――真意を知りたい 一耶と一度行ったことのあるこの店は黒を基調にしたインテリアが都会的で、紫苑とはかなり雰囲気が違う。 店内には若者やカップルの客が大勢おり、流れている曲もジャズではなく軽妙なポップス。バーというよりはスナックのような賑わいである。 カウンター席よりもテーブルが多く用意されているあたりも紫苑とは大きく違っている。ストゥールはすべて肩を寄せ合うカップルに占領されていたため、建樹は隅のテーブルを選んで座った。 昼間の一耶の態度にショックを受けたくせに、恒星の呼び出しにのこのこと応じるなんて。フローズン・ダイキリの冷たさを指先に感じたあと、自分への苛立ち…

  •    ロング・ヴァージョン ⑤ ※18禁その3🔞

    第五章 スティンガー ――危険な香り 労働組合からの再三のお達しで、有給休暇の消化を命じられた建樹だが、他に行く宛もなく、結局はスポーツクラブに居た。 ここを訪れるのは今日で三度目だが、一耶抜きで来たのは初めてである。いつものように自動ドアをくぐり、グリーンのカーペットの上を進んでフロントの前に行き着く。 水色のポロシャツ姿の、スタッフと呼ばれる従業員が「いらっしゃいませ」と挨拶すると、彼女が頭を上げるのを見計らって会員証を提示した。 それから施設使用料金や館内での飲食物その他の販売を管理するバーコードつきの、腕時計型のロッカーキーを受け取った。 さて、ロッカールームへ行こうとしたその時、後ろ…

  •    ロング・ヴァージョン ④ ※18禁その2🔞

    第四章 デニッシュ・メアリー ――あなたの心が見えない 銀行の業務が忙しくなるのは五で割り切れる日と月末、その前後で、数字の切りがいいせいか十日や二十日に振込みの期限を設定、また、給料日は毎月二十五日と決めている会社が多いから、そのようになるのだ。 裏を返せば、それ以外の時は比較的余裕があるわけで、しかも営業店に比べると業務センターは繁忙の度合いの落差が著しい。 その日も余裕の定時退社──残業に追われていた日々が嘘のようだ──をした建樹は最寄りのH駅へと到着した。 先のD駅からさらに東へ二駅進んだ、このH駅を利用するのは城銀に勤務する者ばかりではなく、近くには私立の中高一貫教育の学校や大学など…

  •    ロング・ヴァージョン ③

    第三章 ブラッド&サンド ――切なさが止まらない 建樹が配置転換された業務センターはこれまでの駅前支店とは打って変わっていくらか辺鄙な場所、悪く言えば田舎にあり、地価が安いためか、広い敷地を得た城東銀行の施設の大半がこの地に集まっている。 一大ビル群と化した施設の内訳は県内外の全営業店を結ぶコンピュータシステムを扱うシステム本部や、証券等、銀行業務以外の事業に進出した関連会社の事務所などで、業務センターは敷地の一番北側、北館と呼ばれる四階建てビルの二階に入っていた。 三月最初の月曜日、この日付で転任した建樹が出社すると、脇に警備室のある入り口のところでセンターの総務関係を取り仕切る部署の女性が…

  •    ロング・ヴァージョン ② ※18禁その1🔞

    第二章 スコーピオン ――瞳で酔わせて 黒い服の男に肩を抱かれるような格好で建樹が連れてこられたのは先程ふらりと入った紫苑というショット・バーで、そうとわかったとたん、彼は足を止めて躊躇した。 成瀬一耶と名乗ったあの青年を振り捨てるように出てきてしまったのだ。彼がまだ居残っていたとしたら、こんなにもバツの悪いことはない。 そんな建樹の様子を見て、黒い服の男は眉をひそめた。 「どうかしたのかい?」 「ここは喫茶店じゃなさそうだし、あの……」 「いいから、いいから」 男はそう言い、強引に建樹の身体を店の中に押し込めた。 深夜に近いこの時間、店内はさっきよりも閑散としていて、けだるく物憂げな雰囲気が…

  •    ロング・ヴァージョン ①

    第一章 姫野建樹(ひめの たつき)に人事部からの通達があったのは繁忙する年度末を目前に控えた、二月も中旬のことだった。 「業務センターへ異動、ですか……わかりました」 それは予期せぬ出来事ではなかった。当の昔に覚悟を決めてはいたが、いざ現実となると足がすくみ、上司が読み上げる今後の引継ぎの計画も、先方との打ち合わせの予定も、どれも耳に入らないから残りもしない。何もかもが虚しく、頭上を素通りしていく気がした。 先だって大手都市銀行同士の合併が行われたばかりである。日本経済の変動、金融機関を取り巻く状況の急激な変化に対応するために、組織編制に柔軟性を持たせて云々…… 容赦ない処断を屁理屈でコーティ…

  •    ロング・ヴァージョン 解説

    オリジナルBL小説の公開も大詰め。今回取り上げる作品は『ロング・ヴァージョン』です。十四年程前の作品で、タイトルは稲垣潤一氏の曲から拝借し、ストーリーのイメージにも使用しました。 自分の作品の中では一番大人っぽい、いわばMLではないかと思います。商業誌では学生物よりリーマン物(しかもシリアス)がウケる傾向にあると、新人賞応募時代に感じることがありまして、そうでもなかったのか、今でもそうなのかわかりませんが、働く男たち、特にエリート社員を扱うとウケがいいんじゃないのかと考え、ひねり出したのが本作です。 精一杯書いたのですが、世間の求めるものと合致したかは不明、新人賞の結果も芳しくはありませんでし…

  •    BV狂騒曲 ⑦(最終章)※例によって18禁っス🔞

    第七章 それにしてもボクの紙袋はどこへいってしまったのかと思っていたら、階段の隅でぺちゃんこになっていた。 山岸とぶつかったはずみで階下に落ち、それを彼が知らずに踏んづけてしまったようだ。海斗を殴って興奮していたから、何も目に入らなかったんだろう。 紙袋には海斗の大好物のマドレーヌが入っていた。もしも河野から貰ったお菓子がマドレーヌでなかったら、彼は食べたりしなかったかもしれない。 「……あーあ」 二次元化してしまったマドレーヌを見て残念がる海斗に、また作り直すからと慰めたボクはあることを思いついた。 「そうだ、もうすぐ誕生日じゃなかったっけ?」 海斗の誕生日は十月十日、旧・体育の日。見事なく…

  •    BV狂騒曲 ⑥

    第六章 休みが明けて登校すると、いつもしつこく擦り寄ってきた岩田がまったく寄りつかなくなっていた。 BVデーの告白タイムがさんざん妨害されて、いい加減にあきらめたのかな。ヤツのことなんてどうでもいいけど。 それよりも海斗だけど、こちらをちらちらと見ているわりには、何も話しかけてこない。ちょっと寂しそうな顔をしているように見えるのは気のせい? モモカから聞いたネタやら、いろいろ話したいことはあるけど、とてもボクから声をかけるなんてできない。 時間はさっさと過ぎて放課後になった。 すると、帰り支度をしていたボクのところに岩田がやってきて「矢代くん、一条が呼んでいたぜ。急用があるから、バスケ部の部室…

  •    BV狂騒曲 ⑤

    第五章 翌日、九月二十九日は土曜日だが、バスケ部の練習は休みということで、竜崎がデートの待ち合わせに指定したのは隣町の繁華街、そこの通り沿いにある高砂屋デパートの正面玄関だった。 夏休みに於ける息子の変貌を一番喜んでくれたのはもちろん母さんで、オシャレでイケてる服をどっさりと買い込んできたため、ボクは母さん専用の着せ替え人形になった。 そんな新しい服の中の一枚、真っ赤な重ね着風のTシャツにストーンウォッシュのジーンズを履いてみる。うん、完璧だ。 海斗と河野のことを忘れようとして、ボクは軽薄最低男を「ぎゃふん(死語)」と言わせる作戦にひたすら打ち込んでいた。 天誅だ! 覚悟しろ、竜崎! これこそ…

  •    BV狂騒曲 ④

    第四章 ようやく倉庫からはい出たボクはそれからいつもの駅前商店街にたどり着いたが、衝撃的な体験をしたせいで意識が朦朧としたまま、通りをフラフラとうろついた。 けっきょく海斗はボクと竜崎の関係をどう捉えているのか。 思い上がり&厚かましい&思い過ごしを承知で言えば、彼は竜崎に嫉妬していたと、だから自分を嫌いかと訊いたと、思い余ってボクにキスしてきたと── つまり、彼もボクを好きだという結論に行き着く。 片想いだとあきらめていたボクにとっては朗報のはずだが、何か割り切れないものを感じてしまう。 それは彼を異性愛者だと信じていたのに、思いがけない展開を見せたことや、矛盾を孕んだ森岡胡桃の一件が解決し…

  •    BV狂騒曲 ③

    第三章 それから数日経ったのちの出来事。 帰りのHRのあと、日直の仕事にいそしむボクに話しかけてきたのはフケ顔の岩田だった。この男、新学期になってから、やたらと親しげに寄ってくるのが薄気味悪い。 話の内容はたわいのないことだけど、ボクの冷ややかな対応にもめげずに、あれやこれやとネタを考えてくる。 「職員室に当番日誌持って行かなくちゃならないんだ、どいてくれる?」 今回も冷たく追っ払われた岩田がすごすごと席に戻るのを眺めて、海斗が苦笑した。 「あいつも根性あるなあ」 「のん気なこと言わないでよ。毎回毎回迷惑なんだから」 「拓磨に気があるんだろ」 「ええっ、嘘だろ! 冗談じゃない、やめてくれよな」…

  •    BV狂騒曲 ②

    第二章 夏休み序盤に味わった失恋、その痛手はしばらく続いた。食欲をなくすなんて、生まれて初めてのことだった。 毎日自宅で引きこもり状態になったボクはその日も朝から鬱々と考え事をしていた。多くを期待していたわけじゃない。ただ、ありがとうとだけ言って、菓子を受け取ってくれさえすればよかったのに。 相手が誰であれ、とりあえずは受け止めるのがBVデーにおける暗黙の了解事項じゃなかったのか。ルール違反も甚だしい。 ボクの絶望はやがて竜崎さん、もとい、竜崎への憎しみに変化した。 断るなら断るで、もっと他に言いようがあるだろう。それをいきなりブタ呼ばわりするなんて、消えろ、二度と現れるな、なんて、あまりにも…

  •    BV狂騒曲 ①

    第一章 ボクの通っている私立亜羅礼(あられ)学園高等学校には『BVデー』という、とんでもない慣習がある。 二月十四日の聖バレンタインデーといったら、最初に仕掛けたのはチョコレート会社だとか何とか言われているわりに、今では日本の風習にすっかり溶け込んでいる。もっとも近頃じゃ、女の子が好きな男に告白する日というよりは、友達同士でチョコや手作りのお菓子を交換する日に変遷しているけれど。 で、そんなバレンタインデー本来の意味をもつのが『ボーイズバレンタイン』、つまり男から男への愛の告白! これは男子高校ならではっていうか、欲求の高まりがピークを迎える年頃に女っ気のない、男ばかりの高校生活を送っていると…

  •    BV狂騒曲 解説

    引き続き学園物コメディ、今回は男子校が舞台です。その学校独自の♂♂バレンタインから発展する騒動というネタで、書いたのは十六年ぐらい前。オリジナルBL小説の中でもかなり初期のものです。新人賞投稿の成績はイマイチで、例によってα社がDクラス、他にも出したと思ったんだけど記録が残っていませんでした。 ※このサブブログに関する情報はメインブログ「灰になるまで腐女子です?」で随時お知らせしておりますので、そちらを御覧ください。よろしくお願いいたします。

  •    バンカラらぷそでぃ ⑪(最終章)※さほどエロくないけど一応18禁どす

    第十一章 宴がお開きになり、送って行くと申し出た聖爾はタクシーを呼んだが、俺はその車中の後部座席で彼の手を握ると「帰りたくない」と告げた。 わかったとうなずき、聖爾は行き先を横浜へと変更、そのあと内ポケットから取り出したものを見せた。 「これ、おぼえている?」 小さな布切れは少し色褪せているけれど、そこに描かれたイラストははっきり見える。 「それって、シーレンジャーの……えっ、もしかして俺のハンカチ?」 「あのとき、君は泣きながら僕の腕にこれを結んでくれた、小さくてかわいい手でね。大事なハンカチだったんでしょう、それを僕の怪我の手当てに使ってくれるなんて、この世にはこんなにも優しい子がいるんだ…

  •    バンカラらぷそでぃ ⑩

    第十章 拍手に送られて十九番の人が階段を降りると、いよいよ俺たちの出番だ。舞台の上に緋毛氈が敷かれ、後ろの白いスクリーンには講義での難しい方程式に代わって、夜空と満月が映し出された。 聖爾が頼んでくれたお蔭で、右の幕の裏に取り残されていた箏が毛氈の上に運び込まれ、俺がその前にゆっくりと座ると、客席からざわめきが聞こえてきた。続いて誠さんも俺の隣へ、司会者の声が大きく響き渡った。 「エントリーナンバー二十、応援団代表の綾辻美佐緒さんです。箏の演奏で、尺八での合奏者は土方誠さん、演目タイトルは『かぐや姫~運命の出会いと別れ~』です。拍手でお迎えください」 え、演目タイトル? そのダサいサブタイトル…

  •    バンカラらぷそでぃ ⑨

    第九章 泣いても笑っても今日が本番、学園祭最終日・コンテスト当日。開始時間は午後一時からだが、どこもかしこも朝からその話題でもちきり。各サークルの連中は気もそぞろで、屋台を出してもタコ焼きどころではない。 出場者は十二時半までに集合ということで、俺たちは会場となる、あの大教室の隣の教室に向かったが、これがミスコン出場者の控え室とは思えないほど様々な人たちが集まっていて、男の参加者も意外に多く、赤木が話していた食堂のオバちゃんの姿もあった。 一週間前に抽選で決められていた出順を再度確認のあと、注意事項が言い渡されて、出番の早い者から準備に取り掛かる。 聖爾たちは出場者二十三組のうちの十七番目で、…

  •    バンカラらぷそでぃ ⑧

    第八章 聖爾と桃園恭子、誠さんと俺。三曲チーム対応援団チームの戦い、という形でくくるほど、コトは単純じゃない。それぞれの思惑は複雑怪奇なのだ。 まずは桃園恭子。この女にとっては同好会の未来などどうでもよくて「三連覇したアタシがやっぱり一番美人」という満足感を得るために、俺に勝利して王者の栄冠を手にする。 それから婚約を解消させ邪魔者を排除。フリーの身になった聖爾に近づくチャンスを得られれば、それでいいのだ。 誠さんの理由は明快だ。応援団団長として部室の確保は責務。さらに、俺の婚約が破棄されないよう、向こうのチームより上位に入賞出来るように頑張ればよい。 複雑なのは聖爾で、部室を切望するみんなの…

  •    バンカラらぷそでぃ ⑦

    第七章 見合いという奇妙な形で再会し、関わるようになった聖爾は俺を十五年間想い続けていて、俺自身は偶然出会った応援団団長の土方さんに片想いのはずが聖爾の動向も気になる。奇妙な三角関係のせいでこの数日間、心が掻き乱されっぱなしだ。 気もそぞろに講義を受けていると、後ろの席に座った赤木が背中をペンでつついた。 「何ぼんやりしてるんだよ?」 「うるさいな、何でもねえよ」 「昨日あれからどこ行ったの?」 「送ってもらっただけ、どこも行かないって」 この応用化学の講義は必須科目のひとつで、工業化学科のほとんどの人が受講するとあって、大人数が入れる小型のコンサートホールみたいな教室を使う。 教授はマイクや…

  •    バンカラらぷそでぃ ⑥

    第六章 ここらは東京に近いわりには起伏のある丘陵地帯で、キャンパスがある場所もその一画だから、そこから下るとなると、車はまるで遊園地のジェットコースター状態。 大型のワンボックスカーとはいえ、箏のように長いものは真っ直ぐに入れると先が一番前まで届いてしまい、運転席と助手席の間に突き出た先端は固定してあっても、ジェットコースターの振動でガタガタと大きく揺れ、俺はそいつを抑えるのに必死で、話をするどころではなかった。 箏だけではなく、三味や尺八、その他の備品が入ったケースも後ろの座席で賑やかな音を立てている。人の気も知らずに、ハンドルを握りながら楽しそうに鼻歌を歌う聖爾、毎日のことで慣れたのか、楽…

  •    バンカラらぷそでぃ ⑤

    第五章 次の日、難解極まりない物理学の講義が終わり、本日の授業から解放された俺が教室を出たところでちょうど赤木に会ったため、二人で学生会館へと向かった。 「和室をほぼ毎日押さえたって話してたよな。すげえ気合入ってるじゃん、同好会」 「そのたびに車から楽器を運ぶのも大変だけどな」 「一番大変なのは豊城さんだぜ。自分の家から毎回持ってくるんだろ? ガソリン代だってバカにならないし」 「セレブにとっちゃ、そのぐらいのはした金、どうってことねえだろう」 俺の言葉を聞いて赤木が妙な顔をした。 「あの人の家庭事情を知ってるのか?」 「えっ、いや、その……ちらっと聞いただけ」 ヤバイ、変なことを口走ってしま…

  •    バンカラらぷそでぃ ④

    第四章 二時限目の講義が終了した。今から昼休みだが、別の講義を履修している赤木たちはまだ授業が終わっていないらしく、俺は一足先に学生会館へ向かった。 学生会館の一階は食堂、二階は学生協と会議室などの施設、三階から五階までは各サークルの部室が並ぶという造りで、一階の入り口の脇に食券の販売機があり、メニューを選んで購入、セルフサービスで食事を受け取る手筈になっている。 近頃はシャレた建物やメニューで学生はもとより、一般の人たちの人気を集めようとする学食もあるらしいけど、ここはまだまだそんな進化を遂げる気はなさそうだ。 食堂内は長方形のテーブルが縦に四つ並んだメインの列が五列、壁と給水器の間やら、出…

  •    バンカラらぷそでぃ ③

    第三章 俺たちが松の間に戻ると、急用が出来たので帰る、美佐緒さんとはまたの機会に会う約束をしたとか何とか、適当な言い訳をした聖爾さんはその場を切り上げさせた。 再会を約束したということは美佐緒さんも聖爾が気に入ったようだ、とりあえず見合いは成功した、といいように解釈した豊城家の両親は安堵。また、俺の正体がバレることなく見合いが終わって、親父たちは胸を撫で下ろしていたようだが、安心しちゃあいけない。 聖爾さん本人が茶番劇の黒幕だった以上、俺の作戦はまったく通用せず、それどころかこのまま話がトントン拍子に進めば、彼の思惑通りに結婚させられる羽目になる。 結婚相手が男だと承知の上で、となれば、俺を本…

  •    バンカラらぷそでぃ ②

    第二章 問題の日曜日になった。 遠足に行く小学生のように朝から張り切っていた御袋はこの日のために用意したと言って、新調した着物、それも真っ赤な大振袖を俺の目の前に広げてみせた。「……誰が着るんだよ?」「あら、美佐緒さんに決まってるじゃない。帯も帯揚げも、それから帯締めも揃えたのよ。ほら、キレイでしょ」 金襴緞子の袋帯と、着物の色に合わせた薄紅色の帯揚げを見せびらかしながら、至極満足気な御袋の様子に俺はゲンナリするばかり。しばらくパスしていた女装が復活だ。よくぞこれまで自分を女だと思い込んだり、女装趣味に目覚めたりせずに済んだと思う。 もっとも、それは身近に二人の少年がいたからだ。御袋の制止も何…

  •    バンカラらぷそでぃ ①

    第一章 ウォイッス! 俺の名前は綾辻美佐緒(あやつじ みさお)。正真正銘、れっきとした男だ。そこんとこ、よーく頭に叩き込んでおいて欲しいんだが、俺に初めて会うヤツの十人中十人、全員が必ず口にする「えっ、女の子だと思った」というセリフ、そいつを聞かされ続けて十八年、さすがに反論する気力も尽きてきた。 そもそも俺は東京に本社を構える綾辻物産を経営する親父・孝雄と、同じ敷地の離れに住む姑と一緒に自宅で茶道や華道に着付け、そして生田流箏曲といった、お稽古事と呼ばれるものを教える御袋・志乃の『三男』として生まれた『はず』だった。 それは大学進学を果たした四月、月も半ばを過ぎたある日のこと。兄二人を欠いた…

  •    バンカラらぷそでぃ 解説

    ようやく次の公開作品の準備ができました。すっかり遅くなり申し訳ございません。 今回の作品は『バンカラらぷそでぃ』完全オリジナルです。またまた大学が舞台で、箏・尺八・三味線のサークルと応援団が絡む学生物コメディです。α社の新人賞に応募してベスト7に入賞した、自作の中では二番目に成績の良かった作品なんですが、何がそんなに高評価だったのか、どのあたりが良かったのか、自分でもよくわかりません。 ※このサブブログに関する情報はメインブログ「灰になるまで腐女子です?」で随時お知らせしておりますので、そちらを御覧ください。よろしくお願いいたします。

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