「彼と彼」の恋愛を描いた、せつないお話が好きです。 年下攻め・攻め視点・性描写ありの小説が多め。きれいで温かな感情をお届けしたいと思っています
このページは、全9話中の第7話です。 第1話へ 第2話へ 第3話へ 第4話へ 第5話へ 第6話へ 縛られてはいるのだけれど、美しい絹の拘束はゆるやかだ。 たぶん、シーツの上の体は、動かせるのだと思う。かなりの範囲で。 本気で逃れようと、強くもがけば。 ──けれど。 クリーム色の闇にとじこめられて、一方的にユーシンの愛撫が与えられる今は。「……紡」 キスの合間に名前を呼んでくれる声は、いつもどおり優しい。「僕にしてほしいこと、ある?」 あまくて艶のあるテノールが、夜の寝室でささやかれる。 ──わかっているくせに。 次に、してほしいこと、なんて。 胸と胸をあわせるかたちで、ユーシンが自分に覆いかぶ…
このページは、全9話中の第6話です。 第1話へ 第2話へ 第3話へ 第4話へ 第5話へ ──ルールを決めよう、と言われた。 「ほんとうにやめてほしいときには、『No, no, no』って3回、言うこと。……それを言われたら、僕は、そのときしていることを、すべてやめる。そして、きみの拘束を解く」 わりと生真面目な顔で告げられた。 なのに、紡のほうは、きょとんとした表情を返してしまったらしい。 「大事なことだから、よく聞いて」と、ユーシンの眉根がひそめられた。 「『ほんとうにやめてほしいとき』の意思表示のしかたを、きちんと覚えておかないと」 ──そう……なのか? そんなルールが、必要なこと……なの…
◀︎Back Next▶︎ 報道陣が常駐しているブコバル・ホテルのロビーには、噂には聞いていたが、さまざまな国からの人間がやってきていた。 ルカが話せるのは英語とクロアチア語だけだが、イタリア語やドイツ語やフランス語も聞こえてくる。 さほど広くないロビーにたむろする、たくさんの外国人の顔を見渡して、いったいこのうちの誰が、面接の約束を取りつけたGBNのエドワード・パーカーだろうか、とルカは考えあぐねた。 10時半にこのホテルのロビーで、という約束しか、聞いていなかった。この雑多な外国人たちの群れを目の前にしてしまうと、誰に話しかけていいものやら皆目わからない。 とりあえず、フロントの人間に尋ね…
このページは、全9話中の第5話です。 第1話へ 第2話へ 第3話へ 第4話へ ユーシンの住居は、堅牢なつくりのマンションで、遮音性が高いからか、部屋の物音が筒抜けになる、ということがない(紡の安下宿とは大違いである)。 高層階に位置しているせいで、都心の夜特有のざわめきも、あまり聞こえてこない。 それでも、ユーシンのベッドに横たわって、暗がりの中、彼がシャワーを終えるのを待っている、というこのシチュエイションでは、聴覚は否応なしに研ぎ澄まされる。 バスルームでユーシンが使っているシャワーのごくかすかな音を、紡の過敏な耳はとらえていた。 さあさあ、という静かな雨のような音が、とまった。 バスルー…
このページは全9話中の第4話です。 1話へ 2話へ 3話へ[R18] ──言って。きみの、してほしいこと。 教えて。きみが、いじられたいところ。 それらを口にするのは、紡にとって、大きな羞恥をともなうのに。「言えない」とか「わかってるくせに」とか抗議しても、ユーシンは許してくれない。 暗がりの中、甘くて優しい声で、そそのかしてくる。 ──紡が言ってくれたら、してあげるよ。 この前の夜みたいに。 ああ、あのときの紡、すごくかわいかったな。……僕がしてあげたら、感じすぎてわけがわからなくなっちゃったみたいで、僕にしがみついて、つま先まで、びくんびくんって震えさせてさ。…… ──やだ。やだ、そんなこ…
第1話へ 第2話へ このページは全9話中の第3話です。 子ども時代のことを、ユーシンは、あまり語りたがらない。 けれど、ひび割れてしまった陶器のカップの底から、ぽつり、ぽつりと、雫がこぼれるようにして、口にされた言葉のはしばしを。 点と点を結んでいくみたいにつなぎあわせると、かなり特異なユーシンの生育歴が浮かび上がってくる。 ユーシンの父は、(日本で、というよりむしろ、ヨーロッパで)高名な画家である。 彼は、その父が68歳のときの息子である。──香港チャイニーズの名家の一人娘だった母は、父の3番目の妻なのだが、結婚したとき、夫との間に、実に40歳以上の年齢差があったそうだ。 その父が亡くなった…
このお話は、全9話のなかの第2話です。 第1話へ ユーシンは、6歳までを日本で、14歳までを香港で、18歳までをトロントで過ごしている。 最も得意なのが中国語、教育を受けたのは英語、日本語が「一番苦手かも」だそうだ。 ゆえに「大学ぐらいは、日本の学校に通っておこうか」という動機で、紡の通う大学に入学したそうで、もうなんだか、いろいろとすべてが紡とは「ちがう」。 その夜、ケータリングでユーシンが取り寄せてくれた夕食は、オーガニックレストランのハンバーガーとチョップドサラダで、特に豪奢なメニューではないのに、しみじみと美味しかった。 きちんと選び抜かれた新鮮な食材で、プロのシェフがしっかり手間暇か…
「ねえ、紡」 「はい」 「どう思う? これ」 紡の背後に立って、そう尋ねてきたユーシンは。 「この間の土曜日にね、銀座の店で見つけて。たまらなく欲しくなって、買ったんだ」 端正な顔に満面の笑みを浮かべて、やけにうきうきと、嬉しそうなのである。 都心の高層階にある彼のマンションに着くなり、「見せたいものがあるから」と手をつながれてこの寝室に連れてこられた。 週に数回、プロフェッショナルなハウスキーパーによって清掃がなされるユーシンの住居は、いつ、どの部屋に紡が足を踏み入れても、高価なホテルの一室のように、生活感の希薄な(そして、ある種、冷淡な)清潔さで、整えられているのだが。 それでも、彼の最も…
こんにちは〜♪ 星空チョコレートです♡ さて、『驟雨』の三角関係シリーズの3つめ『夜をつなぐ』の掲載が終わりました。 いかがでしたでしょうか… さて、この一連のお話を『驟雨トライアングル』と命名してみたのですが。 では、この三角関係は、どういう3人で構成されているか、ざっくりまとめてみますと 「兄(大学生・攻)+弟(高校生・攻)+兄の友人(美人・受)」 ……という感じになっております。(むむ、ざっくりすぎ?・笑) 一応、このページでも一挙ご紹介。 【驟雨トライアングル】シリーズ 『驟雨が、はじまる。』1話・2話・3話(2019.11.20〜22) よく知らない兄の友人。その彼と、偶然、驟雨の午…
このページは、全3話中の3話めです。 1話目へ 2話目へ あの秘密の午後のはじまり。驟雨の直前。 今にも激しい夕立が来そうな空模様に、気づきもしないで、ぼうっとした顔の蓮見優一が、この場所に立ち尽くしていて、そして自分と出くわしたのだ。 ──ほんの二日前の深夜の電話も。 いつものように、槙から一方的にかけた。 『ねえ、槙は、あの彼女とさ、どこで知り合ったの?』 「彼女?」 『ほら、前に、電車のなかで、きみが連れてた、セミロングのきれいな子』 卒業制作の作品の締め切りが近くて、あんまり寝ていない、というわりには、最初のうち、優一はことのほか上機嫌で、いくつかの軽口をたたいた。 それが、どうした加…
★このページは、全3話のうちの2話めです。 1話目へ 「大学教授って……いや、確かにそうですけど、べつに、うちの中では普通の父親ですよ」 思わず笑い声をあげたが、優一のほうからは、そういうリアクションは返ってこなかった。 「俺と兄貴、子供用の二段ベッドを使ってたんです。で、それを解体して処分して、新しいベッドを二個買って、それぞれの部屋に置いて」 『あ……聞いてみると、結構、たいへんっぽいねえ、それ』 「大変ですよ。机も移動させたし、両親揃って、大人ふたりで、一緒に共同作業しないとって感じ」 『……そっか。そうなんだ』 返されたのは、何か、優一自身の中の深い感情にとらわれてしまったような声だっ…
このお話は、「兄+弟+兄の友達」の三角関係を扱った『驟雨が、はじまる。』『電話ごしに聴くと、彼の声は』の続きにあたっています。 独立して読める作品ですが、よろしければ先行作品をお読みいただいたほうが、お楽しみいただけるのでは、と思っています。 『驟雨が、はじまる。』第1話・第2話・第3話 『電話ごしに聴くと、彼の声は。』第1話・第2話・第3話・第4話 深夜の電話で交わす、たわいのない言葉は、いくつかの点のようだ。 ひとつひとつはあまり意味を持たずに、ただ、夜の中に散らばっているだけ。 けれども、その点と点が、いくつも寄り集まって線になれば。 そして、線が集積して面を成し、その面と面がいくつも合…
『電話ごしに聴くと、彼の声は。』あとがき こんにちは〜 星空チョコレートです♪ このページは、2020年3月18日〜21日発表の『電話ごしに聴くと、彼の声は。』のあとがきになっています。 この『電話ごし』は、『驟雨が、はじまる。』の続編にあたっています。 この2つは「兄+弟+兄の友人」の三角関係を描いています。 しっかりとネタバレしちゃっていますので、もし、本編をお読みでない方は、そちらからお読みいただけますと、嬉しいです♪ 『電話ごしに聴くと、彼の声は。』は原稿用紙35枚程度のとても短いお話です。 実は、『驟雨』を最初に発表したのは、現在のブログの前身にあたるブログでした。2017年の夏のこ…
★このページは、全4話のうちの4話目(最終話)です。 第1話へ 第2話へ 第3話へ 『俺。……あなたに会いたいんです、もう一度』 「ふーん?」 『会ってくれますか? いつなら、会えますか?』 「そんな、せっつくなよ、槙くん」 ──深夜、見知らぬ番号から電話がかかってきたところで、普段なら、わざわざ応答することなどしないのだが。 9月最初の土曜日、たまたま優一は、槙からの通話を受けた。 単に暇だったから。 そして、淋しかったから。 「そういえばさ。……いつだったか、俺、電車のなかで、槙くんのこと、見かけたんだけど」 『え? いつ、ですか?』 「うーん、結構まえ、かな。5月ごろだったと思う」 『……
Q(@東京)「ワニくん!」 Q「しななかった〜〜!」 ──北の大地に住む私のもとへ、東京住まいのQから、そんなラインがやってきたのが7時半ごろ。 「100日後に死ぬワニ」。 皆さまご存知のように、きくちゆうきさんのTwitterに掲載されていた4コマまんがです。 私は約40日目ぐらいから読んでいました。 私「いや、そーか?」 私「あの桜の写真は、ワニくんが最期に撮った写真ってことでしょ」 私「そう思って、私、泣いちゃった」 Q「いや、ワニくん、しんでないよ」 Q「しんでないって」 私「うーん、そうかな……むしろそうであってほしいが」 Q「いや、待って」 Q「『最後に撮った写真』とか言わないでよ…
★このページは、全4話のうちの3話目にあたっています。 第1話へ 第2話へ ──あの驟雨の午後。 誘惑の方法なら心得ていた。自覚がなくても、同性に性的に惹かれる男なんて、たくさんいる。彼らの好奇心を利用して、その欲求を、自分に惹きつけることなど、優一にはお手の物だった。 思わせぶりに、槙の目の前で、びしょ濡れになった服を、ゆっくりと脱いでいった。 そのときの槙の反応で、「落とせるな」と確信した。 うっとりと、魔法がかけられたような顔で。 槙は優一のことを見ていた。 上半身を脱いだ体を、さらしてやっただけ、なのに。 槙の視線は熱っぽくて、真剣だった。 彼自身が抗えないものの力に、思考と意志の力を…
このページは、全4話中の2話目にあたっています。 第1話へ 紘彦と優一は、中等部と高等部がつながった、私立の名門校の同窓生である。 その高校の中でも、紘彦は、学年で一、二を争うような成績の持ち主だった。 自分の命を削るような勢いの受験勉強の末に、これまた名門大学に入り、そして、大学生の現在も、司法試験を目指して、死に物ぐるいで勉強しているような男なのである。 その彼が、弟のことを話すときには、いつも「とにかく勉強しないんだ」という言辞がくっついていた。 「頭、悪くないんだけどな。……根気がないんだよ」 「ふうん?」 「なんか、勉強よりも、ほかのことが楽しすぎちゃうみたいでなあ」 などと、高校3…
深夜、見知らぬ番号から電話がかかってきたところで、普段なら、わざわざ応答することなどしないのだが。 9月最初の土曜日、たまたま、優一はその通話を受けた。 単に暇だったからである。 セックスするはずだった相手に、あっさりと予定を反故にされたせいで。 「はい、蓮見ですが」 そう答えると、電話の向こうの相手は、一瞬、息を飲んで(その音がはっきり聞こえた)押し黙った。 まるで、優一がこの電話を取ることを、まったく予期していなかったみたいに。 そっちのほうからかけてきたくせに。 『……槙です』 短い空白ののちに、ぽつりとした答えが寄こされた。 ああ、と思った。 2週間ほど前の、驟雨の午後の記憶が、ひらり…
こんにちは〜♪ 星空チョコレートです。 あり得ないほどご無沙汰してしまいました…… ほんとうにごめんなさい。 なんと、この前の更新は昨年12月のこと。 (ひえ〜〜) 「これから、いろいろとやりたいこと」だけ、ばんばん宣伝して、それでそのまま、こちらのブログの更新を止めてしまったので。 読者の皆さまのなかには 「もしや、この作者、何か良からぬことに巻き込まれたのでは…?」(①) 「ていうかライターズ・ブロック?」(②) 「仕事とかが忙しい? あるいは、たんに怠け癖?」(③) ──などなど、いろいろとご心配くださっていた方も、もしかしたら、いらっしゃったかもしれませんね。 (特に、私は北の大地に住…
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