#7『優しくて、いじわる。』
このページは、全9話中の第7話です。 第1話へ 第2話へ 第3話へ 第4話へ 第5話へ 第6話へ 縛られてはいるのだけれど、美しい絹の拘束はゆるやかだ。 たぶん、シーツの上の体は、動かせるのだと思う。かなりの範囲で。 本気で逃れようと、強くもがけば。 ──けれど。 クリーム色の闇にとじこめられて、一方的にユーシンの愛撫が与えられる今は。「……紡」 キスの合間に名前を呼んでくれる声は、いつもどおり優しい。「僕にしてほしいこと、ある?」 あまくて艶のあるテノールが、夜の寝室でささやかれる。 ──わかっているくせに。 次に、してほしいこと、なんて。 胸と胸をあわせるかたちで、ユーシンが自分に覆いかぶ…
2020/03/31 11:48