エンジニア×看護師の社会人じれじれ寸止め短編集。長編連載は安心と信頼の国産ゾンビゲー系異世界に社畜が閉じ込められたり逆にゾンビが現実に出てしまう大人の青春話をやっています。なろう日間ローファン部門最高31位。
だぼだぼの緑のハイネックと、ゆるゆるのデニム素材でできた青いつなぎ……という服装で、彼女は彼の自宅に遊びに来た。 玄関先でお色気度数ゼロの萌え袖状態になっている両手を広げ、彼女こと笹野原夕は、花の綻ぶような笑顔で言う。 「ハッピーハロウィン!」 彼ことゲーム開発者の蒔田修一は、玄関のドアを開けた格好のまましぱしぱと目をまばたいた。 ──笹野原が着ているのは、ハロウィン的なオバケとは何一つ関係のないゲームキャラ・緑のアイツのコスプレらしい。 蒔田が「それだ」とわかったのは、笹野原が緑のアイツのシンボルであるアルファベットの「L」が刻印された特徴的な帽子を被っていたからだ。 『ビッグシルエット』と…
秋の夕空、金色、はんぶんこ 看護師のネコチャンとバール持った熊。本編序盤&終盤とかのイメージイラストです。 小説の挿絵もこの記事にちょこちょこ付け足して行きます。 11話。 次は12話だー。
※オマケの秋の話です。インフルエンザが流行っておりますのでくれぐれもお気を付けください。 彼女が安っぽい単層ガラス窓をガラリと開けると、ひやりと清涼な空気が部屋の中に入ってきた。 「ふーっ、生き返るー」 揺れたカーテンが風といっしょに彼女の頬をかすめたので、彼女は思わず笑みをこぼした。 ──空気が酸っぱい黒ずんでいると散々な言われようの大都会・S宿にも、当然ながら秋は来るし、まれに清涼な空気が流れる時もある。 今日はまさにそんな日で、彼のマンションの窓から顔を出した彼女は、気持ち良さそうな顔をして窓の外を見ていた。薄い青紫の空の下にはもう夜景めいたビルの窓明かりや車のテールランプが見え始めてい…
さて、彼はしばらくぼんやりとした表情で窓の外の景色を眺め続けていたが、やがてそうすることにも飽きたらしい。 青い空からふっと彼女が操作しているスマホの画面へと目を転じた。 彼女はどうやら、先ほど撮っていた浴室中の画像をいじっているようだ。 (なんだろう……あれはさっき撮っていた写真と……何か文章を打ち込んでいる……?) と、ぼーっとしながらそこまで考えた彼は、やがてハッとした顔になり、彼女が『アップロード』と表示された部分をタップするよりも早く、慌てた様子で彼女からスマホを奪い取った。 「──ちょっ、ちょちょちょちょっと待て! 君は一体この写真をどこに載せるつもりだったんだ!?」 「え? イン…
二人とも完全に油断していた。 とある夏の、土曜の昼下がりのことである。 その日のS宿駅西口にある某ビルの温度計は、36度を示していた。 それ自体は特に珍しいことでもない。 しかし、そんな酷暑日ともいえる日に、彼と彼女はエアコンが壊れている飲食店にうっかり入ってしまい、ならばすぐに出ればいいものを、「少しなら大丈夫なのでは」と二人で話しながら料理を待っていたら、思いのほか待たされてしまった……という出来事は、二人にとって完全に予想外のことだった。 ちなみにエアコンは最後まで壊れたままで、待っていた料理はアツアツのラーメンだ。 ──……つまり、汗をかきすぎた。 「……このあとどうなってもいいや、っ…
バールナース 第1話プロローグ『スマホがアレして異世界に迷い込むよくあるやつ』
私は名もなき新人看護師。 趣味は頭を空っぽにしてやることができるゲーム。 特にゾンビを銃器で撃ちまくるやつと、友達と馬鹿話をしながら盛り上がって遊べる乙女ゲームが大好物だ。 ……いや。 正確には大好物『だった』。 めちゃくちゃ気を付けて選んだのに『外れ』の職場に当たってしまったので、今はゲームをする余裕なんてない。今月も法定残業時間を大きく上回るサービス残業の真っ最中なのだから。 (早く終わらせなきゃ……でも頭が全然回らないよ……) その日の夜も、私はナースステーションで古ぼけたパソコンにかじりついて、今日一日の看護記録を書いていた。 場所は新宿。時刻は深夜。夜景の見える限界病棟。 この病棟に…
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