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これからの小学校外国語活動 https://square.hatenadiary.jp/

小学校外国語活動を中心として、国語、算数など各教科の授業についての記事を書いています。小学校の先生方の授業改善のヒントになればうれしいです。 その他、映画、音楽、旅行などの記事もあります。退職教員の徒然なる日々の記録です。

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2019/11/09

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  • 世界は経営でできている

    先週は3年生の理科の授業をした。自然の生きものを観察に行って困ったのは名前が分からない花があること。調べてみると、スマートフォンのカメラで撮影すれば花の名前を教えてくれるアプリがあった。便利な道具ができたものです。 「世界は経営でできている」(岩尾俊兵著)は、楽しく読むことができて、考えさせられることの多い本だった。 「虚栄は経営でできている」の章を読んでいると「自虐と見せかけた自慢」の描写に笑ってしまったが、これに近いことを言ったような気もしてきた。少し心配しながら読み進めたが、「尊敬の奪取から尊敬の創造へ」は自分でもできそうなことなので、ほっとした。 「老後は経営でできている」の章も読んで…

  • 日台万華鏡

    来年度から働く学校は決まっていました。 しかし、勤務校へ挨拶に行って打ち合わせまでしていたのに変わりました。 教育委員会も教員不足の中、人員確保に大変なことは分かっているので文句は言えません。 この4月から再任用8年目です。 小学校の外国語専科を任せてもらいました。 デジタル教科書の特性を生かした授業づくりにチャレンジします。 台湾と日本のあいだで考えた 「日台万華鏡 台湾と日本のあいだで考えた」(栖木ひかり著 書肆侃侃房)を読みました。 馬祖(マーヅ―)は台湾の北西にある国境の島。1949年に蒋介石の国民党が毛沢東率いる共産党に敗北して以来、この馬祖と金門島が最前線となりました。ここには多く…

  • 釜山の交番で「聞く力」について考えた

    釜山の交番にあった聞くポーズの警察官の大きな写真。日本ではまず見かけない。写真を見ながらS校長先生から以前に聞いたことを思い出した。韓国の警察官はとても親切で優しいらしい。市民はそれを警察に求めているし、警察も要望に応えているという。 これは軍政時代のつらい経験から得たシステムだろう。警察は市民の安全を守ることが第一で、権力者の利益を守る組織ではない。こういうことは私たちが歴史に学び、政治をきちんとチェックしないと失われる。「聞く力」をアピールしながら支持率が下がり続けるリーダーのいる国。少しは釜山のお巡りさんを見習ってほしいですね。 釜山 2024年3月

  • 釜山で地下鉄の運賃について考えた

    1泊2日で釜山へ行きました。今回は元同僚の教員たちと一緒です。いつものように釜山のS元校長先生に案内をお願いしました。いつもと違うのは移動にすべて公共交通機関を使うこと。前回、地下鉄やバスに乗ってみると日本との違いを多く発見できて面白かったので、今回は地下鉄やバスを利用した計画を立ててもらいました。 空港から市中心部までの往復。1日目に山の近くのお寺まで行って、2日目は列車に40分乗ってキジャン市場まで出かけました。20000W(約2000円)あった交通カードにはまだ10000W残っていました。つまり使ったのは約1000円です。日本の半額以下だと感じました。S先生の説明によると、「公共交通機関…

  • 奈良と三島由紀夫

    奈良へ行きました。三島由紀夫の「豊饒の海」の月修寺のモデルとされる圓照寺に行きたいと思っていたのですが、奈良に向かう途中の新幹線で調べると、通常は非公開で一般拝観は不可とのこと。第一の目的地が消えました。 奈良駅に着いて、最初に向かったのは二月堂。大仏がある東大寺のすぐ裏にある静かな場所です。緩やかな石段の脇の石灯篭は苔に覆われていました。さっきまでは落ち着かない子どものようだった鹿たちもここでは穏やかに遠くを見つめています。二月堂からは奈良の町全体を見渡すことができました。冬の終わりの冷たい雨に濡れた古都。三島はここで何を考えたのでしょうか。 奈良 二月堂 夕食はレストランPOOL。商店街に…

  • 「恋の帰結」ブレイディみかこ

    白内障の手術をした。数日休んで学校へ行くと廊下の掲示板が変わっていたので驚いた。それは1年生から6年生までの行事の様子を並べた写真。「きれいな写真だなあ! よく撮れているじゃないか…」もう一度よく見ると、前と同じ写真だ…。 映画「パーフェクトデイズ」に関する話題がラジオから聞こえてきた。「あの写真現像屋の店主は柴田元幸さんです」えー!知らなかった! 聞いていたらもっと気を付けて見たのに。もう一度観に行こうと思っていたのでこれで決心がついた。 翻訳家の柴田元幸さんの編集による雑誌「MONKEY」第32号が発売された。伊藤比呂美、ジョン・アーヴィング、フィリップ・K・ディック、坂口恭平、古川日出男…

  • 伊福部昭と橋本忍

    誕生日にプラネタリウムをもらった。今年の1年次教員たちからのプレゼント。「テーマは癒しです」と説明してくれた。そんなに癒されていないように見えるのかなあ? まあ疲れているようには見えるだろうけど。セットでいただいたのは、ミッフィーの仲間のボリスのマグカップ、ポールスミスの黒いTシャツ、私の好きなものばかりです。 家に帰って、電気を消してリビングの天井に星を光らせた。効果音もなかなかいい。しばらく部屋いっぱいに広がる星を眺めていた。誕生日の夜はこれからいつもプラネタリウムを見ることにしよう。ぼくはあと何回、この星を見るだろう。 「大楽必易 わたしの伊福部昭伝」片山杜秀著 「鬼の筆 戦後最大の脚本…

  • ナチスは「良いこと」もしたのか?

    村上春樹による小澤征爾の追悼文を読んだ。 スイスのコンサートの終了後、楽屋で意識がなくなった小澤。 村上は医者が来るまでの間、どうしていいのか分からず必死で小澤の手足をこすり続ける。 やっと意識を取り戻した小澤からことの顛末を聞く。 手術後は消化によくないものは食べないように医者から注意を受けていたのに、いただいた赤飯が美味しそうだったので食べてしまった。 「子どもがそのまま大きくなったような部分がこの人にはあった」 村上と小澤の共通点は夜明け前の時間が好きだということ。 小澤は楽譜を読み込む。音楽の深いところまで入り込んで。 村上は意識の深いところまで下りて行って小説を書く。書きながら時折小…

  • 「モトムラタツヒコの読書の絵日記」書肆侃侃房

    今朝は大濠公園のロイヤルカフェで妻とブランチ。 先日見た映画「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」の感想について話した。 ネイティブ・アメリカンの悲しすぎる歴史。 マーチン・スコセッシ監督、ロビー・ロバートソン音楽。 情けないチンピラのディカプリオ、自分はいいことをしていると信じている極悪人のロバート・デニーロ。悪い奴なのにどこか憎めない人間たち。こんな奴いるよねえ。 マイノリティをめぐる状況は100年前と何も変わっていない。 ザ・バンドの名ギタリストであるロビー・ロバートソンの遺作となったこの映画。 ネイティブ・アメリカンの血を受け継ぐロビーの最後がこの作品であったことは運命だろうか。 香椎…

  • 「映画の木漏れ日」川本三郎著

    私が働いている学校でも大谷選手のグローブが大きな話題になっています。 1年生の教室では、先生が子どもたちに説明していますが、よく伝わっていない様子です。 「もうすぐ大谷選手のグローブがきます」 「大谷選手が来るんですか?」 「違います。大谷選手は来ません。グローブが来るのです。」 放課後、保護者から電話がありました。 「実はお願いがあって電話をしています。大谷選手のことです。うちの夫がどうしても大谷を見てみたいと言っているので、学校に行ってもいいでしょうか?」 「映画の木漏れ日」川本三郎著 キネマ旬報社 1970年代から80年代にかけて、小説は村上春樹、評論では川本三郎が私の中心にありました。…

  • 漱石はアンリ・ルソーだった

    久留米市美術館で「芥川龍之介と美の世界 二人の先達 夏目漱石、菅虎雄」を見た。 菅さんは二人と交流があった教育者、書の名人で夏目と芥川のいくつかの著書の題字を書いている。 芥川と漱石のたくさんの手紙を読んだ。 昔の人は驚くほど多くの手紙を書いている。 漱石の手紙は草書体で私にはよく読めない部分もあるが、芥川の楷書の手紙は読みやすかった。 とても味わい深い文字を見ながら私もこんな字が書きたいと思った。 意外な面白さを感じたのは漱石の絵。 この絵を何と表現すればいいか。 すごく稚拙というか下手…。 偉大な日曜画家、アンリ・ルソーを思い出した。 どこか変だが温かい絵。 絵を描くことを楽しんでいること…

  • 「その世とこの世」(谷川俊太郎 ブレイディみかこ著 奥村門土絵)岩波書店

    母を亡くしたブレイディさんは旅に出た。 目的地はウイーン。 ヨーロッパの古都でエゴン・シーレを観る。 そこで、見知らぬ老人からヒットラーをめぐるウオーキングツアーを勧められる。 この有名な独裁者はウイーンの美術学校の入学試験に失敗した。 同時期にその美術学校に入学したのがシーレ。 ヒットラーが合格していれば、あの20世紀最大の悲劇は起こらなかったのか。 運命や歴史について考えてしまうエピソード。 デビットボウイはシーレと三島由紀夫について語っていた。 危うさとはかなさが人を引きつけることをボウイは自らの表現に昇華させようと試みた。 谷川俊太郎さんとブレイディみかこさんの往復書簡は言葉と表現をめ…

  • 映画「PERFECT DAYS」

    好きな小説は数ページ読んだらわかります。「ああ、これはいい…。」同じように好きな映画は少し見たら分かります。「文体」と「リズム」。無口な主人公の心の風景は映像に重ねられた音楽を通して伝わってきます。 「朝日のあたる家」アニマルズ、「ペイル・ブルー・アイズ」ベルベット・アンダーグラウンド、「ドック・オブ・ベイ」オーティス・レディング、「レドンド・ビーチ」パティ・スミス、「スリーピイ・シティ」ザ・ローリング・ストーンズ、「青い魚」金延幸子、「パーフェクト・デイ」ルー・リード、「サニー・アフタヌーン」キンクス、「ブラウン・アイド・ガール」ヴァン・モリソン、「フィーリング・グッド」ニーナ・シモン。この…

  • 風景をつくるごはん

    「風景をつくるごはん」(真田純子著)を読みました。自分の食生活を振り返ると、「旬のものを食べる方がいい」とは思いながら、「食べたいもの食べたいときに食べる」生活になっています。しかし、自分が農村に行ったときには、「ビニルハウスが多い風景にはがっかり」とつぶやいています。何と傲慢なのでしょう。 著者が紹介しているイタリアの農業政策には学ぶべきところが多いと感じました。イタリアのアグリツーリズムは農家の経営する宿ですが、主目的は農業支援です。一方、日本の「農泊」は、観光とビジネスに重点が置かれています。「農泊」では、農業支援にもならず、観光としても中途半端な感じです。アグリツーリズムは、環境や文化…

  • 竹内まりやから小泉八雲へ

    信じられない速さで 時は過ぎ去ると 知ってしまったら どんな小さなことも 覚えていたいと 心が言ったよ 「人生の扉」竹内まりや 竹野屋 出雲に行ってきました。竹内まりやの実家の旅館が出雲にあると聞いたことがあったので、宿はそこにしました。竹野屋は古い建物ですが、手入れがよく行き届いていて感心しました。料理も素晴らしい。”Everyday is a special day.”のマグカップを買ってしまいました。 出雲大社にお参りした後は、松江の小泉八雲記念館へ。ギリシャで生まれて、アイルランドからフランス、アメリカ合衆国、西インド諸島、そして日本。八雲の生涯が物語のようです。 記念館で買った「明治…

  • 語学の天才まで一億光年

    雷山 千如寺 今日は、雷山の千如寺で紅葉を楽しんだ後、糸島茶房でランチをいただきました。 糸島茶房 「語学の天才まで一億光年」高野秀行著 言葉とは何でしょう。人は言葉で思考します。言葉は伝達の機能もあります。それだけではなく、言葉は文化そのものです。だから異なる言語を比較すると文化の違いを知ることができます。言語とは何かを楽しく読みたい。だから私はこの本を読みました。 この本の筆者の高野さんは探検家。アフリカ、南米、東南アジアなどの秘境と呼ばれる地域へ行くことが誰よりも好きな人です。行く前には必ずその地域の言語を学習します。今までに学習した言語の数は25以上。その中には辞書さえない言語もありま…

  • 愛にイナズマ

    先週は約30年前の教え子たちとの飲み会でした。みんなもう40代半ば。このクラスはとても仲が良く、今でも半数以上のメンバーが連絡を取り合って。時々集まっています。やんちゃだったYくんは数年前から焼き鳥屋をしていたのですが、お客が少ないようで心配してました。今は、起業した会社が成功したFくんの紹介で始めた定食屋が順調だそうです。同じクラスのつながりで助け合って生きていく仲間たち。元担任として嬉しい限りです。 映画「愛にイナズマ」 「舟を編む」「月」の石井裕也監督の作品。期待通りの力作でした。私は普通のハッピーエンドではない映画を観たいと思っています。予想外の展開を期待しています。つまり、こんな映画…

  • 「幸福人フー」坂口恭平著

    これは坂口さんが幸福とは何かを書いた本。坂口さんが人生ではじめて会った幸福な人が奥さんのフーちゃん。だからこの本は坂口さんが幸福について研究するため、フーちゃんにインタビューした内容になっています。 坂口さんは躁鬱病で、鬱の時は暗く不安で自分を否定してしまう。躁のときは気分が大きくなってお金を困っている人にあげてしまう。奥さんは普通は困りますよね。でもそうじゃない。これだけ聞いても何だかいい感じです。 私はウディ・アレン監督主演の映画「アニーホール」を思い出しました。ウディの私小説的な映画です。彼ははじめ、自分と似たタイプの女性と一緒になります。しかし、上手くいきません。その後、彼はアニーと出…

  • 愛と絶望のコリア記

    今日は国語研究会の先輩K先生のコンサート。会場はアクロス福岡シンフォニーホールです。プログラムはヘンデルのメサイア。喜びと悲しみ、光と影、ヘンデルの世界へ深く引き込まれました。ハレルヤ。 「愛と絶望のコリア記 地方記者が見つめ続けた韓国」藤井通彦著 海鳥社 この10年ほど毎年韓国に行ってます。釜山に住むS校長先生は私の最も親しい友人の一人です。S校長先生と話すのは、韓国と日本の文化の違いについて。驚くことや考えさせられることが多く、興味は尽きません。韓国についてもっと知りたい、という気持ちはずっと続いています。 この本の著者は韓国での勤務経験のある新聞記者。最近50年ほどの間の韓国の出来事がそ…

  • 吉井町の小さな本屋で坂口恭平の画集を買った

    毎日行っている3年生の教室で体操帽子を拾いました。 名前を探したが書いていないので近くにいた女の子に聞いたら、帽子に鼻を近づけて一瞬で「○○さんの」と当てました。 これは「小学校あるある」です。 小学生の嗅覚、恐るべし。 人間は成長しながら野生の感覚を失っているのかもしれません。 HOSTEL AND CAFE FAROLITO 吉井町に行きました。 福岡市から高速九州道で1時間と少し。 杷木インターで降りたらすぐに着きます。 前に新聞記事を読んで気になっていた場所です。 古い町並みが残る風情のある場所ですが、過疎化のため町の活力が低下しかけていました。 しかし、古い町の建物を生かした再生プラ…

  • コモンの「自治」論

    アジア美術館のカフェで本を読んでいたら隣のテーブルにどこかで見た顔を発見。先輩のK先生でした。今は大学で教えているそうです。今日は、美術館で開催中の「水俣展」のボランティアスタッフとのこと。それなら、というわけで読書を中断して水俣展へ。 「希釈すれば無害である」と語っていた会社の幹部。「排水は病気とは関係ない」と証言していた有名大学の先生方。政治家も学者も役所も会社を応援する構図。現在進行中の「排水」が重なってきます。来てよかった。 「コモンの『自治』論」(斎藤幸平、松本卓也、白井聡、松村圭一郎、岸本聡子、木村あや、藤原辰史)を読みました。 「人新世の『資本論』」の続きが知りたい読者に向けた本…

  • 坂本龍一が遺した音

    昨日はテントセンブックスの読書イベント。 13人もの参加者で店が満員になりました。 終了後にある女性から声をかけられたら、実は昔の同僚の娘さんだとのこと。 小学校教員をしているそうで、驚きました。 今日は東図書館のビブリオバトルに参加。 プロのアナウンサーのように話す方や、練習の成果が感じられる大学生、紫式部について語るご年配の男性など、世代も選書も多様で楽しかったです。 坂本龍一の《Forest Symphony》 坂本龍一が遺した音 宮崎駿監督は「アニメで一番大切なものは『音』です」と言った。 「絵は作れるけれど音はつくれない」だから音を採録しにヨーロッパまで行くことだってあるという。 私…

  • 子どもの言葉から「言語の進化」を考えた

    連休初日は大濠公園のロイヤルガーデンカフェでブランチ。 ここは本当に居心地のよいカフェです。 湖面をすべる巨大な「白鳥」を見ながらコーヒーをいただきました。 夜は久しぶりの「中州ジャズ」。川沿いのオープンステージで山本剛トリオの「ミスティ」が聴けました。あの力強いタッチのピアノは健在。ありがとう山本さん、次の機会にはLPレコードを持参しますので、サインをお願いします。 「ことば、身体、学び 『できるようになる』とはどういうことか」(為末大、今井むつみ著)を読みました。 目次 第1章 ことばは世界をカテゴライズする 第2章 ことばと身体 第3章 言語能力が高いとは何か 第4章 熟達とは 第5章 …

  • 「こんにちは、母さん」山田洋次

    上映館では老人が多くて彼らは映画が始まってもおしゃべりをやめないので困った、とネットの映画レビューにあった。私が行ったトリアス久山のユナイテッドシネマでも同じことが起きてたので笑ってしまった。 老いの哀しさ、リストラする上司の苦悩、親子の断絶、離婚などの重いテーマが描かれている。しかし、言い争いになっても何とか折り合いがつく。それをユーモアを交えて描く職人芸にうなってしまう。問題は簡単には解決しない、でも前を向いて歩いて行こうという気持ちにさせてくれる。 この映画が持っているリズムも心地よい。場面と場面のつなぎに現れる東京の風景。古くからある街の情緒、一方で新しくできたビルの群れは無機的。それ…

  • 「季節のない街」 山本周五郎著

    学生の頃、黒澤明監督の「どですかでん」という映画を観ました。黒澤監督が不遇の時代の作品です。少数者への共感が描かれている、と感じたのはそんな監督自身の境遇と重ねて見たからなのかもしれません。その原作がこの小説です。 そしてこの夏には、「季節のない街」は宮藤官九郎脚本、大友良英音楽という、「あまちゃん」「いだてん」コンビでドラマ化されました。これはもう見るしかない。わたしは急いでDisney+に申し込んで夢中で見ています。 この小説の舞台は、世の中の流れとは外れてしまった人たちが集まる不思議な街です。 登場人物の一人、六ちゃんは知的障害をもつと思われる青年。毎日、自分にしか見えない電車を運転して…

  • 「なぜ豊岡は世界に注目されるのか」中貝宗治著

    昨日は箱崎のブックスキューブリックのイベントに行きました。 イベント後の懇親会では、モトムラタツヒコさんやキューブリック店主の大井実さんとお話できました。 本や音楽、映画を通して自分を語り、相手を知る。読書は人生を豊かにすると確認できました。 「なぜ豊岡は世界に注目されるのか」中貝宗治著 今のまま人口が減少して、都市への集中が続けば地方は衰退していきます。 そんな問題意識から、この流れを変えて何とかしたい、と考える人も増えています。 この本の著者である中貝さんは、兵庫県豊岡市を環境、教育、福祉、ジェンダーの視点から変革を推進して世界からも注目される都市へと導きました。 目次 序章 「小さな世界…

  • 浪のしたにも都のさぶらふぞ

    山口への短い旅行でした。 途中で寄り道して北九州市立美術館の白髪一雄を拝見。熱い! 宿に着いたらJBLパラゴンでジャズを聴かせてもらいました。こういうスピーカーが家にあればいいなあ。でも狭いマンションでは無理ですね。 翌日はYCAM(山口情報芸術センター)で、「等晶播種」(砂糖を通して見る台湾と日本の近代化の記憶)。 終了後にすぐ横のスターバックスでコーヒーを飲んでから山口駅前のサテライトAで「without records」(大友良英+青山泰知+伊藤隆之)。面白いですよ。近くの方はぜひ! 「懐古庵 本店」(素敵な和菓子屋さん!)で外郎と抹茶をいただいて再びYCAMで「浪のしたにも都のさぶらふ…

  • 「鍋の中」村田喜代子

    金曜日は1学期の終業式でした。1年生の教室では先生が子どもたちに話をしていました。「明日から夏休みです」「えー、まだ学校に行きたかった!」と、1年らしい反応です。その後も子どもたちから質問が続出します。「今度は2年生ですか?」「まだ1年生です」「先生は変わりますか?」「変わりません」「クラスは変わりますか?」「同じです」。「ああ、よかった…」と安心する子どもたち。1年生、面白すぎる。 土曜日は中州のBillsでランチ。世界水泳選手権が開催中なので、店内は海外からのお客でいっぱいでした。私たちが外国に行くと和食が恋しくなるのと同じなのでしょう。 「鍋の中」村田喜代子 読む前からとても気になること…

  • あの頃、渡辺貞夫と

    土曜日のお昼は香住ヶ丘の「フルフル 風の森店」へ行きました。 私のお気に入りは、2階のロフトのような場所。ステレオセットにアナログプレーヤー、渡辺貞夫のLPレコードが飾ってあります。「How's Everything」は1980年のアルバム。ギターはエリック・ゲイル、キーボードはリチャード・ティー、ドラムスはスティーブ・ガッド、デイブ・グルーシン指揮の東京フィル、武道館のライブ録音。大好きだったレコードです。 How's Everythingは「調子はどうですか?」の意味と覚えることができたのはこのアルバムのおかげ。40年前の「あの頃」のことが次々と浮かんできます。学生時代の友だち家に行ったよ…

  • 運命のひとひねり 村田喜代子とボブ・ディラン

    「耳の叔母」(村田喜代子著)を読みました。著者の村田喜代子さんには一度お会いしたことがあります。福岡市の国語研究会で講話をお願いしたことがあって、その打ち合わせをしたときです。有名な芥川賞作家と会える、と緊張してしまって何を話したのかよく覚えていません。打ち合わせの前に読んだのが「名文を書かない文章講座」という本。「文章を書くこと」について、「ああ、やっぱりそうだよね」と共感することばかりで、今まで何度も読み返してきました。 今回読んだのは「耳の叔母」は、香椎のテントセンブックスで買いました。出版は、大名の書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)。福岡にゆかりの深い本です。本の帯には「怖れと闇と懐かし…

  • 「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」坂本龍一

    昨日は、後輩Hさんの教頭昇任祝いをしました。彼は2年前に訪問していた学校の教務主任でした。とてもユニークな人物です。教員になる前は、他業種で働いていたところが私と一緒。もう一つ、ミュージシャン志望だったことも同じだと分かって意気投合しました。よい意味で肩の力が抜けているところがいい感じです。そんな学校をつくって下さい。 坂本龍一の「async」(2017年)は大好きなアルバムです。ニューヨークへ一人で行ったとき、ホテルの窓から夜のビルの灯りを見ながら聴いていたら、時間が止まったように感じました。退職したばかりで、いろいろと心配なこともあったのですが、とりあえずこのまま前に進めると感じることがで…

  • 村上春樹と伝説のイノシシ

    昨日は妻と大濠公園でランチ。湖上を迷走する巨大な白鳥たちを眺めながらおいしいパスタをいただきました。出発前に私が急がせたのでムースをつけすぎて髪がゴワゴワになったと言う妻の話を聞きながら思い出したのは先週読んだ椋鳩十。伝説のイノシシのこと。その猪は体についた虫を払うために松の木に体をこすりつけるうちに体中に松ヤニがついて、やがてそれは厚い層となり猟銃の弾丸をも跳ね返すほどになったという。そんな話をすると、「私は伝説のイノシシか?」と危うく妻を怒らせるところでした。何気ない会話に気をつけよう。 大濠公園 2023年6月 次の読書会で村上春樹の新作について話すことに決めました。これはリスクが大きな…

  • 街とその不確かな壁

    シアトルに住む長女から写真が届いた。 「このオジサンはどこかで見たことある。父が好きなミュージシャンに違いない」 さすが我が娘、覚えていてくれてありがとう。 この人はロックギターの神様、ジミ・ヘンドリックスだよ。 ロックの聖地へ父も飛びたい! キースジャレットの「ケルンコンサート」のような物語 キースジャレットはソロピアノの素晴らしいアルバムを何枚も残している。それは、全くの即興演奏で、メロディも構成もその時その場のインスピレーションによって生まれたもの。1976年の来日公演の際、ライブレコーディングの音響を担当した菅野沖彦は、「本当に何も準備していないのか。スケッチのようなものも用意しないの…

  • 「Turn! Turn! Turn! ターン ターン ターン」東山彰良

    この本の冒頭で、ザ・バーズの「Turn! Turn! Turn!」の歌詞が紹介されている。 生まれる時、死ぬ時 植える時、刈り取る時 殺す時、癒す時 笑う時、泣く時 あらゆる物事には時機があり 天の下、全ての目的にはそれにふさわしい時がある 旧約聖書の「コへレトの言葉」の引用。 タイミング、好機…。振り返ると、失敗したことばかり思い出される。 しかし、案外、「運が良かったのかもしれない」とも思う。 66まで生きて、毎日の生活が充実していれば、文句は言えないだろう。 この本には、東山さんの旅、文学、音楽などについての思いが、まるで友人に語るように綴られている。 作家の目的地は、台湾、広島、ハワイ…

  • 葉山 2023年春

    退職して7年目の春。今年度もフルタイムで働くことになった。6名の1年次教員の支援をする。 4名は講師経験あり、2名は3月に大学を卒業したばかり。1年後に「教師になってよかった」と思える研修にしたい。 神奈川県立近代美術館から見える葉山の海 旅行2日目は葉山へ。 横浜から列車で30分ほどで鎌倉、次が逗子、そこからバスで20分で葉山の神奈川近代美術館へ到着。 バスの窓から見るとこのあたりはまだ古い建物が残っていて、何となく嬉しくなる。 道沿いに「日陰茶屋」という看板が見えた。「えっ?あの大杉栄の…」 美術館は横尾龍彦展が開催中だった。 「名前は聞いたことがある」くらいだったけど楽しめた。 初期は聖…

  • 横浜 2023年春

    海の見えるカフェ 横浜2023年3月 横浜1日目は中華街と山下公園の花見。 YOKOHAMA AIR CABINにも乗った。街中から海までをつなぐロープウェイですね。 レストランで夕食を済ませた時間だったので、美しい夜景を見ることができました。 ここの巨大な観覧車は花火のような光を楽しめます。 福岡市も少し前にロープウェイを造る計画がありましたね。 きっとこんなのをつくりたかったのでしょう。 でも、やっぱりいらないかなあ…。 ロープウェイからの夜景 横浜2023年3月

  • 椎名誠は寅さんだった 「失踪願望。」

    「シーナ誠を読んでいる」と知人に言ったら3人が3人とも「ああ、この頃死んだ人?」と返してきた。 鮎川誠と間違えないでほしい。 「失踪願望。」を読んでいる。椎名誠を読むのは久しぶりだがやはりおもしろい。この本は日記形式でコロナ禍のシーナの日常が描かれている。妻、子、孫、友人たちについて、いつもの「よろこびのビール」的なドタバタ生活が読んでいて心地よい。しかしそれだけではない。 足腰も衰えはじめ、運転免許証を返納したり、白内障の手術をしたり、シーナは老いと向かい合っている。昔を振り返ることも多い。若い頃に、妻である一枝さんの実家の庭に山から掘ってきたモミジの木を植えたこと、同じくテレビをプレゼント…

  • 金のおの、ソール・ライター、野原

    1年生の道徳「金のおの」を参観。自分でおのを池に落とした2番目の男は「自分が落としたのは金のおのです」と嘘をついたので、女神はそのまま何も言わずに消えてしまいます。その男の気持ちを吹き出しに書かせると、「せめてじぶんのおのだけはかえしてほしい」を発見。1年生最高! 大宰府の梅 2023年2月23日 福岡市美術館で「永遠のソール・ライター」を観ました。「これ、撮影、失敗しとっちゃない」「これはほとんど盗撮やね」という妻のつっこみを聞きながら楽しく鑑賞しました。 ソール・ライターは絵画も描いていました。画面構成は、抽象絵画の技法を写真に転移させたものだと感じました。 後に心を病んで施設で一生を終え…

  • 誰も奪えぬこの想い 「この世の喜びよ」(井戸川射子)

    私の愛聴盤「エラ&ルイ」(エラ・フィッツジェラルドとルイ・アームストロングのデュエット)。その中でも一番好きなのが「誰も奪えぬこの想い(They Can't Take That Away from Me)」。思い出とは不思議なもので、大きな出来事よりも日常の何気ないことの方が強く残ることがある。お茶の飲み方、音程のはずれた歌、笑顔…。そんな小さなことが忘れられないことがありますよね。 「この世の喜びよ」(井戸川射子)を読んだ。毎日の生活の中で現れては消えていく記憶が語られている。小説というか長い詩のようだ。 ショッピングセンターで働く中年女性、子どもはもう働き始めている。ふとしたきっかけで知り…

  • なぜ書くのか

    昨日はSくんと博多駅で飲んだ。Sくんは昨年担当した1年次教員。仕事以外でもこんな風に誘ってくれるのはうれしい。夏に結婚する予定で、式に参加してほしいという話だった。おめでとうSくん。1年目はいろんな悩みが多い様子だったけど、すっかり成長したね。 文章を書くことはそんなに好きではなかった。学校で出される感想文、小論文は原稿用紙のマスを埋め、ただ悪目立ちしないような言葉を、習った順番で並べる作業だった、もちろんそれは役に立った。高校の教員になり国語を教えて何年かしてからやっと、自分の文章を書いてみようと思った。(井戸川射子 芥川賞受賞エッセイより) 私は毎日書いている。朝、学校に着いたらその日の指…

  • 長く続くジャズ喫茶の秘密

    昨日は元同僚のMくんとテントセンブックスに行きました。この前会ったときにこの店の話をしたら「ぜひ行ってみたい」ということで早速案内しました。Mくんは教員ですが現在は休職して大学院へ通っています。この小さな個性的な本屋が気に入ったようです。 昨日、テントセンブックスで買った本 長く続くジャズ喫茶には秘密があるのでしょうか?私の若い頃(70年代)は、福岡にも多くのジャズ喫茶がありました。しかし、今は少なくなりました。 知らない街へ行くと美術館とジャズの店を探します。このまえ行った名古屋で行ったジャズの店は「JAZZ&COFFEE YURI」。店に着いたのは雨の降る夕方でしたが、すでに満席。少し待っ…

  • 授業実践「自分の好きな詩を見つけよう」

    見通しで意欲を継続させる 「自分の好きな詩を見つけよう」という授業をしました。めあてを提示してから、今日のゴール「自分の好きな詩を見つけること」「学級で一番人気がある詩を当てること」を確認しました。これは、今日は何を学習するのか、ゴールは何なのか、学習の見通しを持たせるためのものです。 音読で授業のリズムをつくる 授業の途中には音読を入れました。これは変化をもたせるもの、心地よいリズムを生み出すためのものです。音読では「追い読み」をさせました。短く区切りながら教師が読んで聞かせて、その後を続けて子どもたちが読みます。 意外性と驚き 取り上げる詩は意外性があって、子どもたちが驚くようなものを選び…

  • 子どもたちに民主主義を教えよう

    「子どもたちに民主主義を教えよう 対立から合意を導く力を育む」(工藤勇一・苫野一徳著)あさま社 憲法とは何でしょう。すべての法律の中心にあるもの、私たちが守らなければならないものと考えてしまいます。しかし、憲法とは、私たち市民が対等で自由であることをルールとして保障するものです。国家は権力を濫用することがあります。そうならないように権力に歯止めをかけるためにあるのが憲法です。公教育においても「ルールを守ること」が強調されて、意味のないルールや不合理なルールがそのままになっている例があります。ルールは何のためにあるのか、よく考えないまま指導する教師とそれを受け入れる子どもがいます。「ルールは与え…

  • 宮島への旅

    あけましておめでとうございます。 年末は宮島へ行きました。驚くほどたくさんの観光客。英語や中国語だけでなく、ロシア語やスペイン語(たぶん)も聞こえてきました。インバウンド復活は進んでいるようです。 広島駅のお好み焼き店で順番を待っていたらすごい音がしました。振り向くと男性がスーツケースを取り上げて逃げるように去っていきました。ふと見ると正面の板には穴があいています。エスカレーターを滑り落ちたスーツケースがつけた傷のようです。そこに人がいなくて本当によかった。スーツケースをエスカレーターで運ぶと何が起きるのかよく分かりました。厳島神社で安全を祈願しておいてよかった。 今年もよろしくお願いします。

  • 釜山市立美術館

    釜山旅行2日目は釜山市立美術館。 サムソン2代目会長Lee Kun-hee氏のコレクションが公開中でした。 展示作品のほとんどが1920年代から現代までの韓国作家の作品。 韓国の現代絵画は福岡のアジア美術館で何度も見ていますが、今回はより多様な韓国美術界の歴史を知ることができました。 水墨画風の作品から抽象画まで、韓国の画家たちが新しい表現を追究した足跡が分かります。 抽象画からは韓国独自の美意識を感じ取れます。 S校長先生の説明によると、作品のいくつかは教科書にも掲載されていて、みんながよく知っている絵だということです。 韓国は子どもの絵画教室もたくさんあります。 このような芸術を大事にする…

  • サムルノリを知っていますか?

    クイーンビートルから見た釜山港 3年ぶりの釜山。もう10年以上の交流があるS校長先生との再会も楽しみです。 今回の1日目は韓国伝統音楽のコンサート。韓国は伝統音楽をとても大事にします。小学校を訪問したときは、音楽室にある伝統音楽楽器の充実に驚きました。西洋音楽中心の日本とは大きな違いです。コンサートでの発見は、韓国音楽と沖縄音楽との類似点です。歌う時の発声、旋律、踊るときの手の動きなどが似ています。プログラム最後の4つの打楽器による演奏(サムルノリ)は圧巻でした。複雑なリズムが美しい光のように変化していきます。私は70年代マイルス・デイビスの複合リズムを思い出しました。客席の反応も日本よりスト…

  • 「聞く技術 聞いてもらう技術」東畑 開人著 ちくま新書

    私の今の仕事は若い教師たちに授業のアドバイスをすることです。授業に関することが中心ですが、学級づくりや保護者対応などについて相談を受けることもあります。だから、「もっと上手に聞きたい」「聞いてもらうにはどうしたらいいのだろう」といつも悩んでいます。この本で紹介されている技術では「沈黙に強くなろう」「返事は短く」で、「そうだなあ」と気づかされました。私は沈黙に耐えられません。相手が話さないと不安になって落ち着かなくなります。相手から何か聞かれると、とりあえず返事をしてしまいます。でも、違う場合もありますよね。こちらが黙って待つことで相手の言葉を引き出せることもあるでしょう。相手の心の動きを察して…

  • 個人美術館の愉しみ「かみや美術館」

    初めての愛知。 福岡なら少し車で走れば山ですが、ここでは山が遠くで見えないほど広い平野が広がっています。 列車が街の中心部から離れると田畑が続いている。 そうか、これが『とよた』! 「かみや美術館」は、愛知県半田市にある個人美術館です。 児島善三郎、熊谷守一、村山槐多、長谷川利行など、私が好きな作品が揃っています。 浜田知明「初年兵哀歌」シリーズが全作品あるのは、美術館の創立者神谷幸之氏も出征の経験があるから。 私が行ったとき入館者は一人だったので、絵について詳しい説明を聞かせてもらいました。 浜田のエッチング作品はジブリアニメにも影響を与えているという話が面白かった。 実にその通り、似たキャ…

  • 光と陰のアンソロジー つなぎ美術館

    3回目の「つなぎ美術館」。 前回は福岡から新幹線とローカル線を乗り継いで行きました。 「肥薩おれんじ鉄道」という小さな電車はジブリ映画のようです。 今回はプリウスで約3時間のドライブ。 前回はたどり着けなかった野外作品も観ることができました。 《達仏》西野達 2018年 石の中から聞こえてくる津奈木町の歴史に耳を傾けました。 《石霊の森》柳幸典 2021年 美術館の今回のテーマは「光と陰のアンソロジー この世界にただ独り立つ」(平川恒太い、山本草介、外山恒一)。 「混沌とした先行きの見えない時代を迎えるいま。本展が多くの困難を乗り越えるための思考を深める機会となれば幸いです」が美術館からのメッ…

  • 「ルポ 誰が国語力を殺すのか」石井光太著

    今日は中州のbills(ビルズ)でチーズサンドを食べました。少し高い店ですが、外国に来たみたいな雰囲気で、気分が上がります。 「ルポ 誰が国語力を殺すのか」石井光太著 国語力低下の問題は単に学力の問題ではありません。もっと大きな問題、社会全体に関わる重大な危機です。 この本に暴力事件を起こした中学生のインタビューがあります。その子は自分がしたことを言葉で説明できません。言葉の力が身についていないからです。しかし、よく考えてみましょう。言葉が足りないから説明できないのではなく、言葉が足りないから、そもそも考えることができていないのです。自分がしたことの意味が分かっていないということです、 私は最…

  • 「映画を早送りで観る人たち」稲田豊史著 光文社新書

    「映画を早送りで観る人たち」稲田豊史著 光文社新書 先日、映画「百花」を観ました。監督の川村元気さんは、「近頃は映画を早送りで観る人が多い。だから私は早送りできない映画を作った」と語っていました。この本を読んで、川村監督の思いが何となく分かりました。「映画を早送りで観る」という現象には、人々の心の変化が現れているのです。 早送りで観るようになった原因の一つは、ネットフリックスやアマゾンプライムなどのサブスクリプション(定額見放題)を利用する人が多くなったことです。観ることができる映画やドラマの数は何千、何万という数になりました。多くの作品を観るためには、時間を短縮しなくてはなりません。安く何回…

  • コーチング(1)「相手の心のシャッターを上げる」

    小倉リーセントホテルはJR西小倉駅から歩いてすぐのところにあります。教職員であれば互助会の割引(補助)と県民割が併用できるので、驚くほど安く泊まれます。(というかほとんど手出しゼロ) 気になるのはレストランでビールを飲んでいると、「職員室」とか「学年主任」とか話す声が聞こえてくること。 小倉城も八坂神社も朝6時から入れます。 すぐ近くのリバーウォーク。朝の風が心地よい。 今の私の仕事、小学校の先生たちへのコーチングについての記録です。 コーチング(1)「相手の心のシャッターを上げる」 修学旅行の引率のとき、宿泊のホテルで「夕食会場はどこですか?」と聞かれることがありました。「何で私に聞くのかな…

  • 「ぼくらの戦争なんだぜ」高橋源一郎著

    藤原新也さんの写真と言葉は、強く深く響く。 今回は絵画や書まで含めた表現の全体を見ることができた。 2022年の私たちに届けられた言葉は「祈り」。 福岡市へ来たら博多駅近くのホテル「ザ・ベーシックス福岡」のロビーを見てほしい。 高くそびえる本棚が圧巻。画集、写真集、ガルシア・マルケス。見て美しく、読んで楽しい本が並んでいます。 ここは、その昔、マイケル・ジャクソンが泊まったホテル。 「ぼくらの戦争なんだぜ」高橋源一郎著 小学生のとき、歴史学習は明治頃までで終わっていた。何故なのかあまり気にならなかった。そういうものと思っていた。 自分が教える立場になったとき、先輩から「歴史は現代が大事だからね…

  • 「運動脳」アンデシュ・ハンセン著

    「運動脳」を読んだ。「これは人生を変える本かもしれない」と思った。 私の知人、教員Aさんは、現在「うつ」に苦しんでいる。 疲れがとれない、眠れない、暗い気分が続く、などのメンタルの不調を訴えている。 「休日は、学校のことを考えないで、自分の好きなことをしてみたら」「規則正しい生活をして、栄養のあるものを食べるようにね」など、会うたびに声をかけているのだが、私にできることは話を聞いてあげることくらいである。 この本では、運動を通して「うつ」が克服できることが、データを基に証明されている。 問題の解決は、実はとても簡単だということが分かった。「運動」である。 「運動」で「うつ」は改善する。これは複…

  • 授業で学級をつくる

    夏季休業中は延べ29回の面談を実施しました。授業や学級づくりに関すること、指導案作成など、1人約1時間。普段は短い時間しか話ができないので、まとまった時間にゆっくり話を聞くことができるのは貴重な機会でした。 先生方との面談で聞いたことは、「もっとよい授業がしたい」「よい学級をつくりたい」という願いでした。よい学級、よい授業はどのようにして実現されるのでしょうか。この2つは別のものと考えないようにしましょう。授業を通して学級づくりをするのです。 学級づくりの基礎的資質は4つあります。「積極性」「スピード」「丁寧さ」「他者尊重」です。 積極性とは「やる気」です。具体的な姿としては、「自分から動く」…

  • ジョン・レノン、三島、風立ちぬ

    万平ホテル 客室 1970年代、ジョンは毎年のように万平ホテルで夏を過ごしていました。 音楽活動は休業して育児に専念していました。 「ジョンは軽井沢にいるらしいよ」と聞いて、大学生だった私は「早く次のアルバムを作ってくれよ」としびれを切らしていました。 そして数年後、やっと復帰すると同時に、ジョンは永遠に消えてしまったのです。 ジョンが好きだったアップルパイとミルクティー 万平ホテルカフェ 万平ホテル カフェ入り口 三島は川端康成のノーベル文学賞獲得のために奔走します。 そして川端のノーベル賞受賞後のインタビューで次のように答えています。 「次のノーベル賞は私ではなく大江だ」 人を驚かせるのが…

  • 「教育書の生かし方」松村英治著 東洋館出版

    この本は小学校教師の著者が今までに読んだ本(1500冊)から「私の考えや実践を創ったり変えたりしたきっかけを与えてくれた教育書」の22冊を選んで紹介した本です。 「読書をどのように実践に生かすのか」が語られています。例えば私も「クラス全員が熱心に取り組む! 漢字指導法」(土居正博著)を読みました。これはとてもいい本だと思ったので若い先生方にも勧めています。しかし、読んだことをどのように自分の実践に生かすのか、私は上手に説明できていませんでした。「なるほど、本を読んでもそのすべてを同じように実践する必要はないし、一部をアレンジして取り入れることもできるんだ。」その具体的な実践例を読んで、納得しま…

  • 成果や能力をほめるのは危険!?

    猪野神社の奥にある茅乃舎(かやのや)カフェに行きました。 真空管アンプからはチェロの優しい調べが聞こえてきます。 初夏には蛍が舞う小川の横にあります。 成果や能力をほめるのは危険!? 「すごい!100点だね」「全部できたね。完璧!」のように子どもをほめることはありますよね。これのどこがいけないのでしょう? 次のような研究結果があります。小学生を2つのグループに分けて、パズルに取り組ませました。Aグループにはできたパズルの数(X)を伝えて、「(X)もできている。よくできたね。頭いいね」といって成果と知性をほめる言葉をかけます。Bグループには「(X)できているね。すごくよく頑張って考えたね」と努力…

  • 映画「ベイビー・ブローカー」

    昨日は糸島の「森のカフェ」に行きました。 涼しい森の風は天然のクーラー。 高い木の上のカフェタイムは最高でした。 映画「ベイビー・ブローカー」 私は韓国が好きです。新型コロナが広がる直前には家族で釜山に行きました。旧知の孫校長先生から温かいもてなしをいただいて感激しました。そんな大好きな韓国で是枝監督が撮った映画。これを見逃すことはできません。 この物語の設定は「万引き家族」に似ています。棄てられた赤ん坊を売ってお金を儲けようとする男たちとその赤ん坊の母親が一緒に行動するうちに、家族のような結びつきが生まれます。犯罪に手を染める人間たちなのですが、彼らを突き放すのではなく、寄り添うような監督の…

  • 「『正しい戦争』は本当にあるのか」 藤原帰一著 講談社+α新書

    7月の参議院議員選挙を前にして、日本の進むべき方向についての議論を聞くことが多くなりました。ロシアのウクライナ侵攻の影響で、「日本も軍備を増強すべきだ」という意見が多くなっています。「ウクライナは核を手放したから侵略されたので、日本も核を持つべきだ」という人も出てきました。私の知人も「日本も核兵器がないと侵略される」と話していたので驚きました。日本の軍備をどのように考えたらいいのでしょうか。私は国際政治学の専門家である藤原帰一さんの本を読みました。藤原さんは東京大学大学院で政治学を教えていた先生です。 まずは、「日本は核を持つべきか」という問題です。核兵器を持っていれば、それが抑止力となって攻…

  • 映画「トップガン マーベリック」

    先週は友人たちとの食事会。 アメリカの勤務から戻った友人とも久しぶりの再会です。 もう60代後半になる先輩も理科専科でフルタイム勤務しています。 「まだまだ70まではがんばってみる」と元気いっぱいでした。 さて今日は映画の紹介です。 映画「トップガン マーベリック」 「レインマン」「ミッション・インポッシブル」「ラストサムライ」「宇宙戦争」。トム・クルーズのファンというわけではないのだけれど、数えてみるとずいぶん多く彼の映画を観ていることに驚きました。 出演作品もエンターテイメントからアート系まで実に幅広い。着実に自分のキャリアを重ねていますね。そして、今回は「トップガン・マーベリック」。ヒッ…

  • 大阪の博物館に行ったら村上春樹を思い出したこと

    「俺は黙って古墳を眺め、水面を渡る風に耳を澄ませた。その時に俺が感じた気持ちはね、とても言葉じゃ言えない。いや、気持ちなんてものじゃないね。まるですっぽりと包みこまれちまうような感覚さ。つまりね、蝉や蛙や蜘蛛や風、みんなが一体になって宇宙を流れていくんだ。」(「風の歌を聴け」村上春樹 より) 大阪の中心部から電車とバスを乗り継いで約1時間、閑静な住宅街を抜けるとなだらかな丘に広がる緑地が現れます。 森の入り口には案内板があり、この一帯にあるおよそ100の古墳の場所が記されていました。 道を歩いていると、大小様々な古墳が訪問者を迎えます。 博物館は予想通り休日なのに人の姿はまばらでした。 学校の…

  • 「なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?」岡崎大輔著

    先日、新聞で元福岡市こども総合センター所長の藤林さんのインタビューを読みました。 「サッカーでいうと、児相はゴールキーパー。本当はみんなで守っているはずなのに、失点すると、『何してるんや』と言われ続ける」 子どもの虐待死の事件では、いつも児相の対応が問題視されますが、同じチームにいながらキーパーを責めているようなものですね。 「なぜ、世界のエリートはどんなに忙しくても美術館に行くのか?」岡崎大輔著 この本では、以下のような「アート作品を鑑賞するときの8つの視点」が紹介されています。 初級編 ①直観を言葉にする。(頭に浮かんだことを口に出してみる) ②区切って見る(対比する。焦点を合わせる場所を…

  • 「撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて」内田樹編 晶文社

    福岡アジア美術館のカフェに行きました。 ここが気に入っている一番の理由は人が少ないということです。 8つのテーブル席がありますが、今日もほとんど貸し切り状態でした。 BGMの不思議なアジア音楽も素敵です。 ここで美術に関する本を読んだり、それをノートにメモしたりして過ごしました。 「撤退論 歴史のパラダイム転換にむけて」内田樹編 晶文社 ロシアのウクライナ侵攻は日本にも影響を与えています。賃金は増えないまま物価は上昇しています。コロナが経済に大きな打撃を与えているところに、危機が重なっています。新しい感染症は今後もっと短い周期で出現すると言われています。気候変動が原因の災害も増え続けます。これ…

  • 映画「アメリカン・ユートピア」(スパイク・リー監督 2020年)

    先週、訪問した学校ではプール掃除が行われていました。 コロナの影響で2年間、水泳指導がなかったので、汚れがひどくて大変です。 さて、今日は映画の紹介です。 映画「アメリカン・ユートピア」(スパイク・リー監督 2020年) トーキング・ヘッズのアルバム「リメイン・イン・ライト」(1980年)を初めて聴いたときの衝撃は今も忘れられません。 パンク、ニューウェーブの嵐が収まった頃に突如現れたのは、電子音とアフリカン・ビートが混じり合った強烈で魅力的な音楽でした。 これはそのトーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンが創造した総合的藝術パフォーマンスを記録した映画です。 音楽とダンスと演劇を組み合わせた新…

  • 「人生百年の教養」 亀山郁夫著 講談社現代新書

    昨日は大濠公園のカフェで妻とブランチ。漕ぎ手男性の不慣れから迷走するボートにツッコミを入れながら、おいしいコーヒーをいただきました。今日は母の日。89歳になる母と過ごす予定です。 「人生百年の教養」亀山郁夫著 講談社現代新書 著者はロシア文学者、名古屋外国語大学の学長。 私と亀山さんの本との出会いは、「チャイコフスキーがなぜか好き 熱狂とノスタルジーのロシア音楽」(2012年)です。 この本のおかげでロシア音楽の歴史と全体像を興味深く学ぶことができました。 昨年はNHKテレビ「100分で名著」「カラマーゾフの兄弟」(ドストエフスキー)の解説を担当されていました。 亀山さんがこれまでどんな本を読…

  • 「ムスコ物語」ヤマザキマリ著 幻冬舎

    子育てに限らず、家族や知人や同僚など、人間の社会の中で望まない齟齬や誤解が発生しても、やがてありのままを包括し、認め合いながら生きていけるようになるためのヒントになってくれたら嬉しいし、デルスにも示しがつく。(本書 「はじめに」より) これはヤマザキマリさんが息子のデルスくんの子育てについて語った本です。「自分にはこんな発想はなかったなあ」「こんな風に考えることができたらいい」という発見がいっぱいある本でした。自分は「家族は普通こうあるべき」という枠にはまった思考しかできていなかった、と気づかされました。 デルスくんは両親と一緒にポルトガルに転居してすぐに、言葉もよく分からないまま、3泊4日の…

  • 「レイニー河で」ティム・オブライエン著 村上春樹訳

    ロシアがウクライナに侵攻を開始して2カ月になりました。現在はマリウポリでの攻防が続く中、ロシア軍の民間人への残虐行為が次々と明らかになっています。 「同志少女よ、敵を撃て」を読み終えて、再読したのがこの「レイニー河で」です。著者のティム・オブライエンはベトナム戦争を体験したアメリカの作家です。この作品は連作短編集「本当の戦争の話をしよう」の中の一作。道義的に賛成できない戦争に徴兵された若者の心情を描いた作品です。 私が子どもの頃、テレビでは毎日のようにベトナムでの戦争の様子が報道されていました。日本で徴兵を拒否した兵士たちを支援する活動が紹介されていたのも覚えています。そこで感じたことは、大義…

  • 「2年生担任のための国語科指導法 低学年のうちに習得させたい国語の学び方」土居正博著 明治図書

    新学期が始まって各学校への2回目の訪問が終わったところです。個々の教師や学級の課題はざまざまですが、まずは子どもたちに「聞く力」を育ててほしいと伝えています。 私が見た学級の多くでは「発表している人の方を見て聞きましょう」「よい姿勢で聞きましょう」「手に何も持たないで」と態度面の指導が多かったです。もちろんこのような指導も大事ですが、「内容を聞き取ることができているのか」を問う指導こそが重要です。聞く態度はできているのだけど、実質は何も聞き取れていないことはよくあります。反対に聞いていないようで実はよく聞いている子もいます。聞き取れているかいないかは、聞き取ったことを言わせてみて初めてわかるこ…

  • 「同志少女よ、敵を撃て」逢坂冬馬著 早川書房

    依然としてウクライナから目が離せない状況が続いています。 なぜこのような戦争が起きたのでしょう。 どうして終結できないのでしょう。 私はそんなことを考えながらこの物語を読み始めました。 第2次世界大戦におけるソ連とナチスドイツとの戦いは歴史上最も熾烈でした。 この戦いにおけるソ連側の死者は約2700万人と言われています。 これは独ソ戦に参加したある少女狙撃兵を描いた作品です。 「戦争は女の顔をしていない」(アレクシエーヴィチ著)の女性兵士の告白が見事な物語へと昇華しています。 特に物語後半の緊迫感、描写の鮮やかさには驚きました。 深い余韻を残すエンディングも秀逸。 今、ぜひ読むべき小説だと思い…

  • 「授業で語る 違いから迫る本質論」土居正博・松村英治著 東洋館出版社

    4月からの仕事が決まりました。 市内の小学校4校の2~4年次の教師への授業支援をします。 毎日、授業を参観して、よかったところと改善した方がいいことについて助言します。 そのために、授業改善についての最新最良の知見を求めていました。 1988年生まれの2人の俊英によるこの本はわたしのバイブルになるでしょう。 これからの時代、授業はどう変わる? デジタルとアナログはどのように使い分ければいい? 「不易と流行」の見極めは大切です。 しかし、デジタル機器導入は「一時の流行」ではありません。 タブレット端末やWeb検索などを全く使わないという選択肢はないでしょう。 昨年度は、「とにかく使ってみる」でよ…

  • ”The Lyrics:1956 to the Present” Paul McCartney , Paul Muldoon

    不思議の国のビートルズ 英国でベストセラーになったポール・マッカートニーの”The Lyrics:1956 to the Present”を読んでいるところです。 これはポールが、自分がつくった歌、154曲について語った本です。 聞き手はポール・マルドゥーン。ピュリッツァー賞受賞のアイルランドの詩人です。 作曲した当時のエピソード、背景、歌詞の隠れた意味などはとても興味深いものばかりです。 前書きのところに、「不思議の国のアリス」とルイス・キャロルへの言及があったので、すぐに思い浮かんだのが「マックスウエルズ・シルバーハンマー」。 すぐにそのページを探して読んでみると、ありました。 ポールはル…

  • 「BBQ型学級経営」渡辺道治著 東洋館出版社

    信頼している土居正博先生の紹介でこの本を知りました。BBQ型学級経営とは参加型の学級経営のことです。学校教育や授業に保護者の参加を促せばどんな良いことが起きるのでしょうか?この本はそんな学級経営に取り組んだ渡辺先生の実践記録です。 現在の学校現場では、学校と家庭の分断が進んでいます。保護者から学校や教師へのクレームはめずらしいことではなくなりました。教師と保護者は互いに気をつかい過ぎているように感じます。筆者は学校が直面している課題を以下のようにキーワード化しています。 閉ざされた学校 奪われた憩いや遊び 蔓延るゼロリスク信仰 行き過ぎた除菌教育 学校教育のインスタント化 面白味や多様性の消失…

  • 多和田葉子著「白鶴亮翅」 朝日新聞

    2月から新聞で多和田葉子さんの連載小説「白鶴亮翅(はっかくりょうし)」が始まりました。私は毎朝これを読むのが楽しみです。「白鶴亮翅」とは鶴が翼をパッと広げるという意味で、太極拳のことばです。物語の主人公はドイツに住む女性。異国での暮らしには様々な驚きや発見があります。言葉や歴史の違いから生じたズレや誤解などが、ときにシュールに、ときにユーモアを交えて語られます。 先週は、知人から「引っ越し祝い」を受け取る話がありました。ドイツでは引っ越したときに、塩とパンを持っていく風習があります。塩は「お守りみたいな麻の袋に入っていて」、パンは「身体をまるめて寝ているねこ」のようです。女性は、「引っ越しおめ…

  • マーク・トウェイン著 柴田元幸訳 「失敗に終わった行軍の個人史」新潮文庫

    不条理なユーモアと悪夢 1か月前にカナダ人ALTと話したとき、彼女はウクライナのことを大変心配してました。 「何か恐ろしいことが起きそうな気がする」と繰り返し語っていました。 その後、戦争への心配は現実となり、今ロシア軍はウクライナの原発にさえ攻撃を加えています。 ウクライナの戦争のことを考えながらこの本を読み返しました。 この作品が発表されたのは1885年、今から100年以上前のことです。 南北戦争に参加した若者たちの奇妙な行軍が描かれています。 彼らは英雄になりたいと思って、自分たちで小隊をつくります。 しかし、戦争の大義は理解できてません。 何でも自分たちだけで決めようとするので、指揮系…

  • 「農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ」(その2)

    先週は「オンラインありがとう集会」を見ました。この時期、小学校で実施される6年生に感謝を伝える行事です。前は体育館に全校児童が集まって行われていたのですが、コロナ禍でオンラインでの実施となりました。オンラインでどれくらいできるのかな、と心配していたのですが、オンラインならではの工夫があったので驚きました。 なぜ越境者が農業を刷新できるのか 前回のブログ記事「農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ」のツイートに著者の川内イオさんからコメントをいただきました。本の紹介記事を書いたら著者からコメントをもらうこともできる、というのがSNS時代の恩恵ですね。川内さん、ありがとうございます。とても…

  • 「農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ」川内イオ著

    「農業フロンティア 越境するネクストファーマーズ」川内イオ著 文春新書 スーパーに買い物に行くたびに気になること、それは野菜の値段です。例えば小松菜の袋入りは100円。安くて有難いのですが、農家の方はこの値段で採算がとれるのかな、と心配です。 この本を読んで分かったのですが、心配は現実でした。2017年の調査では、新規就農者の75.5%が「生計が成り立っていない」と訴えています。農業従事者の減少も深刻です。自営業で農業に従事している人の数は、2015年の175万7000人から2020年には39万4000人減少し、136万3000人となっています。 しかし悪いニュースばかりではありません。新しい…

  • 旅の仕方でその人がよくわかる 池内紀著「ひとり旅は楽し」中公新書

    先週で1年次教員6名の「まとめの授業」がすべて終わりました。1月以降は新型コロナウイルスの感染拡大により学級閉鎖が相次ぎスケジュールの変更もあった中、みなさんお疲れ様でした。これで私の仕事も一段落です。このあと3月までは、ゆっくり話ができそうです。 旅の仕方でその人がよくわかる 池内紀著「ひとり旅は楽し」中公新書 仕事の帰りに吉塚駅で列車を待っていたら見たことのない特急列車が止まりました。 列車を見ていると今までのいろんな旅を思い出しました。 退職してから何度か一人旅に出ました。夏休みでも冬休みでも連休でもない普通の日に旅行にいけるのが新鮮です。友人と旅行に行くことも多いのですが、一人の旅も同…

  • 学校は会社ではない! 内田樹著「複雑化の教育論」東洋館出版社

    先週の金曜日にメールがありました。 私が担当するY先生のクラスが、月曜から再び学級閉鎖。 学級閉鎖の数があまりにも多いので、閉鎖の基準は改定されることになりそうです。 学校は会社ではない! 内田樹著「複雑化の教育論」東洋館出版社 この四半世紀の間に、日本人の知性の発現が制度的に抑圧されている。もちろん潜在的には知性は豊かにあるんです。でも、それを発動できないでいる。 最大の理由は「話を簡単にする人が賢い人だ」というデタラメをいつの間にかみんなが信じ始めたからです。話を簡単にして、問題をシンプルな「真か偽か」「正義か邪悪か」「敵か味方か」に切り分けて、二項の片方を叩き潰したらすべての問題は解決す…

  • 岡嶋裕史著「メタバースとは何か ネット上の『もう一つの世界』」

    新型コロナウイルスの感染拡大が止まりません。 先週の水曜日に私が担当しているT小学校の学級閉鎖は10学級でした。 仮想現実の中にしか希望はない? 岡嶋裕史著「メタバースとは何か ネット上の『もう一つの世界』」 光文社新書 電子掲示板やSNS、ゲームも一種の仮想世界でしたが、それがもっと高密度、広範囲になったものがメタバースだと考えるとよいと思います。リアルには移動の困難や身体的な限界、資金的な制約など各種のしがらみが存在します。仮想世界であればそれらの軛を解き放ち、もっと楽しくもっと充実した人生を生きられるかもしれません。メタバースはそういう可能性をはらんでいます。だからフェイスブックは社名を…

  • 『BS世界のドキュメンタリー「地球温暖化はウソ?世論動かす“プロ”の暗躍」』NHK BSテレビ

    教職員の1年次研修では、基本的に毎週1回、略案(本時の展開のみの指導案)を書いて授業をしています。 そして、2学期後半か3学期初めに総仕上げとして、詳しい指導案を作成して授業をします。 私が担当している1年次教員の一人は、来週水曜日がその授業日です。 何度も相談を重ねて、資料の準備も完了していました。 しかし、欠席していた子どもが検査の結果、新型コロナ陽性と分かり、来週の木曜日まで学級閉鎖が決まりました。 新型コロナウイルスの感染拡大は続いています。 『BS世界のドキュメンタリー「地球温暖化はウソ?世論動かす“プロ”の暗躍」』NHK BSテレビ 地球温暖化は本当に深刻な状況なのでしょうか?それ…

  • ここにも「一つの花」が 梯 久美子著「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」

    先週は、1月6日から仕事を始めました。 6日は3校を回って、3学期の授業づくりについて一緒に考えました。 7日は、本務校のオンライン始業式に参加してから、午後に3人と面談しました。 始業式の朝の黒板には、担任からの新年のメッセージに「鬼滅の刃」「ワンピース」の登場人物たちの絵が添えてありました。 3学期初めの学級指導は、写真や動画のプレゼンを交えた興味深いものでした。 ここにも「一つの花」が 梯 久美子著「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」新潮文庫 大泣きして父を困らせたのは、九歳のたか子だった。松原小学校に通っていたが、たまたま父兄会のために授業が短縮され、父の出発に間に合ったのである…

  • 「もしわたしが『株式会社流山市』の人事部長だったら」手塚純子著 木楽舎

    「もしわたしが『株式会社流山市』の人事部長だったら」手塚純子著 木楽舎 どうすれば街を活性化することができるのでしょう。 魅力的なコミュニティをつくるにはどうすればいいのでしょう。 この本にはその具体的な実践例が書かれています。 著者の手塚さんは結婚と同時期に千葉県流山市に移住します。 流山市は都心の通勤圏にあって、転入が増えているまちです。 そのまちで育休中に地域活動を体験し、多くの学びや出会いを得ます。 育休の終了後に職場に復帰するのですが、第2子の育休中に地域活動を仕事にできるのかを確かめるために行動を始めます。 市民団体を設立し、市と連携してイベントを成功させ、その体験と人脈を基礎とし…

  • 100分de名著「資本論」カール・マルクス 斎藤幸平解説 NHKテレビ

    先週は、特別支援学級で英語活動の授業をしました。 学期末の恒例です。 1時間目はクイズとゲーム、2時間目は作って遊ぶ活動。 もう随分実践を重ねてきたので、2時間を楽しく英語で遊ぶことができたと思います。 「私はあの子が話すところを初めて見ました」というのは、授業を見た校長先生の言葉。 英語活動では、いつもとは違うコミュニケーションの扉が開くので嬉しくなります。 100分de名著「資本論」カール・マルクス 斎藤幸平解説 NHKテレビ この番組は今年1月に放送されてから反響が大きく、今月12月にアンコール放送が決まりました。 番組を見て、テキストを読めば、その人気の秘密が分かります。 今朝の新聞に…

  • 大学のキャンパスのような地域に 菅原和利著「自分の地域をつくる」 本の種出版

    今日はオンライン研修会で海外日本人学校元校長のM先生のお話を聞きました。 コロナ感染者が広がり始めた頃、オンライン授業の可能性を試行しながら、ピンチをチャンスに変えるような実践が行われていたことは驚きでした。 大学のキャンパスのような地域に 菅原和利著「自分の地域をつくる」 本の種出版 これは東京の最西端の奥多摩町に移住した青年が書いた本です。 過疎地で会社を立ち上げる経緯が描かれています。 菅原さんが当初手掛けたのは、アウトドアウェディング、ウェブサイト作成、パソコン教室、サマーキャンプ、シェアビレッジ(シェアハウスの別荘版)など。 その後、小田原で不動産屋の営業マンとして働いた後、再び奥多…

  • 言葉にならない願いを聞きとる 上間陽子著「海をあげる」

    今日のランチはモスのグリーンバーガーを食べました。 肉を使わない大豆パティのハンバーガーです。 予想よりおいしかったので驚きました。 こんな風に日常の食材も変わっていくのですね。 言葉にならない願いを聞きとる 上間陽子著「海をあげる」 悲しみのようなものはたぶん、生きているかぎり消えない。それでもだいぶ小さな傷になって私になじみ、私はひとの言葉を聞くことを仕事にした。(本書29ページ「美味しいごはん」より) 著者は琉球大学の先生。 教育学が専門の上間教授は沖縄の未成年少女の支援や調査を行っています。 この本では沖縄における性暴力の被害、基地問題などが幼い我が子との日常と共に語られています。 沖…

  • なぜ彼女はノマドの生活を続けるのか クロエ・ジャオ監督「ノマドランド」

    戻ってきなよ 戻ってこいよ お前がもといた場所に戻ってきなよ (「Get Back」The Beatles) ビートルズの映画「ゲットバック」を見るためにディズニープラスに加入したら、前から見たかった「ノマドランド」あったのですぐに見ました。 映画「ノマドランド」の主人公は、車で生活する初老の女性です。 アマゾンの倉庫、国立公園などアメリカの地方都市で仕事を探して移動しながら生活しています。 非常に「静かな映画」ですが、始まってすぐにこの作品世界に引き込まれていました。 この作品が持っている強い力は何だろうと気になったまま映画は終わりました。 見終わってから解説を読んでその理由が分かりました。…

  • 「第四次産業革命と教育の未来 ポストコロナ時代のICT教育」(佐藤 学 岩波ブックレット)

    「第四次産業革命と教育の未来 ポストコロナ時代のICT教育」(佐藤 学著)を読みました。 新型コロナ感染拡大に対応して、子ども「一人一台端末」が実現しました。 「学びを止めない未来の教室」実現に向けて、学校のICT環境整備は進んでいます。 経済産業省が主導している「未来の教室」とはどんな内容なのでしょうか。 「未来の教室」のICT教育の柱の一つが「学びの自立化・個別最適化」です。 子どもたちに個別の最適な学びを提供できれば素晴らしいように感じます。 しかし、海外では15年前にすでにそれを実施した結果、教育効果が乏しいことが検証されています。 その検証をもとにして、近年では多くのICTプログラム…

  • 「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」和田靜香著 取材協力 小川淳也

    「時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。」和田靜香著 取材協力 小川淳也 左右社 社会問題や政治について語るときには気をつかいます。 人と話すときに政治の話題になると、相手に合わせて言葉を慎重に選んでいる自分がいます。 国全体にもそんな空気が広がっていて、政治の話は避けている雰囲気があります。 しかし、その結果、人々の政治への関心は低くなり、投票率も低いままです。 前に紹介した工藤勇一さんと鴻上尚史さんの対話を思い出しました。 工藤 つい先日、政府の教育再生実行会議において、私は日本財団が2019年に実施した「国や社会に対する意識」調査の結果を使って日本の教育の…

  • 「小商いのすすめ 『経済成長』から『縮小均衡』の時代へ」平川克美著 ミシマ社

    先週は、1年次教師のダンス指導を見ました。 表現(ダンス)には、「災害からの復興」「日が昇るように」「チャレンジ精神」などの意味が込められていました。 1時間の展開を表で見せて、動画や写真でポイントを提示する指導は具体的でとても分かりやすかったです。 次の土曜日は、体育発表会です。 「小商いのすすめ 『経済成長』から『縮小均衡』の時代へ」平川克美著 ミシマ社 これは小さなお店の開き方の本ではありません。 これからの経済と社会について考察した本です。 2012年の出版ですが、斎藤幸平さんの「人新世の『資本論』」とつながっていました。 人間を幸せにしないだけでなく、地球を破壊しかねない資本主義に代…

  • 「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」川内有緒著 集英社

    「目の見えない白鳥さんとアートを見に行く」川内有緒著 集英社 「美術作品を見る」とは一体どういうことなのでしょうか。 この本では、目の見えない白鳥さんと筆者が美術館へ行きます。 目の前にある美術作品のことを、白鳥さんへ伝えます。 その内容は、作品の芸術的価値というよりも、その場で気づいたこと、思い出したことなどが多くなります。 白鳥さんが求めているのも、そんなライブ演奏のような対話の楽しみでした。 今までの美術鑑賞とは違う、気づきの多い体験に筆者は驚かされます。 障がいをもっている人と健常者との関係、対話の意味など、読者に多くの気づきをもたらします。 娘がまだ小学生の頃に二人で美術館へ行ったと…

  • 「魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣」石井妙子著

    先週は、訪問している学校で、病休をとることになった教師のことを聞きました。 学校の大きすぎる負担の軽減はなかなか進みません。 とにかく人が足りないという声を多く聞きます。 1週間後は衆議院議員選挙の投票日。 教師の負担軽減を真剣に考えている候補者に投票したいと思っています。 「魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣」石井妙子 文藝春秋 水俣病のニュースをよく聞いたのは1970年代、私は中学生だった。 外国のカメラマンが来て写真を撮っていたことも覚えている。 しかし、この本を読んではっきり分かった。 私は水俣病について何も知らなかった。 水俣での患者とそれ以外の人たちとの関係。 熊本大学…

  • 「ぼくはこんな音楽を聴いて育った」大友良英著 筑摩書房

    「ぼくはこんな音楽を聴いて育った」大友良英著 筑摩書房 大友良英さんは、NHKテレビ「あまちゃん」「いだてん」を担当したことで有名な音楽家です。 元々はジャズギタリスト。それも先鋭的なフリージャズの奏者です。 私は大友さんがDJを務める「ジャズ・トゥナイト」という番組の大ファンで、毎週欠かさず聞いています。 この番組は、古典から最新のジャズまで、主流派から前衛まで、幅広いジャズを取り上げています。 それができるのは、大友さんのジャズに関する知識が驚くほど幅広いからです。 自分の好きな音楽について、これほどまでに愛情込めて語ることのできる人を他に知りません。 この本は、大友さんの子どもの頃の思い…

  • 「学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか」 工藤勇一 鴻上尚史 講談社現代新書

    昨日、土曜日はT小学校の運動会でした。 開会式と閉会式に参加するのは6年生だけ。 他の学年は教室からリモートで参加。 各学年、表現運動と徒競走、2種目の発表です。 出番のときだけ運動場に出て、終わると教室からスクリーンで観戦します。 演技中は黙って動く、声を出して応援もできない、校歌も歌えない。 それでも、子どもたちはいい笑顔を見せていました。 「学校ってなんだ! 日本の教育はなぜ息苦しいのか」 工藤勇一 鴻上尚史 講談社現代新書 この本で工藤さんが紹介する、若者の意識調査の結果にはおどろかされます。 自分の国に解決したい社会課題がある 27.2% 自分で国や社会を変えられると思う 18.3%…

  • 「未来への大分岐」マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン 斎藤幸平編

    私が訪問している小学校の4校のうち1校が2学期制です。 その学校では、今度の金曜日に前期終業式が行われます。 教員の長時間勤務改善はなかなか進んでいません。 2学期制は膨大な量の仕事に忙殺される教員にわずかながらゆとりをもたらします。 それは子どもたちにとっても有益なことだと思います。 「未来への大分岐」マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン 斎藤幸平編 集英社新書 今朝の新聞で干からびたワニの死体を見ました。 場所はブラジル、もとは世界最大の湿地帯だったところです。 「こんなに多くのワニが死んでいるのはみたことがない」と地元の人が驚いています。 これからの10年間にどんなこ…

  • NHKテレビ「100分de名著」ル・ボン「群衆心理」

    先週は、私が毎週訪問している学級で子どもの新型コロナ陽性者が出ていたことを聞きました。感染防止徹底の必要性を改めて感じました。 「群衆心理」ル・ボン NHKテレビ「100分de名著」、9月は「群衆心理」。 武田砂鉄さんの解説は、鋭くかつユーモアがあって、とても分かりやすいです。 選挙の勝敗を決めるのは「風」、社会を支配しているのは「空気」、人々に大きな影響を与えるのはSNS。これらの「風」「空気」SNSは「群衆」が可視化されたものです。現代は「群衆の時代」と言えます。 ヒットラーはこの本を読んで、自らの権力奪取に活かしました。 フランクリン・ルーズベルトがメディアを活用して、参戦への世論形成に…

  • 「岸惠子自伝」岩波書店

    先週は、2年生音楽「リズムをかさねて楽しもう」の授業を見ました。 曲の感じを表す言葉をスクリーンに提示していたので、発言しやすくなっていました。 ポルカを踊る動画で様子がよく分かり、楽しい雰囲気になりました。 新採用教師の授業の工夫に感心しました。 「岸惠子自伝」卵を割らなければ、オムレツは食べられない 岩波書店 岸惠子出演作品で一番好きなのは「細雪」。 1983年封切り、市川崑監督、佐久間良子、吉永小百合、石坂浩二、伊丹十三。すごい顔ぶれですね。 この映画では、人間の弱さやいい加減さが描かれています。 しかし、それが愛情込めて描写されているので、「人間というのはだらしないけれど、そこがいいん…

  • 「プレッシャー・マシン」ザ・キラーズ

    先週訪問した学校では、子どもが新型コロナに感染した連絡がありました。 その子は放課後の留守家庭子ども会に行っていたので、子ども会の子どもたち全員が自宅待機となりました。 約100名、各学級3~5人くらいの子どもたちです。 その子たちは、翌日よりオンラインで授業を受けることになります。 タブレットの持ち帰りや連絡など、教師たちは慌ただしく準備していました。 まだしばらくは、このような緊急対応が続きそうです。 「プレッシャー・マシン」ザ・キラーズ ザ・キラーズはアメリカのロックバンドです。 ニューアルバム「プレッシャー・マシン」は全英1位、全米でもトップ10入りを果たしました。 ブルース・スプリン…

  • 「流行に踊る日本の教育」石井英真編著 東洋館出版社

    先週は、3年生の国語「山小屋で三日間すごすなら」を参観しました。 「話し合い」について学ぶ3時間の小単元です。 その学級では1名リモートで参加している子どもがいました。 驚いたのは、グループで話し合う活動場面で、その子が参加していたことです。 教卓の前に置いていたタブレットをグループに持っていくと、普通に話し合いが進んでいました。 「そうだ、もうこんなこともできるんだ!」と感心しました。 「流行に踊る日本の教育」石井英真編著 東洋館出版社 「改革のための改革」や危機を煽り続ける言説によって、際限なく前提が問い直されることで、もともとうまくいっていたものの土台まで掘り崩されてしまう状況が生まれて…

  • 「戦争は女の顔をしていない」アレクシエーヴィチ著

    福岡市は先週金曜日から2学期が始まりました。 私が担当している1年生の教室に行ってみると、いつもすぐに話しかけてくるHくんがいません。 担任に尋ねると、お母さんから「私が妊娠中なので休ませたい」と連絡があったそうです。 他のクラスでも「感染が心配なので欠席します」という子が複数います。 これから、すべての子どもへ「学び」を保障していくため、適切な対応を考えなくてはなりません。 今日は那珂公民館での「子ども英語教室」の予定でしたが、中止しました。 9月も実施は難しいようです。 10月までには状況が改善しているといいのですが。 さて、今回のブログは、「本の紹介」です。 「戦争は女の顔をしていない」…

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