chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • ドストエフスキー 黒い言葉

    亀山郁夫氏の著書に触れる。 なぜこの本に接することにしたのか記憶がないのだが、結論から言うと苦しかった。かつてドストエフスキーを何冊か読んだ苦しさとは別の苦しさ。ロシア文学に対峙するために、彼の国の歴史なども踏まえて理解する必要があったことをあらためて認識することになる。 亀山氏はこの本を現代社会に照らそうとしている。序文の印象な言葉として「AIとコロナの二重支配」というのがあるが、この苦しみをドストエフスキーの行きた時代になぞらえて、現代の貧困や格差は資本主義社会の矛盾などをえぐるような話に展開してゆく。しかし何しろ難解で、ベーシックな知識がないと辛い。 ドストエフスキーが『賭博者』の中で主…

  • 香川1区 大島新監督

    www.youtube.com 大島新監督の『香川1区』を鑑賞。 ・・・ ちょっと言葉が出ないぐらいの感動で嗚咽。前作『なぜ君は総理大臣になれないのか』へのアンチテーゼです。あちらは敗北でこちらは勝利。しかしながら、この映画が終わりではないというところが非常に難しい問題だ。立憲民主党の総裁選で落選した結果報告で終わらせるこの映画だが、北野武監督の『キッズリターン』からセリフを借りれば、 「おれたち、もう終わっちゃったのかな?」 「まだ始まっちゃいねえよ。」 負け犬のドラマの感動的なラストシーンは、この映画にも重なる。北野武が大島新監督の父大島渚監督の『御法度』で切り落とした桜の意味もまた思い越…

  • ミックステープ 伝えられずにいたこと Netflix

    『ミックステープ』をNetflix鑑賞。小気味よく惹きつけて幅広い鑑賞者を呼び起こす見事な映画だった。 www.youtube.com 孤独な少女、日本だと小学6年生ぐらいの少女は祖母と二人暮らし。ある日亡くなった自分の母が残したカセットテープを聞いて様々なことの目覚めてゆくというお話。そしてそのミックステープの中身に驚くべき秘密が隠されていた、という物語。少女がどんどん成長してゆく可愛らしい姿が描かれる。 ときは1990年代も終わる頃、2000年問題といって忘れてしまった方も多いかもしれないが、年代が代わることどコンピューターが全て麻痺するのではないか?という懸念が今思うと都市伝説のように広…

  • モスラ 1961年

    正直言うと、この偉大な映画をこのクオリティで劇場鑑賞できるとは思わなかった。『モスラ』は素晴らしかった。こんな映画だとは思わなかった。 1分ほど、映画の始まる前に音楽が流れるのだが、昔の映画はよくそういうことがあったようだ。今のようにネットで指定席を取れる時代ではないので、回の間で入れ替わるとき、座席につくまでの時間を確保する目的だったと思われる。『2001年宇宙の旅』や『風と共に去りぬ』あるいは『ベン・ハー』などもそうだったのではないか。ちなみに『モスラ』の音楽は伊福部昭さんではなく古関裕而さんが担当されている。ザ・ピーナッツが出演するからだったのだろう。古関裕而さんというと、夏に一人で東北…

  • GUNDA/グンダ

    新宿武蔵野館の系列映画館、すぐ近くにあるシネマカリテで『GUNDA/グンダ』を鑑賞する。『悪なき殺人』鑑賞後すぎ移動する。綱渡り。この映画館はブレッソンの『田舎司祭の日記』以来。 どこかでこの映画の予告編とチラシを見て、必ず見ようと思っていた。広告宣伝とはいえ多くの著名な映画監督がこの映画を絶賛している。ポール・トーマス・アンダーソン、アルフォンソ・キュアロン、アリ・アスター、ガス・ヴァン・サントらが絶賛のコメントを寄せており、ホアキン・フェニックスがプロデューサーとして参加している、という映画だ。これを見ないわけにはいかないだろう。 簡単に説明するなら、この2分ほどの予告編を見れば必ず見たく…

  • パワー・オブ・ザ・ドッグ Netflix

    ニュージーランド人のジェーン・カンピオン監督が作り上げた『パワー・オブ・ザ・ドッグ』をNetflixで鑑賞。『ピアノ・レッスン』で世界にその名を轟かせたカンピオン監督がまさに”作り上げた”というのに相応しい苦労をされて出来上がった傑作だ。コロカ渦で4ヶ月の撮影中断をはさみ、映画そのものがお蔵入りする懸念の中で、スタッフやキャストが撮影地のニュージーランドに残って撮影を続行したという。そうした苦労を映画の中に見出すことはできないが、冷静で冷徹ともいえる徹底した美へのこだわりを感じさせる。 www.youtube.com 1925年頃のモンタナが舞台。主人公はカンバーパッチが演じるカウボーイ。この…

  • 悪なき殺人 EULES LES BÊTES

    英語タイトル”Only the animals"が生きている。 www.youtube.com 『悪なき殺人』という邦題もまた間違いではないし、そのとおりなのだが、この映画でいうアニマルとはなんだろう?と思う。実際に出てくる動物は飼い犬ぐらいだ。そしてこの犬の存在は極めて重要。しかし問題はこの犬ではなく人という動物の恐ろしくおぞましい欲望、欲求、嫉妬、羨望などが複雑に交錯する。次から次へと繋がる物語の集結は驚くようなものだ。人種、偏見、格差、貧困などもこのラストシーンに込められている。つくり手の才能と現代に突きつける強いメッセージが示される。 ここに出てくる人物たちは、だれもお互いを愛さない。…

  • ラスト・ナイト・イン・ソーホー

    『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』エドガー・ライト監督の新作。彼の映画だと『スコット・ピルグリム VS.邪悪な元カレ軍団』というおバカ映画がすごい。いや、あれはおバカ映画ではない。4ビットの任天堂ゲームをステージとする陳腐な映画に思わせて、実は『地獄の黙示録』なども意識させるすごいエンディングが待ち受ける哲学的な映画だった。そしてこの日見た、『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』もまた、あのおバカ映画で言わんとしたことが重なっている。 www.youtube.com ホラー映画なのだが、青春ドラマだ。しかしひとことでこの映画を片付けるのは難しい。1960年代のソーホーに遡及することの意味などを考え…

  • エッシャー通りの赤いポスト

    『エッシャー通りの赤いポスト』は園子温監督の新作だった。試写会で鑑賞。 www.youtube.com こんな映画がまだ作れるのかと感動した。園子温監督の群像劇。ほとんど無名の俳優を集結させて、極めて政治的なドラマとして突きつけている。 いわゆるループものだ。『仮面』という映画のオーディションで役を狙う多くの市井の人々の群像劇。タイトルの意味などを推測すると、エッシャーは騙し絵で、赤いポストは目立つことの意味。誰にも知られない無名の人々が自分の存在を世間に示して目立ちたい、主役になりたいという意思の代名詞だ。そして『仮面』。これはベルイマンの映画『仮面ペルソナ』を連想させる。その後の多くの映画…

  • 嫌われた監督 鈴木忠平著 文藝春秋

    日刊スポーツのドラゴンズ担当記者の著者が書いた、落合博満氏がドラゴンズの監督だった8年間を事細かく書き上げた感動の大作だ。 この本は落合さんの本でありながら、著者の成長を物語る一人称の作品とも言える。そしてここに書かれる落合さんの言葉は、これまで報道などで聞いてきたものとはまるで感じ方の変わるものだった。 「恥をかけ」という落合さんの言葉が冒頭に書かれる。この言葉は記者である著者の成長を助けるひとことだ。 懐かしいメンバーのストーリーが重ねられていて、どの話も涙なくしては読むことができない。名古屋には仕事で住んでいたが、それほどドラゴンズに思い入れのない自分でも、いくつかのエピソードは涙を誘う…

  • キャッスル・クリスマス Netflix

    いやびっくり!あのブルック・シールズが映画に出てた!驚いたね。すごね。 『キャッスル・クリスマス』(A Castle for Christmas) www.youtube.com この映画の話の前に、ブルック・シールズについて説明すると、彼女は1978年、つまり40年以上前に、ロリータ美少女としてデビューしました。言わずとしれた『プリティ・ベビー』。ロリータというとキューブリック監督の同名タイトルが連想されますが、あちらはモノクロで、こちらはカラー。『死刑台のエレベーター』のルイ・マルが監督でアメリカ進出第一作だったんです。それはそれは衝撃でした。でも・・・私まだこの映画見ていません。とにかく…

  • 令和三年十二月上席 浅草演芸ホール

    柳之助師匠の落語をお目当てに、一人で浅草演芸ホールに向かった。 東武線の終点浅草駅の進行方向最後尾の階段を降りて改札を出て左に向かい、伝法院通りを突き進むと、ちょうど六区通りに出る。この日は日曜日だったので、朝10時前でも仲見世は大賑わいで、伝法院通りから進んだ道と交差するあたりはもう大混雑。 11時の開場には少し早いので、カフェで読書しながら時間をつぶす。マンション管理員の本が実に面白い。とてもうまく構成されている。 11時少し前に木戸銭売り場に並ぶ。ホールは喚起を意識しているようだ。いいことだ。 中に入ると、どうやら常連のお客さんで前の席は占領されている。和服のご婦人は寄席が初めてなのか始…

  • コドモなオトナの人生レッスン Netflix

    原題はPourris gâtés”で「甘やかされて育った腐ったもの」という内容ですね。 笑えません、自分のことのようでそうでないようで。 甘えという言葉は日本独特ですが、どうもフランス語にも”gâtés”という甘えに近い言葉があるようです。 www.youtube.com 短い映画ですけど、とてもおもしろいです。そして美しい映画。 モナコのゴージャスな風景からマルセイユの貧しい農地へと転落する家族の話です。 詳細は見てのお楽しみですが、この映画には圧倒的な映像の美しさがあります。素晴らしいです。特にマルセイユの田園風景がとにかく美しい。都会の喧騒を避けて、この美しい風景の中で、超リッチな家庭で…

  • 6アンダーグラウンド Netflix

    ハリウッドで最も高額のギャラを得るライアン・レイノルズと壊し屋のマイケル・ベイがタッグを組んだ超大作がNetflixでリリースされた。すさまじい映画だった。『6アンダーグラウンド』 www.youtube.com むちゃっくちゃな映画である。冒頭のカーチェイスシーンから声が出てしまう。映画全体で「ああああ!」の連続。こんな映画に150億円もかけることができるNetflixの偉大さが伝わる傑作だった。 主人公のライアン・レイノルズはともかく共演者も見どころ満載だ。まずは美しきメラニー・ロラン。 衝撃の『イングロリアス・バスターズ』から10年。まだまだこのボディラインである。不死身の女性スナイパー…

  • アーミー・オブ・ザ・デッド

    アーミー・オブ・ザ・デッドをNetflixで鑑賞。圧倒的なゾンビ映画だった。疲れた。 www.youtube.com 『ジャスティス・リーグ』のザック・スナイダー監督による圧倒的な世界。 主人公はプロレスラーのデイヴ・バウティスタ。ドゥウェイン・ジョンソンと同じキャリアのようだ。圧倒的な存在感でこの映画をリードする。 物語はゾンビに占領されたラスベガスに原爆が投下される前までに、金庫にある大金を運び出す、というミッションを受けた荒くれ者のアーミーというはなし。この計画をサジェストするのが真田広之演じるタナカという人物だったりする。 真田さんがハリウッドで活躍しているのを見るのはうれしい。この役…

  • 水俣曼荼羅 原一男監督

    今週のお題「最近あったちょっといいこと」 いつもしょうもないブログですけど、今週はいい映画にたくさんめぐり合えて、うれしくて記事にしてしまいました。「最近あったちょっといいこと」それはこの映画を見ることが出来たことです。 原一男監督の『水俣曼荼羅』をシアターイメージフォーラムで鑑賞。 6時間12分と長尺。 www.youtube.com 渋谷ではなく原宿から表参道を上がって青山通りに向かう。いい天気だ。東京はすっかりコロナを忘れてしまったようだ。しかし忘れてはならないこともある。この日見る映画はそういう映画だ。 昼頃、青山通りのシアター・イメージフォーラムに着く。 いつもだと早めに行って行列に…

  • 令和三年十一月下席 新宿末廣亭

    先日の午後休みをとって新宿末廣亭に赴く。コロナ禍で長い間閑散としていた寄席はかなり活気を取り戻していて、昼の部が終わる頃は満席で立ち見がでるほど盛況だった。 ナオユキさんの漫談で爆笑し。 三遊亭遊吉 三遊亭茶楽の『紙入れ』 三遊亭遊三の『高砂や』 瀧川鯉昇の『粗忽の釘 ロザリオ版』。これは笑ったなぁ・・・ 股間から釘が・・・ 東 京太、ゆめ子の漫談。 最近よくおみかけする三遊亭とん馬の『他行(たぎょう)』 浅草演芸ホールの失敗談とかっぽれもいいですね。盛り上がります。 春風亭柳橋の『代書屋』。権太楼師匠の『代書屋』以来。 桧山うめ吉。 そしてトリは春風亭柳之助。なんと『芝浜』でした。寄席の短い…

  • 森洋史、松井えり葉 GINZA SIX

    銀座に来たら、どうしても寄りたいGINZA SIX。一日いても飽きない。 その理由は色々あるが、まずはギャラリーとしての魅力。 この日はフロアの中央で森洋史 氏の個展が開かれていた。幾何学的なキューピー。 なかなか見応えのある作品が並ぶ。ポップであってそれを拒絶するような冷たさも感じさせる。そしてカフェの中では松井えり葉さんの個展も併設される。こちらも目を奪われる。個性的な作品ばかり。 二次元のキャンパスに立体的な積み上げをして、その中にさらにひと味加えている作品群はいずれも魅力的だ。アートは推理小説に似ている。その作品の意味を掘り下げて、少しでも一致点があると満足感が高まる。回答はもちろんひ…

  • 逆境の資本主義 コロナと資本主義

    コロナのようなパンデミックの襲来は、過去にもあったことなのに、いざ想定外の事態となったときの備えはあるのだろうか。これまでのようにROE経営を最上の状態として位置づけていいのだろうか。そのあたりをウィリアム・ラゾニック氏は労働者の立場から理論づけしている。労働者の意欲を高めて好循環を維持することで中間層を押し上げる。株主至上主義は資本主義を腐らせたとまで断言する。マネーの暴走がそれを示す。何も考えない取り引きが膨張する。これを「短期志向の罠」と表現している。これは地球という環境に対しても同じだろう。 もともと大航海時代の会社は、航海が終わるたびに解散していたが、オランダの東インド会社から会社が…

  • 逆境の資本主義 変質する暮らし 民主主義の試練

    ケインズは「孫たちの経済可能性」という論文で、2030年には自由な時間をどう使うかが人類の課題になる、と予言している。 第2節では「変質する暮らし」を分析する。 AIなどの普及により労働時間は短縮される。これを受けて労働は ・働かなくてもよくなるか ・働けなくなるか に二極化するという。大内伸哉教授(神戸大)は雇用を「時間主義」で示す。企業に時間を捧げるのが雇用だという。そして定年制はもはや時代遅れであって、ノウハウで働く時代になるだろうという。働き手の賞味期限が伸びるということのようで、これが行き着くところでは「会社員は消え、労働法もなくなる」という大胆な主張だ。 会社組織ではなく広く個人の…

  • 逆境の資本主義 日本経済新聞社

    日経のサイトでも読むことができる。『逆境の資本主義』。連載中から気にしていたが、本になって6月に出版された。 まえがきに1991年、ソ連崩壊から資本主義は社会主義にあたかも勝利した、という定説に流されていびつな形に変化してきたという。もともと資本主義はイデオロギーではなく制度設計だ。資本主義か社会主義(あるいは共産主義)かという択一ではない。この本はコロナでダメージを受けた経済と人々を見渡し、著名人による現状分析と未来への提言によって綴られている名著だ。今こそ読むべき本だ。 1、さびつく成長の公式 「グーグルの近くで暮らすホームレス」から始まるこの冒頭の章は、いま原油高、物価高に直面する我々日…

  • アーミー・オブ・シーブズ Army of Thieves Netflix

    またまたNetflixにはまってしまいました。『アーミー・オブ・シーブズ』すんげー面白かったです。 www.youtube.com あ、 いつものようにここからはしょうもない記事なのでスルーして下さいね、Trailerでも見て、あとは無視していただいてオッケーです。スルーされる方はここでサヨナラね。 Au revoir Auf Wiedersehen はい、ということで、これ金庫破りのお話です。でもこれがどうも単純ではなくて、Netflixにまんまとはめられたんですが、この映画の前作として『アーミー・オブ・ザ・デッド』という作品があるらしく、この映画の後に続く話らしいんです。ややこしいですね。…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、dalichokoさんをフォローしませんか?

ハンドル名
dalichokoさん
ブログタイトル
dalichoko Hatena
フォロー
dalichoko Hatena

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用