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創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
「杉田弁護士とは大まかの経緯を昨夜話しました。その上で『引き受けても良い』と言って下さっています。何でも……」 最愛の人のような卓越した記憶力を持ち合わせていない祐樹は不要と判断したら脳の中に作ったゴミ箱ファイルに即座に入れることにしている。杉田弁護士と
「ほう、それは大変興味深い話だ。是非田中先生の見解をお聞きしたい」 その場を代表してアッシュベリー先生が傾聴といった感じを見せてくれた。森技官が血を見たり内臓を嫌ったりするのは最愛の人とのデートの時などに笑い話にしている。その原因をとことん話し合ったこと
「あ……っ、祐樹……っ!悦(い)……っ」 奥処まで一気に貫くと白い枕を紅に染めるような声が聞こえた。繋がった場所からも湿った肌が奏で合う淫らな協奏曲が聞こえて堪らない。さらに祐樹が丹精込めた花園の中は妖しく貪婪な動きで祐樹をもっと奥まで引き寄せている。その
本来ならば女性の一人暮らしのマンションに男性が入り込むという行為は常識外れだと見做(みな)されるだろう。しかし、長岡先生の婚約者は最愛の人と祐樹の性的嗜好を知っている。旧態依然とした大学病院では許されない性癖であっても、露見したら自分の病院に来て欲しいと
「明日は起床時間を定めずに午後まで今夜の愛の交歓の疲労を回復してから、仙台観光をしましょう……」 最愛の人の鎖骨の窪みに紅い情痕を付けながら提案してみる。「疲労?祐樹にこうやって愛されていると……私はさほど疲れは感じないのだけれども。祐樹は違うのか?しか
「見たところⅠ度熱傷なので、ステロイド外用剤塗布が良いでしょうね。30分ほど流水で冷やした後に、ですが。念のために指輪は外した方(ほう)が良いでしょう」 今日の長岡先生はネックレスをしていない。まあ、患部ではないのでネックレスまでは外すことはないし、水膨れ
案の定顔を曇らせている。「それがなかなか……。同期に当たってみました。医局は異なりますが……」 このエリアは患者さんこそ入ることは出来ないが、その代わりに医師やナースが通りかかる率が多い。彼女が持っていたクリップで留められた書類を尤もらしく眺めながら小
「オレっ!教授の手技に惹かれて香川外科に入局出来たことが光栄で!とても嬉しかったです!その上、香川教授の医局に対する責任感を今聞いて、もっともっとこの医局で良かったと思っていますっ!田中先生!医局長の柏木先生は職務上分かりますがっ、オレをこの場に呼んで教
祐樹だけの極上の花園は、熱く厚いシルクの感触で悦んで迎えてくれるのは確かだったが、他に比べて太い先端部分はやや挿れるのに時間を要するのが常だったが、最愛の人の言った通り「祐樹の形」を覚えていてくれたのだろうか今回はすんなりと挿っていった。「祐樹……っ、
誰も居ないとはいえ、ここも香川外科の一部だ。他科の人間は入って来ない。また辺りを見回すことで「この話は極秘です」という印象を柏木・久米両先生に与えることが出来る。「そして、香川教授も今回のことを問題視されていらっしゃいます。手術(オペ)中でないことは前提
「大丈夫ですよ。ホテルを出る前に綺麗に洗い流したでしょう?指でも私の欲情と愛情の象徴でもない感触を心置きなく味わってください、ね。それに舌で味わう、濡れた熱く厚いシルクの感触が堪らなく良いです……。ヒタリと包み込んでは奥処に引き込む動きが最高に良いです!
「だったら薬品保管室のことを言及されても顔色一つ変えないのは納得だな」 柏木先生も久米先生を見直したような表情を浮かべている。「映画などでサイコパスが犯す大量殺人などが描かれていますが、実際はごく一部の人間なのでしょうね?」 そんな危険な人格障害を持って
「予約車」との表示が出ているタクシーに乗り込んだ。最愛の人は運転手さんに顔を見せないためか祐樹の肩に顔を伏せていた。言葉で散々煽ったせいだろう。「田中です。『友達』は空腹にも関わらずアルコールの摂取をしてしまいまして。ただ、嘔吐はしたことがないので大丈
「不倫か?そんな恐ろしいことは出来ない。さっき、遠藤先生が言ってただろ?あのムカつく事務局長を二回半殺しにしたいって。それは全く同感だが、オレが不倫なんかしたらウチの家内は市中引き回しの上打ち首獄門を覚悟しないといけないと思うぞ。それに慰謝料、医師の相場
自販機で「午後の紅茶」とブラックコーヒーを買った後に、細心の注意を払って足音を殺して最愛の人に近づいた。日本の庭園にありがちな玉砂利ではなく石畳だったことも幸いしたし、救急救命室ではなくて香川外科の夜勤の時の病棟巡りでは足音を殺すことも慣れていた。凛と
久米先生は、何だか祐樹の田舎にある昔ながらの本屋さんでエロ本の万引きを企んでいて、しかもそれを店主にサクッとバレそうなくらい挙動不審だった。(久米!何してるんじゃー!お前)と叫びたいのが本音だ。病棟巡りに行く医師が珍しいモノを見る視線で久米先生をチラ見
最愛の人は通達を医局一斉メールで行うことが一般的なので、医局の空気は張り詰めている。「黒木准教授!」 柏木先生が真剣な顔で挙手をしてくれた。「柏木先生、お早うございます。何か?」 朴訥な声が返される。「教授の通達がどのようなものなのかは存じませんが、医
「祐樹が六甲の夜景を見に連れて行ってくれたことが有るだろう?」 誰も居ないことを良いことに二人手を繋いで夜景を見下ろしていると、最愛の人が紅色を彷彿とさせる言葉を紡いでいる。「ありましたね」 裕福な家庭で育ったとは決して言えない最愛の人は病床についている
「どうなさったのですか?取りあえず落ち着いてください。はい、深く息を吸って」 下らないことだと頭を叩こうと密かに決意しながら久米先生を見た。久米先生の頭の音は美味しいスイカのような音がするので叩き甲斐がある。「あのっ!昨日までは教授の手術スタッフに名前が
「小児科に入院している患者さんも他科と同様ベッドにいることが基本ですよね。だから夜更かししても次の日に眠れば良いみたいですね。それと病気を不憫に思う親御さんがお小遣いというか、課金するお金も潤沢に呉れるらしいです。スマホやタブレットでマンガを読むことが出
「何だろう?きっと祐樹の発案は斬新なのだろうな」 小さな笑みを浮かべている最愛の人はきっと医局内で不埒なコトをしている人間を出したということを残念に思っているに違いない。祐樹も病院内で大きな声では言えない恋愛をしている身の上ではあるものの、誰にも迷惑を掛
「死後だから身体のどこを切っても平気だろう?私が学生時代に救急救命室に手伝いに行っていた時なのだけれども……」 最愛の人は医学部の正規の勉強の傍ら当時から治外法権だった救急救命室でボランティアをしていたことは知っていた。医師免許を持っていない人間は単なる
何しろ香川外科唯一の内科医だ。だから外科医の医局員は彼女の許可なしには投薬出来ない仕組みになっている。外科に内科医が居るのは香川外科だけで、凱旋帰国する前に彼が「どれだけ大学病院に我が儘が効くか」と試した結果だ。プライベートでは色々とやらかす女性だが、
「街路樹を渡る風がこんなに気持ちが良いのだからしばらく散策したい、な」 祐樹を見上げている、切れ長の目を縁取っている長い睫毛が滑らかな素肌に影を落としているのが綺麗だった。街中(まちなか)でこんなに空気が澄んでいるのも珍しいし、二人して旅情を感じながら歩く
「想定外の出来事が起こると何をするか分からないという不安は有りますが、久米先生は如何でしょうか?脳外のアクアマリン姫と付き合うまでは彼女も居なかったですし、不倫するような器用さはないですよね。それに、不倫が露呈した場合は潔癖なアクアマリン姫こと岡田看護師
「ただ、大学病院でも先ほどの店員さんのような眼差しで見られているのは知っています。気付かないフリをしていますが。貴方だって、そういった視線で見ている人間もいます。敢えて誰とは申しませんが。貴方が学生時代にそういう視線を送ってくださっていたなら大歓迎だった
「やはり専門家は違うな。祐樹、何だか浮かない顔をしているが……?」 最愛の人が新しいグラスのアイスコーヒーをトレーに載せてリビングに入って来た。そして祐樹の顔を心配そうに見ながら鮮やかな仕草でグラスをローテーブルに置いている。「そうですね。杉田弁護士に相
「接客業だから客の顔色を窺うのは当たり前だろうけれども……。祐樹には二割、私には八割という感じだった……な」 祐樹が真剣な表情に変わったのを見たせいか彼も理知的かつ怜悧な表情だった。ここは畳みかけるべきだろう。「あの店員さんは同性も愛することが出来る人の
「先生にお願いしたいと思っています。配偶者の行ってしまった過ちは仕方のないことですが、せめて慰謝料や財産分与をなるべく多く取って頂きたく思います」 杉田弁護士が有能なことは知っていたし、今回の電話で再確認出来たから最愛の人の判断は妥当だし同感だった。『分
「そうなのですか?素人考えだとデジカメが良さそうに思えますが?」 興信所に頼んで不貞現場を押さえて貰う。そのワゴン車の内などで探偵さんと夫が不倫場面を見るというのは昔の「警察密着24時間」だったか?そういう番組を見ている感覚なのだろうか。ああいうのはまる
「それは確かにそうですね。普通の学校ではないのでセクハラとか世間一般の常識では当てはまらないような気がします。呪いを倒し続けたら一般人の感性からは当然ズレると作中でも言っていましたよね。常識もズレていそうです。だからノリで女子生徒のスカートを拝借し、ウケ
「心外ですか?」 この一連の会話はジャブ程度だろう。杉田弁護士も本心ではなくて祐樹との会話の流れを楽しんでいるに違いない。『香川教授や田中先生は手術を含むのでその点では異なるだろうけれども専門知識を駆使した知的サービス業という点では我々と同じハズだ。そち
彼は祐樹とのどんなに濃厚な愛の行為を重ねて淫らに開花した肢体を持っているが、精神は無垢のままという点も大変愛おしい。そういう咲きたての花のような色香を醸し出す最愛の人を見ることが出来ただけでもこの相談をして良かった。「確かにそうですね。薬品保管室でだけ
「そうか?私には良く分からないが祐樹がそう見えると言うのだからそうなのだろうな……」 彼は判断に困る時に祐樹の決定を取り入れてくれる。全幅の信頼をされているというのは恋人冥利に尽きるし、部下冥利も同様だった。「お待ち遠さま」 先ほどの店員さんの声が扉越し
『不倫された人と一緒に弁護士や興信所の人間と共に密会現場に乗り込むわけではないので、それほど腹も立たないかとも思うのだが……』 弁護士というのは裁判所が主な仕事場だと思いきや密会現場の踏み込みまであるのかと意外だった。『いや、医局員が仕事途中にそんなこと
ゲイバー「グレイス」というその手の人間が集まって出会いを探す場所ですら、彼は客の意図を気付いていなかったフシがある。最後に行った時にはあの(・・)森技官までも動員してキチンと最愛の人がモテるということを客観的かつエピデンス付きで証明したので納得してもらえ
『岩松氏とは旧知でね。そして彼から紹介された。香川外科の一員だと。そして、岩松氏の婚約者だとも。直近の面識は本のパーティの時だったかな?ただ、私は岩松氏の病院の訴訟代理人を務めたことが有ったので、そこで紹介されたというわけなんだ』 そんなことは初耳だった
「平たく言うと『責められることが有る』配偶者のことだな。それ以外にもDVやモラルハラスメントを行っている人間も有責配偶者だ。ちなみに有責配偶者からの離婚請求は原則として言い出せないことになっている」 不倫やDVを仕出かした人が離婚を言い出す権利などないよ
最愛の人の作ってくれる餃子(ぎょうざ)は完璧に焼き色がついていて最高に美味しいが、ごくごく一般的な白い生地だ。彼が作ってくれるまで祐樹は餃子というのは「餃子の王将」などの店でしか作っていないと思い込んでいたが、自宅でも作ることが出来ると知って驚いた覚えが
「そうなのだ、杉田弁護士によると損害賠償金を330万円請求されていて、無視したらそのまま判決が出る。判決が出たら動産・不動産そして給料まで差し押さえ出来るし危ないところだったと言っていたな。そうそう、…・…ちなみに民事訴訟では訴えた人間が原告と呼ばれて、
「その警官は素直に取り調べを受けていた人に良かれと思ったアドバイスなのだろう、多分……」 室内着から露出している若干華奢な肩を竦めている。「『どうせ民事でも訴えて来るだろうが、そんなのは無視すれば良いから』と言ったのだそうだ」 二人きりの時でも簡潔に話す
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ブログ記事が読めなかった件についてこんにちは。いつもお読みいただき、本当にありがとうございます。先日公開した記事について、リンクをクリックしたにもかかわらず「ページが表示されない」「アクセスできない」といった現象が一部の環境で発生していたようです。大
「祐樹……、この二人だけの愛の空間……。本当にこの屋上が最も高いのだな……。祐樹の高校の屋上もこんな感じだったのか?」 キスの合間に紡がれた、艶やかな中にも無垢さを含んだ言葉が紡がれている。最愛の人の高校時代も教室から出ることもなく読書をしているか、定期
いつもご覧いただきありがとうございます。これまでブログの更新はパソコンで行っていたため、スマホでの表示について深く意識していませんでした。ところが先日、珍しくスマホから自分のブログを見てみたところ、うっかり広告をタップしてしまい、まったく興味のない外部
「あ!オレ、いや私までも真殿教授は、とても不本意そうな顔で、『なぜFacebookをしないのか』と言ってきたことがあります。まだ医局にいた頃です。大喧嘩をする前も一触即発といった感じが漂っていたのですが、それでも誘ってくるのですから、イエスマンばかりの医局員は皆F
「――先に答えを言ってしまったら、興が削がれるでしょう?」 最愛の人の薄紅色の唇を祐樹の唇で封印した。そしてサマーセーターを着ていても先ほどピーチフィズを零したせいで可憐に尖った胸を指先で弾いた。愛の交歓の前奏曲としてはちょうどいいだろう。このエレベータ
そういえば、最愛の人も祐樹も「心臓外科」の医師一覧に載っているが、同じような「理知的で誠実な、そして控え目な笑みを浮かべてください」と広報室の人に言われた記憶がある。だからきっと同じ指示が医師全員に行き渡っているのだろう。「私が特定不可能な以上、森技官
確かにその通りだろうなと思った。脳外科のアクアマリン姫こと岡田看護師と付き合ったことで、久米先生はゲームという二次元から普通の恋愛にシフトしていて、以前ほどのめり込んではいない。しかし、顔は清楚なのに胸が異様に大きい美少女のセーラー服を一枚一枚脱がして
「別に私はガンジーのような非暴力主義者ではない。祐樹が久米先生の頭を叩いているのを見た時、その行為を彼自身が喜んでいると判断したので、敢えて干渉しようとは思わなかった。医局員全員も、あれは『愛のあるイジり』だと理解していると柏木先生が言っていた」 柏木先
「ウチの病院のサイトに、精神科所属の医師の顔写真は載っていましたっけ?」 最愛の人が淡い笑みを浮かべて頷いている。誰が聞いているかも分からない職員用の食堂で呉先生を揶揄する医師二人は、たとえ親真殿派ではなくても呉「教授」に反対するはずだ。 二人で暮らして
うっかり布地越しとはいえ、胸の尖りを晒してしまった最愛の人のリアクションも非常に気になった。そういう情事に触れられると、普段の最愛の人は顔を紅色に染めて目を伏せていた。しかし今夜はそうではなかったので内心、意外だった。 祐樹と二人きりの時には、大輪の紅
特筆すべきは最愛の人の麗しい筆跡のみで、祐樹には縁のない名前の羅列に過ぎない。森技官が、あたかも国家機密のように大切に抱えていたその紙を、祐樹はテーブルに広げ、何の演出もなくスマホで撮影し、LINEで清水研修医に送信した。一応「極秘でお願いします」とだ
「また始まった」 呉先生がぼそりと漏らした。諦めと愛情が絶妙なバランスで同居した、乾いた呟きだった。しかし、それ以上何かを言うことなく、呉先生は無言で森技官に視線を向けていた。祐樹もつられて視線を向ける。 森技官が言う「備考欄」には、最愛の人の達筆が静か
最愛の人はどこか誇らしげなセピア色の口調とまなざしだった。杉田弁護士は極上の生クリームを心行くまで舐めたチェシャ猫のような表情だ。何しろ祐樹に「香川教授が今『グレイス』に来ていて、多数の男たちから奢られている」と知らせてくれたのは彼だった。「グレイス」
四個の洋菓子は既に食べてしまっている。呉先生は最愛の人よりも華奢な身体なのにどこに収まったのだろうか?まあ、洋菓子効果で呉先生の決意がさらに固まったなら祐樹としては喜ばしいのでスルーしよう。「――新しいかどうかまでは分からないですよ。ただ、その看護師が
最愛の人も男性器は見慣れているはずだ。といっても大学の講義の一環や医学部生の時にボランティアとして参加していた救急救命室での経験に限られていただろう。身体を重ねた相手は祐樹が二人目で祐樹のソレはともかく初めての相手のはそうまじまじと見ていないような気が
「教授教えて下さって有難うございます。あ!お前が軽躁の入り口に立っているかと思った。本気大道芸だったからな、あれはさ」 森技官は一瞬だけアルマーニがこよなく似合う肩を落とした。恋人の言葉は妙に効くらしい。祐樹に言われたなら、きっと三倍返しで皮肉を返してい
最愛の人の怜悧な声は相変わらず淡々としていて、まるで「地球は丸いのです」という自明すぎることを話しているようだった。その静謐な口調が胸の奥に染み入り、祐樹の心は、まるで水面に沈んでいく光の粒のように最愛の人の言葉に全て吸い込まれていく気がした。ただ、二
最愛の人は固まり、呉先生は呆れ果てたスミレの花といった感じで単に咲いている。祐樹は身体を動かすと笑いの発作が再発しそうで、身じろぎすら出来なかった。 精神的には一時間、実際には五分くらいだろうか?ナゾの空白の時間だけが、ただ過ぎていった。 最愛の人がし
ナツキは一瞬だけスマホに目を落とした。多分、両親の待つ家に帰ろうかと思ったのだろう。しかし、今の祐樹は「グレイス」の常連ではない。 今宵訪れたのは最愛の人とのデートの一環で、こんなに長居をするつもりもなかった。最愛の人も祐樹に誘われたから足を運んだだけ
祐樹が洗面所で顔を拭きながら深呼吸を一つ二つと行い、ようやく笑いの発作を収めてキッチンに戻った瞬間、祐樹は一瞬、時空が歪んだのかと思った。 テレビの中でしか見たことのないはずの――学生運動、アジ演説、安田講堂の熱狂。それなのにそこに居たのは、アルマーニ
彼が祐樹の肩から頭を上げたと同時に自転車のライトと思しき光が近づいて来た。この近くの住民だろう。最愛の人が軽やかに立ち上がって祐樹との距離を友達のパーソナルスペースに戻す。幾ら「多様性」が重視されていると謳われている現代でも男性二人が密着して座っていれ
「サトシ、久しぶりだな?日本に籠り切りで何をしていたのかと思っていたが、年上(・・)の指導をずっとしていたのかい?」 いかにも親しそうに肩を叩いているアメリカ人と思しき人に少しムッとした。アメリカ人のパーソナルスペースは日本よりも近いことは知っていたにも関
一気に買うよりも上策な方法というのは何だろうと疑問に思ったが最愛の人の薄紅色の唇が紡ぐ言葉に聞きほれてしまう。「株式は良さげな銘柄(めいがら)、つまり会社をおいおい選ぶとして……」 三好看護師の同僚兼友達が「銀行でNISA口座を開設してしまったら投資信託
「ウチの田中」と呼んでくれたのはとても嬉しいし何だか新鮮な感じだった。しかも所有権を主張されたような気がする。しかも「出来なくはない」とゴール医師に言っている。「大学病院長兼医学部長の斎藤に貴方の上司から正式な要請のメールか手紙を出して下さるようにお願
「特に不思議に思ったことはないですね。強いて言えば、刃(やいば)の色が初めて握った剣士によって変わるという点でしょうか?『呼吸』の適性が分かるという刀の色は、最終選別を突破して分かるモノですよね。例えば主人公は『水の呼吸』の修行をしていても『滅多に見ない』
「店舗を構えているとなると人件費の問題が出てくるだろう?窓口の女性や営業の人など一店舗で10人以上を配置しなくてはならない。それにオフィスビルの家賃とか光熱費その他諸経費を考えるとそれらを手数料で賄わなければならなくなる」 なるほどと思ってしまう。「最近
「そうなのか?それは少し興味があるな」 若干弾んだ声と艶やかな眼差しが夜の空気に煌めいている。ポケットからスマホを出して検索した。「この旅館ですね」 施設案内という部分をタップした。「本当だ……確かに似ているな」 彼は祐樹との距離を詰めて来てくれるのがと
「麻酔医自身がクローズアップされることだろうか。森さんが日本で面白い催し物を開催予定しているらしいな。田中先生もこうして皆に祝福されたら外科医をしていて良かったとしみじみと思うだろう?麻酔医だって同じだと思う。そういう意味で、日本の催し物で外科医が脇役、
「プラチナや金(ゴールド)は今高価らしいですよね。柏木先生の奥さんが千切れたネックレスとか片方だけになったピアスをリサイクルショップに持って行ったら驚きの価格で買い取ってくれたとホクホクしていましたよ」 柏木看護師は手術室のナースなので手術(オペ)後に雑談す
「仙台結界(コロニー)と言っても、一般人には黒い壁としか認識出来ない物だろう?行ってもいいけれども呪いが見えない私達には単なる道路だろう」 月明かりに照らされた最愛の人の顔は苦い笑みを浮かべている。この人がこういう表情を浮かべるのは珍しいので心の中のシャッ
最愛の人は手術(オペ)を一日二件こなしている上に医局の責任者としての事務仕事を完璧にこなしている。有能な秘書が居るのは確かだが、事務処理能力は祐樹が知る限り最も優れている。森技官の無茶振りで不本意ながら捜査だか調査を二人して頼まれた時に彼の文書作成能力に
「そうなのですか。それは何故ですか?そんなにモルガンスタンレー銀行にお金が有ったら心強いと思いますが?」 思わず背筋を伸ばして彼の複雑そうな表情をまじまじと見詰めた。恋人同士の甘い時間はホテルの客室で過ごすことにして、このバーでは病院関係者の資産運用の話
弁護士の必要性は皆無なような気がするのだけれどもどうもそう単純なモノでもなさそうな表情を最愛の人は浮かべている。「祐樹の場合だと……家で二人きりの時には何の問題も生じないだろうな。いや、嬉しそうな表情で出勤して医局で正直に言った場合は異なるかもしれない
最愛の人は滑らかな白い肌に睫毛の影が綺麗なコントラストを作っている。夜に咲き誇る薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべながら祐樹の話を興味深そうに聞いてくれているのも愛おしさが募る。「高価なお酒が呑み放題というのに釣られてしまっていてモトを絶対に取ってやる!
「保険って契約するもので作るものではないと思っていました。ただ、今まで全く気付かなかったのですが、保険商品が山のようにありますから作っている人も居るのでしょうけれども、ね?」 話しを促してみた。「日本人の平均寿命が年々延びているだろう?厚労省や色々な研究
「流石は祐樹のお母さまらしい用心だな。それはともかく若者よりも高齢者の方(ほう)が現金を持っている確率は高い。しかも老後のことを考えてあまり出費はしない傾向にある。例外は子や孫で、それに対して援助しやすいようにと税額が変わるのだ」 すとんと腑に落ちた気がし
「え?どういうことだ……?高専を卒業して第一線で働くことが出来るかという祐樹の質問なのだろうか……」 隣に座った彼は明眸(めいぼう)皓歯(こうし)のお手本のような、瞠った目と和洋折衷菓子を白い歯で挟んで切っている。それはそれで目の保養になっているのだけれど怪
杉田弁護士という知り合いは居るが税理士の知己はいない。確定申告はさして難しいモノではないので専門家に頼まずに自分で確定申告をしている祐樹には税理士の知り合いはいない。 「太陽のたまご」というらしいマンゴーを銀のフォークを使って優雅な動作で魅惑的な微笑み
最愛の人は計ったように二等分、しかもナイフとか正式名称は祐樹も生憎知らないが和菓子の時に使う木の小さなナイフめいた物を使ったかのように切ってあった。スマホのライトに照らされて、皮部分と中央の生クリームと思しき物に挟まれた鮮やかな緑色の色は真珠の中に翡翠
「麻酔医の大切さは良く知っていました。アメリカ時代は当たり前の一手術に一人の麻酔医だったのですが、日本ではそうでないと聞いていたので……私は日本の大学病院に招聘された身の上です。ですから多少の我が儘が効いて専属の麻酔医を指名出来たのですが、あくまで少数派