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創作BL小説を書いています。 ヤフーブログから引っ越して参りました。
ヤフーブログ終了でライブドア様に引越しました。今日の夜中更新分からはこちらがメインです!
「はー!やっと終わりましたね、日本心臓医学会」 副会長が閉会の挨拶をしているのを聞き流して、ひそひそ話を交わそうと目論んだ。いつぞやリッツカールトン大阪の中華レストランでなし崩し的に決まった理事職は祐樹が囁きかけている最愛の人は条件を満たしているが香川外
同性から狙われたら最悪なのは祐樹も充分理解していた。若干華奢な身体とはいえ職業柄力も有る人だけれども男性に押し倒されるとか薬物を盛られるとかで抵抗不能になる事態もあり得る。病院ではそんな無体なコトを仕出かす大バカ者はいないだろう。教授職という大学病院の
最愛の人に向けたスピーチを今一度脳裏で再生していると、ドアが両方とも開かれた。そのホテルマンだかは肘を折ってコナーズ教授と祐樹をパーティ会場と思しき場所に誘(いざな)ってくれている。先に挨拶をするのはコナーズ教授なので後ろに続いた。 煌々と光り輝くレセプ
森技官の助太刀をするのも、国際公開手術の妬み混じりの質問に答えてくれた彼の恩は返さなければならないからだ。さほど酷く意地悪な質問が飛んで来なかったが、それは結果論に過ぎない。「レセプション会場では私などよりももっとお詳しい香川教授もいらっしゃいますし、
約九千万円をタンスの肥やしか書斎の机の中の抽斗(ひきだし)もしくは金庫の中くらいしか祐樹には推測出来ないが、何処(どこ)にせよ祐樹的には目の飛び出るような大金を忘れて放置しておくなんて信じられない。そもそも医局の同僚ではあるけれども家に行くほど親しくはない
お何故こんなにもコナーズ先生が皇室の正装に興味を持つのか全く分からない。祐樹が見た映画で植民地でのイギリス人の振る舞いはどこに行っても現地人のことを同じ人間と思っていないという権高(けんだか)さと横柄さだった。 アガサ・クリスティーのエジプトを舞台にした
一人腑に落ちた感じのコナーズ先生は話を続けている。「その尊敬する上司がベルリンのレセプション会場でそう言ってくれたから田中先生もいつか来るべき国際公開手術のために英会話もマスターしようと考えたのかね?」 コナーズ先生は興味津々といった感じだった。「全く
海外の銀行の場合通帳がないことも多いと最愛の人に聞いていた。 即座に既読が付いたかと思うと、世界一有名なネズミのキャラクターが飛び跳ねて喜んでいるスタンプが送られてきた。医師同士では文字だけでやり取りするのが不文律になっている。それがスタンプを送って来
頭を下げてもコナーズ先生がその価値を見出していなかった場合は徒労に終わる。けれども話の流れでそうはならない気がしていた。 海外の学会に講師として招待されるレベルに達しているのは救急救命室の北教授しか今の大学病院に存在しない。救急救命室の采配をしなければ
何だっただろう?危機(リスク)回避(ヘッジ)というからには資産運用関係だろうと思うのだけれども……。きっと脳が一時的に忘れてしまっているだけなので、この際、今日あったことを話していけば思い出すだろう。「そういえばウチの医局の三好看護師がNISAについて詳し
副会長のコナーズ先生に身元保証を頼んだのは最愛の人自身の判断だろうが、それなりに親しかったのだろう。 と言っても、祐樹は世界レベルの医師の世界をほとんど知らない。この国際公開手術に成功するまでは一介の大学病院勤務の医師だ。 最愛の人はアメリカ時代にその
「タワーマンションが好きな人を否定する積りはなかったのだけれども……。 私の場合、祐樹と明石海峡大橋が眼前に見えるホテルに泊まったりこのホテルのクラブラウンジや部屋から大阪城を見下ろしたりするのは好きだ……。ただ、そういう特別で格別な景色は特別な日だけで
コナーズ先生は暗い顔をしている。やはり含むところがあるのかも知れない。「田中先生ここだけの話なのだけれどもね……」 深刻そうな表情で祐樹を仮設っぽい応接室スペースに誘った。 ステッキを見て英国貴族のようだと思っていたが、コナーズ先生は途中の机に置いてあ
祐樹が内心を「ある意味」偽って、いや優しい嘘かもしれない表情を、煌めく眼差しで見つめている最愛の人は見透かせなかったようで安心した。 容姿端麗、しかも祐樹好みの大輪の花のような風情だ。そして祐樹の知る限り最高に頭脳明晰な人なのだけれども、想像力に欠ける
グリフォンさんやミズ・パラダイスだけでなくその場に居た皆が直立不動で立っているからには物凄く偉い人なのだろう。 そんなことを考えながら背筋を伸ばして立っていると何だか厳(いか)めしい顔に貴族的な感じの笑みを浮かべて祐樹を見ている。 この慌ただしく職員が動
「貴方の仰(おっしゃ)りたいことが分かりました。 海の近くというのはロマンティックで良いですし、レインボーブリッジも綺麗で……部屋からそういう眺めが見えるというのは何というか……、日本のお城だと天守閣みたいな特別な場所という印象です。 けれども、海が近いと
わざわざ最愛の人がイギリスにまで持って来てくれた祐樹にとって世界一美味しいコーヒー、きっとあのコーヒーを国際公開手術前に二人で飲んだからこそ祐樹は成功したのだろうとまで思ってしまう。 そして、最愛の人が桂離宮で教えてくれた茶道のようにお茶碗の良し悪しで
「それが……エレベーターの性能など色々あるのだけれども、相場は一基で一億円とも二億円とも言われている。 タワーマンションでも普通のマンションでも変わりはないのだけれども、25年から30年で耐用年数が切れてしまう。 その時に新しい物に替えるかどうかは建築の
「田中先生カッコ良いです!何だか撮影に向かう雑誌のモデルさんみたいです!」 呉先生も森技官との恒例の口喧嘩だか痴話ケンカの混じったものを休戦させて祐樹の方(ほう)へ軽やかに歩み寄ってしげしげと見ている。 そして祐樹最愛の人のスーツに包まれた肩を細い綺麗な人
最愛の人もバターに拘(こだわ)って選んでくれているが、多分このバターは空気に触れさせる時間が少ないのだろう。滋味豊かな芳醇な味だった。 パンは二個しか保温用の厚い布にくるまれて入っていない。そしてパンを食べすぎるとお腹がいっぱいになってしまい後の料理を味
胸中は薫風の8割くらいサッパリしたのだけれども、まだまだ森技官への怨念がカスミのように燻(くすぶ)っている。 もう昔のことだし、祐樹は過去のことは綺麗さっぱり忘れるようにしているのだが、最愛の人のこと絡みの件については別格だ。 というか最愛の人がそれこそ
「このお時間はお二人の貸し切りで御座います」 貸し切りでなくともテーブルとテーブルの間は充分な距離を取っているので恋人としての語らいには格好の場所なのに貸し切り状態とはとてもラッキーだ。 とはいえ、このレストランが閉店して貰っては困るので経営は大丈夫かと
今日届きました!教授大好き♡様しょうこ様ゆき様有難うございます!!薔薇のフィナンシェです!フィナンシェといってもスフレの優しい甘さがとても美味でした!こういう薔薇を再現したお菓子もあるのですね。和菓子なら割と目と口で二度楽しむ物はありますが、洋菓子は初め
夜間の高速道路も何だか独特の特別感がある。 それはともかく、思春期の頃に少数派の性的嗜好の持ち主だと自覚があったと聞いている彼は院長先生のバカ娘の「結婚して病院の跡継ぎになることと、これまで以上の自由で贅沢な生活を送らせて欲しい」という要望を呑んだ。
「ウチの医局は外国人の患者さんも多いです。ゆ……田中先生を」 森技官は物言いたそうにアルマーニがこよなく似合う肩を優雅に皮肉そうに竦めている。 最愛の人が「ゆ……田中先生」とつい口を滑らせたことに対する反応だろう。 祐樹が同じような間違いめいたことをすれ
「森技官と同じ大学だ。祐樹も知っている通り筆記試験しかないので。 その……彼女の場合あまりにも手先が不器用なので高校の先生から医学部への推薦は出来ないと言われたとか……。 推薦入学の場合は高校の校長先生が厳選した学生にお墨付きをつけて大学に送り込むという
「はい、一円です」 スーツのポケットから小銭と千円札はたくさん入っている財布を出して中を探った。 肝心な時に目当ての小銭がないという事態も危惧したが、幸いなことに発見出来た硬貨を出した。「しかし、このボールペンの相場は良く分かっていますので私が物凄く得を
「いつものイチゴのショートケーキほどではないのだけれども、これはこれでとても美味しい。 ベリー類だと思うのだけれども……。何だかクセになる味だな……」 彼が最も好む兵庫県の芦屋に本店のある洋菓子店は京都のデパートの食品売り場にも出店している。 ただ、本店
「『不動産投資の話』ですか……」 一読してから最愛の人を見た。遠藤先生に語ったことが骨子として読みやすく書かれていた。「内容は良いと思いますよ。 しかし、文書のタイトルは『悪質な営業マンの言いなりになって億単位のローンを背負うリスクを取りますか?』とかそ
「ああ、遠藤先生にとってとても重要なことだから……な。 最も良いのは一ドル170円になった時だろう。ただ、個人的な意見なので責任は持てないけれども?」 静謐な執務室にコーヒーの香ばしい薫りが揺蕩(たゆた)って定時を回った寛いだ時間に相応しい雰囲気だ。「ひゃ
「私たちは専門学校や短大稀に大学卒と様々ですけど、皆が看護師や助産師になっているので交友関係も知識も偏ってしまっています」 確かに看護学部に入ってしまえば友達は皆が看護師志望だ。 医学部もそうだったけれども他学部の友達を作るためには部活動をするしか方法は
ああそうだ……、きっと黒木准教授が案じていた医師のちっぽけなプライドが祐樹にも備わっているのだと身に沁みて思った。 そして博覧強記の最愛の人ですら知らないことは知らないとハッキリ言っている。 ここは強がったりせずに素直に言うべきだろう、最愛の人に倣って
「教授のお手を煩わすことになってしまいますが……。 営業マンの甘い言葉に乗せられてしまう病院関係者が一人でも減るように、そしてプライドの高さが災いして誰に相談して良いのか分からない人が救われるような積極的な情報発信を内田教授と共にお願いしたいと思います。
そういえばパーティの時間が遅れているのも手術(オペ)のリアルタイム動画を見た外科医が続々と集まって来ているからだと他人事(ひとごと)のように思いを馳せた。「そうですね、ただ挨拶を考えないといけないので、食べながら考えます」 ハムと胡瓜(きゅうり)だけが挟んで
「医師は高収入で社会的ステイタスも高いと言われていますよね。銀行の融資では『属性』も重要だと仄聞しています……」 医局内はガランとしていたが、黒木准教授は辺りを憚(はばか)る感じで話している。 この件(くだり)は聞いているかも知れない人間が皆医師なのでそれほ
「お待たせいたしました。他科の准教授からの電話が丁度掛かって来まして」 黒木准教授は香川外科の縁の下の力持ち的存在だが、他科の准教授からとても信頼されているらしいし、親身に相談にも乗ると聞いている。「いえいえ、わざわざご足労をお掛けして誠に申し訳ありませ
祐樹のスマホに声が入らないように配慮してくれたのか呉先生の素朴な疑問も森技官の回答もひそひそ声だった。『はい。セカンドフロアにいらして下されば直ぐにお分かりになると思います。 ご足労をお掛けしますが宜しくお願いします』 電話の向こうの喧噪とは裏腹に丁重
祐樹も本日の業務は全て終わっている。 後は黒木准教授を待つだけなので、オフィシャルな会話を医局で彼と通話していても誰も不自然に思わないだろう。 何せ「香川教授の懐刀」とか「香川外科の小姑(こじゅうと)」とか言われているし、「例の地震」やその後の共著や地震
「ご説明する前に教授に連絡しても宜しいでしょうか? 病院の看板教授、しかも手術(オペ)を一日二件も行うのに医局の総責任者としての教授職なのに定時で上がる稀有な教授として感心されていらっしゃいますよね? 勿論黒木准教授の強力なフォロー有ってのことだと医局中知
仲の良い喧嘩友達を果たして友人と言って良いのかに関しては熟慮を要すると思いつつ。『そうなのですか?では私からもそういう申し出が有ったことをお伝えします。本題に入りますが宜しいでしょうか?』 電話越しに数人の大声らしきものが聞こえてきた。きっと時間変更で
「タワマンですか……。流石は准教授ともなるとグレードがアップしますね」 きっと気になるお値段も比例して高くなっているのだろうなと思ったが。 遠藤先生はこれ見よがしといった感じで腕時計を見ている。「遠藤先生、黒木准教授に報告すべきことはありますか?」 助け
「丁度あと一時間後ですね」 呉先生のスミレの花のような笑みがこの国の貴族の私室を彷彿とさせる客室に彩りを添えている。「ああ!運営側からの電話ですので出ても構わないでしょうか?」 祐樹のスマホに万が一の場合にと登録した番号を表示した着信があった。 ダメだと
遠藤先生は納得したような表情で祐樹を見上げてくる。「そんなモノなのですね……。教授職ともなれば鹿威(ししおど)しがカポーンと鳴るような料亭が普通かと思っていました。 意外と庶民的なのですね」 ……祐樹はこの病院の医師としては庶民育ちだ、最愛の人もそうだけ
「どうぞ、荷解(にほど)きは済ませて有るので、そんなに見苦しいことはないかと思いますが」 祐樹がドアを開けてくれて、客室へと入った。祐樹も割と几帳面なタイプなので客室はキチンと整頓されていることは想定内だった。 けれども、本で読んだベルサイユ宮殿の「夫婦の
「田中先生、政府のインバウンド効果の底上げ策にナイスサポート有難う御座います。 スタンリー先生など錚々たるメンバーを先に呼んでおくことで『一見さんお断り』の『一力(いちりき)亭』の一見さんではなくなるという布石は見事なものだと思います。 ああいう格式の高い
「はい。小児科のハロウィンのイベントに駆り出されたのが切っ掛けでした。 その後『難しい話は抜きにしてアニメやマンガの話題だけ』という主旨の呑み会を行っていますね」 納得した感じで頷いている。「ああ、ハロウィンの催し物は『呪いが廻る戦い』の最強戦士が田中先
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「祐樹……、この二人だけの愛の空間……。本当にこの屋上が最も高いのだな……。祐樹の高校の屋上もこんな感じだったのか?」 キスの合間に紡がれた、艶やかな中にも無垢さを含んだ言葉が紡がれている。最愛の人の高校時代も教室から出ることもなく読書をしているか、定期
いつもご覧いただきありがとうございます。これまでブログの更新はパソコンで行っていたため、スマホでの表示について深く意識していませんでした。ところが先日、珍しくスマホから自分のブログを見てみたところ、うっかり広告をタップしてしまい、まったく興味のない外部
「あ!オレ、いや私までも真殿教授は、とても不本意そうな顔で、『なぜFacebookをしないのか』と言ってきたことがあります。まだ医局にいた頃です。大喧嘩をする前も一触即発といった感じが漂っていたのですが、それでも誘ってくるのですから、イエスマンばかりの医局員は皆F
「――先に答えを言ってしまったら、興が削がれるでしょう?」 最愛の人の薄紅色の唇を祐樹の唇で封印した。そしてサマーセーターを着ていても先ほどピーチフィズを零したせいで可憐に尖った胸を指先で弾いた。愛の交歓の前奏曲としてはちょうどいいだろう。このエレベータ
そういえば、最愛の人も祐樹も「心臓外科」の医師一覧に載っているが、同じような「理知的で誠実な、そして控え目な笑みを浮かべてください」と広報室の人に言われた記憶がある。だからきっと同じ指示が医師全員に行き渡っているのだろう。「私が特定不可能な以上、森技官
確かにその通りだろうなと思った。脳外科のアクアマリン姫こと岡田看護師と付き合ったことで、久米先生はゲームという二次元から普通の恋愛にシフトしていて、以前ほどのめり込んではいない。しかし、顔は清楚なのに胸が異様に大きい美少女のセーラー服を一枚一枚脱がして
「別に私はガンジーのような非暴力主義者ではない。祐樹が久米先生の頭を叩いているのを見た時、その行為を彼自身が喜んでいると判断したので、敢えて干渉しようとは思わなかった。医局員全員も、あれは『愛のあるイジり』だと理解していると柏木先生が言っていた」 柏木先
「ウチの病院のサイトに、精神科所属の医師の顔写真は載っていましたっけ?」 最愛の人が淡い笑みを浮かべて頷いている。誰が聞いているかも分からない職員用の食堂で呉先生を揶揄する医師二人は、たとえ親真殿派ではなくても呉「教授」に反対するはずだ。 二人で暮らして
うっかり布地越しとはいえ、胸の尖りを晒してしまった最愛の人のリアクションも非常に気になった。そういう情事に触れられると、普段の最愛の人は顔を紅色に染めて目を伏せていた。しかし今夜はそうではなかったので内心、意外だった。 祐樹と二人きりの時には、大輪の紅
特筆すべきは最愛の人の麗しい筆跡のみで、祐樹には縁のない名前の羅列に過ぎない。森技官が、あたかも国家機密のように大切に抱えていたその紙を、祐樹はテーブルに広げ、何の演出もなくスマホで撮影し、LINEで清水研修医に送信した。一応「極秘でお願いします」とだ
「また始まった」 呉先生がぼそりと漏らした。諦めと愛情が絶妙なバランスで同居した、乾いた呟きだった。しかし、それ以上何かを言うことなく、呉先生は無言で森技官に視線を向けていた。祐樹もつられて視線を向ける。 森技官が言う「備考欄」には、最愛の人の達筆が静か
最愛の人はどこか誇らしげなセピア色の口調とまなざしだった。杉田弁護士は極上の生クリームを心行くまで舐めたチェシャ猫のような表情だ。何しろ祐樹に「香川教授が今『グレイス』に来ていて、多数の男たちから奢られている」と知らせてくれたのは彼だった。「グレイス」
四個の洋菓子は既に食べてしまっている。呉先生は最愛の人よりも華奢な身体なのにどこに収まったのだろうか?まあ、洋菓子効果で呉先生の決意がさらに固まったなら祐樹としては喜ばしいのでスルーしよう。「――新しいかどうかまでは分からないですよ。ただ、その看護師が
最愛の人も男性器は見慣れているはずだ。といっても大学の講義の一環や医学部生の時にボランティアとして参加していた救急救命室での経験に限られていただろう。身体を重ねた相手は祐樹が二人目で祐樹のソレはともかく初めての相手のはそうまじまじと見ていないような気が
「教授教えて下さって有難うございます。あ!お前が軽躁の入り口に立っているかと思った。本気大道芸だったからな、あれはさ」 森技官は一瞬だけアルマーニがこよなく似合う肩を落とした。恋人の言葉は妙に効くらしい。祐樹に言われたなら、きっと三倍返しで皮肉を返してい
最愛の人の怜悧な声は相変わらず淡々としていて、まるで「地球は丸いのです」という自明すぎることを話しているようだった。その静謐な口調が胸の奥に染み入り、祐樹の心は、まるで水面に沈んでいく光の粒のように最愛の人の言葉に全て吸い込まれていく気がした。ただ、二
最愛の人は固まり、呉先生は呆れ果てたスミレの花といった感じで単に咲いている。祐樹は身体を動かすと笑いの発作が再発しそうで、身じろぎすら出来なかった。 精神的には一時間、実際には五分くらいだろうか?ナゾの空白の時間だけが、ただ過ぎていった。 最愛の人がし
ナツキは一瞬だけスマホに目を落とした。多分、両親の待つ家に帰ろうかと思ったのだろう。しかし、今の祐樹は「グレイス」の常連ではない。 今宵訪れたのは最愛の人とのデートの一環で、こんなに長居をするつもりもなかった。最愛の人も祐樹に誘われたから足を運んだだけ
祐樹が洗面所で顔を拭きながら深呼吸を一つ二つと行い、ようやく笑いの発作を収めてキッチンに戻った瞬間、祐樹は一瞬、時空が歪んだのかと思った。 テレビの中でしか見たことのないはずの――学生運動、アジ演説、安田講堂の熱狂。それなのにそこに居たのは、アルマーニ
彼が祐樹の肩から頭を上げたと同時に自転車のライトと思しき光が近づいて来た。この近くの住民だろう。最愛の人が軽やかに立ち上がって祐樹との距離を友達のパーソナルスペースに戻す。幾ら「多様性」が重視されていると謳われている現代でも男性二人が密着して座っていれ
「サトシ、久しぶりだな?日本に籠り切りで何をしていたのかと思っていたが、年上(・・)の指導をずっとしていたのかい?」 いかにも親しそうに肩を叩いているアメリカ人と思しき人に少しムッとした。アメリカ人のパーソナルスペースは日本よりも近いことは知っていたにも関
一気に買うよりも上策な方法というのは何だろうと疑問に思ったが最愛の人の薄紅色の唇が紡ぐ言葉に聞きほれてしまう。「株式は良さげな銘柄(めいがら)、つまり会社をおいおい選ぶとして……」 三好看護師の同僚兼友達が「銀行でNISA口座を開設してしまったら投資信託
「ウチの田中」と呼んでくれたのはとても嬉しいし何だか新鮮な感じだった。しかも所有権を主張されたような気がする。しかも「出来なくはない」とゴール医師に言っている。「大学病院長兼医学部長の斎藤に貴方の上司から正式な要請のメールか手紙を出して下さるようにお願
「特に不思議に思ったことはないですね。強いて言えば、刃(やいば)の色が初めて握った剣士によって変わるという点でしょうか?『呼吸』の適性が分かるという刀の色は、最終選別を突破して分かるモノですよね。例えば主人公は『水の呼吸』の修行をしていても『滅多に見ない』
「店舗を構えているとなると人件費の問題が出てくるだろう?窓口の女性や営業の人など一店舗で10人以上を配置しなくてはならない。それにオフィスビルの家賃とか光熱費その他諸経費を考えるとそれらを手数料で賄わなければならなくなる」 なるほどと思ってしまう。「最近
「そうなのか?それは少し興味があるな」 若干弾んだ声と艶やかな眼差しが夜の空気に煌めいている。ポケットからスマホを出して検索した。「この旅館ですね」 施設案内という部分をタップした。「本当だ……確かに似ているな」 彼は祐樹との距離を詰めて来てくれるのがと
「麻酔医自身がクローズアップされることだろうか。森さんが日本で面白い催し物を開催予定しているらしいな。田中先生もこうして皆に祝福されたら外科医をしていて良かったとしみじみと思うだろう?麻酔医だって同じだと思う。そういう意味で、日本の催し物で外科医が脇役、
「プラチナや金(ゴールド)は今高価らしいですよね。柏木先生の奥さんが千切れたネックレスとか片方だけになったピアスをリサイクルショップに持って行ったら驚きの価格で買い取ってくれたとホクホクしていましたよ」 柏木看護師は手術室のナースなので手術(オペ)後に雑談す
「仙台結界(コロニー)と言っても、一般人には黒い壁としか認識出来ない物だろう?行ってもいいけれども呪いが見えない私達には単なる道路だろう」 月明かりに照らされた最愛の人の顔は苦い笑みを浮かべている。この人がこういう表情を浮かべるのは珍しいので心の中のシャッ
最愛の人は手術(オペ)を一日二件こなしている上に医局の責任者としての事務仕事を完璧にこなしている。有能な秘書が居るのは確かだが、事務処理能力は祐樹が知る限り最も優れている。森技官の無茶振りで不本意ながら捜査だか調査を二人して頼まれた時に彼の文書作成能力に
「そうなのですか。それは何故ですか?そんなにモルガンスタンレー銀行にお金が有ったら心強いと思いますが?」 思わず背筋を伸ばして彼の複雑そうな表情をまじまじと見詰めた。恋人同士の甘い時間はホテルの客室で過ごすことにして、このバーでは病院関係者の資産運用の話
弁護士の必要性は皆無なような気がするのだけれどもどうもそう単純なモノでもなさそうな表情を最愛の人は浮かべている。「祐樹の場合だと……家で二人きりの時には何の問題も生じないだろうな。いや、嬉しそうな表情で出勤して医局で正直に言った場合は異なるかもしれない
最愛の人は滑らかな白い肌に睫毛の影が綺麗なコントラストを作っている。夜に咲き誇る薄紅色の薔薇のような笑みを浮かべながら祐樹の話を興味深そうに聞いてくれているのも愛おしさが募る。「高価なお酒が呑み放題というのに釣られてしまっていてモトを絶対に取ってやる!
「保険って契約するもので作るものではないと思っていました。ただ、今まで全く気付かなかったのですが、保険商品が山のようにありますから作っている人も居るのでしょうけれども、ね?」 話しを促してみた。「日本人の平均寿命が年々延びているだろう?厚労省や色々な研究
「流石は祐樹のお母さまらしい用心だな。それはともかく若者よりも高齢者の方(ほう)が現金を持っている確率は高い。しかも老後のことを考えてあまり出費はしない傾向にある。例外は子や孫で、それに対して援助しやすいようにと税額が変わるのだ」 すとんと腑に落ちた気がし
「え?どういうことだ……?高専を卒業して第一線で働くことが出来るかという祐樹の質問なのだろうか……」 隣に座った彼は明眸(めいぼう)皓歯(こうし)のお手本のような、瞠った目と和洋折衷菓子を白い歯で挟んで切っている。それはそれで目の保養になっているのだけれど怪
杉田弁護士という知り合いは居るが税理士の知己はいない。確定申告はさして難しいモノではないので専門家に頼まずに自分で確定申告をしている祐樹には税理士の知り合いはいない。 「太陽のたまご」というらしいマンゴーを銀のフォークを使って優雅な動作で魅惑的な微笑み
最愛の人は計ったように二等分、しかもナイフとか正式名称は祐樹も生憎知らないが和菓子の時に使う木の小さなナイフめいた物を使ったかのように切ってあった。スマホのライトに照らされて、皮部分と中央の生クリームと思しき物に挟まれた鮮やかな緑色の色は真珠の中に翡翠
「麻酔医の大切さは良く知っていました。アメリカ時代は当たり前の一手術に一人の麻酔医だったのですが、日本ではそうでないと聞いていたので……私は日本の大学病院に招聘された身の上です。ですから多少の我が儘が効いて専属の麻酔医を指名出来たのですが、あくまで少数派