chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
化学徒の備忘録 https://www.syero-chem.com/

化学に関することを記事にしています。大学レベルの内容が多いですが、高校や中学レベルの内容もあります。また化学であれば、無機化学、有機化学、生物化学、分析化学、物理化学、量子化学、電気化学など幅広い分野の内容の記事を書いています。

化学徒
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2019/06/05

arrow_drop_down
  • 【学振申請書】申請書に問われる攻撃力と防御力の話

    この記事の参考にしている内容は暗殺教室などの作者として知られている松井先生の漫画の攻撃力と防御力の記事です。SNSなどでも拡散されたため知っている人も多いと思います。 この記事を読んだときに、これは漫画だけではなく、学振などの申請書やジャーナルへの投稿論文にも当てはまる内容だと感じました。そこでこの記事では、申請書や投稿論文の攻撃力と防御力についての考えを示しています。また元の漫画の攻撃力と防御力の記事も大変参考になるので、一読することをオススメします。 結論は申請書もまずは防御力が大切という話なのですが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。 申請書の採択者側から見たメリットとデメリット い…

  • 【有機化学】カルボン酸の解離と共鳴構造・アルコールとの比較

    カルボン酸の解離と酸性 酢酸CH3COOHのようなカルボン酸RCOOHは、水溶液中では下に示すような化学平衡によって解離し、酸性を示す。 CH3COOH ⇄ CH3COO- + H+ 多くのカルボン酸は水に対する溶解度が小さいが、アルコールのような有機溶媒中でも、同じように解離することが知られている。 解離の程度を示す酸解離指数pKaは酢酸で4.86であるように、大きい値ではないが、エタノールなどのアルコールのpKaは17程度であり、アルコールに比べればかなり大きい値を示す。 このカルボン酸とアルコールを比較すると、酢酸の解離指数は12桁ほど小さく、酢酸の解離平衡はエタノールの解離平衡よりも、…

  • 【化学学生向け】実験ノートの書き方の原則とポイント

    実験ノートとは 実験ノートは、実際に行った実験の記録をするものである。そして、この実験ノートに記載された内容にもとづいて、実験レポートや論文を執筆する。また、実験ノートに記載された情報に基づいて同じ実験を行い再現性を確認する場合もある。 よって、実験ノートには実験操作や観察した内容について、必要な情報だけでなく、必要となる可能性のある情報をできるだけすべて記録することが好ましい。 当然、よい実験ノートとは、レポートや論文を書くために必要な情報がわかりやすく記録されているものである。大学での演習実験や大学の研究室の習慣などによって実験ノートの書き方のルールが存在する場合もあるが、基本的に共通の決…

  • 【錯体化学】錯体・中心金属・配位子・配位数と構造の解説

    遷移元素または遷移金属、は中性および陽イオン状態で不完全なd殻、またはf殻を有する金属元素である。これらの遷移元素はScからCuまでの3d元素、YからaGまでの4D元素、HfからAuまでの5d元素のdブロック元素がひとまとめになり、LaからLuまでのランタノイド元素、AcからLrまでのアクチノイド元素はfブロック元素に分類される。また、Sc、Yはdブロック元素だが性質はランタノイド元素に似ている。 この記事では特にdブロック遷移金属の錯体について取り扱う。 錯体とは ウェルナー錯体と非ウェルナー錯体 中心金属 配位子 錯体の配位数と構造 2配位錯体 3配位錯体 4配位錯体 5配位錯体 6配位錯…

  • 酸化数と酸化・還元・ラティマーダイアグラム(ラチマー図)

    酸化数 化合物、もしくはイオン中において、元素の電気陰性度の大小に応じて、電荷の偏りを極端にした場合の各構成原子の荷電を酸化数という。同じ原子の場合は電荷の偏りがないとみなせるため、酸化数は全体の荷電を原子数で割ったものとする。異なる原子から構成されている化合物やイオンの場合は、電気陰性度が相対的に大きい原子を陰イオンとし、それに対応する陽イオンの組み合わせとして考える。 例えば N2分子では窒素が0価 O2-2では酸素は-1価 NO2では窒素が+4価、酸素が-2価 NH3では水素が+1価、窒素が-3価 となる。 つまり、相手によって同じ原子でも酸化数が異なる。また、構成原子は酸化数で合わらす…

  • 【化学基礎】分子の結合と構造に関わる有効核電荷・イオン化エネルギー・電子親和力・電気陰性度

    化合物の結合や構造は、構成している原子の引き付けやすさや、電子間反発、価電子が占める分子軌道などの電子は関与する性質によって決定される。立体因子も電子間相互作用に含めることができるため、電子因子ということもできる。 有効核電荷 一般的に価電子よりも内側の電子殻にある内部電子によって核電荷が遮蔽を受ける。そのため、外部の電子が感じる原子核の正電荷は、電子番号と同じ整数電荷より小さくなる。この現象を遮蔽定数で表す。このとき、原子核の実質的電荷を有効核電荷といい、次の関係が成り立つ。 イオン化エネルギー 気相(g)の原子から1つの電子を取り除くために必要な最小エネルギーをイオン化エネルギーという。単…

  • 酸化銅(II)触媒を用いた二酸化炭素(CO2)の電気化学的還元の論文紹介

    酸化銅(II)触媒を用いた二酸化炭素(CO2)の電気化学的還元 二酸化炭素の銅系触媒による電気化学的還元反応 触媒の調製方法 触媒の分析について H型セルを用いた触媒の活性 in situ TEM観察による反応中に触媒の状態の分析 オペランドXASによるCuOの電子状態の分析 反応サイクルと生成物の収率・オンセットポテンシャルについて あとがき 今回紹介した論文について 酸化銅(II)触媒を用いた二酸化炭素(CO2)の電気化学的還元 二酸化炭素の還元反応(carbon dioxide reduction reaction, CO2RR)の中でも二酸化炭素(CO2)の電気化学的還元は近年盛んに研…

  • 【物理化学】蒸気圧降下とラウールの法則・浸透圧とファントホッフの法則

    蒸気圧降下とラウールの法則 溶媒に不揮発性の溶質を溶かすと、溶媒の蒸気圧が降下し、その降下率が溶質のモル分率に等しくなる現象をラウールの法則という。 純溶媒および溶液の蒸気圧をそれぞれ、、とし、溶質のモル分率をとする。は溶質の分子数÷溶質の分子数と溶媒分子の総数である。このとき以下の関係が成り立つ。 この現象を利用することによって、蒸気圧降下の測定から溶質の分子数を求めることができる。 浸透圧とファントホッフの法則 溶媒分子を通すが、大きな溶質分子を通さない半透膜を使って、溶液と純溶媒を仕切る場合を考える。このとき、純溶媒の溶媒分子はその膜を通って溶液中に浸透していく。溶媒と溶質分子は互いに衝…

  • 【物理化学】相と分留・蒸留の仕組みについて解説

    相 明確な境界によって、他と区別される物質系の均一な部分を相(phase)という。相が気体、液体、固体の状態であるのに対応して、それぞれ、気相、液相、固相と呼ぶ。 純物質の相を純相、2つ以上の成分を含む混合物の相を溶相という。 ただ1つの相からなるものを均一系もしくは単相系といい、2つ以上の相からなるものを不均一系、または多相系という。身近なものとしては、フレンチドレッシングは水相と油相にわかれるため2相系液体である。 分留・蒸留 沸点の異なる2種類以上の液体の混合物を加熱し、沸点の低いものから順に気化させて分離する操作を分留、または蒸留という。 ただし、混合している2種類の組み合わせによって…

  • 【物理化学】凝固点降下と沸点上昇の原理をわかりやすく解説

    凝固点降下 溶質が溶媒に溶けて、溶液の凝固点が降下する現象を凝固点降下という。希薄な溶液の凝固点降下度(K)は溶媒固有のモル凝固点降下定数(K/質量モル濃度)と質量モル濃度(mol/溶媒1 kg)の積である。 上の関係を式にすると下のようになる。 溶媒1 kg中(溶媒分子数に比例し、分子量に逆比例する数値)に質量1 mol(6.0×1023個の溶質)を含む溶液の凝固点降下度がモル凝固点降下定数である。 未知分子の分子量を凝固点降下度から求める方法を凝固点降下法、または氷点法という。ある溶質の溶液の凝固点降下度がの場合、その溶液の分子量はとして求めることができる。ここで[tex: gは溶媒1 k…

  • 炭素のβ崩壊と放射性炭素年代測定

    炭素のβ崩壊と放射線炭素年代測定 14Cは放射性の不安定元素である。そして、14Cはβ線(電子線を放出して14N(が14N++ 電子)になる。この原子核の変化は1次反応として解析することができる。半減期は5730年である。 大気中の二酸化炭素の同位体14CO2は地球に存在する他の不安定な元素から常に生成される。そのため、14CO2の濃度はほぼ一定となっている。 一方で生きている植物は、常に大気中から二酸化炭素を取り込み、大気と同じ割合で14Cを含むグルコースを生成する。しかし植物が枯れると、植物の14Cの割合は、半減期に対応して徐々に低下していく。そこで植物の化石の14Cの割合を調べることで、…

  • 【電気化学基礎】標準水素電極と標準還元電位

    標準水素電極 25℃において、電池内のすべての物質が105Paで活量が1、電流が流れていない状態を標準状態という。H+イオンが関与する反応では pH = 0 (近似的には1 mol の酸)の条件である。 電極の電位は標準電極を基準として、測定される。電極電位の基準として用いられる水素電極では、活量の強酸溶液中、1 atm(の水素ガスをゆっくり白金黒電極に接触させる。 電位は次の式で表すことができる。 このときの水素電極を標準水素電極(NHE)という。還元電位は通常NHEを基準として表すことが多い。しかしながら、水素電極は取り扱いが不便であるため、電気化学測定実験では、飽和甘汞(かんこう)電極(…

  • 熱力学の用語をシンプルに解説(エンタルピー・エントロピー・ギブズの自由エネルギー)

    エンタルピー エンタルピーは定圧下における系の熱含量を表す値である。エンタルピー変化が負である場合は発熱反応、正である場合は吸熱反応である。標準反応エンタルピーは標準状態(105 Pa, 298.15 K)において、反応物が生成物になるときの値である。 元素(単体)から化合物が生成する場合のエンタルピー変化を標準生成エンタルピーという。エンタルピーは状態量であるため、元素(単体)の標準生成エンタルピーを定義によって0として標準反応エンタルピーを下の式のように求めることができる。 エントロピー エントロピーも状態量の一つであり、一つの状態が他の状態から自発的に到達可能かどうかの判断として使える量…

  • 分子軌道論・結合性、反結合性軌道の解説と窒素、酸素の分子軌道例

    分子軌道論の結合性軌道や反結合性軌道の意味や考え方について解説しています。 さらに窒素や酸素の分子軌道を示しています。

  • 27Al MAS NMRの配位数とケミカルシフト

    27Al MAS NMR アルミニウムは地中殻中に最も多く存在する金属であり、そのため多くの化合物に含まれています。 このアルミニウムの局所構造の解析において強力な方法の一つが27Al NMRスペクトルの測定です。特に固体では、NMRはX線回折や電子線回折、赤外分光法と相補的であり、NMR Crystallographyという考えも提唱されています。 アルミニウム(Al)は磁気的に活性な元素で、27Alという同位体があります。この核種は天然存在比100%で総合相対感度おも大きいため、容易にNMRを測定することができます。しかし核スピンはl =5/2 と1/2よりも大きく四重極モーメントQ = …

  • イオン半径比と配位数の関係

    イオン半径比と配位数 一般的に1価のイオン性化合物MXの全クーロンポテンシャルエネルギーは次の式で表すことができる。 ここで、はアボガドロ定数、はマーデルング定数、{tex: R]はイオン間距離である。この式から考えると、A/R比が大きくなる構造が安定であることがわかる。MX化合物のマーデルング定数は配位数が大きくなるほど大きくなる。しかしMの半径が小さくなると、MとXが接触できなくなるため、配位数を下げてを小さくしたほうが有利となる。 イオン結晶において、半径の陰イオンが互いに接触し、かつ半径の陽イオンとも接触するためのとの比率は配位数によって異なる。 陽イオンを中心として、その周囲に陰イオ…

  • 格子エンタルピーとボルンハーバーサイクル

    格子エンタルピーとイオン結晶の構造安定性 定温、低圧におけるイオン結晶の構造安定性は、結晶構造が各イオンから形成される際のギブズの自由エネルギー変化の大きさに依存する。しかしながら、格子形成は非常に発熱的であり、エントロピー項は相対的に無視できる。そのため、エンタルピー変化の大きさでイオン結晶の構造安定性を議論することができる。 格子エンタルピーはイオン結晶が気相イオンに分解する反応の標準エンタルピー変化で次の式に関連して定義することができる。 ここでsは固体、gは気体、Lは格子を表す。 この格子エンタルピーはボルンハーバーサイクルを用いて各段階のエンタルピー変化の値から間接的に見積もることが…

  • 自主ゼミ(勉強会)の開催の仕方

    自主ゼミ(勉強会)の開催の仕方 自主ゼミや勉強会とは、ここでは大学の単位とは関係なく学生が学習したいことを学習することとします。 自主ゼミを始めたい場合は、「何をどう学びたいのか」をまず明確にしましょう。これを学びたいという問題意識がどこかにあるはずです。 また自主ゼミは2人よりも3人以上で行いましょう。少なくとも司会と発表者が分かれるように3人は必要だと考えたほうがいいでしょう。 自主ゼミや勉強会の開催場所は大学や図書館などの会議室を借りたり、最近ではオンラインでも行うことができます。 自主ゼミや勉強会の主体者は自分自身であり、一人一人の独習がないと、内容が深まることは起こりにくくなるでしょ…

  • 金属光沢が起こる理由(金属光沢とプラズマ振動)

    金属光沢とプラズマ振動 金属光沢は、金属に入射した光が金属内部を透過せずに、表面近傍から反射するために起こる現象です。金属結合している金属は光を内部に通すことはありません。一方で、イオン結合や共有結合している物質である金属酸化物や金属塩は光が透過します。 金属結合している金属には自由電子が存在しています。電子は電気的にはマイナスです。ここに光が入射すると光の電磁波によって金属表面近傍の自由電子は加速されて弾かれ移動します。移動した自由電子群はその後、もとの場所に戻ってきますが、慣性力で電子が振動し続けます。これをプラズマ振動といいます。 金属のプラズマ振動数は可視光よりも高い紫外線の周波数です…

  • アルミニウム(ジュラルミン)と時効析出

    アルミニウムと時効析出 アルミニウムに銅を4%程度固溶させて、溶体化処理をおこないその後、時効処理を行うと強度の高いアルミニウム合金が得られます。これはジュラルミンと呼ばれています。さらにマグネシウムを添加すると超ジュラルミン、超々ジュラルミンなどが得られます。 溶体化処理を行って均質な固溶体となっているAl-Cu合金を急冷して、過飽和な均質な固溶体を作ります。過飽和固溶体は、時間とともに変化が起きていきます。 まず銅原子はアルミニウム結晶格子の結晶面に集合します。この集合層はGP1と呼ばれています。さらに時効が進むと、銅原子の集合が規則的な配列をもったGP2という集団になります。さらに時効が…

  • 卒業研究の指導教員と付き合い方

    卒業研究では、研究室のなかでも、指導教員が決まっており、その指導教員から教育を受けながら、卒業研究を進めることが多くなります。この指導教員との付き合い方を簡単に紹介します。 指導教員を自分が決定できる場合には、研究内容や指導方法を直接聞いてみるほうがいいでしょう。この場合、メールなどで教員に研究室の訪問のお願いやアポイントメントを取りましょう。多くの教員は丁寧に対応してくれます。 一方で、指導教員と直接話しをすることが難しい場合は、指導教員や研究室の論文を読みましょう。その論文の投稿から公開までの頻度などからも研究室の様子を伺い知ることができます。 指導日は必ず行く 指導教員によっては、この日…

  • 合金の時効処理と析出と相変態

    合金の時効処理 時効処理は、溶体化処理を行った合金を、急冷して過飽和固溶体にし、常温保持の常温時効か、昇温加熱後定温保持する人工時効を行い、析出物を徐々に析出させる操作のことです。 溶体化させた合金の性質は時間が経つとともに変化します。この場合の析出物は安定しておらず、成長し続けるため、準安定相といいます。 急冷せずに徐冷を行うと、析出物は十分に成長し、これ以上性質が変化しなし安定相を得ることができます。 析出と相変態 溶体化処理をされて完全固溶したあと、急冷却されて過飽和状態になった組織は時間が経過するとともに時効析出が起こります。金属の時効とは、時間経過で性質が変化することを指します。具体…

  • 合金の寸法因子と価電子濃度

    寸法因子 合金の固溶は、固溶される金属Aの原子半径の大きさと溶け込む元素Bの原子半径との比が重要になります。この比を寸法因子といいます。この寸法因子はヒュームロザリーの経験則に基づく法則であり、原子容積効果ともいわれます。 鉄に対するさまざまな元素の合金化のしやすさを調べると、寸法因子が±15%以内のCr、Mn、Ni、Cu、Siならば、ほぼ完全に固溶します。 周期表でこれらの前後の金属であるPb、P、Sn、Ti、B、Cd、Mg、Sなどは寸法因子が大きく、多くの場合固溶が起こりません。 価電子濃度 価電子濃度は、合金を構成する金属の最外殻の価電子数に関する値で、価電子の総数を原子個数総数で割った…

  • 金属のすべり方向と結晶構造

    金属のすべり方向 金属は展性や延性といわれる変形がしやすい性質を持っています。 金属の結晶構造では、同一平面上に最も多くの原子が含まれる細密面が移動しやすいすべり方向と関係があります。 すべり方向とは、結晶構造で一番原子密度の大きい面を調べ、その面に沿って滑りが生じたときに、滑っていく方向のことです。 面心立方構造はすべり方向が12方向と最も多く、等方的変形がしやすい性質があります。常温で加工がしやすい金や銀、銅、ニッケル、鉛などは面心立方構造をもつ金属です。 反対にマグネシウムや亜鉛などの六方最密構造では、すべり方向が3と少ないため、異方性をもち、加工がしにくいという特徴をもっています。

  • 合金の作製方法の解説と共晶合金・包晶合金

    合金・固溶体 複数の金属元素を混ぜ合わせて、均質に溶かし込んだ状態の固体金属を合金、もしくは固溶体と呼びます。このとき、混ぜ合わせる金属の量を変化させて、合金の組成を0%から100%まで変化させることで、用途に応じた性質を発現させることができます。 合金を作製する一般的な方法は、まず液相になるまで温度を上げ、完全に溶け込んだ液体合金にします。そして温度を下げていくと、固液共存相になり、αやβなどの固体が晶出します。そして、さらに温度を下げていくと、液相が固体になり、一定組成の合金が作製できます。合金の組成や、冷却速度によって得られる合金の結晶構造などは異なります。 共晶合金・包晶合金 合金の組…

  • アレニウスの式の解説:速度定数と温度の関係式

    アレニウスの式 化学反応を考えたときに、素反応の速度定数と温度との関係式がアレニウスの式です。 アレニウスの式は速度定数をとしたとき、次のように表されます。 は絶対温度、は頻度因子、は反応の活性化自由エネルギーです。反応の温度範囲が狭い場合には、反応の頻度因子と活性化エネルギーは一定の値となります。 またこのアレニウスの式は拡散や粘性などの輸送現象にも適用することができます。 アレニウスの式のeの指数関数は、温度と活性化エネルギーがわかれば、原料が活性化状態になる確率が予測できるということを意味しています。 また指数関数部分はその温度での活性化エネルギーよりも大きなエネルギーを持っている物質の…

  • アナターゼ型酸化チタンのXAFSスペクトル(Ti K-edge)ピークについて

    まず、最初にX線と物質との相互作用について整理します。 X線を物質に照射したときのことを考えます。まずX線が正と負の電荷をもつ原子核と電子から構成されている原子に照射されると、X線は電磁波であるため、X線の電場によって電子の強制振動が起こります。この振動によって、X線がそのまま周囲に伝搬していく現象はX線弾性散乱もしくはトムソン散乱といわれます。 一方で、物質が結晶のように規則正しい原子配列をもっていると、各原子からの散乱X線が干渉し、その結果、回折現象が起こります。こうなると、特定の方向にX線が集中することになります。これを用いて、結晶の構造などを調べる測定方法がX線回折測定です。 次に、物…

  • 反応速度論:1次反応、2次反応、0次反応、複合反応とは

    反応速度論 物質変化の速さ、つまり反応速度を取り扱う分野を反応速度論という。反応速度は、原料や生成物の時間的な変化率の絶対値で示す。 一般的に、物質の濃度は[]かっこで表される。 基本として、1秒間(単位時間dt)に1モル濃度(mol/L)の原料が生成物に変化する場合には、その反応速度は という関係が成り立つ。 原料の濃度は減少するため、マイナス符号が付いている。時間とともに変化する濃度や反応時間についているdは変化量を表す。原料の濃度が半分になる時間を半減期と呼ぶ。この半減期は反応の速さのメカニズムとして利用されている。 反応速度は、活性化状態の反応物の量に比例する値である。反応物が活性化状…

  • 固体の酸化反応と表現方法

    鉄は酸化すると酸化鉄となります。この酸化は反応速度が大きくなるにつれて、錆びる、燃焼する、爆発すると表現が変わります。 また鉄の酸化反応の反応速度は鉄の表面積に比例します。そのため、スチールウールのような繊維状の鉄や鉄微粒子は、酸化反応は炎を上げて起こることがあります。 このように固体では反応が起こる界面もまた、非常に重要になります。

  • 論文を読むときのクリティカルリーディングのすすめ

    クリティカルリーディングを知っていますか? まず、クリティカルリーディングというものを紹介します。 クリティカルとは「批判的」と訳されます。日本語で批判的というと重箱の隅をつつくような質問や難癖を思い浮かべてしまうかもしれませんが、語源をたどるとクリティカルは既存の価値にとらわれないという意味があります。 つまりクリティカルリーディングは当たり前だと思っている考えを頭の片隅において、本や論文を批評するということです。そのため、趣味で行う読書の読み方は異なった読み方になるはずです。 大学生であれば、レポートや試験、卒業論文、ゼミの抄読会などでクリティカルリーディングのスキルが必要になります。 ク…

  • 検量線の3種類:絶対検量線法、内標準法、標準添加法

    検量線の種類 機器分析定量値を求める場合には、検量線(calibration curve)を作成する方法が一般的である。 この検量線の作成方法には、絶対検量線法、内標準法、標準添加法の3つが存在する。 絶対検量線法 目的成分の標準物質から、段階的な濃度の溶液を作成する。具体的には 1 ppm, 10 ppm 100 ppmなどの溶液を作成する。これらは最低でも3種類以上作成する。 これらの溶液とシヤウブランク溶液を処理して得られるシグナル強度を縦軸に。標準溶液の濃度を横軸にとり、ブランクのシグナルが0を通るような検量線を作成する。 検量線は原点を通る直線であることが理想的である。また直線の相関…

  • 【実験の基本道具】電子天秤

    電子天秤 測定を行う試料の質量の測定は。天秤によって行われてきました。天秤は原理的にシンプルであるが、高精度の測定を行うことができる器具であり、全世界で用いられています。 以前は化学天秤という形の天秤が用いられており。天秤の両方の皿に乗せた質量が釣り合った点から測定していた。このように化学天秤は重力を利用することで基準分銅との竿のつり合いから測定していた。 一方で、近年よく用いられている電子天秤は電磁式とよばれる方法が主流であり。竿を釣り合わせるために必要な電流を測定することで測定している。

  • 濃度の表し方分類まとめ:分率・モル濃度・質量モル濃度

    濃度の表記方法 化学反応を取り扱ううえで、濃度は非常に重要な要素となります。この濃度の表記方法は 1. 分率 2. モル濃度 3. 質量モル濃度 の3つの大きく分けられます。 分率 分率は全体中の目的物質の割合を表す量です。溶液の場合には、溶質+溶媒中の溶質の割合を意味することになります。分率には、質量分率、。体積分率、モル分率があります。 それぞれ、下のように定義されます。 この式でm1は目的物質の質量(溶質の質量)、v1は目的物質の体積、n1は目的物質のモル数を表しています。この式でm2は主成分の質量(溶媒の質量)、v2は主要物質の体積、n2主要物質のモル数を表しています。 この分率をわか…

  • 化学シフトと低磁場側、高磁場側の方向

    化学シフト(ケミカルシフト) 核磁気共鳴スペクトルを測定すると、その核種に対応したスペクトルが得られます。このとき、ピーク位置は原子の種類によって、一定であるはずですが、その原子への結合など原子の置かれた化学的環境において、ピークがシフトします。この現象を化学シフト (ケミカルシフト)といいます。この化学シフトは原子の電子状態を反映するため、化学結合の性質や構造を調べる際に測定されます。 電子によって生じる局所磁場は外部磁場とは逆向きになります。そのため、核が受ける有効磁場は逆向きの磁場の分だけ小さくなります。これを外部磁場から遮蔽されているという場合もあります。電子密度が高いほど、遮蔽効果は…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、化学徒さんをフォローしませんか?

ハンドル名
化学徒さん
ブログタイトル
化学徒の備忘録
フォロー
化学徒の備忘録

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用