前評判が良かったこともあり、『この夏の星を見る』を観た。確かに良かった。もっとも、群像劇としての交通整理は十分とは言えず、途中は中弛みを感じた。その意味で、脚本はもっと上手く出来たはずである。ただ、その不満点を補うだけの魅力も感じた。特に、コロナ禍における「孤立」に対する反作用を、天体というはるか彼方の存在を観測することで描いた点が素晴らしかった。今回はこの点について書いていきたい。 本作では、コロナパンデミックの影響で、人々は互いに”リアル”な交流が叶わない状況にある。特に中高生にとっては、そのような「孤立」は受け入れ難く、茨城、東京、長崎という物理的にも隔離された地域に住む若者たちのフラス…