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「…ユノさん?」「ん?喉乾いただろ、水飲む?」僕は携帯を握りしめたままユノさんを見つめた。名前を呼ばれた彼は落ち着いた様子でにこりと笑って、一旦部屋を出たあとコップに水を持って戻ってきた。渡された鮮やかなブルーのコップ。着ているTシャツも似たような色をしていたから、ユノさんは青が好きなのかなあなんて、なんとなく思った。「あ、ありがとうございます。あの、僕なんでユノさんの家に…?」冷たい水をゆっくりと...
…ああ、行ってしまった。自室に戻ればすぐ後に扉が閉まる音がして、チョンさんも部屋に戻ったのだと分かった。ー今日のお前おかしいぞ。チョンさんにそう言われた。自覚は大いにある。けれど、苦手なものはどうやっても苦手なのだからしょうがないじゃないか。もともとは来客用に使われていたという僕の部屋。ドレッサーの鏡やカーテンの隙間、ベッドの下…。しん、と静まり返った部屋に僕の心は落ち着かなくなる。事の発端は今日の...
話数振りましたが番外編のようなものです。もう少し早めに更新したかった…!↓ ↓ ↓ー夏は好きだけど、夏の終わりは嫌いだ。いつだったかあいつがそう言っていたのはつまり、そういうこと?ー落ち着いている。とは決して言えないこいつだけれど、今日は特に様子がおかしい。俺が帰ってくれば「おかえりなさい」となぜかひどく安心した様子のあいつが出迎えて、すでにご飯は準備されていた。ここまでは、まあいつも通り。ーお味噌汁と...
「ユノ、何か機嫌悪くない?」「そう?」隣に座る同僚から肩を叩かれたから、首を傾げてにこりと笑顔を返す。…いや、本当はめちゃくちゃ機嫌が悪い、だからできればそっとしておいて欲しいんだけど。心の中でそっと舌打ちをした。考えるのは昼にケンカ…と言うのか分からないけれど、ちょっとした言い合いになってそのままになってしまったチャンミンのこと。俺と一度も目を合わさずに階段を降りて行ったチャンミンの後ろ姿を思い出...
★2万拍手御礼★リクエストでいただきました、ssです。お待たせ致しました…!可愛いケンカにしたかったのにガチのケンカになりました(;ω;)宜しければどうぞ!↓ ↓ ↓「…また飲みですか?」自分でも驚くほど低い声が出て、しまった、と僕は思った。屋上へと続く階段の踊り場。この時間はみんな社食に行くか外に出てしまっていて、こんな所に来る人なんて誰もいない。周りと遮断された静かな空間に、ユノがあからさまに大きく吐いた溜...
「いっ…!」寝返りを打った瞬間、頭の痛みで目が覚めた。「うう、さいあく…」そうだ、昨日キュヒョンたちと飲みに行って、ミノと話が盛り上がって飲み過ぎちゃったんだ。…でもどうやって帰って来たんだっけ?お店を出た記憶がない。キュヒョンと話した記憶も。こうして部屋にいるならどうにかして帰って来たのだろうけど。ー変なことしてなきゃいいな。僕とは見た目も性格もまったく違う人たち。もう会うことはないだろうけど、だ...
入店してユノさんがスタッフに声を掛ければ、すぐに個室に案内された。ブラウンを基調とした広い室内で、長いテーブルが2つと、それを囲むようにソファが配置してある。向かって一番奥の方に、女の子たちが3人並んで座っていた。人を見た目で判断するのは良くないけれど、さすがユノさんが集めたという女の子たち。派手で、見るからに僕とは無縁のタイプばかりだ。ユノさんの登場に女の子たちは色めき立って、みんな猫なで声で遅...
「シム、ちょっといいか?」「はい」休憩から戻って来た僕を、先輩が手招きした。「朝成形してもらったパンなんだけど」「あ…もしかして」「そう…形がちょっといびつになっちゃったのがあって。これとか」ひょい、と天板に並んだ焼きあがったばかりのパンを先輩が手に取る。食事と一緒に出す用の、小さめのバターロール。巻いたところが割れて、焼き色のついていない白い部分ができてしまっている。「すみません…」「少しキツく巻...
キュヒョンに連れられてやってきたところは、有名な居酒屋の系列店だった。まあまあ安く飲めて大学生のお財布に優しいから、店舗は違うけれど僕も何回か行ったことがある。…変に洒落たお店とかじゃなくて安心した。お酒飲むのは好きだし、奢ってもらえるなら…。そう思いながらも、僕は合コンになんて行ったことがないからどんな雰囲気なのかも分からないし、いくらキュヒョンがいるからと言っても知らない人ばかりの空間に行くんだ...
突発的ssチャンミン年上設定ニュアンスでお楽しみください「チョンさん、ここの計算間違えてます」爪の先まできちんと整えられた細長い指が書類を指差して、散らかった俺のデスクの上をトントンと叩いた。「…ああ、すみません。直しておきますね、シムさん」見上げてにこりと笑えば、隣に立つその男…俺の恋人であるチャンミンが眉をひそめた。「最近多いですよ。しっかりしていただかないと困ります」「はは、気を付けます」そう口...
キュヒョンが失恋をした。いつも電車で一緒だった、近くの大学に通っているらしい女の子。僕は路線が違うからその子を見たことがないけれど、毎日キュヒョンからいかにその子が可愛いかをウンザリするほど聞かされていた。友達と話すときの笑顔が可愛いだとか、いつもさらさらのストレートヘアなのにたまに髪の毛がハネているのが可愛いだとか、うんたらかんたら。「電車でもたまにチラチラこっち見てるし、俺のこと好きなのかなっ...
Side Cーやっぱり2人きりが良かったかな。改札の方を向いてテミンさんが来るのを待っているユノさんの横顔を見ながら、ぼんやりとそんなことを思う。ユノさんと食事に行くことになって、楽しみだけれど少し不安もあった。外でこうして会うのも初めてだし、何を話せばいいのか分からない。「友達」になったものの、僕たちはまだお互いのことを全然知らないのだ。加えて僕は仕事以外では人と話すのがあまり得意ではないし…。それで...
★2万拍手御礼★大変お待たせ致しました!リクエストでいただいた、72時間の保育士ユノとシェフチャンミンのお話です。※チャンミンに兄がいる設定です。他のリクエストも出来上がり次第載せていきます。もう少々お待ちください!楽しんでいただければ幸いです。↓ ↓ ↓「…え、義姉さんが?大丈夫なの?」出勤前。コックコートを着てエプロンを巻いている最中に実家から着信があった。一人暮らしをしている僕には、母からたまに家で作っ...
「チャンミン、好きな食べ物は?食べれない物とかある?」隣、というよりかは控えめに俺の一歩後ろを歩くチャンミンに聞いてみる。まさか本当にチャンミンとご飯を食べに行けるなんて思っていなかったから、無意識ににやけたりしていないか心配になる。しっかりしないと…。「何でも食べれますけど…強いて言うならラーメンが好きです」「へえ、意外だね。ラーメン屋ならどこがいいかな…駅のすぐ隣のとこ、行ったことある?」「あり...
社会人になって仕事も忙しくなれば、自然と高校や大学の時の友達と連絡を取る機会は減ってくる。代わりに仕事終わりに職場の人たちと食事や飲みに行ったりすることが増えて…けれどそれはあくまでも仕事をする上での仲間であって、プライベートでの友達とはまた違う。そう考えれば、新しい友達だなんて社会人になってからはできていない気がする。「…友達、かあ」先日ユノさんから、友達になってくれないかと言われた。あの時はその...
ー宜しくお願いします。簡素な文章と、何かのキャラクターだろうか、バンビがぺこりと頭を下げているスタンプ。目がぱっちりしているそのバンビが、なんだかチャンミンに似ていて可愛いな、なんて。そのメッセージを受信してから、もうかれこれ一週間が経とうとしている。チャンミンと友達になったあの日に、お互いに交換したトークアプリのID。家に帰ってすぐに「今日はごめん。改めて宜しく」と送れば数分後に帰って来た返事。…...
Side C僕は昔から自分の思っていることを口にするのが苦手だ。素直になるのが恥ずかしくて、いつだって口から出るのは思っていることと反対の言葉ばかりで。「言い方がキツい」とか「何を考えてるのか分からない」なんて言われることもたまにある。それでも「ごめん」のたった一言が言えなくて、一人で落ち込んだり。ー思っていることを教えて。ユノさんは僕にそう言った。そんなこと今まで誰かに言われたことなんてなくて…。だか...
Side Cユノさんはお客様だけど、結局僕らは他人で…。友人でもなければ、勿論恋人でもない。だから何かあったって自分には関係ないって、気にしなければいいだけ。そう言い聞かせているのに、この胸のモヤモヤは一体何なのだろう。いつもと変わらない様子でお店に来たユノさん。昨日のことは気にしていないのだろうか。それはそれで都合が良いけれど、少しくらい気に掛けてくれたっていいんじゃないかとも思う。最近の僕は矛盾した...
「さすがに買いすぎちゃったかな…」お米が少なくなってきたからもうそろそろ買わなきゃと思って、掃除を終わらせた後スーパーにやって来た僕。目的はお米だけだったのにお肉がだいぶ安くなっていたから、冷凍で保存しておけばいいやと思ってついつい買いこんでしまった。それと野菜も旬の物が揃っていたから、使い勝手が良さそうなものをいくつか。気が付けば大きな袋二つ分の荷物になってしまって、もう少し買う量を減らせばよか...
コンビニまで戻ってきたものの、もう一度店内に入るのもなんだか気が引けて…。とりあえず、外に置いてあるベンチに座ってチャンミンを待つことにした。雑誌コーナーの目の前に設置されているベンチ。振り向けばガラスを隔てた棚の向こう側にレジが見えた。帰宅ラッシュの時間帯でスタッフが慌ただしく動いているようだけど、チャンミンの姿は確認できない。この時間に出勤しているということは仕事が終わるのは昨日と一緒くらいだ...
チャンミンに早く会いたい。様子が気になって、仕事中もチャンミンのことばかり考えてしまう。昨日のあの態度が、本当に俺とテミンを気遣ってのものならいいのだけれど。俺がチャンミンの行動に過敏になっているだけなのだろうか。気のせいだって、そう思えたらいいのに。せっかく会えたのに目も合わなくて、チャンミンに避けられたみたいでショックだったんだ。以前より俺に対して砕けた話し方をするようになってきて、やっと距離...
Side Cユノさんが来ない。入店音が聞こえるたびに入り口を気にしたって、入ってくるのは違う人。何度も時計だって見てみるけれど、ユノさんがいつも来ている時間はもうとっくに過ぎている。ユノさんがこのコンビニに来るようになってから一ヶ月くらいが経つけれど、こんなこと初めてで。仕事が忙しいとか、体調を崩しているとか…。色々理由を考えては見るけれど、結局ユノさんと僕はただのお客様と店員という関係なわけで、連絡先...
「休みの日にすみませんでした」「いや、いいよ。テミンも休みだったのにごめんな」申し訳なさそうに頭を下げるテミンに、何か食べに行くか?と聞けば勢いよく顔を上げる。その瞳は少年のように輝いていて、本当にこいつは素直だな、と俺は苦笑いをした。「駅前のとんかつ屋さんがいいです!」「よし、じゃあ行こう」やったあ、とはしゃぐテミンを横目に見る。時刻は22時を少し過ぎたところ。今日は仕事が休みだったから、買い物に...
さっきまであんなに怖かったはずなのに、やっぱり誰かがいてくれるというだけでだいぶ安心する。ーチャンミンの邪魔はしないから。そう言ったユノさんは、本当に僕の邪魔をするつもりはないらしい。一言も喋らず、椅子に座ってからずっとパソコンと睨めっこをしている。だから僕も集中して自分の仕事ができたのだけれど、てっきりなんかこう、もっと話しかけてきたりするのかと思っていた。僕に気があるなら、もっと僕のこと知りた...
今まで仕事をしていて寝不足になったり…なんてことはざらにあったけれど、こんなに幸せな気分の寝不足は初めてだ。「ニヤニヤしないでください、気持ち悪いですよ」出勤してから、秘書のテミンから何回も言われている言葉。でも俺は今最高に気分が良いから、そんなことを言われて蔑むような視線を送られたって傷付いたりなんかしない。「そんなに嬉しいんですか?それ食べれるの」「うん」変わらず表情を緩めたままの俺に、テミン...
Side C「何してんだろ…」イートインスペースの椅子を下ろしながら、ため息を吐く。つい先程、すぐに戻ると行ってコンビニを出て行ったユノさん。雷に対する恐怖心で動けなくなった僕が落ち着くまで側にいてくれた。ーどうせ内心馬鹿にしてるんだろ。いい歳した男が雷が怖いだなんて。あやすように背中を叩かれたから、ユノさんは僕のことを子供扱いしているのだと思った。そのことにちょっとムカっとしたけれど、手のひらから伝わ...
Side C『シム、悪いんだけど今日22時からでもいい?』僕の勤務先であるコンビニの店長ことシウォニヒョンからの電話。え?と聞き返せば、いつも深夜のシフトに入ってくれているテヨンが体調を崩して今日は休みたいとのこと。深夜は基本的に一人でお店に立つから、どうしても代わりに入ってくれる人が必要になってしまう。「別にいいけど…」そう答えれば、助かるよ、とシウォニヒョンがほっとしたように息を吐いた。深夜に欠員が出...
「チャ、チャンミン?」突然の出来事に思わず声が上擦ってしまったけれど、チャンミンからは何の反応もない。体育座りのように座り直した俺の足の間に、すっぽり収まっているチャンミン。こんなに近い距離で、いくらシャツ越しだと言えども肌が触れ合うのも勿論初めてで。俺の頰を掠めるチャンミンの髪からふわっと甘い匂いがして、それだけでくらくらしそう。「…チャンミン」けれどもその身体が小さく震えていることに気が付いて...
室内にいても聞こえる地面を打ち付ける激しい雨音。今朝見た天気予報では、夜から朝にかけての雷雨に注意しろと言っていた。雨音を聞く限りどうやら今がピークの時間帯らしい。幸い雨が降り始める頃にはすでに家に居たし、ご飯も食べ終わりあとはベッドに入って寝るだけだった。きっと起きる頃には雨も上がっているはず。唯一チャンミンに会えなかったことが今日の心残りだけれど、こんなに酷い雨ならむしろ出勤していなくて良かっ...
チャンミンに名前で呼んで欲しい。その思いは日に日に募るものの、どうしたらいいのか分からないまま数日が過ぎた。まさか自分から急に名乗るわけにもいかないし。この間のチフンとかいう男はどうやってチャンミンに名前を覚えてもらったのだろう。やはり地道に話し掛けて仲良くなるしかないのだろうか。俺とチャンミンは顔を合わせれば挨拶をするけれど、あとは一言二言交わすだけで、お世辞にも仲が良いというような関係ではない...
俺の天使こと、チャンミンがいるコンビニに通うようになってから早くも一週間が経った。昨日チャンミンは休みだったようで、店内をぐるりと見て回ったけれど残念なことにその姿は確認できなかった。そりゃあチャンミンにだって休みはあるに決まっている。分かってはいるけれど、たったの1日会えなかっただけでどうしてこんなに辛くなるのだろうか。チャンミンに会えることだけを楽しみにして仕事を終わらせてきたのに、楽しみがな...
今日の俺の大事なミッション。それは、彼の名前を知ること。いくら彼が天使だからって本当にそう呼ぶわけにもいかないし、というか名前で呼び合える仲になるかどうかは別問題なんだけれど。テレビを観ていて、なんかいいな、と思った人がいたら検索をするように、俺だって彼の名前を知りたいのだ。かと言って彼も俺も大人だし、職場だって違う。つまりは全くの赤の他人。学生時代だったら「名前教えて」といえば済む話なのだけれど...
俺の名前はチョン・ユンホ。32歳。親の会社を継いで社長をやっている。毎日なかなか忙しくて、趣味を作る暇もない。仕事は好きだけれど、これと言った楽しみもないような、そんな生活を送っていた。そんな俺にもどうやら転機がきたようで…。「…ああ緊張する」車を降りて、コンビニの前で深呼吸をする。コンビニに入るくらいで緊張する奴なんて、きっと周りを探しても俺くらいしかいないんじゃないだろうか。昨日からずっと、このコ...
俺は自炊ができない。家で食べるご飯はもっぱらスーパーのお惣菜や弁当。仕事帰りににスーパーに寄って、夜ご飯と次の日の朝ご飯を買うのが俺の日課。毎日忙しいし、パパッと食べられるものならそれで充分。自炊をしたいとも思わないし、できるとも思ってない。だから俺と結婚する人は料理ができる人がいいな、なんて時々思ったりする。恋人、なんて呼べるような人はここ数年いないしこれから先もまだ作る予定はないから、考えたと...
My Sweet… 20のおまけ。「お前は家で待ってろ」ー顔、酷いことになってるから。そう言ってチョンさんが僕を置いて出掛けたのはつい20分程前のこと。酷い顔とは失礼な…。確かにその通りだから否定はできないけれど。自室の洗面台の前に立って、まじまじと自分の顔を見る。車の中でずっと泣いていたせいで瞼が重く腫れぼったい。家に着いてすぐに冷やしたタオルを当てていたから、これでも少しはマシになった方だ。「チョンさん大丈...
飲み物を買いに行くと言って車から降りたチョンさん。その背中が見えなくなったのを確認して、僕はシートの背もたれに深く身を預けて大きなため息を一つ吐いた。絶対に、気を遣わせてしまった。僕の様子が急におかしくなったことに、チョンさんはきっと気が付いているのだろう。だってそうじゃなきゃ、車に乗ってから飲み物を買いに行くなんて言うはずがない。「僕の馬鹿…」帰り際、エレベーターを待っている間に周りを見渡したら...
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