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誉の日記的物語 https://www.homarex-homare.com/

日記がてら書きたい事を好き勝手に書いています。 小説を書いており面白い小説がかけるようになりたいと、構成などはちゃめちゃですが書いてます。 読んで頂けると嬉しいです。どんな事でも意見貰えると助かります。

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2019/01/19

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  • 籠り物語

    神戸屋へと到着した卓は乾燥室へ板をしまい、ウェアの裾を捲って部屋へと上がった。 タカシはまだ戻っていなかった。 ウェアを脱ぎ仕事着に着替え一服し、仕事まで少し昼寝する事にした。 滑った後で疲れた身体に暖かい布団の組み合わせは、卓を眠りへと導くのに時間はかからなかった。 目一杯滑り、暖かい部屋へと戻り、昼寝をするこの瞬間も籠りの一つの楽しみと言える程にそれはとても心地よい時間だった。 卓は部屋が開く音で目を覚ました。タカシが帰って来た。 卓は起きて煙草に火をつけた。「卓帰ったの早かったんやな、どうやって帰ったん?」 タカシの言葉に先程の嫌な記憶が蘇る。「滑って帰ったら楽やろ思て滑って帰ってたら、…

  • 籠り物語

    駐車場からペンションへと向かう下りの道に差し掛かった。卓はそこで板を履いた。 除雪された道路はコンクリートを感じる程の雪面ではあったが、かろうじてソールに傷はつかない程度の雪はついていた。 歩いて帰るにはまぁまぁの距離だが、滑って帰ればどうという事は無かった。斜度はほとんど無い道路のためノロノロと滑っていたその時、村の除雪車が後ろから走ってくる音がした。 卓は端に寄って止まった。除雪車が卓の近くに来た時、クラクションが鳴る。明らかに攻撃的な怒りのこもったクラクションだ。 除雪車が卓の横に差し掛かった時、窓が開けられ「ここ道路やぞ!お前どこももんじゃ!どこのペンションのバイトや!」卓は叱られた犬…

  • 籠り物語

    リフト終点タカシは危なっかしい滑りだが転ぶ事なくクリアした。卓は先にビンディングをはめ、既にスタンバイできていた。 タカシのボーゲンの滑りに合わせ卓は並走する。転ぶ事は無いが、スキーをした事の無い卓から見てもドキドキする滑りだった。卓は退屈なので、その場でトリックをしながら遊ぶ様にタカシの速度に合わせて滑った。 リフト一本分付き合った卓は、リフト乗り場で「もうちょい俺軽く流すけどリフトとりあえずもう一本乗る?」するとタカシは「じゃあリフト一緒に乗ろう」「りょうかい、ほないこ」 リフトの上では案の定卓の滑りに対する話題が、タカシから繰り広げられていた。 「ほなちょっと行ってくるわ。気をつけて滑れ…

  • 籠り物語

    リフト乗り場の近くに立っていた卓の元に、ボーゲンで危なっかしい滑りのスキーヤーが近づいて来た。 「お前もしかして素人なん?」卓は籠りに来てるぐらいだから、そこそこ滑れるもんだとばかり思い込んでいた。「何回かやった事あるけど、そんなレベル」タカシは照れ笑いする。「よう籠ろうと思ったな、上手くなりたかったん?」卓にとっては籠り=滑って上手くなるという思考のため、特に意味は無く率直な意見だった。 「スキーはした事あったしリゾートバイト楽しそうやったから」「そういう人もおるんか、寧ろそういう人の方が普通なんかな?」不思議に思いながらも自分がズレているのかという些細な疑問を抱いた卓だった。 「まぁえぇか…

  • 籠り物語

    気がつくと少し眠っていた。 15分程眠った卓の身体は少し回復はしていたが、少し冷えてしまっていた。暖房の前へ移動し、床に座り込んで軽くストレッチをしながら暖めた。 身体も目もスッキリした所でもう一本ゴンドラで山頂へ向かう事にした。ひとまず一番下まで滑り、それから考える事にした。 山頂から林道を通り、ゴンドラの乗り場の方へと向かって行く。ここからはとてもなだらかな緩斜面で家族連れやカップルなどが楽しそうに声を挙げながら滑っていた。 卓はそんな経験をした事が無く、少し羨ましい気持ちになっていた。 スノーボードをするために来ているとはいえ、滑り仲間が居る事は羨ましいのだ。ただ、卓の滑り仲間とは誰でも…

  • 籠り物語

    スキーヤーが好んで滑るこのコースは、普段はコブになっており、パウダーでも無い限りスノーボーダーはあまり寄り付かない。 卓はスノーボーダーでは珍しくコブを滑る事がとても好きだった。 いつかモーグルコースでスキーヤーと競いたい(到底敵うはずはないとわかっているのだが)と野望を抱いていた。 だが、今のコンディションは絶好のパウダーだ。昼を過ぎているためトラックが無数に刻まれているが、卓はめぼしいラインを決め早速ドロップした。 数日降り続いた雪で、コブは全く感じられず、またあの宙を浮いているような感覚だった。次々に残った吹きだまりのパウダーめがけラインを取る。その度に卓の上げるスプレーが宙を舞い、陽の…

  • 籠り物語

    雪まみれの姿でそのままゴンドラの中間駅へと滑り降りた。 板を外し雪を軽く払い落とすと、レストハウスの側で板を反対に向けて雪面へと置き、その上に腰掛け煙草に火をつけた。 肺いっぱいに吸い込んだ煙を真っ青な空へと豪快に吐き出すと、座っている板から滑り落ちる様に雪面に大の字に寝転がった。「気持ちえぇ、ここは天国やな」澄みきった青空に卓の吐く煙が雲の如く漂う。そんな極上の時間を大の字で身体全身で受け止めながら、大自然の恵みに感謝するのだった。 一服を終えると再びゴンドラへと乗り込んだ。 ゴンドラから目星をつけたコースがあり、見た目にもハードな斜面のためトラックもまだ少ないようだ。卓は次のターゲットを定…

  • 籠り物語

    ゴンドラの中間駅までに準備を終えた卓はカフェオレで一息ついた。中間駅でも人は乗ってこず、山頂まで一人でのんびりと向かう。 昨日降り続いた雪はぱったりと止み、この上なく快晴だ。「ドピーカンやな」卓は独りで呟く。それほどまでの快晴だった。 ゴンドラから見渡す景色はどこを見てもパウダーが残っている事が確認できるが、どこもコース外のため見るだけで我慢する。中にはコース外にトラックがあり、マナーを犯した人達もいるのは言うまでもない。 ゴンドラからある程度コースやバーンの状況を確認した卓は、ひとまず中間駅までアップをかねて流す事にした。 山頂駅へ降り立った卓は刺すような日差しにアドレナリンが溢れでるのを感…

  • 籠り物語

    康之さんの車へと乗り込み、ゲレンデへと向かう。 「お前ほんまにボード好きなんやな、昔おったバイトにもお前みたいなやつおったわ」「そうなんですね、好きな人は好きなんですね。僕は今はスノーボードに命かけてます」卓はおにぎりを頬張りながら答える。「そいつも同じ事言うてたわ、怪我は気をつけろよ」「はい、怪我しても這ってでも仕事はするので」「それも同じ」康之さんは思わず笑った。 そうこうしてるうちにゲレンデへと着いた。 「四時でえぇか?」「はい、大丈夫です。お願いします」「りょうかい、ほな気をつけてな」そう言い残し康之さんの乗った車は走り去った。 卓はゴンドラ乗り場へと向かった。乗り場の自動販売機でカフ…

  • 籠り物語

    一息ついた皆を他所に、卓はすぐに部屋へと向かおうとした。 「卓飯は?」康之さんが咄嗟に声をかける。「おにぎり自分で作って持って行きます。お昼なんて食べてる時間ないです」「おっけ、ほな準備してこい」康之さんは笑顔で卓を見送った。 卓は部屋へ入るなり煙草に火をつけると、一服するのかと思えば、煙草を咥えながらウェアに着替えた。 吸い終わるのと同時に準備を終え、休む間もなく部屋の急なはしごを降りて行った。 そこへちょうどタカシが上がってきた。「早いなぁ、俺も飯食ったら行くわ」「そうか、また山で逢えば」卓はそう言い残しそそくさと厨房へと向かった。 厨房へ入ると、形の良い三角のおにぎりがすでにお皿の上に並…

  • 籠り物語

    別館へ移動しタカシが居る部屋を探していると、チカさんも康之さんも拭き掃除をしてくれていた。 卓が戻った頃にはほとんど終わりかけていたが、今日の内に流れだけは把握しておきたい卓は、あえて掃除では絡みが無かった康之さんに声をかけた。 「おつかれさまです、ヘルプありがとうございます。拭き掃除ほとんど終わってるみたいなんですけど、流れだけ教えて下さい」 すると康之さんは「ヘルプちゃうで、基本的には俺らも参加するし、バイトに全部やらすとかせぇへんから」卓はその言葉に、過去に経験してきたアルバイト先での社員との言い争いを思い出した。 こんな人達だったらあの時のバイトもストレス無くできたのだろう。そんな事を…

  • 籠り物語

    卓も軽くアドバイスしながら、二人で協力して最後のベッドメイクを終えた。 チカさんは厨房で部屋毎の灰皿を洗っていた。 「ベッドメイク終わりました」卓が声をかける。「おっ、ほんなら後は部屋の拭き掃除と全館掃除機で終わりやな。タカシがやり方わかるから聞いてやっといて」「わかりました」 タカシの元へ戻ると部屋の掃除機に取りかかっていた。 「卓は本館の掃除機二階からやっていってくれる?」「りょうかい、全館言うぐらいやから全部やんな?」「そうそう、わからんかったらチカさんに聞いてくれたら」 チカさんにはタカシに聞けと言われたので、チカさんには聞かずに全てのスペースを掃除機する事にした。 細かくする事に関し…

  • 籠り物語

    その部屋のベッドメイクはまだ一つも終わっておらず、二人でちゃちゃっと終わらせるつもりだった。 「ほなさくっとやってまおか、タカシそっち言って」卓が率先して指示を出す。卓は仕事をしている時は、バイトの時でも、相手が社員だろうが先輩だろうがお構い無しだった。 タカシに関しては数日早いだけで、ほとんど変わらないのだが… 先程チカさんとベッドメイクした時と同様に、シーツを広げながらタカシにパスする。 お互い均一にシーツを合わせると、卓はさっと角に三角を作り織り込んで、二枚目のシーツに手をかけ、タカシにパスしようとした。 ふとタカシを見ると、まだ片方の三角で苦戦していた。卓は妙に納得した。 タカシの手が…

  • 籠り物語

    シーツをベッドへと織り込んで一枚目のシーツが終わり、二枚目のシーツと毛布をセットする。 二枚目のシーツと毛布は足元側だけを同じ要領で折り込み、最後に掛け布団をかける。頭側の余ったシーツを掛け布団にかけベッドメイクは完了だ。 枕にカバーをつけ、余りをカバーの中に織り込んで整える。枕は部屋に入って見たときに、織り込みが見えないように部屋の奥を向くようにセットする。 「ベッドメイクはこれで一通りの流れやけど、もうできるよな?」「はい、大丈夫です、終わってない所やってきて言いですか?」まだ終わっていない部屋のベッドメイクへと卓が向かおうとした時「待って、先にゴミ箱と灰皿の処理教える」「わかりました」「…

  • 籠り物語

    広げられたシーツは、上下左右とも均等にベッドに合わせる。 「こっから一緒にやりながら教えるから卓反対回って」卓はチカさんとベッド越しに向かい合う様に立て膝で位置についた。 「ほんまやったら二人でやった方が早いねんけど、うちは部屋数多いから一人でやってもらうねん。手が空いてる時はちゃちゃっと二人でやるけど」「一人でもできるならその方が僕は良いです、手空いたらいつでも手伝えるので」卓は滑る時間の事だけを考えての事だった。 チカさんも恐らく気がついていた。 「あんたやったらすぐ綺麗にできるやろな、さっ、やろか」 「まずは左側からいくで、横に垂れてるシーツを右手でつまみ上げて、上げてできたスペースに左…

  • 籠り物語

    それからチカさんのベッドメイクのレクチャーが始まった。 「まず、ベッドに薄いマットレス敷いてるから、これを綺麗に整える。言わんでもわかるわな」卓に向かって微笑しながら説明を続ける。 「ほんなら、まず一枚目のシーツをベッドに広げて、この時裏表あるから気をつけて。折り返して縫い目のある方が裏やから」卓は頷きながら説明を聞いている。 「シーツを広げる時のコツやねんけど、端を持って広げながら」そう言うと「ほっ」とシーツを反対側へ投げるように器用にベッドの上に広げて見せた。 「この状態で、端を持ったままシーツを素早く、小さく波たたせるみたいにすると、ほら」ベッドの上でシーツが蛇のようにうねりながら波を打…

  • 籠り物語

    補充が終わりタカシを手伝うためにそれぞれの部屋を覗いていく。すると、タカシを見つけるよりも先にベッドメイクしているチカさんを見つけた。 「ベッドメイク教えて下さい、っていうかお腹大丈夫ですか?」お腹の大きいチカさんを気遣って声をかけた。「ありがとう、大丈夫やで、ベッドメイクやろか」ニコニコしながらチカサンは答えた。 卓はベッドメイクは初めてだったため一から教わる事になった。 チカさんはまず、和室の敷き布団に使う和シーツとベッドで使う大きめの洋シーツがある事を説明してくれた。「言われないとわからなかったです」「わかりやすく、ステッチの色が青い方が洋シーツ、赤い方が和シーツって覚えといて」「わかり…

  • 籠り物語

    掃除の時だけチカさんか康之さんが鍵を開ける事になっている。 ペンションの空かずの扉とあって、卓は少年のように胸を踊らせながら、だが表情には出すことなくチカさんが鍵を開けるのを見守った。 南京錠が外れゆっくりと開けられた扉、卓の気持ちをもてあそんだその空間、卓は現実に戻った。 束ねられた洋シーツ、ピローカバー、下の段には掃除機。そこには卓の描いた妄想は何一つ存在しなかった。 下の段の掃除機の横には、厨房のすぐ側にある自販機に補充する缶ジュースがケースで並べられていた。卓は鍵の意味をこの時納得した。 ジュースに気がついた卓を見て「うち2月から大学の合宿で学生が来るねんけど、酔っぱらった学生にジュー…

  • 籠り物語

    チェックアウト済みの部屋のユニット掃除が一通り終わり、最初の部屋から拭きあげをしながら回っていると、またタカシと遭遇した。 それはさっき出逢った部屋の隣だった。「嘘やろ」微かに声を漏らしたがタカシには聞こえてはいなかった。 卓は何か声をかけようかと思って止めた。この時卓はまだベッドメイクを教わっておらず、そんな人間が作業に口出しするのは違うと思ったからだ。 あえて声を掛けず淡々と、だが、確実にペースを上げて拭きあげを進めていった。 最後の部屋を拭きあげている所に「まだあそこか…」と、ぼそぼそ言いながら卓の元へチカさんがやって来た。 やっぱりそうなのかと、卓は思った。 「ユニット掃除バッチリ。そ…

  • 籠り物語

    「ユニットバスは中全部洗剤で洗って、換気扇つけたまんまひとまず全部屋一気に洗ってしまって」すると卓が「やってる間に乾いていくって事ですね」「説明が楽でいいわ」チカさんはニコッと笑みを浮かべる。 「洗い終わったら、使い終わったピローカバー纏めて置いてあるから」そう言って廊下に使用済みのカバーの塊を指差す。「これで拭きあげてくれたらいいから。後はトイレペーパー戻して、予備を二つずつ補充したら完了。トイレットペーパーは最後に教えるから終わったら教えて」「わかりました」ユニット掃除は楽で良かった。 廊下を見渡すと、部屋のゴミ箱、灰皿が出されており、シーツは一枚を風呂敷のように固められていた。 ピローカ…

  • 籠り物語

    「部屋掃除はやる事多いねん、別館は洋室でユニットバスもあるし」すると卓は「じゃあトイレついでに水回りも僕やります」その言葉を聞いてチカさんは「あんたここで働いた事あるんちゃう?」と笑いながら言った。 「なんでですか?」「水回りはまとめて1人で管理した方が部屋毎に分けて誰がどこやったかみたいな無駄なロス無くせるから。それに水回りは濡れるからちょっとした支度もあるし」「そう思ったのでやりますって言いました」 「午前中の掃除あんたに任してえぇか」チカさんは笑いながら、また強めのスキンシップをはかってきた。 「冗談なのはわかってますけど、仕事把握すれば全然任せてもらっても問題無いですよ、スキンシップの…

  • 籠り物語

    本館と別館の残りのトイレの掃除を終え、チカさんにトイレのチェックをお願いしに行くと「あんたのトイレ掃除は大丈夫」すると卓は「僕がサボってたらどうするんですか?それに初日なので一応チェックして下さい」「あんた見かけによらず真面目やな」「それは悪口ですよ」卓が軽く笑みを浮かべる。「ごめんごめん、ほな一緒にチェック行こか」 二人は掃除を終えたトイレを順に周り、想像通りの綺麗さにチカさんも何も注意する所が見当たらなかった。 「卓が嫌じゃ無かったらでいいねんけど、トイレ掃除卓の担当にしてもかまへん?その方が掃除も早終わるし早滑りに行けるし」すると卓は「そうします、滑りたいので」 特段トイレ掃除がどうとも…

  • 籠り物語

    チカさんは謎の驚きの声をあげたと思ったら、扉を閉めて「やっちゃ~ん!」と叫びながら厨房へと走って行ってしまった。 卓は何が起こったのかわからず、何かまずい事をしたのかと、チカさんが戻る迄掃除の手を止めて待つ事にした。掃除初日から何を言われるのか、気持ちよく掃除をしていた卓の気持ちは勝手に青く染まっていった。 「ガチャ」扉を開けたのは康之さんだった。その後ろにニヤニヤしたちかさんの顔が見える。 「立ってるやんけ!なんやったら手止まってるやん」康之さんがチカさんの方を振り返りながら聞いた。「ちゃうねんって!なぁ卓、あんたさっきトイレの床手ついて拭き掃除してたやんなぁ?」卓は答えに戸惑った。そんなに…

  • 籠り物語

    二人がまず入ったのは男子トイレだ。男子トイレには男性特有の便器があるため、説明を一ヶ所で済ませるためだ。ここのトイレには特有の便器が二つ、大便器が三つあった。 「じゃあまず、基本的なルールとして内では節水を徹底してるから水はジャブジャブ使いません」卓は小学生の頃のトイレ掃除で、豪快にホースで掃除をするイメージを抱いていたのだが、特に驚く事も無く「はい、わかりました」と淡々と説明を聞いた。 「基本的に汚れた所は洗剤を使って磨いて、流す時はこの洗面器に水を貯めて、水ですくって流して」「はい、わかりました」「床は水拭きでトイレの床全部拭いて、水滴は残さんといてな」 ひとまずここまでの説明を終えると、…

  • 籠り物語

    休憩を挟み、この日から午前中の部屋掃除と館内の掃除が始まった。タカシは既に経験済みのため、指示を受け先に掃除へと向かって行った。 スタッフの屋根裏がある棟は神戸屋の本館にあたり、本館の各部屋は和室になっている。本館には宿泊客はいないため本館の部屋掃除は無かった。タカシも別館の部屋掃除に向かったのだと卓は思った。 この日卓はトイレ掃除をチカさんから教わる事になった。食事の事は全て康之さんが仕切っているのだが、掃除は全てチカさんが仕切っていた。 卓はこの時チカさんが掃除の鬼である事、神戸屋の掃除ルールの細かい事など全く気にもしていなかった。しかし、チカさんもまた卓の恐ろしく几帳面な面に気づくはずも…

  • 籠り物語

    「ご馳走さまでした」食堂の方から声が聞こえる。ちらほらと朝食を食べ終えた宿泊客が部屋へと戻り始めていた。 卓とタカシは食堂へと出ていき、客が居なくなったテーブルの物を手早く下げる。タカシはそのまま食堂の片付けへと残り、卓は洗い場へと戻った。 下げられた洗い物をお湯へとつけ、手際よく片付けていく。 手早く処理していても、下げられてくる食器の数が多くすぐに溢れかえった。 洗い物をこなしながら空いたスペースへと下げられた食器類を移動させ、タカシが下げやすいようにスペースを確保していった。 食器が下げられてくる間は洗い場は戦場と化していた。卓はまるで千手観音の如く表情一つ変えず食器を黙々と捌いていく。…

  • 籠り物語

    朝食の時間数分前から焼き魚、ご飯、暖かいお茶を順番にテーブルへと出していく。 康之さんから焼きたての脂の乗った鱒の入ったトレーを受け取り、卓は食堂の魚皿へと盛り付けていく。魚の皮が座った時に奥になるように盛り付ける。身が割れてしまっているものは賄いになるため避けていく。そのため少し多めに焼かれているため、賄いには充分すぎる鱒が残った。 魚を盛り付け厨房へと戻ろうとした時、食事を提供するための小窓から、次々とお米の入ったおひつとお米のポットが差し出された。 魚のトレーを中のタカシへと渡し、それらを各テーブルへと運んでいった。 後はテーブル毎に、味噌汁を宿泊客が来た所から順に提供していく。卓は中で…

  • 籠り物語

    タカシは味噌汁用のおわんを人数分準備していた。銀のトレーにおわんを並べ、更にトレーを重ねておわん乗せる、それはまるでタワーの様になっていた。 大量のおわんを場所を取らずに準備できる最高の方法だと卓は思った。 ご飯を混ぜ終わると、康之さんからおひつの場所を教えてもらい、テーブルの数の分用意した。 「ほな食堂のセッティングよろしく」夜の様にタカシにセッティングを教わり、各テーブルに茶碗、おはし、味付け海苔、魚皿をセットして回った。 食堂のセッティングが終わり中へ戻ると、チカさんも中の手伝いをしてくれていた。 「おはようございます」「あっおはようさん、よう寝れたかい」笑顔で優しく語りかけてくれた。 …

  • 籠り物語

    屋根裏部屋は恐ろしく寒い朝を迎える。布団は冷たく、軽く湿っている。 卓は携帯のアラームで目を覚ます。目を瞑ったまま手探りで煙草を探す。起きてすぐに吸いたいわけではないのだが、そうしなければ吸う時間がなかったからだ。 喉を通る煙、肺へと溜まる煙によって、体内へと衝撃を受けたかのような感覚でようやくはっきりと目が覚める。 部屋の温度計に目をやる。-10°の表示に二度見した。ここは人が生活するに値する場所なのかと少しの疑問を抱いたが、寝起きの卓の頭はそれ以上機能する事は無かった。 着替えを済ませると卓は厨房へと降りて行った。「おはようございます」すでに康之さんは朝食の準備を始めていた。「おはよう、ほ…

  • 籠り物語

    部屋へ戻る途中ふとパブリックスペースを覗くと、そこには漫画を読むタカシの姿があった。 卓は疲れていたためパブリックスペースへは立ち寄らず、自動販売機で一番搾りを買って部屋へ上がった。もう一度言うが卓は19歳で未成年だ。 部屋へ戻り一番搾りを一気に半分程流し込む、喉を切り裂くような刺激とともに至福の瞬間が卓を襲った。 一息ついた所で、濡れた髪をドライヤーで乾かす。部屋の冷ややかな空間でのドライヤーの熱風は、風呂上がりで身体は火照っているにも関わらずなんとも心地よかった。濡れて束になっていた髪の毛が、乾いていく毎に一本一本宙を舞うようになびいている。 卓の髪の毛は肩甲骨の辺りまで長く、乾かすのに時…

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