まずは、物事の始まりから8-3
「ドクターの専門は?」 「皮膚科です」 「申し訳ありませんが、そのまま速やかに席についてください」 「以前の専門は救急です」ドクターは眉を器用に上げる。「年齢に伴いまして引退したのですよ」 女性刑事は顔の角度をきつく、上階を眺める。二階に再び姿を見せた男性の刑事をじっと見詰めている。ドクターの声も年齢にしては大きく、会場はいつになく寝静まっている、たぶん二階の刑事にも声は届いただろう。アイラは代替の会場を押さえる許可が下りる時間を、彼らの観察に充てた。 一階のステージ、紫の照明が煌びやかに目に映ったのは始まりの一曲が演奏されたもう、幻の時に遡らなくては。二人の刑事が声を潜めて対策を話し合う。表…
2024/11/30 13:00