手紙とは現実を伝えるディバスである1-8
鈴木の問いかけは数秒の無言から、数十分の沈黙にかき消され、車内はそのまま音を失くした走行に移った。 バイクを最近ではよく見かける。風を切る錯覚におぼれ、果てしなくただ遠くを目指して走る、車とは異なる臨場感が現実世界の生と死を安全側に立って体感したいんだろう。 ハンドルを切ってしまえばいいのに。 ブレーキを握ってしまえばいいのに。 ガードレールに直進すればいいのに。 生きようと願ってるばかりではないか。 いっそのこと彼女のように殺めてしまえば味わえるのに、こちらの世界が恋しいらしい。 夜でもない朝でもない境目が好きか。 私は黙って明日まで待つだろう。 一過性だから憧れて、取り込まれるんだ。 車線…
2024/07/31 22:00