********************** 都市の暮らしに慣れていると、ふと訪れた大自然の圧倒的なパワーと経年の贅沢さ、豊かさにまったく打ちひしがれる。自分が生きてきた年月はもちろんのこと、その親の代の更に親の、その更の奥の奥の奥……一本の糸を過去へ過去へ手繰り寄せる作業を一向に繰り返そうとも、青々と茂る緑、渓谷に転がる巨石、朽ちた樹の幹、山からのわずかな湧水がいつからか急流を生み、やがて母なる海へと注ぐにいたるダイナミックなその俯瞰図……そのどれを取っても、及ばない。それらの一生を共にした者はひとりとして存在しない。われわれは、ただ一瞬の、まばたき一つの瞬間の生を立ち会ったに過ぎないのだ。…