私は54年前に、山奥から大都会東京に出て来た。史上最低の学力を引っ提げて出てきたが、日比谷公園内にあった。日比谷図書館に入館したが、静まりかえった図書室には厚い本を開いて若者が物音もたてずにいた。翌日、漫画の厚い本に表紙をし、隣席の学生との間に置いて、賢く見せ勉学をした。あれから、まだシブトク生きている。高野山は弘法大師空海の霊山だ。霊山は青森県の恐山、滋賀県の比叡山、和歌山県の高野山と聞く。私の和歌山の生まれ故郷から、龍神温泉を通り、平家の落人の村を眼下に見て、奈良県との境のスカイラインを過ぎれば高野山だ。大好きな高野豆腐も売っていた。空海は四国香川県のご出身で、なんで高野山なのかと尋ねたら、余談だが、香川県から偏西風に乗って白い布が舞い上がり、その布が高野山の木に舞い降りた。というおとぎ話のような、本...高野山(連載―第549号)